学校二日目、初日の授業ということもあって授業の大半は軽く方針を説明して終わった。
授業ともなれば少しはお堅くなると思っていたがそんなこともなく、先生たちは明るくフレンドリーなのに加え、寝ている生徒もいたが注意さえしようとしない。これが義務教育じゃなくなった高校生たちへの対応ということなんだろうか。
ちなみに須藤は殆どの授業で眠りこける大物ぶりを発揮したが、大物はもう1人いる。
それはオレの隣人。綾瀬心音である。
綾瀬も須藤と同じで殆どの授業で眠っていた。
最初は授業が始まったと同時に頭を机にくっ付けて動かないものだから何事かと思ったもんだ。腕がだらんと力なく垂れ下がっているためか見た目が軽くホラーである。
一応『勉強が苦手なのか?』と聞いたが返答は『分かんない』。あらかた予想通り。だがなぜこんな答えが返ってくるのかはこっちが分かんないと言いたいくらいだ。
昼休みとなり、生徒たちはそれぞれ顔見知りとなった人間同士で食堂へと向かった。
教室が騒がしくなったのを感知して綾瀬がピクッと反応する。そしてガバッと顔をあげ、大きなあくびをした。
「ふぁ.....」
「おはよう。よく眠ってたな」
「んー.......」
寝起きなために目はあまり開いておらず、声も絞り出したような声になっている。そして頭を机にくっつけていたからか前髪に新しい寝癖が追加されていた。
「昨日は徹夜か?」
「ううん、昨日は......帰ってから寝た......」
「それなのに授業中も寝るのか?よくそんなに眠れるな」
「......そうなの?一人のときはずっと寝てる、から全然足りないっ......よ」
伸びをする綾瀬。その姿も絵になる。
「もしかして一昨日もずっと寝てたのか?」
「うん......ずっと......」
1日中ずっと寝れるっていうのは逆に凄い。
あまりに寝すぎた状態だと脳の血管が広がりすぎて頭痛の原因となったり、長時間同じ体勢になるため筋肉が凝ってそれこそ疲れの原因となる。
「だらしないわね。そんな1日中何もせずにだらだら過ごすなんて怠惰もいいところよ」
「.....怠惰?よく分かんないけど、堀北は寝なくても平気......なの?」
「もちろん適切な睡眠は取るわ。でも1日中時間を無駄にするなんて冗談じゃない。私は日々自己研鑽を怠らないの。綾瀬さん。あなたが無駄にしている時間は決して安いものではないのよ」
「おー......堀北なんかかっこいい......」
軽く叱られてるのにも関わらず堀北にパチパチと拍手を贈る綾瀬。
「大体あなたは普段から覇気がなさすぎよ。もう高校生なんだからシャキッとしなさい。あとその寝癖も────」
「待て待て。お前はお母さんか」
説教が止まらない堀北にストップを入れる。
「時間の過ごし方なんて人それぞれだからいいだろ?それにボーッとしてたっていいじゃないか」
「あなたがそうやって甘やかしているから彼女は成長しないのよ」
「まだ出会って2日目なんだが......」
なんだか責任を押し付けられた気分だ。
綾瀬のように1日をだらだらと過ごす人間は珍しくないとオレは思う。人間は常に何かしらに縛られて生きているんだ。平日なんて1日の貴重な時間を学校や仕事に拘束されて疲れてしまう人が殆どなんだから別にだらだらすることは罪だと思わない。
むしろ堀北のように気合い入れて日々を過ごしている人間の方が少数派だろう。
「えーっと、これから食堂に行こうと思ってるんだけど、誰か一緒に行かない?」
クラスから半分ほどの生徒が姿を消していた教室に平田がそんな提案を投げ掛けた。
これはオレにとって大きなチャンスだ。なぜならオレにははっきりと友達と呼べる存在がいないからだ。
堀北はもちろん友達などではないし、綾瀬もまだ明確に友達というわけではない。
いかんせん2人の隣人は癖が強すぎるのだ。オレはもう少しこう、普通の男子高校生っぽい感じでいたい。
だからオレは平田の誘いを受けようと思う。食堂で改めてお互いの趣味や好きなものを語り合い、放課後にはカラオケなんかもしちゃって過ごす。
よし、今回はシミュレーションも完璧。さあ平田。オレはいつでもいけるぞ。頼む。オレを誘ってくれ......!
オレが念を送り続けた甲斐あってか平田がオレの視線に気づいた。
「えーっと、
「私もいくー!」
「私も私も!」
「あっ、でも───」
「早く行こ!平田くん!」
女子たちが平田を囲み連れ去ってしまう。ああ......平田が女子の波に飲まれてしまった......
せっかくのチャンスを不意にしてしまったオレはガクッと肩を落とした。
「どうやら誰かにご飯に誘ってもらいたかったようだけど悲惨ね。見てられないわ」
「お前だって似たようなものだろ」
「違うわ。私は1人の方が好きなの。友達が欲しくて仕方がないけど出来そうもない哀れな綾小路くんと一緒にしてほしくないわね」
「......綾小路って哀れなの?」
「うっ......!」
綾瀬の純粋な疑問がクリーンヒットする。オレはまたしても心に傷を負ってしまった。
「何か買ってきます......」
既にサンドイッチを買っていたらしい堀北とお菓子をポケットから取り出した綾瀬を横目にオレは一人悲しくコンビニへと向かった。
ものの数分で買い物を済ませたオレは、教室に入るために扉を開ける。
すると、そこにはなんともまあ素敵な光景が広かっているではありませんか。
オレの席だったところは別の女子が座っていた。その女子の名は櫛田。
櫛田はザ・美少女といった顔立ちで、しかも老婆に席を座らせてあげようとしたりみんなと仲良くなりたいと宣言したりととても健気で優しい子だ。まだ二日目にも関わらず男子からの人気は凄まじく、おまけに女子からも好かれている。平田と同等以上にクラスの中心人物といっていいだろう。
そんな櫛田と綾瀬、堀北の3人の美少女が並んでご飯を食べているなんてこれを見過ごせるやつは男子じゃない。一体どんな経緯でこんなことになったんだ?
「あれっ?綾小路くん?ごめんね!てっきり食堂に行ったかと思ってたよ~。席、勝手に使っちゃってごめんね?」
「い、いや別にいいけど......」
オレの席に櫛田が......いかんいかん。今物凄い気持ち悪いこと考えそうになった。消えろ煩悩。
だがあんな自己紹介だけで名前を覚えてくれていたことにオレは嬉しさを隠せそうになかった。
「今どけるからちょっと待っててね」
「オレはパンだから立って食べられる。そのまま使っててくれ」
櫛田は自分で作ったであろう弁当を広げていたので片付けさせるのは申し訳なかった。
......決して座っていてほしいということではない。
オレはさすがに櫛田の前に立つ度胸などなく、堀北の傍にいるのもなんか怖かったので綾瀬の席に寄り添う形で立ちながらなんとかその場にいさせてもらった。
というかこの2人は止めなかったのか。オレが一時的に席を離れただけだったってことを知っていただろうに。
「なんで櫛田はここに?」
「綾瀬さんと一緒にご飯が食べたかったんだ。あと堀北さんとも!」
「言っておくけれど私は1人で食べているの。勝手に同じ枠組みに入れないで」
「お前はまたすぐそういうこと言う......」
「あはは......堀北さんと仲良くなりたいんだけどずっとこんな感じで......」
「堀北。譲らない」
堀北は本当に頑固だ。自分しか信じていないからこんな性格なんだろうな。そんな堀北は話しかけるなオーラを全面に出しながらサンドイッチを食べている。
「櫛田。さっき、言ってたやつ」
「あ、そうだったね!」
綾瀬はお菓子を食べる手を止め、携帯を取り出した。
「......やり方分かんない」
「私に貸して?やってあげる!」
綾瀬の携帯を手に取った櫛田はポチポチと携帯を操作する。まさかこれは......
「はい!連絡先交換したよっ」
「おー......」
綾瀬に先を越された......!
連絡先の交換とは互いに互いを友達と認め合う一つの儀式のようなもの。だからこそオレも誰かと連絡先を交換したかった。でも未だにそれも成せず、オレの連絡先は0。そして堀北もどうせ0。そして綾瀬は......もう、違う。綾瀬も若干仲間だと思ってたから寂しさを感じてしまう。でも良く考えれば綾瀬と櫛田ってバスでもう既に仲良くなった仲だったな。
つまり真のボッチはオレと堀北だけだったんだ......悲しい......
「綾小路も、する?」
「え......?」
「連絡先、交換」
「そうだね!綾小路くんの連絡先も教えてよ!友達になろ?」
綾瀬────お前はオレの救世主だ。
初日で友達作りに失敗したオレはもう駄目だとどこか諦めていた。
だが綾瀬が救いの手を差しのべてくれた。きっかけを与えてくれた。
オレはもう、独りじゃない。オレには友達がいる。
「悪いな堀北......」
「は?何1人で感極まっているの?」
『本日、午後5時より、第一体育館にて部活動の説明会を開催いたします。部活動に興味のある生徒は、第一体育館の方に集合してください』
オレが綾瀬、櫛田と連絡先を交換している最中、スピーカーから可愛らしい女性の声とともにそんなアナウンスがされた。
部活動か。部活なんてやったことないけど興味はある。
「なあ、良ければ2人とも一緒に......」
「ごめんね!放課後は先約があるから......」
「学校終わったら......帰る......寝る......」
「......なあ堀北」
「良く私に声掛けられたわね......あなたのその図々しさには本当に呆れるわ」
だって仕方ないじゃないか。もう堀北しかいないんだから。
「桔梗ちゃーん。ちょっといいー?」
「あ、今行くよー!私、呼ばれたからいくね?またお話しよ!」
「櫛田。ばいばい」
友達に呼ばれた櫛田は弁当を片付けて去ってしまった。
まあそうだよな。連絡先を交換したからと言って櫛田の優先順位がオレに傾くわけではない。櫛田は友達がたくさんいるからオレなんてその中の1人でしかないんだ。
「それで堀北。先ほどの続きなんだが......」
「答えはノーよ。私以外を誘えばいいじゃない」
「誘う相手がいないから、こうして苦労しているんだろ」
「大体あなたは部活動に入るつもりなの?」
「あ、いや、どうだろう。あまり考えてない」
「入部はしないのに説明会にはいきたいなんて変な話ね。それとも部活動を口実に友達を作ろうと画策してるとか?」
「オレに残されたチャンスはもうあまり残っていない。だからこの部活動説明会は数少ないそのチャンスの一つなんだ」
「綾小路......なんか張り切ってるね......」
「結果はついてこないみたいだけれどね」
「うるさいっ」
今に見てろ。絶対に見返してやる。
「堀北は部活動とかやってなかったのか?」
「ええ。部活動『は』未経験よ」
隙を見せたな。さっそく仕返ししてやろうじゃないか。
「部活動『は』?部活以外は何か経験済みのか?やっぱりあんなことやこんなことか?」
「......ねえ、何か意図して発言してる?悪意のある質問に感じるのだけれど」
「悪意?一体何のことやら。オレが何を言いたかったのか懇切丁寧におしえてもらってもよろしいでしょうか」
ズムッと脇腹に予備動作の少ないチョップが突き刺さった。
「な、なにすんだよ!」
「綾小路くん。あなたにはこれまで散々注意してきたけれど、どうやら口で言っても治らないみたいだから。今後は粛清の意味を込めて、更正のために制裁を加えていこうと思うの」
「オレは反対だ!そんなことまかり通ってたまるかっ」
「それなら綾瀬さんにも聞きましょう?綾瀬さん。あなたも綾小路くんには困ってるわよね?」
「......困って、ないよ?」
「ふん、残念だったな。綾瀬はオレの味方なんだよ」
「でもね綾瀬さん。彼はいつもふざけた言動ばかりでこのままだと綾小路くんのためにならないの。でも綾小路くんは言っても聞かないから制裁で身体に教えてあげないといけないのよ」
「......えーと、制裁をすると綾小路は
「ええそうね。彼もそれでようやく反省しようと心がけてくれるわ」
あまりに横暴だ。暴力を振るうための建前をべらべらと語る堀北に綾瀬は少し考え込む仕草を見せた。
「────わかった」
「あ、綾瀬?......綾瀬さん?」
のそっと立ち上がり綾瀬はチョップの構えを取る。いつも何考えてるか分からない女子がオレを攻撃しようとしている。なんだろう、物凄く威圧感を感じる。
「待て、堀北の口車に乗せられるな。暴力では何も解決しないぞ!」
「んー......何も考えなくて楽、かな......大丈夫、綾小路を救ってあげる」
「流されちゃ駄目だ!しっかり考えるんだ!」
「でも力はそんなにいれないから大丈夫、だよ?」
「え?なんだ、それなら別に......ガッ!?」
手加減してくれると思ってすっかり警戒を解いたオレの頭に衝撃が走った。
振り下ろされた綾瀬の一撃。
脳が軽くシェイクされ、頭蓋骨にヒビでも入ったかのような衝撃。
予想外の痛みにオレは思わず頭を手で押さえる。
めっちゃ痛いんですけど。全然手加減してないんですけど。
「あなた......結構いい筋してるわね......」
「......そう?」
「ええ。でもあなたならもっと伸びるわ。たとえばもっと腰を入れるとかして......」
堀北によるチョップ指南が始まる。早急に阻止せねばオレの命が危うい。なぜならそのチョップはオレに向けられるものだからだ。
「あ、綾瀬は部活動とかに興味はないのか?ああ、でも寝る時間が減っちゃうか」
「うん。あと何やっていいかわかんない......」
「一応それを知るための説明会でもあるんだけどな」
「部活動......か、そうね......ねえ、放課後少しだけで構わない?付き合うの」
「え?いいのか?」
「少しだけなら、ね」
さっきまで断固拒否って感じだったのにどういう心境の変化だろうか。
もしかして友達の出来ないオレを気遣ってくれたのか?なんだ、結構良いところあるじゃないか。
「友達が出来ずに右往左往するあなたを見るのも、少し面白そうだしね」
前言撤回。やっぱり嫌なヤツだ。
「思ったより多いなぁ」
放課後、綾瀬は一足先に帰ってしまったが、オレと堀北は頃合いを見て体育館へとやって来た。
既に一年生と思われる生徒たちは体育館に集まっており、その数はざっと100人はいそうな気がする。
「どの部活動もレベルが高そうだな。全国クラスの選手も多いみたいだ。それに設備も豪勢と言うか、酸素カプセルなんてものもあるぞ」
それでも、この学校の外にあるスポーツの名門高には一歩及ばない様子を見ると、この学校の中の部活動は趣味的な色合いが強いみたいだ。
「何か綾瀬さんに合いそうな部活はないかしら......」
「おいおい、綾瀬に部活動なんて無理だろ」
「それは分からないわよ。やりもしないで無理と決めつけるには早すぎるわ」
「そんなこと言われても。あの綾瀬だぞ?」
「彼女の怠惰な生活を治すのに必要だと思うの。ついでに綾小路くんも真剣に部活動について考えてみれば?」
「入るにしても運動部はなしだな。トレーニングとかきつそうだし」
「実に事なかれ主義の綾小路くんらしい回答ね」
「それ事なかれ主義と関係あるのか?」
「一年生の皆さんお待たせしまたした。これより各部活動の代表者による入部説明会を始めます。私はこの説明会の司会を務めます、生徒会書記の橘といいます。よろしくお願いします」
橘という先輩の挨拶の下、舞台上に部の代表者が並んだ。屈強そうな柔道着を身に纏う先輩やら綺麗に着物を着こなした先輩まで様々だ。
「っ......!」
いよいよ説明会が始まろうとしたとき、堀北の身体が突然大きく跳ねた。顔を青くして舞台の方を見上げている。
「どうした?」
「............」
オレの呼び掛けに答えようとしない堀北。どうやらオレの声が届いていないらしい。視線を追うように舞台を見るが、そこに特別なものは見当たらない。
これ以上声を掛けるのはよそうと思い、オレも説明に耳を傾ける。
部活動の説明はどれも似たようなもので、部の魅力や未経験者でも歓迎といったオーソドックスかものばかりだ。
舞台から一人去り、二人去り、いよいよ最後の一人となった。
身長は170センチぐらい、細身の身体にさらりとした黒髪。シャープなメガネから知的さを覗かせている。
運動部のように特別なユニフォームではなく制服を身に纏っているため文化系の部活動だろうか。
最後ともなれば期待も高まる。皆一様にその生徒に視線を集める。
しかし、その生徒は一言も発しようとはしなかった。まるで綾瀬の自己紹介のときみたいに微動だにしない
一年生たちも何か異変を感じたのか、先ほどまで騒がしかった声も次第に無くなり、静寂がこの場を包む。
そんな静寂が30秒ほど続いた頃だろうか、ゆっくりと全体を見渡しながら壇上の先輩が演説を始めた。
「私は生徒会長を務めている堀北学と言います」
堀北?オレは未だにジッと壇上を見上げる隣の堀北を見る。偶然か?それとも......
「生徒会もまた、上級生の卒業に伴い、1年生の立候補者を募っています。特別立候補に資格は必要ありませんが、もしも生徒会への立候補を考えているのなら部活動への所属は避けていただくようにお願いします。生徒会と部活の掛け持ちは、原則受け付けていません」
口調こそ柔らかいものの、この生徒の放つ圧倒的な威圧感が新入生たちを黙らせてしまう。
瞬きすることすら許されない、そう思えてしまえる空気の中、場を支配する気配が、より一層重たいものへと変わっていく。
「それから───私たち生徒会は甘い考えによる立候補を望まない。そのような人間は当選はおろか、学校に汚点を残すことになるだろう。我が校の生徒会は学校の規律を変えるだけの権利と使命が期待されている。その事を理解できる者のみ歓迎しよう」
淀みなく演説すると、真っ直ぐに舞台を降りて体育館を出ていった。
しかし、オレたち一年生は一言も発することが出来ず、ただただ立ち尽くしていた。
「皆さまお疲れ様でした。説明会は以上になります。これより入部の受付を開始いたします。また、入部の受付は4月いっぱいまで行っていますので、入部を希望される方は後日申し込み用紙を希望する部にまでご持参ください」
司会ののんびりした声のおかげで、張りつめた空気は弛緩したものへと変わっていく。
「.........」
「堀北。終わったぞ。おい、どうしたんだよ」
相変わらず堀北は動かないまま呆然としている。
「よう綾小路。お前も来てたんだな」
どうしたものかと考えていると声をかけられた。須藤だ。クラスメイトの池、山内も一緒だった。
「それで、お前も部活入るのか?」
「いや、オレはただの見学。須藤は......ああ、バスケか?」
「おう。俺は小学生のときからバスケ一筋だからな。ここでもバスケだ」
確か綾瀬にバスケを教えようとしてたっけ。それならこのしっかりした身体つきも納得だ。
「二人は?」
「俺たちは楽しそうだから来たってのもあるけど、一番の目的は運命的な出会いを求めてだな。あー彼女ほしい~!」
そう答えたのは池寛治。好きなものは女の子で、嫌いなものはイケメンと自己紹介した生徒だ。池にとっては学校生活で最優先すべきは彼女の存在らしい。
「俺はなんか部活動入ろっかなと思ってたけどやっぱいいや。高校では遊んでたいし」
次に答えたのは山内春樹。小学生の時は卓球で全国。中学時代では野球部でエース。だけどインターハイで怪我をしてリハビリ中らしい。
......そんなのはもちろん山内の受け狙いのジョークだろう。そもそもインターハイは高校の大会だ。お調子者といった印象の生徒である。
「あ、そうそう。昨日男子用のグループチャット作ったんだよ。お前もやらない?」
「え、オレもいいのか?」
「当たり前だろー。俺たちはクラスメイトなんだからさ」
おぉ......ついに友達ができるきっかけを手に入れたぞ......!しかも男の友達となるといよいよ普通の男子高校生っぽい感じじゃないか。
オレは喜んで携帯を取り出したところ、堀北が人混みに消えていくのが見えた。
「どうしたー?」
「いや......なんでもない。じゃあ交換してもいいか?」
こうしてオレは池たち全員と連絡先を交換できた。これでオレの連絡先に綾瀬と櫛田も含めて5人もの名前が登録されたことになる。幸先が良いな。
堀北のことは少し気がかりだったが、あいつの行動を邪魔する権利などないので後を追うことはしなかった。