深い山を切り抜くように、魔物の口のように開かれた洞窟が姿を見せた。入り口の傍には仮設トイレが2つ。シャワー室が1つ置かれている。
「ここからじゃ中の様子は分からないわね......」
「おー......ここでもビニール......凄く便利なんだね」
物陰からAクラスの様子を窺うオレたちだったが、洞窟の入り口にはビニールをつなぎ合わせた巨大な目隠しが広げられているためにここからじゃ何も分からない。つまりここにいても良いことは何もないってことだ。身を潜める二人を追い越し、オレは洞窟へ繋がる道を歩く。
「ちょ、ちょっと。どういうつもり。不用意に姿を晒しても得はないわ」
「隠れて様子を窺っても得なんてないだろ」
「そうだけど......」
「Aクラスには何があるんだろう。楽しみ」
洞窟の中を見ればある程度ポイントを使用しているのかが分かる。渋っていた堀北も納得し、洞窟の入り口目前まで歩く。すると、その付近にいたAクラスの生徒がこちらを警戒するように近づいてくる。
「なんだお前ら。どこのクラスだ」
こいつは確か......初日に洞窟をいち早く見つけた二人組のうちの一人、弥彦だった。
「私たちはDクラスだよ」
「偵察に来たのよ。何か問題ある?」
「は、どこの誰かと思えばDクラスかよ。頭の悪い連中の集まりだろ」
「ううん、堀北凄く頭いいんだよ。後は幸村とか、高円寺とかも凄く頭いいんだ。それに平田や櫛田も頭よくて......頭悪いの私と須藤ぐらい。でも私たちも勉強頑張ってるよ」
「なんなんだこいつは......急に聞いてもいないことをベラベラと......」
いきなり知らない名前を並べられて困惑する弥彦。気持ちは分かる。
「とりあえず中を見せて貰うわよ」
「あ、おい!」
堀北が様子を確認しようとすると、弥彦が慌ててそれを静止した。
「何?あなたは私たちのこと頭が悪いと思っているんでしょう。それなら何も問題ないはずよ。それとも中を見られて困るものでもあるのかしら」
「そんなわけあるか!って、そこのお前!何勝手に入ろうとしてる!」
「え......他のクラスは見せてくれたからいいのかなって......」
「よそはよそ!うちはうちだ!」
「Aクラスは他クラスとちがって随分と姑息なのね。でもここはあなたたちが独占していいものではないわ」
「ふざけんな。ここはAクラスが占有しているんだ!」
「確かに占有中は洞窟を利用することはできないでしょうけど、私たちにも内部を見る、あるいは装置を確認する権利ぐらいあるはずよ?そうでなければ全てのスポットを無理矢理独占することも理論上は可能になってしまう。それじゃ試験にならない」
「う......!?」
もし仮にAクラスが全てのスポットを占有したとして、今のように装置を確認すらさせられない事態になればもう他のクラスは手出し出来なくなってしまう。
堀北と綾瀬は弥彦を追い越し、綾瀬が洞窟のヴェールを剥がそうとする。
だが────。
「何をしている弥彦。客人を呼んでいいと許可した覚えは無いぞ」
オレの背後から、高身長の男が通りすぎ、堀北と綾瀬の前へと歩みを進めた。確か名前は......
「葛城さん!こいつら、俺たちの寝床を偵察に来たんですよ!汚い連中です!」
「ビニールごときで大袈裟なこと言うわね。中を少し見せて貰うだけよ」
「そうだよ。......えと、弥彦。ちょっと中見せて」
「お前が俺を下の名前で呼ぶなっ!」
「下の名前だったの......?私は別にどっちでもいいけど......」
葛城が現れても物怖じせずにいつも通りの二人。女子なら多少は怯んでもいいぐらいの威圧感が葛城にはあるんだがな。
「遠慮せず中を見ればいい。その代わり覚悟はしておくことだ。指一本でも触れた瞬間、俺は他クラスへの妨害行為として学校側に通達する。その結果Dクラスがどうなるかは保証しない」
葛城の言葉はハッタリだろう。ビニールに触れたぐらいで妨害行為になる可能性は低い。それでも訴えると言われてしまった以上僅かばかりの危険性は含んでいる......はずなんだが綾瀬が遠慮なくビニールに指を触れるようとする。
「おい待て!お前は何をやっている!」
「え......だって遠慮せずに見てもいいって......」
「だからって素直に入ろうとするな!なんでお前はさっきからそんなに入りたがるんだ!今葛城さんが重要なこと言ったばっかだろ!」
「弥彦、怒ってばっかだね。お菓子......あ、今はないんだった......ごめんね。美味しいもの食べたら怒らなくなるのに......」
「あってもいらん!」
綾瀬に振り回される弥彦を見て、なんとなく入学当初のオレを思い出した。オレにはお前の気持ちが分かるぞ。
騒ぎ立てる弥彦を鎮めるように葛城が弥彦の前に立ち、綾瀬と向き合う。
「名前は」
「......私?私は綾瀬」
「では綾瀬。お前が洞窟の中を見たいのは分かった。だがここはAクラスが生活している空間なんだ。当然プライバシーもある。お前はそれを侵害しようとしているんだぞ。他クラスは受け入れてくれたかもしれないが、Aクラスは別だ。お前やDクラスの生徒にだって見られたくないものはあるだろう」
初対面の綾瀬に対してあくまで常識を教えるような態度で接する葛城。
「じゃあ、さっき中を見てもいいって言ったのは?」
「それはお前たちが報復を恐れないなら見てもいいということだ。もしお前が強引に中を見ようとするなら、俺たちもお前たちの生活空間に土足で踏み込むぞ。それでもいいのか」
別クラスの生徒が自分達のベースキャンプ地にいることを嫌がる生徒もいるだろう。オレたちも伊吹を受け入れてはいるが、佐倉のような人付き合いが苦手な生徒からしたら良いことなんて一つもない。ましてや自分の生活を見られる人が増えるなんてことは苦痛とさえ感じるんじゃないだろうか。
「......そっか。私、そんなこと全然考えてなかった。私ね、他のクラスのキャンプ地が全然違う感じで凄く新鮮だったんだ。だからAクラスはどんな感じなんだろうって気になっただけなの。ごめんね......」
「......いや、お前を見ていれば悪気がなかったのは分かる。だから許そう」
少し意外だった。てっきり葛城という男はもっと固い男だと思っていたが、思いの外融通の利く人間のようだ。
「ありがとう。葛城はいい人だね」
「いいんですか葛城さん。こんなやつ許しても────」
綾瀬に文句を言いたそうな弥彦に葛城はゴンと鉄拳を弥彦の頭に落とした。鈍い音がこちらまで聞こえてきたぞ。
「ここはあなたの言うことを尊重するしかなさそうね。まぁいいわ。せいぜい楽しみにさせてもらうわよ。Aクラスの実力がどの程度のものか」
「随分と威勢がいいな。こちらも期待してるとしよう。Dクラスの悪あがきに」
短いやり取りを終え、堀北は葛城の横を通り過ぎる。
「ばいばい。葛城、弥彦」
「二度とくるな!」
オレと綾瀬も堀北に続く。
「Aクラスに関しては放置して置くしかなさそうね。確かにアレは調べようがないわ」
洞窟という閉鎖的なスポットを押さえられた時点で隠蔽性においては鉄壁だったわけだ、
しかし、内部を隠そうとも『得られるものは』は十分にあった。
3日目の昼前。オレは綾瀬を連れて森の中に入ろうとしていた。だがその前に綾瀬を伊吹に引き合わせるために伊吹の元へと向かう。昨日の段階でお互い顔は合わせてはいるだろうが、オレは少し二人の会話を聞いてみたいと思った。
「伊吹」
「なんなの。綾瀬まで連れてきて」
「いや、なんとなく気になってたみたいだから」
「そんなに気にしてないって」
そう言いながら伊吹は綾瀬を見る。
「......あんた、暑くないわけ?」
「暑い?ううん」
涼しい顔で答える綾瀬。改めて思うがこの暑さで汗一つかいていないのは異常だ。しかも長袖を来てる上にファスナーまであげている。それは堀北や佐倉もだが、理由はそれぞれ違うだろう。もちろん綾瀬の場合は大した理由じゃないんだろうなとオレは思っている。
そして綾瀬には疲れた様子が一切ない。綾瀬は今日に至るまで動き回っていたはずなんだが。綾瀬のスタミナは無尽蔵なんだろうか。
「ねえ伊吹。真鍋って知ってる?」
綾瀬の口から出てきたのは知らない生徒の名前だった。
「は?真鍋?いやまあ、そりゃ同じクラスだから知ってるけど。それがどうかしたわけ?」
「えっとね......んー......」
話題を振った綾瀬は何故かしばらく考え込む。
「ごめん、やっぱ真鍋のことは忘れて」
「なんなのあんた......」
綾瀬は一体何を考えているのだろうか。よく分からないまま二人の会話は終わった。思ったようにはいかなかったか。
オレは綾瀬と森の中に入り、周囲に人がいないことを確認する。だがさすがにオレの五感だけでは不安があるな。
「綾瀬。周りに人がいると思うか?」
「......ちょっと待って」
綾瀬は何度か周囲を見渡した後、目を閉じた。感覚を聴覚に集中させているのだろう。
程なくして綾瀬が目を開ける。
「人はいないよ」
「そうか」
綾瀬がそう言うならほぼ間違いない。これで話したいことも話せるというわけだ。
「綾瀬。もしお前がこの島を一周するってなったら何時間かかると思う?」
「......全然分かんない......」
綾瀬なら一日かかることなんてなさそうだが、そこら辺は本人でも分からないか。
「私って、スポット見つけた方がいいのかな......」
「いや、綾瀬がスポットを見つけたところでその分リーダーの堀北が歩き回らないといけない。そしてカモフラージュのためにも人が必要だ」
「それだと皆疲れちゃうよね......」
「そうだな」
きっと綾瀬に島を回らせれば多くのスポットが見つかるだろう。だがそれでは堀北が早い段階で限界を迎える。持って5日目辺りまでか。それはオレの望む展開じゃない。
「もしA、B、Cクラスのベースキャンプ地を一度に全て回るとしたら何分かかると思う?」
「それなら......そんなに時間かかんないよ?」
全く頼もしい限りだ。今回の試験では綾瀬の身体能力にあまり重きを置いていたわけではないが、これならもう少し欲張ってみてもいいだろう。
「少し話は変わるが、綾瀬はCクラスに行ってどう思った?」
「どう思った......?んー......」
「そんなに難しく考えなくていい。楽しかったとか、そういうのでいいんだ」
「......あっ、皆と仲良くなりたいって、思ったかも。もちろん遊べて楽しかったのもあったけど、それ以上にそう思ったんだ」
「へえ、何か理由があるのか?」
「えっとね、椎名とそういう話をしたんだ。それが、一番覚えてる。それはきっと、私もそう思ったから」
椎名......Cクラスで出来た綾瀬の友達なんだろう。
皆と仲良くなりたい。
それが綾瀬にとって一番覚えていることであり、綾瀬が心のどこかで願っていることなんだろう。
「綾瀬。そんなお前に────頼みがある」
私は今、綾小路から頼みごとをされている。でも、話を聞いてると全然難しいことじゃなかった。
「────待って綾小路、足音がする」
誰かが後ろから走ってくる。これはなるべく秘密にしないといけない話だから教えてあげなきゃ。
「足音......本当か?」
「うん。もうすぐ来るよ」
後ろを振り向くと、息を切らしながら走る佐倉がいた。
「佐倉......どうしたの?」
「はあ、はぁ、ふぅ......二人がこっちの方向に行くのが見えて、それで......」
「それでわざわざ追いかけて来たのか?一人で森の中に入るなんて危ないぞ」
「うっ......ご、ごめんなさい......」
佐倉がしょんぼりしちゃった。怒られたと思ったのかな。綾小路も佐倉のことを心配しただけだから気にする必要ないのに。
「ううん、全然いい。でもどうして来たの?」
「それは......私も何か出来ることをしたいって、思ったんだ。......本当はあそこにいても居心地が悪かったっていうのも、あるけど......あはは......」
『私はそうは思わない......ってちょっとかっこつけちゃったかな......?あはは......』
佐倉を見ていると、昔のことを思い出す。
「......佐倉。無茶しなくて、いいんだよ?」
「ううん、綾瀬さんや綾小路くんも頑張ってるから、私も頑張る。私も何か、役目が欲しいから」
「......そっか」
佐倉が頑張ってるなら、私には止められない。私に止める権利なんて、ないから。
「あまり時間をかけすぎると堀北も心配するだろうし、そろそろ行かないか?」
「うん......ところで二人は食べ物を探してる......んだよね?」
「うん。そうだよ」
それは嘘じゃない。だから大丈夫。
私たちはお喋りをしながら森の中を歩いていった。腕時計を確認してなかったから分かんなかったけど、多分30分ぐらいは歩いてたと思う。佐倉はもう疲れていて、このまま歩いてると危険。
「そろそろ休憩にするか」
綾小路がそう言うと佐倉はちょっと嬉しそうだった。
「二人はそのまま休んでて。すぐに戻るから」
「え......でもまたはぐれちゃうかも......」
「ここに戻ってくるだけなら大丈夫」
佐倉には少しでも休ませてあげたい。だから私が先に行って何かを見つけてくる。それなら無駄に歩かなくていい。
足に力を込めて走る。そして木に登る。高いところからなら何かがあってもすぐに分かる。
木から木に飛んでいく。感覚を研ぎ澄ませて、目に映るもの、耳から聞こえる音を全部逃さないようにする。
「......あれ」
下を見ると、何か変なのが生えてた。木から飛び降りてそれを確認する。
それは何本かあって、普通の植物とは違う形をしてる。一本抜き取っていろいろ触ってみた。
「......黄色いツブツブ出てきた......」
......なんだろうこれ。食べ物、なのかな。とりあえず綾小路たちのとこに持っていこう。
オレと佐倉は大木に背中を預けて休憩していた。綾瀬が来るまでは佐倉のストーカーが退職したこと、そしてデジカメのことなんかについて話していた。
そして綾瀬が先に行って10分ほど経過した頃。上の方からギシギシと何かが揺れる音が聞こえてくる。
「な、なに......?この音......?」
「これは......木が揺れている?」
そんな音がとうとう真上から聞こえてきた。
「ひゃっ......!」
佐倉は不安に煽られ、身体が震えだす。オレも警戒しながら音がした上を見る。すると、そこには木の枝に捕まる綾瀬がいた。
「戻ったよ。いま下りるね」
そして、オレたちの目の前に綾瀬が降ってくる。
「わー!?あわわわ!!」
突然降ってきた綾瀬に佐倉は軽いパニック状態になった。正直オレも心底驚いた。綾瀬が飛び降りた場所は地面から大分遠いところにある。もし佐倉が同じように飛び降りようものなら間違いなく足を骨折していただろう。
「......?なんか変なの見つけたけど......」
本人はそんなことなどどこ吹く風といった様子でポケットの中に閉まっていたものを取りだした。
「はぁ......はぁ......あ、あれ......?それってトウモロコシ......?」
「とう、もろこし......?」
綾瀬はそれが何だか分かっていないみたいだが、それはどこからどう見てもトウモロコシだった。
「綾瀬。それは食べ物だ」
「......へー......この黄色いツブツブを食べるの?」
「そうだ。ちょっと食べてみるか?」
「えーっと......」
どうやら食べ方がまるで分からないみたいだ。
「とりあえずその皮を綺麗にむいて、そうだな......綾瀬なら直接かぶりついた方がいいんじゃないか?」
女子なら一粒一粒綺麗に取って食べるのが一般的なんだろうが、綾瀬ならかぶりついて食べてる方が似合う。
綾瀬はオレの言われた通り皮をむいた後、躊躇うことなくかぶりついた。
「......これは......新食感......」
良かった。気に入ったみたいだ。目がキラキラしている。
「トウモロコシなんて凄い......!これがあれば食料問題もきっと解決するよ!」
まだ三日目だから残りをトウモロコシだけで生活するのはさすがにどうかと思うが、それを口にするのは野暮というものだろう。トウモロコシがあるだけで大分変わってくることは間違いないからな。
綾瀬の案内でトウモロコシが生えているところにたどり着くオレたち。
「わぁ......!」
佐倉が感嘆の息をこぼす。数は50本ぐらいか。
しかし、この区画だけトウモロコシが自生していることなんてあるのだろうか。
トウモロコシが植わっている土は、この森の土と色が異なる。これが人工的に栽培されていたトウモロコシであることを裏付ける証拠だ。
「鞄持ってくれば良かったね......とてもじゃないけど一度に持って帰れないかな」
「じゃあこれ使う?」
そう言って綾瀬は上着を脱いだ。Tシャツ姿になった綾瀬から色白で細い腕が見える。
......改めて見るとこれで脳筋タイプなのが不思議だ。活発な印象の一之瀬にはよく似合っていたジャージ姿も綾瀬だと全然似合わない。
ついでにTシャツだと綾瀬の身体のラインが上着に比べてよく見えるので、どうしても胸がほぼ無いに等しいことが分かってしまう。オレはついつい隣の佐倉と見比べてしまう自分を恥じた。
「これでいっぱい入るね」
「それでも全部は到底無理だな。後でクラスの奴らに報告して収穫に向かわせよう」
「うんっ」
予想外の大収穫に心躍らせるオレたちだったが、思わぬ来客が訪れる。
「見てください!葛城さん!凄い量の食料ですよ!」
トウモロコシに意識を集中させていた佐倉の肩が大きく跳ね、驚く。そしめすぐにオレたちの後ろに隠れるようにして回り込んだ。その様子を見た葛城は一言謝罪をする。
「すまない、驚かせるつもりはなかった。この男に悪気はない。許してやってくれ」
「葛城と弥彦だ。やっほー」
「あ......!お前は!」
弥彦は綾瀬を指差してわなわなと震え始めたが、葛城から厳しい視線を向けられると怒られた子犬のように落ち込んだ素振りを見せながら口を噤む。
「俺はAクラスの葛城。そしてこっちが弥彦だ。二度目だから自己紹介ぐらいいいだろ」
「Dクラスの綾小路、佐倉だ」
「私は綾瀬」
綾瀬はもう先に名前を自分で教えてるけどな。
短く挨拶を交わすと葛城は大量のトウモロコシを一瞥し、歩き出す。
「それはお前たちが見つけたものだ。横取りするつもりはないから安心しろ」
「食べないの?」
「フン、運が良かったな」
弥彦も葛城に続いて歩きだそうとする。しかし、綾瀬がトウモロコシを手にとって葛城と弥彦の前に立った。
「はい」
綾瀬はトウモロコシを二人に差し出そうとする。
「......俺たちは敵同士だぞ」
「......なんで敵同士なの?違うクラスだから?」
「そうだ」
「でも......ご飯を食べるのにクラスなんて関係ないと思う。皆で食べたら、美味しいよ」
「────!」
葛城は少し驚いた顔を見せ、綾瀬をどこか懐かしいものを見るような目で見た。
「......いただこう」
「葛城さん!?敵の施しを受けるんですか!?」
「弥彦も食べようよ」
「だからお前が俺を下の名前で呼ぶな!」
「だって名字知らないし......」
「......あははっ、やっぱり綾瀬さんって凄いね......!」
さっきまで葛城たちを見て怯えていた佐倉もそんなやり取りを見て笑っていた。
綾瀬の皆と仲良くなりたいっていう願いは案外すぐに叶うのかもしれないな。それも櫛田とは違う形で。