それと一つ謝罪を。各競技で最下位取ったときのペナルティを入れるの忘れてました......
追加したのがこちらになります。
・各競技で最下位を取った生徒にはマイナス1000プライベートポイント(所持するポイントが1000未満になった場合には筆記試験でマイナス1点を受ける)
1ヶ月後に開催される体育祭に向けて本格的な準備が始まった。週に一度設けられる2時間のホームルームは自由に時間を使ってよし。時間の使い方はクラスの判断に委ねられる。
「それじゃあ競技の参加順と推薦競技に誰が出るかを決めたいと思う」
ここで動くのはやはりクラスのリーダー的存在である平田。
「決めるっつったってどうすんだよ」
「うん。例えば全員参加の場合────」
平田はチョークを握りしめて黒板に自分の考えを書き記し始めた。
平田が上げた項目は二つ。
挙手制と能力制。
挙手制は各々が出たい競技を決めて好きに決める方法。
能力制は個々の能力を見極めて効率化を図る方法。
両方のメリット、デメリットも交えて説明をする平田。黒板に詳細を書いてもらったことで口頭では理解出来ない生徒たちも少しずつ把握していく。
「はい。質問、質問。皆がいっぱい競技に出たいって言ったらどうするの?」
「推薦競技のことを言っているのかな?もしそうなったらそのときは話し合いで決めることになるだろうね」
「そんなの冗談じゃねぇぜ!それで運動の出来るヤツが参加できなかったらもったいないだろ!どう考えても能力で決めるべきだぜ」
須藤にはそれ以外の選択肢を選ぶつもりが全くないようだ。
「綾瀬。俺とお前で全部の推薦競技に出るぞ。俺とお前が勝って勝って勝ちまくる。それでクラスが勝つんだから万々歳だろ」
「私が勝てばいいの?いいよ、任せて。誰にも負けないよ」
「いいぞ須藤!頼りになるぜ!」
「さすが綾瀬さん!綾瀬さんになら安心して任せられるよ!」
「綾瀬さん頑張って!」
男子からは須藤を推す声。女子からは綾瀬を推す声が出始める。女子も須藤よりは綾瀬を応援したいのか、女子の殆どは綾瀬を推していた。
「俺はあまり運動が得意じゃない。全員参加はともかく、推薦競技を須藤や綾瀬が引き受けてくれるなら賛成だ」
成績優秀な幸村も運動は苦手分野。他にも幸村のように学力には特化しているが運動は苦手な生徒からすればこの提案はありがたいものとなるだろう。
「もし皆がこの方針でいいなら推薦競技は────」
「待って。補足提案があるわ」
普段はだんまりを決め込む堀北が発言した。
「私も能力制に異論はない。でもそれだけじゃ確実に勝てる保障はないわ。それなら全員参加の競技も同様に最善の組み合わせで戦うべきよ」
「最善の組み合わせって?」
「簡単に言えば足が速い人と遅い人を組ませるのよ」
ようは足の速い須藤と平田をかち合わせないように調整しようという話。
だがそれは同時に運動の出来ない弱者を切り捨てることにもなる。
「ちょっと待ってよ。それって私たちの勝つ可能性がなくなるってこと?納得出来ないんだけど。入賞したら貰えるプライベートポイントやテストの点数だって大きいし」
そう最初に反論したのは篠原という女子生徒だった。
「それは諦めるしかないわね。今回の特典は運動神経のいい人に与えられたチャンスなのよ。普段は勉強が出来なくても運動が出来るのであればそのチャンスを手にする資格がある。もちろん勉強も出来て運動も出来る人もね」
「何それ。私たちには資格がないって言いたいわけ?」
「体育祭で求められるのが身体能力である以上は仕方ないことよ。やはり特典は運動神経の優れた人に与えられるべきだわ」
堀北は一瞬だけ綾瀬の方を見た。堀北も綾瀬に特典を渡したいんだろう。綾瀬の場合は綾瀬に勝てる生徒がいないだろうから無用な心配ではありそうだが。
「でも......3位までは可能性があるんだからやっぱり強い人と勝負させられたくないっていうか......」
「クラスが勝つためにはこれが最も効率的なのよ。クラスポイントが得られればプライベートポイントも得ることが出来る。それの何が不満なのかしら」
どちらも譲らない様相を見せたが、誰から見ても堀北の方が優勢に見えた。運動神経の良い生徒、逆に苦手な生徒。Aクラスを目指す生徒からすれば堀北の案は魅力的だ。篠原もそんな空気を感じているのか徐々に戦意が折れていく。
「えっと......ねぇ綾小路。どうすればいいんだろう......」
「平田と堀北に任せるしかないな」
綾瀬は二人を心配そうに見たが、結局どうすることも出来なかった。
「いい加減にしろよ篠原。お前のせいで負けたら責任とれんのか?」
「それは......っ......」
もはや篠原に反撃する体力は残されていなかった。先ほどまでの強気な姿勢も萎んでいく。
「ごめん。ちょっと私からも提案させてもらっていい?」
そんな篠原に助け舟を出す形で割り込んできたのは松下だった。
「運動神経のいい人と組ませるのはなるべく成績は良いけど運動に自信のない人を優先しない?何ならもう固定させちゃってもいいんじゃないかな。もし最悪下位10名に選ばれたとして、ペナルティを科せられても問題なく乗り切れる人ならって思ったんだけど、どう?」
松下の提案した案は例えるなら須藤や綾瀬と幸村のような生徒を固定で組ませるもの。つまり選ばれた生徒はどの競技でも勝ちの目を拾えなくなるが、その生徒を固定して絞れば篠原のような勉強も運動も中途半端な生徒たちにも本当に微かだがチャンスが生まれるかもしれない。
「その人たちが最下位を取ったらマイナス1000プライベートポイントになっちゃうわけだけど、その分の負担はクラスの皆で分担ってことにしようよ。私は多めに出すからさ」
松下は船上試験で結果1になった鼠グループにいた。そのため50万プライベートポイントを手に入れている。そして同じく鼠グループだった池が勢いよく席を立った。
「俺も多めに出してやるよ!だからお前は安心して最下位を取って良いぜ!篠原!」
「なっ......!うっさい!バカ池!」
「バカってなんだよ!」
戦意を喪失していた篠原が元気を取り戻したように池に噛みついた。
「プライベートポイントの増減を相殺......それは採用だね。だけど運動神経のいい人と組むことになった人はどうしてもチャンスがなくなっちゃうよね......」
Dクラスで言えば綾瀬と須藤はどの競技でも1位を取ってくる可能性が高い。だからこそこの二人と組まされた人間は必然的に入賞が遠のく。
「あ、あの......!私、大丈夫です......!運動は自信ないので、私にやらせて下さい......!」
名乗りを上げたのは
「きっと綾瀬さんが一番だと思うので、私は綾瀬さんと一緒で大丈夫です......!」
「俺も大丈夫だ。須藤と俺はどの競技でも参加順を一緒にして構わない」
同じく幸村も名乗りを上げる。それを見て平田は笑顔を浮かべた。
「ありがとう二人とも。だけど他の人は無理して名乗り出なくても大丈夫だよ。このことはまた後でゆっくり話し合おう」
「おし!これで文句ねーな!綾瀬!ぜってーに勝つぞ!」
「うん、頑張る」
オレは少し迷ったが、何も行動を起こさないようにした。確かめたいことがあったが、この空気を壊してまでするのはクラス全体に良くない流れを生む。
もう少し流れに身を任せてみてもいいかもな。まぁ最悪駄目だったときの手は打ってある。
体育祭までやることいっぱい。
行進とか練習とか頑張らないと。
「借りてきたよ」
平田が持ってきたのは握力を測るやつ。
「順番にやっていこう。出た結果は僕に口頭で教えてね。2台借りてきたから効率よく測ろう」
そう言って平田は隣にいた本堂と幸村に渡そうとした。だけど須藤がそれを二つ奪う。
「俺からやるぜ平田。まずは俺がやることで高い目標を知ることが出来るからな。もう一つはお前がやれよ、綾瀬」
「え......」
握力を測るやつは私に渡された。
どうしよう、どれぐらいの力でやっていいのか分かんない。
「ん?どうした?やんねーのか?」
「まずは須藤のを見てみたい。一番凄そうだから」
「へへっ、たく、しゃーねぇな。見てろよお前ら。これがクラスを率いる男の力だ!うらぁ!!」
右手をギュッと握った須藤。握力を図るやつはどんどん数字が上がって82.4。
「馬鹿力すぎだろ!!」
「へっ、普段から鍛えるからな。おら、お前もやれよ高円寺」
「興味ないねぇ。君たちで勝手にやっててくれたまえ」
高円寺は爪を磨いてた。
「チッ......つまねーやつだな。綾瀬、次はお前の番だぜ」
須藤は自分の持ってたやつを綾小路に放り投げて私を見た。
「んー......綾小路、普通ってどれくらい?」
「あー......どうなんだろうな......須藤、分かるか?」
「あ?60ぐらいじゃねーの?」
「60か......」
「うん、分かった」
これは何回も握ったことがある。
だけど私が使ってたやつよりも壊れやすそう。もし壊しちゃったら次の人が使えなくなるから手加減しないと。
私は目を閉じた。目隠しがないからその代わり。
これは力をコントロールするトレーニング。目隠しをしながら言われた数字を出せれば成功。60も出したことあるからその感覚を思い出せばいい。
握力を調整するにはつまむ力で調整する。つまり指の力。
まずは安定させるために親指を挟み込んで力を入れる。小指にはいっぱい、薬指も結構、中指はほんのちょっと────。
うん。ここまででいいね。
私は目を開けて数値を見た。記録は62.8。まだちょっとコントロール出来てない。
私は隣にいた井の頭に握力を図るやつを渡して綾小路と一緒に平田に数値を教えた。
「オレは60.6だ」
「私は62.8」
「へぇ......綾小路くん結構力あるんだね......って、え!?62.8!?」
平田が珍しくビックリしてた。他の皆もビックリしてる。
「どうしたんだ平田。60は平均ぐらいなんだろ?確かに女子の綾瀬が男子の平均っていうのは驚くことなのかもしれないが、オレはそこまでだろ」
「いや平均はもう少し低いんじゃないかな......それに女子で60となるともうプロのアスリートレベルだったはずだよ......」
「ええぇ!?綾瀬さんすごっ......」
「マジかよ!さすが綾瀬だな!」
須藤は笑いながら私の肩を軽く叩いた。
そっか、男の子と女の子で力って全然違うんだっけ。そんなことすっかり
他の人も終わって、結果は私が2位。3位は綾小路。その次が平田。
「頼りねーなうちのクラスは......女子の綾瀬に勝てるやつが俺以外いないとか終わってるぜ」
「いや綾瀬ちゃんに勝つのは無理だろ!」
「そうだよ須藤。あんまり悪く言わないであげて」
「お、おう......」
皆と私の力は違う。これだけは、確か。
「綱引き、四方綱引きは単純に測定器の数値順でいいね」
「なぁ気になってたんだけどよ、その四方綱引きってなんだよ。聞いたことねーぞ」
「私も知らない」
「僕も知らなかったから調べてみたんだ。読んで字の如く四方で綱を引き合う競技みたいで、4クラスから選抜された4人ずつの計16人で一斉に綱を引き合う勝負みたいだね」
......?全然イメージ出来ない。とりあえず引っ張ればいいのかな......。
次は足の速さを測るために100m走。人数が多いから5人ずつ。
男の子たちの中ではやっぱり須藤が一番で、次に平田。三宅も結構速い。
男の子たちが終わると女の子たちの番になった。
私は鈴音と走る。
スタートの合図は音を鳴らすものがないから交代しながらよーいドンって言う。
「綾瀬さん。手を抜くのはなしよ。全力でやりなさい」
「んー......」
鈴音にはそう言われたけど私は手を抜くことにした。全力でやっちゃうと怖がらせちゃうかもしれないから。
私はスタートの構えを取った。100m走はもちろん走りも大事だけど、スタートを早く切るのも大事。
「位置について......よーいドン────」
スタートの合図が聞こえた瞬間に走り出す。そして姿勢を保って腕を振る。
外を走るのは気持ちいい。何回も走ってきたけど、外で走るのはなかったから。
少し走った後に隣を見るともう誰もいない。後ろを見たら鈴音とは距離が離れてた。スピードを落としてちょっと走ったらゴール。記録は11.51。
「綾瀬さん、君は本当に凄いね......圧倒的に1位だよ......」
「はぁ......はぁ......あなた......本当に何者なの......」
私を見て皆驚いてた。怖がってはないから大丈夫、かな。
「これでだいぶ埋まってきたね。後は借り物競走だけだ」
「それってよく分かんないけど、足が速いとか力が強いだけじゃ駄目なの?」
「もちろん足の速さも大事だけど、借り物競走は運も大事だと思う。だからじゃんけんで決めたらどうかな?」
じゃんけん。何回かやったことある。結構面白いから好き。
「綾瀬さんと須藤くんは確定にして、残りの枠はじゃんけんで勝ち残った人にしよう」
......じゃんけん、したかった......。
じゃんけんで勝ったのは綾小路、博士、幸村、前園。
私と須藤は出ることが決まってるからこれで出る人も決まり。
「こぽぉ!せ、拙者が借り物競走に選ばれてしまったでござるぅ!」
博士、嬉しそう。泡を吹きそうになりながら喜んでる。良かったね。
「うん、出来た!」
全部の競技、順番を決めた平田はノートを回した。
皆が見てまた平田に回ると、平田はホッとしてた。
「まだ暫定的なものだから今後の練習次第では大きく入れ替わることもあると思う。それでも他クラスには知られたくないものだから撮影等で記録は残さないようにね」
これは秘密にしないといけないもの。平田はしっかりそのことを皆に伝えた。
競技はまだよく分かんないのばっかりだけど、とにかく頑張る。
女子の世界記録と睨めっこしながら作りました。霊長類最強と言われたあの方の握力は55ぐらいらしいです。
四方綱引きは男女混合だと思いますか?
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はい
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いいえ