無人島での特別試験が始まる少し前、1学期終業式の日の話をしよう。なぜこんな話をするのか、それはきっと懺悔みたいなものがしたかったからなんだろう。
オレはこの日浮かれていた。人生で初めての夏休みを満喫できる喜びを噛み締めていからだ。しかし、オレは茶柱先生に指導室に呼び出され身の上話を聞かされた。
「私は以前この学校の生徒だった。お前たちと同じDクラスのな」
名指しでオレを呼び出してそんな話をする理由が分からなかったが、付き合わないと帰れそうになかった。
茶柱先生の時代はオレたちと違ってかなり拮抗していたらしい。三つ巴ならぬ四つ巴と表現できるほどの僅差。AとDのポイント差は100ポイントもなく、些細なミス一つで均衡が崩れる接戦だった。
その些細なミスを茶柱先生が犯した。それでクラスメイト共々地獄へと叩き落とされ、自身のAクラスになる目標と夢も崩れ去ったというのが茶柱先生の身の上話だった。
気の毒だとは思うが、そんな過去の話を急にされても困る。しかし、茶柱先生の本題はここからだった。
「綾小路。お前の存在は、Aクラスに上がるために必要不可欠だと私は感じている」
「何を言い出すかと思えば。冗談でしょ」
不自然に持ち上げられて、褒められて嬉しいです、なんて言葉が出るわけがない。
「数日前、ある男が接触してきた。綾小路清隆を退学にさせろ、とな」
茶柱先生から放たれる気配が一気に豹変した。
そこから茶柱先生はオレに脅しをかけた。教師という立場ならオレをありとあらゆる方法で退学させることができる。それが嫌なら自身の成し得なかった夢のため協力しろとのこと。つまりはオレを利用しようとしているんだ。話し方、素振りに余裕は全くない。オレを本気で切る覚悟で脅しに来ている。
「もう一度だけ聞こう。Aクラスを目指すか退学するか、好きな方を選べ」
「一つ、聞かせてください」
今すぐ胸ぐらを掴みたい気分だった。しかし、都合のいい今だからこそ確認させて置かなければいけないことがある。それは今後重要になってくることだ。
「あんた、綾瀬が入学する前から綾瀬と知り合いだっただろ」
「────!」
今まで強気に振る舞っていた茶柱先生が微かに動揺を見せた。
「やっぱりな」
そんなものを見せてしまえばいくら取り繕っても無駄だ。
「......綾瀬が話したのか」
「いいや、綾瀬からは何も聞いていない。だが明らかにあんたが綾瀬を見る目は他の生徒と違う」
そして綾瀬が茶柱先生を見る目もだ。
茶柱先生は観念したように口を開く。
「綾瀬と入学前に会ったことがあるのは二度だけだ。普通なら入学前に所属されるクラスの教師と生徒が話すことなんてあり得ないが、綾瀬は特例だった」
「なぜ綾瀬は特例だったんだ」
「.......それについては話せない」
外部との接触を禁じているこの学校で二度に渡り出入りさせるぐらいだ。その特例というのも並々ならぬ理由であることは間違いない。
そして星之宮先生や他の先生が綾瀬を知っていた様子も無かったことから、その会合は秘密裏に行われていたはずだ。
つまり学校側でもかなり上の立場にいる人物が絡んでいる。そうでなければそんなことは出来ない。
「入学前の綾瀬はどんな感じだったんだ」
「初めて綾瀬を見た時は今以上に感情が希薄でな。最初は顔の造形も相まって本当に人形かと思ったさ」
「あんたは綾瀬の境遇についてどこまで知っている?」
「私も綾瀬に関しては知らないことだらけだ。綾瀬を連れてきた人に聞いても詳しく教えてもらうことは出来なかった。だから綾瀬本人に会話を求めてみたがまるで反応を示さず、ずっと光のない瞳で虚空を見つめていたんだ。まともな話は出来なかった。それが一度目。二度目に会ったのは去年の夏。ちょうど今と同じぐらいの時期だ」
綾瀬は精神的に問題を抱えていた。なんとなくそんな気はしていた。だがそこまでして綾瀬を入学させようとした理由は一体何なんだろうか。
「綾瀬にとって今まで教師と呼ばれる存在がいたことはなかったらしい。だから私が自分の教師になるんだと理解した瞬間、綾瀬の瞳に微かな光が灯った。そしてこう言った。『私は知らないことばかりだから、色々教えて』と。その言葉を聞いて、私は......」
茶柱先生はそこで言葉を切った。そこから先は、自分が言葉にする権利などないとでも言うように。
「だがあんたはそんな綾瀬までも利用しようとしている。そのことについては理解しているな」
「......ああ」
茶柱先生は綾瀬を救えと言った。それにはきっと綾瀬に対して愛情や親心みたいなものがあったんだろう。だが、決してそれだけじゃない。
オレたちと綾瀬を引き合わせるため。そして綾瀬の身体能力だけは絶対に失いたくない。そんな思惑があったに違いない。
それほどまでに、Aクラスへと上がるというのはこの女にとって捨てられない願いだった。
「後悔するかもしれませんよ。オレと綾瀬を利用しようとしたこと」
「安心しろ。私の人生は後悔だらけだ」
とにかくこれでようやく見えてきたな。綾瀬と茶柱先生の関係。そして綾瀬の境遇の一端が。
綾瀬心音の過去。オレはそのことを詮索するつもりなどなかった。それはオレも過去の詮索なんてされたくなかったから。だが、もうそうは言ってられなくなった。
だからこれは────懺悔なんだ。
このときの、そしてこれからのためにも必要になってくる、懺悔。
無人島生活も4日目。折り返しを迎えるとちょっとずつ変化が起こり始める。散々喚いていた文句は聞こえなくなり、気がつけば笑いの絶えない空間になっていた。
トウモロコシはあの後クラスメイトが回収し、池たちが釣ってきた魚などもあって食料も増えてきた。そんなDクラスの食事を大きく支えているのは池ともう一人、綾瀬だ。
「池。これなに?」
森の中へと入っていた綾瀬が帰ってきて池に野菜を見せる。
「え!?綾瀬ちゃんまた見つけてきたの......?」
「うん」
綾瀬はあれから自分の点呼の分を取り戻すためにと言って積極的に森の中に入り、食料を見つけては持ってきた。昨日と今日を合わせて綾瀬が見つけた食料は数多くある。一応堀北は綾瀬が一人で行くの止めようとしていたが、誰も綾瀬についてこれない以上、食料を見つけるだけなら綾瀬一人の方が効率がいいため渋々納得した。
「ありがとう綾瀬さん。綾瀬さんには助けられているよ。でもどうしてこんなに見つけられるんだい?」
「ほんとだぜ。俺も探してはいるけど全然見つかんねぇ」
平田と須藤が綾瀬のもとに駆け寄り、綾瀬に質問をぶつける。そして池や山内、他のクラスメイトたちも気になるのか、綾瀬の周りに人が集まってきた。
「えと......木に登って高いところから見つけてるから......」
「木登りって。お前案外アグレッシブだな......でも一々登るのは手間じゃねぇか?」
「......どういうこと?木から木に飛べば登る必要ないよ?」
「は?」
その言葉を聞いて須藤たちは訳が分からないという顔をした。まあ実際に見ないと信じられないよな。オレもはっきり見たわけじゃないけど、昨日綾瀬が木から飛び降りてきた光景は今でも目に焼き付いている。
やがて綾瀬のもとに集まったクラスメイトたちは綾瀬と一緒に森の中へと入っていった。きっと綾瀬といれば多くの食料が見つかると思ったんだろう。まあこれで持ち運ぶ手間も減るからそれはそれでありではある。ただオレとしてはあまりよろしくない。
現状Dクラスが使ったポイントはリタイアなどを含めて100ポイントあたり。
このまま順調に行けば、かなり多くのポイントを残して試験を終えることが出来るだろう。それはDクラスからすれば十分納得のいく数値。
しかし────Aクラスを目指さなければいけなくなってしまったオレとしてはその数値では足りない。
「攻撃開始だな」
オレはこっそりとボールペンを借り、折り畳んだ紙と一緒のポケットに入れてベースキャンプを離れた。
各クラスの方針は把握した。なら、やることは決まっている。他クラスへの攻撃だ。
そこで、オレはAクラスのエリアへと移動を開始する。Dクラスが川辺を中心に行動しているように、Aクラスは洞窟周辺を活動範囲にしているだろう。
ある程度探索していると、スポットであろう小屋を見つける。中には装置、そして釣り道具があった。つまりこの場所を押さえることで学校に道具を借りずとも魚を捕まえられるということだ。当然そこはAクラスに占有されていた。
ここは船に乗っていた段階で発見していなければ存在を知ることが難しいスポット。なぜなら崖の真下に小屋があるからだ。そのおかげで占有の瞬間を周囲から見られる心配もない。
オレはポケットから地図を取り出し小屋の場所を書き記しておいた。印を付け終えると再び紙を折り畳みポケットへしまう。
そして島を旋回していたときにこの辺りにあった塔も見つける。当然近くにあるということは葛城も目を付けていたはずだろう。しかし、装置を確認するとここはAクラスに占有されていなかった。この塔は存在そのものが大きいため、誰がどこで監視の目を光らせているか分からない。
なるほどな。これまでの情報でオレは葛城という男を大体理解した。葛城は慎重な男で、手堅い戦略のみを用いる人間。身近な甘い餌に不用意に近づかない男。
ふと、無風にもかかわらず近くの茂みが揺れ動いていることに気づく。
「......占有しない理由は慎重なだけじゃない、か」
「そこで何をしている。ここはAクラスが利用している場所だぞ」
まるで獲物が罠にかかるのを待っていたかのように、二人の男子が茂みから姿を見せた。
その二人組は装置を確認した後に、オレを挟み込むようにして逃げられないようにした。
「おまえは?見ない顔だな」
「Dクラスの綾小路だ」
日陰者のオレなど当然認知されていない。もしこれが綾瀬なら顔を見ただけで名前なんてすぐに出てくるんだろうな。
「怪しいものを持ってないか調べさせてもらう」
こちらのポケットの中に手を入れられたり足首に何か隠してないかをチェックされる。そして当然出てくるボールペンと先程の地図。そして
「......手書きの地図か。そしてこの紙はなんだ?白紙のようだが......何かを書き込むつもりだったのか?」
「特に深い理由はない。もし食料があったら何があったとか、どんな感じだったとかをメモしようとしていただけなんだ。返してくれ」
手を伸ばすが、素直に返してくれるはずもなく紙は回収されてしまった。
「何を狙っている。お前の一人の行動か」
「......それは言えない」
「なるほど。言えないということは後ろで糸を引いているヤツがいるということか。下っ端は大変そうだな綾小路」
ボールペンだけオレの足元に放り投げ、二人組はオレにこれ以上余計な行動をしないよう釘を刺した。
「もう一つ聞きたいことがある。キーカードを受け取ったリーダーは誰だ」
「素直に話すとでも思っているのか?」
「話せば報酬を渡す。それも10万20万という額だ」
「────クラスを金で売れと?」
「俺たちの言葉をどう受け止めるかはお前の自由だが、他の連中にも同じ話を持ちかける。そうなれば早い者勝ちだということは先に言っておくぞ」
「どうも信じられないな。金を渡すってどうやって?ここには携帯なんてないだろ」
「確かに今すぐは無理だ。必要なら念書を書いても構わない」
つまり契約を交わし、後日ポイントを振り込むということか。
「信頼できる人が取り合ってくれるのか?例えば葛城────」
その名前を口にした瞬間、男子の一人が突如形相を変える。
「何でそこで葛城の名前が出る」
「......Aクラスの代表は葛城だって噂を耳にした」
「笑わせるな。Aクラスの代表は坂柳だ。葛城なんかじゃない。もう行っていいぞ」
Aクラスの生徒たちは用はなくなったと言った様子で道を開ける。どうやら、少なくともこの二人は葛城の敵らしい。なら、こいつらは坂柳の命令で動いているのか?それとも指示を出すのは葛城なのか?それをはっきりさせる必要があるな。
皆と食べ物を探しにいった後、私は一人でCクラスのところに向かった。
「全然人いない......」
まだ何人か海で遊んでるけど、もうすぐ帰っちゃうと思う。
道具とかも片付けちゃってて、残ってるものはない。なんか寂しい。
「綾瀬か」
後ろから綾小路の声が聞こえた。
「調子はどうだ?」
「んー......今日はまだ全然」
「そうか。まあ人もたくさんいたしな」
「うん」
また後で島を回らないといけない。頑張らなきゃ。
「あれ?綾小路くんと綾瀬さんだ」
「お前たちも偵察か?」
今度は一之瀬と神崎だ。
「オレたちは食料を探す係なんだよ。適当に森を探索したら浜辺に出ただけだ」
「一之瀬たちは食べ物大丈夫?」
「ん?そうだねぇ......適度に見つけてはいるけど、やっぱりクラスメイト全員分の食事を3食揃えるってなったら大変かなぁ。そこら辺はポイントで何とかするけどね」
「そっか」
やっぱり皆大変なんだね
「うーん、それにしてもCクラスの人たち全然いないねー。リーダーを当ててみようかと思ってたけどこんなヒントがないんじゃ無理かな。そもそも他のクラスでも無理なんだけどさ」
「大人しく見送り、手堅く試験を送るのが良さそうだな」
「うんうん。私たちには地道な戦略が一番だよね」
私もリーダーを当てる方法なんてさっぱり。堀北たちは何か考えてるのかな。
「ちょっと小耳に挟んだんだが、Aクラスは葛城と坂柳のグループで対立してるのか?」
「仲が悪いって話は事実だね、結構激しくやりあってるみたい。それがどうしたの?」
「いや。堀北に時間があれば探ってこいって言われてただけだ。Aクラスを切り崩すチャンスはそこにあるとかどうだか。激しくやりあってると言っても、流石に試験中は手を組んでるよな?」
「組んでるっていうか、今回坂柳さんは試験を休んでるからね。葛城くん一人で頑張ってるみたいだよ?だから全部意見は葛城くんがまとめてるんじゃないかなぁ」
「へー......葛城って頭もいいんだ......」
「頭、も......?」
あれ......神崎が凄い見てくる......なんか変なこと言っちゃったかな。皆を纏めてる人って平田とかみたいに頭いいと思ってたんだけど......
「どうしたの?神崎くん」
「......いや、葛城の話だったな。葛城は頭のキレる男だ。坂柳が不在の状態であれば、その下の人間が反抗できる相手じゃない。仲間割れするような真似はしないだろう。するメリットもないからな」
「だけど坂柳さんについてる子たちは楽しくないだろうね。あの二人は両極端だから」
「両極端?」
「革新派と保守派?攻撃と防御?そんな感じで考え方が逆なんだよね。だからいつもぶつかり合ってるみたい」
「えーと......Aクラスって仲悪いの?」
「まあそう言うことになっちゃうかな。でも足並みが揃ったらAクラスも真価を発揮しそうで怖いかも」
Aクラスには葛城と坂柳って人が皆を纏めてる。でも二人は仲が悪くてその下にいる人たちも喧嘩をしてる。
せっかく同じクラスメイトなのに仲悪いってやだな......真鍋も龍園のことが嫌いって言ってたし......。
「一之瀬。そろそろ戻るべきだ」
「オレたちもそろそろ食料を探しに戻るよ。手ぶらで帰ったら怒られる」
「それじゃあ、お互い怪我には気をつけて頑張ろうね。くれぐれも無茶しないことっ」
「ばいばい」
一之瀬たちは自分たちのところに帰った。
「じゃあ、私はいくね」
「そうか。悪いな」
「ううん。全然いいよ」
私はまた、森の中に入って走る。
あんまり時間もないから少しペースをあげよう。
四日目の夜。私は堀北とテントの中に入った。今は二人きり。
テントの中には軽井沢たちが綾小路たちに内緒で買った枕とかがある。
「......ポイント、使っちゃっていいのかな......」
「もうどうしようもないわ。誰でも申請出来る以上止める手立てもないもの」
そう言って堀北はすぐに横になった。寝るには少し、早い時間。
「ねえ堀北......ちょっと疲れてる?」
「どうして?」
「どうしてかは分かんないけど、なんかそんな気がして......」
ここに来てからの堀北、ちょっと元気ない気がする。
「大丈夫よ。私のことは心配しなくていいわ」
堀北は身体を起こして、何ともなさそうにした。それを見てると、私の勘違いなんじゃないかって思っちゃう。
「......うん」
でも、きっと堀北は嘘をついてる。私の前ではいつも通りにしてるけど、それでもたまにふらついてるところとか、見えちゃうから。
「あなたは大丈夫なの?今日も森の中を歩いたんでしょう?」
「私は平気。全然疲れてないよ」
「そう......でもあまり無理はしないようにするのよ」
堀北だって。
そう言いたかったけど、言えなかった。堀北は最後まで頑張るって決めたんだ。それなら、私は堀北を止めない。
「今日も疲れたね~、あれ?二人とも先にいたの?」
櫛田たちがテントの中に入ってきた。佐倉も遅れてくる。
こっちのテントは私と堀北、佐倉の他に櫛田の友達とか、大人しそうな人が集まってる。後は伊吹も。
軽井沢とか篠原は反対のテント。
「お休みなさい」
人がいっぱいになると堀北は寝ちゃった。あんまり人と話したくないから。
「堀北さんも疲れちゃったのかな。綾瀬ちゃんは平気?」
「うん。全然平気だよ」
「凄いなぁ、私はもうヘトヘトだよ~。あ、みーちゃんは大丈夫?」
櫛田が
「う、うん......まだ大丈夫」
「......みーちゃん?」
「あっ、それは私のあだ名だよ。みんなそう呼んでくれるの。私の両親はどっちも中国人なんだけど、日本でのあだ名が気に入ってくれてるんだ。だから綾瀬さんもみーちゃんでいいよ......?」
「へー......」
名前ってそういうのもあるんだ。みーちゃん。うん、覚えた。
「でもみーちゃん、本当に大丈夫?無理しない方がいいよ?」
「わ......みーちゃんはどうしたの?」
「ちょっとね、具合が悪いんだよね?」
「う、うん」
みーちゃんは恥ずかしそうに顔を赤くしてた。
「そうなんだ......じゃあ明日はみーちゃん休んでて」
「あ......でも、まだ明日なら、動ける......よ」
「ううん、私がみーちゃんの分まで頑張るからいい。まだまだ食べ物見つけてくる。だから休んで。私、誰かが無理してるところなんて見たくない」
堀北やみーちゃんが動けないなら私が動けばいい。それに綾小路のお願いもあるから、私がいっぱい動く。
「......綾瀬さんって、平田くんみたい......」
「......?平田?」
私がそう聞くと、みーちゃんはまた顔が赤くなった。
「ご、ごめん!今の、忘れて......!」
みーちゃんは顔を隠すようにして身体を横にした。それを見て櫛田と他の友達も優しく笑ってた。
それから少しの時間皆と話してると、そろそろ寝る時間になった。
「もう寝よっか」
櫛田がそう言うと、皆も身体を横にする。私も同じようにそうした。
私は堀北の隣。堀北の顔が目の前あって、私と堀北は向き合ってる。邪魔になるかなって思ったけど、私は堀北に自分の身体を寄せた。
......暖かい。
私はいつも、何も考えたくないから寝てばっかりだった。でも、この学校に来てからそれは凄くもったいないことだったんだって気づいた。どうしても眠たくなっちゃうときはあるけど......
「あっ......」
私の背中に堀北の腕が回り込んで来て、その腕にそっと引き寄せられる。
「......お休みなさい」
消えるような小さい声。
私の声、なんだけど自信がないんだ。おかしいよね。自分でそう言ったはずなのに。
今日はよく眠れる。絶対そうだって思いながら、私は目を閉じた。