ちょっと先の展開について行けなかったんですが、ようやく自信を取り戻したので活動再開します。
こんな朝早くに起きているのはいつぶりだろう。
肌寒い風が頬を撫でる早朝の船のデッキ。周りには自分と、あと一人。
「私はあなたに強さも弱さも必要のない世界に行って欲しかった」
「そこは天国?それとも地獄?」
「分からない。私は天国も地獄もよく知らないから」
それは実際に行ってみないと、どちらかなんて分からない。
「綾瀬さんは私を守ってくれる?」
「うん。それでこそ、救済になる」
きっとそれは、歪んでいる。
「じゃあ一つ約束して」
「いいよ」
「私と────」
きっとこれは、契約。
壊れたもの同士による、互いの存在価値を守るための契約。
いよいよ五回目の話し合いだ。試験もそろそろ終盤。攻略法も見えてきた。だがそのためにも必要なものがある。それは軽井沢の協力だ。
だが昨日の出来事で少々どうなってくるか分からなくなってきたな。一応昨日の出来事を捉えた写真はある。これはいずれ真鍋に送り、脅しとして使うつもりだが、オレはまだ送らないことにした。一度真鍋たちと軽井沢の様子を確かめたい。
軽井沢は今どんな精神状態でこの試験会場へ向かっているのだろうか。
いつも通り指定の場所につくと、オレ以外全員集まっていることが分かる。終盤に差し掛かっていることもあって焦りを感じ始めている生徒も少なくないだろう。
そして気になっていた軽井沢は、一人静かに椅子に座っていた。気になったのは常に隣をキープしていた町田のところにいないこと。
「あれ~?軽井沢さん今日は一人ぼっちでどうしたの~?」
「............」
そのことに気づいた真鍋たちはニヤニヤとしながら軽井沢に近づいていった。昨日のこともあってか軽井沢をかなり下に見ていることだろう。
何も反応を示さない軽井沢。それを自分達に何も言い返すことが出来ないのだと判断した真鍋たちはより強気になって軽井沢に詰め寄る。
「あれ?ちょっと暗いね?」
「何かあったのかなぁ?」
「......」
軽井沢は一度真鍋を見た後、特に反応することもなく、携帯を取り出して弄り始めた。
「少しは反応してくれないとつまんないなぁ。ねぇ?」
無視されたことへの苛立ちを隠そうともせずに真鍋が軽井沢の肩を軽く押した。叩いたようにも見えなくはないが、なんとでも言い訳できる範囲のものだ。
「ちょっとちょっと!喧嘩は駄目だよ!」
たまらず一之瀬が仲介に入るが、もちろんそれぐらいでは止まらない。
「なんとか言いなさいよ」
「────うるさいから静かにして」
軽井沢がようやく口を開いたが、その声は冷たく、静かなものだった。
「は?何その生意気な態度......」
空気が静まる。やっと顔を上げた軽井沢はジッと真鍋を見つめた。いつもの軽井沢とは違う、相手を観測するような視線。
「待て。こんなところで騒ぎなんて起こしたらどうなるか分かったものじゃないぞ」
介入してきた町田はカメラの方向にチラッと視線を向けながらそう言った。
確かに揉め事なんて起こしたら何かしらの処罰があってもおかしくない。さすがAクラス。こう言われてしまったらさすがに真鍋たちも引かざるを得ない。
「……はいはい。分かったよ」
「......」
諦めて引き返す眞鍋たちを軽井沢は冷たく一瞥した。
「はいはーい!そろそろ試験も始まるよ!」
一触即発の空気だったこの場を払拭するように一之瀬が手をパンパンと叩く。
その後、試験のアナウンスと共に試験は始まったが、結局トランプをしたりするだけで兎グループ自体の進展は特にない。
「くそ......こんな調子で本当に大丈夫なのか......?」
幸村はこの現状に焦りを感じている。有効策がなければ何も出来ない。
次がいよいよ最後。ダメ元で軽井沢と話してみるか、それとも綾瀬を介して何か策を講じてみるか。
試験も終わり、退出していくメンバーに続こうとしたところ、幸村から声をかけられた。
「綾小路。少し試験のことで話があるんだが、時間はあるか?」
「あー、ごめん綾小路くん。ちょっと付き合ってくんない?」
幸村と同時に軽井沢からも声をかけられた。これは珍しい。
「軽井沢......それは大事な話なのか?」
「まぁね。私も試験のことで綾小路くんに相談したいことがあるからさ」
「......お前が?」
これは意外。幸村も同じ感想を抱いたようで、少し驚いた顔をしている。
「幸村くんは同じ部屋だからいつでも話せるでしょ?でもあたしはそうはいかないから、ここは譲ってくんない?」
「......まぁ、そこまで言うなら仕方ない」
確かに連絡先も知らない相手同士で相談するのは面倒だ。頭の良い幸村もそのことは分かっているので、ここは身を退いた。
そして残されたオレと軽井沢。
軽井沢はいつものクラスでの立ち振る舞いとは違う、どこか冷たい雰囲気を纏って立っている。
「試験の相談って何だ?」
「兎グループの優待者ってさ、誰だと思う?」
これはどう返答すべきだろうか。
いつもなら何も分からない無能を演じるところだが、軽井沢の協力を得るためにその選択は正しいのだろうか。
オレにはもう優待者の目星がついた。法則ももう分かっている。
「────あたしが優待者だよ」
......まさかの軽井沢からのカミングアウト。これは意外だ。軽井沢は絶対自分から言わないと思っていた。
「驚かないんだ。もしかしてもう分かってた?」
「いや、表情筋が人よりないから顔に出ていないだけで、これでも結構驚いている。何故オレに教えてくれたんだ?」
「綾瀬さんが綾小路くんって皆が思ってるよりも頭良いって教えてくれたんだ。綾小路くんに相談すれば多分この試験も乗り越えられる、だってさ。あんた信用されてんだね」
「綾瀬が?」
綾瀬からの情報か。まいったな。出来ればあまり公言して欲しくなかった。
「綾瀬さんを怒らないでよね。綾瀬さんはあたしを心配して教えてくれたんだから」
あの後、二人の間にそんなことを相談するような友情でも芽生えたとでも言うのか?
まさか、とてもそんな感じではなかったが......。
「お前らは無人島試験のときに喧嘩してたんじゃないのか?」
「綾瀬さんの連絡先教えて貰って少し話したんだよね。それで仲直り、とは少し違うかもしれないけど、私と綾瀬さんは約束をした。契約、とも言うかもね」
「契約?」
「そう。もしかしたら悪魔の契約ってやつ?」
綾瀬が契約.....申し訳ないが綾瀬にまともな契約を結べるとは思えない。
「しかし綾瀬に聞いただけで何故オレに相談したんだ?お前はオレをかなり下に見てると思っていたんだが」
「実際そうだったし、今でもあんたのことよくわかってない。だけど、綾瀬さんと親しい人って大体凄い人ばっかじゃん」
オレじゃなくて綾瀬を信じたわけか。
まぁ軽井沢の言うことと分かる。
「オレは綾瀬と席が隣なだけだ」
「そう。どちらにせよあたしにはこの試験で勝つ方法なんて分からないから結局誰かに頼るしかない。まぁ別に黙ってれば優待者のあたしはポイント貰えそうだから本当は言わなくてもよかったんだけどさ」
「いや、それじゃ駄目だ」
もし法則を見つけたクラスがいれば裏切られる。それに今はクラスポイントが欲しい。それなら優待者である軽井沢を利用して誰かに間違った裏切りをさせ、結果4を狙う必要がある。
「じゃああんたに任せる」
協力してくれるならこちらとしても助かりはするんだが......
「なぁ。お前に何があった?」
「どういう意味?」
「そうだな......色々聞きたいが、まずは真鍋だ。お前は真鍋に怯えていたんじゃないか」
「そういうの、分かるんだ」
普段のオレなら適当に誤魔化すところだが、今後軽井沢とのパイプを繋げるためにもそれはなしだ。
「なんで怯えていただろうね。綾瀬さんに比べたら真鍋なんて全然怖くない。そう思えるようになった」
綾瀬と真鍋では比べるまでもない。
「綾瀬さんはあたしが会ってきた人たちの中で一番怖い人だった。でも、同時に────」
そこまで言いかけて、軽井沢は口をつぐむ。
「軽井沢。お前は大丈夫なんだな?」
「何が?」
「今後、自分の身を守ることが出来るのか。そう聞いている」
軽井沢はオレの質問に対して目を丸くした。そして観念したかのように小さく笑った。
「......なんだ。あの後、平田くんに聞いたの?」
オレは平田と軽井沢が話し合いをしている場に立ち会ったことがある。軽井沢が真鍋に仕返しがしたいと頼んだが、平田に断れてしまい、そのときの軽井沢はその場を離れた。
そこでオレは軽井沢と平田の関係は嘘だったこと、そして軽井沢恵の本質を見た。
軽井沢は誰かに寄生することで自分の身を守るために必死だった。
「お前は今まで平田に守ってもらっていた。そして今回の兎グループでは町田に。だがもうお前にはもう必要なくなったのか?」
「......さぁね」
綾瀬は軽井沢の寄生対象にはならなかったのだろうか。条件的には充分だと思うんだが。
「軽井沢。オレに協力してくれないか」
「それって試験のこと?さっきので分かんなかった?あたしはあんたに協力するけど」
「試験もそうだが、今後のことについて協力して欲しいんだ」
「......今後?」
「オレはDクラスをAクラスに上げなければならない。そのためにもお前が必要なんだ」
話してみて分かった。軽井沢はまだ死んでいない。
オレはてっきり綾瀬にもう心を折られたものだと思っていたが、軽井沢恵は思っていた以上にタフだ。それなら問題ない。
「ちょっと待ってよ。どうしてあたしがそこまであんたに協力しなきゃいけないわけ?」
「お前はもっと綾瀬のことを知りたいだろう。だからオレは綾瀬について知ってることを全て話す」
オレは携帯を取り出し、録音していた音声を流す。
『大丈夫。私が救済してあげる』
これは佐倉のストーカーに対して綾瀬が行ったことを録音したもの。
「それは......何......?」
「知りたければオレに協力してくれ」
「協力って......!あたしは......何をすればいいの......?」
「綾瀬を探ってくれ。もう時間がないから今回は無理だが、この試験で綾瀬が何かをやろうとしているかもしれない。そうなったときに事前に把握しておきたいんだ。そのために女子のネットワークが必要になる」
もちろん綾瀬が何かをしようとしているかもしれないとは嘘だ。正確にはそんなことは知らない。
オレは軽井沢の女子を纏める力が欲しい。だから綾瀬をダシにしてその力を使わせて貰う。
「......正直まだよく分かってないんだけどさ、一つ聞いてもいい?」
「なんだ?」
「理想郷って本当にあると思う?」
オレはその質問に対して間髪を入れずにこう答えた。
「────そんなものはない」
綾瀬と軽井沢の話を聞いてずっと頭に思い浮かんでいたとある実験がある。
『UNIVERSE 25』。
それはネズミたちに天敵もおらず、水も食料も絶えることなく与えられるまさに理想郷とも言える環境でネズミたちの社会的行動を観測した『楽園実験』とも呼ばれる有名な実験だ。
先に結論だけ述べよう。
この理想郷は歪な社会構造を生成し────地獄と化した。
本来なら天敵から身を守るため、餌を集めるため、とにかく生存のためにネズミたちは各々役目を果たす。だが楽園ではそれはない。
自然の世界では必然的に弱者は淘汰されていくものだ。しかし、この楽園ではそれもない。そんな環境を与えられたなら人間なら堕落していくのだが、これは人間に限った話じゃない。
堕落は社会構造の歪みを引き起こす。例を挙げればキリがない。
最終的には自らの力で生き残る力を失ったネズミたちは繁殖することも忘れ、絶滅した。
確かにこれはあくまでネズミを用いた実験。人間社会に当て嵌めるとまた違うのかもしれない。しかし、それでもオレは結論付ける。
理想郷なんてものは、まやかしである。
「......そう。分かった。とりあえずあたしもあんたも綾瀬さんのことを知るために動くってことでいいのよね?」
「まぁ、そうだな」
「あんたに協力する。あたしは────何をすればいいの?」
これは契約。
互いに綾瀬を知るためという名目で結んだ、協力関係の契約だ。
どこか異質な空気が纏わり付いている。そう感じるのは私だけだろうか。
鼠グループ5回目の話し合い。
池くんや柴田くんは能天気に盛り上がっているが、私は異変を感じ取っていた。
その異変とは綾瀬さん、椎名さんがまだ一言も発していないこと、そして橋本くんも会話には参加すれどいつもより口数が少なく、三人とも試験に集中出来ていないという感じ。
綾瀬さんと椎名さんは積極的に喋るタイプではない。それでも一言も喋らないなんてことはなかった。
綾瀬さんは静かに何もないところをじっと見つめ、橋本くんは時折綾瀬さんを鋭い視線で見つめては視線を逸らす。そして椎名さんはどこかつまらなさそうに天井を見つめていた。
何だか嫌な予感がするのは私だけなんだろうか。
それぞれが何を見ているのかは分からない。その視線の先に何があるのだろう。
「今日は一言も喋らないじゃないか、綾瀬」
ここでいよいよ橋本くんが綾瀬さんに声を掛けた。
「今ね、色々考え事をしてた」
「考え事ねぇ......綾瀬も一応試験をどうするか考えてるんだな」
少し失礼だけど、橋本くんは感心したように綾瀬さんを見た。
「でもね、そのたびに頭が痛くなって、結局考えるのをやめちゃうの。それとね、考えてたのは試験に関係ないこと」
「なんだ。随分呑気だな。試験はもう終盤だぜ?手を打っとかなくていいのか?」
「大丈夫。それはもう────殆ど終わったから」
「え......?」
もう......殆ど終わった......?
それはこの試験に向けて既に手を打ったということ。
綾瀬さんの発言はさすがに見過ごせるものじゃなく、鼠グループの生徒たちは全員綾瀬さんを見た。
「綾瀬。お前にはこの試験をどう終わらせるか見えてるのか」
「そう。でもそのためには試験が最後まで続いてないといけない。もし話し合いを最後まで続けてくれるなら、私はこのグループを絶対に結果1にしてあげる」
結果1。もし最後まで誰も裏切らず、最後の解答で見事全員が優待者を当てることが出来れば全員に50万ポイント。そして優待者である綾瀬さんは100万ポイント。
いつどこでも裏切れるこの試験ではあまりにも難しい条件。それを、絶対にとまで言い切った綾瀬さん。
「結果1、か。確かに結果1で得られるプライベートポイントは破格だ。だが、クラスポイントはない。この中にだってクラスポイントの方が欲しいやつだっているんじゃないか?」
「本当にそう?ねぇ、弥彦はどう思う?」
名指しされた戸塚くんは苦虫をかみつぶしたような顔をした。
「なぜ俺に聞く......まぁ、Aクラスは当然クラスポイントなど必要ない。そのことは最初に話した通りだ」
Aクラスは他クラスにまだポイントを引き離している。ここでリスクを負ってマイナスになってしまう方がまずい。
「じゃあ弥彦。Bクラスは?」
「......だからなんで俺なんだ!」
「あなたならそういうの分かると思って......分かんないなら違う人に聞くけど」
「なっ!?ま、待て!そうだな......Bクラスなら確かにリスクを負ってでも俺たちに食らいつこうとするかもしれない。だが、Bクラスは仲良し集団と聞いている。果たしてそんなやつらにリスクを負えるとは思えんな」
「それは分かんないぜ?俺たちだってどこかで背負わなきゃいけないリスクがあるってのは理解してるからな」
「フン。だったら裏切ってみて欲しいものだがな。当てずっぽうで解答なんてしたら目も当てられないが」
裏切りが失敗したらクラスポイントがマイナス50ポイント。確かにこれは大きなリスク。
「ありがとう。じゃあCクラスは?」
「ふむ......Cクラスは......」
なぜか戸塚くんが解説役をしているこの状況もなかなかにシュールだ。
「Cクラスについては私が答えましょう」
ここでやっと椎名さんが口を開いた。
正直Cクラスは一番読めない。
「まず、この鼠グループに限り────私たちCクラスは裏切りを絶対にしません」
「......なに!?」
うそ......まさかの絶対に裏切らない宣言......?
Cクラスは無人島試験で0ポイント。それなら遅れを取り戻すために多少リスクを置かしてでもクラスポイントを取りに来てもいい立場。
もちろんブラフかもしれないけど......なんのために?
「あー、裏切る裏切らないは確かに自由だからあまりとやかく言いたくないんだが、そこまではっきり言われると気になるから聞かせてくれ。それはお前さんたちで決めたのか?それとも......龍園が決めたのか?」
「龍園くんです」
「なるほどな」
「とても信用出来ないが......龍園はなぜそんなことを?」
「それはきっと、最後の話し合いで分かります」
最後の話し合い......これはまた一波乱起きそうな予感。
「おっと、そう言えばDクラスはどうなんだ?Dクラスこそクラスポイントが欲しいだろ?」
「いや、まぁクラスポイントは欲しいけど......どっちかって言うと50万ポイントの方が......魅力的だよなぁ」
「そうそう。私たちは日々の暮らしも大変なんだから」
4月に0ポイントからスタートした私たちDクラスからすれば、先を見据えたクラスポイントよりも目の前にぶら下がっているプライベートポイントの方が欲しい人が殆どだろうな。Aクラスなんて諦めてるって人も少なくない。
「綾瀬は?」
「私はね、皆に幸せになって欲しいの」
「なんだそりゃ。Aクラスは諦めたのか?」
「ううん。Aクラスは目指す。だけどね、私にはクラスポイントを取れる方法が分からないの。それなら、皆がポイント貰えた方がいいかなって。その方が、簡単だった」
「簡単?」
「クラスポイントを狙いにいくよりも、結果1にする方が簡単」
「まじかよ!?綾瀬ちゃんそれってどんな方法......?」
「それは最後に話す。今はまだ、秘密」
「えー!?ちょー気になる!もし50万ポイントなんて貰えたら......」
期待が高まりそうな発言にプライベートポイントが欲しい生徒たちはやや興奮気味だ。
綾瀬さんは一体何をする気なんだろう......。結果1はかなり難易度が高いはずなんだけど、綾瀬さんの発言によってそれが実現可能かもしれないと皆が思い始めている。まだ具体的な案も出していないというのに。
毎度思うけど、綾瀬さんが話す度に誰かしらが注目する。それはもう可愛いからとかそういう次元じゃない。この子には人を吸い寄せる力がある。私はそれが不気味に思えて仕方ないのだ。
とにかく、Aクラスは葛城くんの作戦通りに全員が遂行するなら誰も裏切らない。Bクラスは裏切られる人がいれば裏切るけど果たして大きなリスクを背負えるかどうか。そしてCクラスは絶対に裏切らない。
全部言葉通りに受け取るとこうなってくるけど、どうなるかな。
とりあえずこの様子だと最後の話し合いまでは誰も裏切らなさそう。問題はその話し合いの最中。せめてクラスポイントがマイナスだけにはならないで欲しい。
最後の話し合いに向けてオレは堀北、綾瀬と作戦会議に出向く。
「次で試験も終わりね。綾小路くんの方はどうなの?」
「特に進展なしだ」
「そう。綾瀬さんは?」
「んー......」
こういった試験での綾瀬は適性があるのかないのかいまいち分からない。
綾瀬のグループである鼠グループの優待者は綾瀬。何事もなければ良いが、綾瀬は何かをやらかしそうでハラハラする。
「一応、確認してもいい?」
「えぇ。いいわよ」
「この試験、私は鈴音の役に立てないと思う。それどころか、足を引っ張るかも」
「気にしないでいいわ。もしあなたがマイナスを背負ったとしても私が取り返す。それに今回の試験は駄目だったとしてもあなたの身体能力が活かせる試験はきっとどこかであると思うの。無人島試験のようにね」
「じゃあ今回は私も出来るだけのことをしてみる」
「えぇ、そうしてちょうだい」
......出来るだけのこと?綾瀬に出来ることとは何だ?
「綾瀬。何をする気だ」
「えーと......」
まさか軽井沢に適当に言ったことが当たっていたとは驚きだが、ここは知っておきたい。
オレにはどうしても未だに引っかかることがある。
『俺たちはお前らに負けたんじゃねぇ。あの人に負けたんだよ』
石崎がオレたちに追い詰められたときに放った発言。
あの件には恐らく綾瀬が関わっている。オレたちが介入せずとも多分石崎は訴えを取り下げた。そして綾瀬が訴えを取り下げるほどの何かを石崎にさせた。それが一向に掴めない。予想するなら石崎の上にいる龍園と綾瀬の間で何かがあったんじゃないか。
またこれと近い何かが起きようとしているのではないかと妙な胸騒ぎがする。
「待ちなさい。今回は綾瀬さんの好きにやらせましょう」
「だが......」
「彼女が自分で考えて行動するのよ。私たちが口出しすべきではないわ」
まだまだ堀北も甘いな。その勝手な行動でクラスポイントを下げられてはいずれ取り返しがつかなくなる。しかし、こうなってしまってはもう何も言えない。仕方ない。今回は綾瀬を信じるしかないか。
最後の話し合いまではまだ時間がある。
よかった。誰も裏切らない。
私は、待ち合わせの場所に向かった。
たくさんある部屋の内の一つ。
「ごめんね、待った?」
「全然待ってませんよ!ね、龍園さん」
「よぉ心音。それじゃあ話し合いを始めようぜ?お互いのビジネスのために、な」
暇なときに話は書いていたので投稿ペースは大丈夫だと思います......