というのも、これの次の話が出場する競技を決める回なのですが、悩んでることがあるのでちょっとアンケートにご協力いただきたいです。
奇妙なメンバーで突如始まったお茶会。
綾瀬さんが坂柳さんとカフェに行くと言い出したのでさすがに一人では行かせられないと思い、付いてきてしまったわ。
坂柳有栖。彼女の実力は未知数。
夏休みの特別試験では彼女は参加していなった。それなのにも関わらず体育館に集まったときに坂柳さんの周りには葛城くんの周りよりも人がいたのがよく分かった。
今となっては葛城くん以上のリーダーとして君臨していると言ってもいい。
彼女は一体何者なの......?
「────堀北鈴音さん」
「......なに、かしら」
「お飲み物、いかがなさいますか?」
私を見つめて坂柳さんはクスッと小さく笑う。警戒しているのは分かったうえで敢えて余裕を見せつけているようね。
上等よ。こちらとしても相手がAクラスだからと言って萎縮する必要はない。
「私はオレンジジュースよ」
「おや、意外ですね」
「子どもっぽいとでも言いたいのかしら?」
「いいえ、そんなつもりはありません。ただどうしてもイメージ通りではないとも思ってしまいますね」
「私は分かるよ鈴音。オレンジジュースって美味しいもんね」
......綾瀬さんに賛同されると少し複雑ね。そんな綾瀬さんは紅茶を頼んでいた。坂柳さんも紅茶、神室さんはココア。
程なくして注文していたものがテーブルに並べられる。綾瀬さんは自分の紅茶を食い入るように眺めていた。
「これが紅茶......お茶って緑のしかないと思ってた......」
「緑茶と紅茶はどちらも茶葉を使いますが、製造の過程が違います。主に違うのは『酸化発酵』させるかさせないか、でしょうね」
「......何それ?」
茶葉には酸化酵素というものが含まれている。
例えばリンゴの皮を剥いた後に果肉がしばらく空気にさらされると、リンゴの中にある物質が褐色に変化するのと同じ。
この働きを利用して製造するのが紅茶。利用せずに製造するのが緑茶。同じ茶葉でも製造方法を変えるだけで多種多様のお茶になる。
「後で教えてあげるわ。とりあえず一口飲んでみなさい」
私がそう言うと、綾瀬さんはカップを持ち上げ紅茶を一口飲む。そしてすぐに嫌そうな顔をしてカップを下ろした。
「......うぇ、美味しくない......」
「それなら私のオレンジジュースと交換しましょう」
「いいの?ありがとう」
紅茶には独特の苦みや渋みがある。普段から甘い物をよく好む綾瀬さんの舌には合わないでしょうね。
どうせそうなると思っていたのですぐに自分の飲み物と綾瀬さんの飲み物を交換する。ふと、そんな私たちの様子を見ていた神室さんと目が合った。
「なんか保護者みたいだね、あんた」
「正直に言うとその自覚はあるわね」
「へぇ、大変だね」
「別に今はそこまで大変だとは思わないわ」
最初は骨が折れると思っていたけれど、私もすっかり慣れてしまったのかもしれないわね。
「それよりも体育祭について聞いてもいいかしら」
「体育祭について?何を聞くというのですか?」
「何って......この体育祭で勝つ方法よ。そのためにあなたは綾瀬さんをここへ呼んだんじゃないの?」
「いいえ?綾瀬さんとは純粋に交流をしたかっただけですよ。今回の方針は全て葛城くんに任せてありますので、私が出来ることはこうして綾瀬さんや堀北さんとお話するぐらいなものですよ」
「......それならあなたは何もする気はないの?」
「えぇ。
......彼女は本気で言っているのかしら。
確かに味方と言えども参加順を示し合わすなんてことは出来ない。団体戦ですら互いを100%信頼出来ない以上協力なんて望めはしないでしょう。私だってそんなつもりはない。
だからこそAクラスのリーダーとも呼ばれる彼女の考えを聞いてみたかった。
現状Aクラスはリードこそ保っているものの、特別試験では活躍を見せていない。
夏休みに行われた特別試験は葛城くんが率いて来たのでしょうけど、葛城くんは龍園くんと相性が悪い。だからこそ今回の体育祭で坂柳さんの力を発揮するべきではないのだろうか。
......別のクラスのことを心配しても時間の無駄ね。Aクラスがもしまた負けてくれるならむしろ助かるわ。
「ちなみに堀北さんはどうお考えなのですか?」
「何もする気がないあなたに話しても意味がないと思うのだけど」
「単純な興味です。ここで聞いたことは誰にも話すつもりはないのでご安心を。真澄さんも大丈夫ですね?」
「そりゃあ話す気はないけど、堀北がそれを信じるの?」
本来なら私に話す得はない。だけど私も話さなければフェアではないわね。
「......私も坂柳さんの考えを聞こうとした以上話すわ。ただ情けない話だけど私もまだ勝ち方を見つけられていない」
「じゃあ鈴音はどうしたら勝てるって思うの?」
「これまでの特別試験のように確実に勝てる何か、それを見つけることが勝ちに繋がるんじゃないかしら」
今まで私は正攻法で戦おうとし、敗北してきた。
だからこそこの体育祭では相手に出し抜かれないような強力な一手が欲しい。
「なるほど。それでは綾瀬さんはどうお考えですか?」
「......え?私?」
「はい。あなたの考えをお聞かせ下さい」
「んー......私は難しいこと考えられないからあんまり良いこと言えないけど......皆で頑張って勝つ......とか?」
それはまさしく正攻法と呼ばれるもの。Dクラス全員に信頼出来る身体能力があればそう言えるけど、それは現実的じゃない。
「お二人の考えはよく分かりました。それでは楽しいお茶会を再開しましょう」
「ちょっと待ちなさい。あなた......本気で何も考えてないの......?」
「考えてもどうしようもありませんよ。この体育祭では私は力になれませんから」
そう言って坂柳さんは紅茶を一口含んだ後、綾瀬さんと談笑を始める。
私はただただ困惑することしか出来なかった。
これがAクラスのリーダー......はっきり言って拍子抜けね。
いくら運動が出来ないと言っても策を練ることは出来るはず。でも彼女はそれを放棄している。そんな調子でこれから勝つことが出来るのかしら。
案外AクラスがBクラスに陥落する日も近いかもしれないわね。
綾瀬、堀北と別れた後、私と坂柳は寮への帰り道を歩いていた。
「綾瀬さんはどうでしたか?真澄さん」
「どうでしたかって......なんか思ってたのとは違うなって感じ。橋本や戸塚が言ってたようなヤツとは思えなかった」
綾瀬心音。Dクラスで一番目立つ女子生徒。
勉強が出来ない代わりに身体能力に特化した生徒だとは噂で聞いていた。
まるで坂柳と能力を反転させたような存在。
橋本は前回の試験で綾瀬と同じグループ。そのときのことを興奮混じりで語っていた。綾瀬をAクラスに引き込むべきだとまで言っていたっけ。
戸塚も教室で葛城に綾瀬のことを危険視するように伝えていたのを覚えている。
だけどいざ近くで話してみるとそんなものは微塵も感じなかった。なんかボーッとしてるし、子供っぽくて拍子抜けだった。どっちかって言うと人畜無害にしか見えなかったけど。
「綾瀬さんはまるで純真無垢な子供のようですね」
私は心の中で『子供っぽいのはあんたもだけどね』とツッコんだ。
「ただ、力を持った子供ほど恐ろしい存在はいません。今後彼女の動向には注意を払う必要があります」
「......随分綾瀬のこと警戒するのね。てっきりあんたのことだから下に見てると思ってた」
「真澄さんもまだまだですね。特に
イラッとする言い方だけどいちいち坂柳にイラついていたらキリがないからすぐに頭を切り替える。
「それよりも堀北は?アイツこそDクラスの参謀って感じがするけど」
「フフ、彼女の底は計れました。少なくとも今は警戒するまでもありません。『抜け穴』に拘っているようでは彼女に勝ち目はありませんね」
「そう?確実に勝てる何かを見つけるってのは私もそうするべきだと思ったけど。むしろあんたもそっち側じゃない?」
「私としては圧倒的な力でねじ伏せる方が好みですよ。ただ今回の体育祭では正攻法よりも『抜け穴』を探して勝つ方が楽ではありますね」
「それならどうして堀北に勝ち目がないの?」
「まだ勝つ方法が見えていないようでは遅すぎるからです。もう既に龍園くんは動き始めている。このままでは堀北さんもそうですが、葛城くんも負けてしまうでしょうね」
自分のクラスだっていうのに他人事。負ける事なんて二の次って感じね。
まったく、こいつは何を考えてるのかさっぱり分からない。
一体坂柳には何が見えているんだろうか。
四方綱引きに綾瀬が参加することは確定なのですが、男女混合かそうじゃないかで描写もだいぶ変わってしまいます。
原作では明確な描写がなかったのでぜひご協力ください......!
四方綱引きは男女混合だと思いますか?
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はい
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いいえ