ようこそ理想郷へ   作:ナムさん

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第5話 壊れたものの価値+データベース

 学校生活もそろそろ3週間が経った。今は2時間目数学の授業中。

 

「ぎゃははは!!ばっか、お前それ面白すぎだって!」

 

「ねえねえ、放課後カラオケいかない?」

 

「行く行く~」

 

 授業中であるのにも関わらず多くの生徒が雑談に夢中だった。真面目に授業を受けている生徒の方が少ない。綾瀬も相変わらず爆睡中である。

 

「うーっす」

 

 授業も後半に差し掛かる頃、須藤が登校してきた。

 

「おせーよ須藤。あとでコンビニいこーぜ」

 

 池が遠くから声をかけるが、それすらも気にせずに授業を続ける数学教師。

 この学校はとことん放任主義なのか、全ての授業でこのような光景が見られる。

 チャイムが鳴り、数学の授業は終わった。チャイムが鳴ると同時に綾瀬が起き上がる。寝ぼけているのか口をポカンと開けて天井を見上げていた。

 

「綾瀬さん。その顔、女の子がしていい顔じゃないわよ」

 

「......んぁ?あー......うん......わかった......」 

 

 綾瀬はチャイムが鳴ると必ず起きるが、その度に堀北から色々言われている。放っといてやればいいのに。

 3時間の社会。担任の茶柱先生の授業だ。

 

「ちょっと静かにしろー。今日は少し真面目に授業を受けてもらうぞ」

 

「どういうことっすかー。佐枝ちゃんセンセー」

 

「月末だからな。小テストを行うことになった。後ろに配ってくれ」

 

「え~そんなの聞いてないよ~。ずる~い」

 

「そう言うな。今回のテストはあくまで今後の参考用だ。成績表には反映されることはない。ノーリスクだから安心しろ。ただしカンニングは厳禁だぞ」

 

 妙に含みのある言い方に少しだけ引っかかった。成績表には反映されない、裏を返せば成績表以外のものには反映されると言っているように思える。

 まあ考えすぎか。ノーリスクと言っているぐらいだからそこまで警戒する必要はないだろう。

 配られた問題用紙に目を落とす。主要5科目の問題がまとめて載っており、一科目4問、全20問で各5点配当の100点満点。それにしても拍子抜けするほど、ほとんどの問題が簡単だ。とても高校の小テストとは思えない。

 そう思いながら最後まで問題用紙に目を通すと、ラスト3問だけは桁違いの難しさであることに気づいた。とても高校1年生で解けるレベルではない。

 ま、こっちは入学試験のときと同じようにやるだけだ。

 オレはカンニングと思われないように隣を見る。

 まず堀北だが迷うことなくペンを進めている。この様子なら問題なさそうだ。

 そして綾瀬は当たり前のように眠っていた。小テストだろうがお構いなしである。さすがだ。

 

 

 いよいよ5月を向かえたオレの学校生活。とうとう1ヵ月が経った。今日は生徒たちからすれば待ちに待ったポイント支給日。だが教室の雰囲気がおかしかった。綾瀬も何かを感じ取ったのか、不思議そうに教室を見渡している。

 ホームルームの開始を告げるチャイムが鳴った。程なくして、手にポスターを持った茶柱先生がやってくる。その顔は険しい。

 

「せんせー、ひょっとして生理でも止まりましたー?」 

 

 池がとんでもないセクハラ発言をかましたが、茶柱先生は取り合う様子はない。

 

「これよりホームルームを始める。が、その前に質問はあるか?気になることがあるなら今のうちに聞いておいた方がいいぞ?」

 

 生徒たちからの質問があることを確信しているかのような口ぶりだ。実際、数人の生徒がすぐさま挙手した。

 

「あの、今朝確認したらポイントが振り込まれてなかったんですけど。毎月1日に支給されるんじゃなかったんですか?」

 

「本堂、前に説明しただろ。その通りだ。今月も問題なく振り込まれている」

 

「え、でも......振り込まれてなかったよな......?」

 

 本堂は山内たちと顔を見合わせた。その他の生徒たちも同じようにポイントが振り込まれていないことに疑問の声を挙げる。

 

「お前たちは本当に────愚かだな」

 

「え......佐枝ちゃん先生?」

 

「座れ本堂。二度は言わん」

 

 今まで聞いたことがない厳しい口調と見たことがない鋭い眼光に本堂は腰が引け、そのままズルっと椅子に収まった。

 

「ポイントは振り込まれた。これは間違いない。このクラスだけ忘れられた、などということもない。分かったか?」

 

「いや、分かったかって言われても......実際振り込まれてないわけだし......」

 

「ははは、なるほど。そういうことだねティーチャー。理解できたよ。確かにポイントは振り込まれたようだ」

 

 高円寺が高らかに笑い、偉そうな態度で本堂を指差した。

 

「簡単なことさ。ポイントは振り込まれた。それなのにも関わらず私たちDクラスには1ポイントも支給されなかった、ということだよ」

 

「はあ?いや、毎月10万ポイント振り込まれるって言ってただろ......?」

 

「私はそう聞いた覚えはないね。そうだろう?」

 

 高円寺はニヤニヤ笑いながら本堂に向けた態度と同じような態度で茶柱先生を指差した。

 

「態度には問題ありだが、高円寺の言う通りだ。全く、あれだけヒントを与えて気づいたのが数人とはな。嘆かわしいことだ」

 

「......先生、振り込まれなかった理由を教えてください。でなければ僕たちは納得できません」

 

 未だ理解できていない生徒のために率先して平田が手を挙げる。

 

「遅刻欠席、合わせて98回。授業中の私語や携帯を触った回数391回。一月でよくここまでやらかしたものだ。この学校では、クラスの成績がポイントに反映される。その結果お前たちに振り込まれるはずだった10万ポイント全てを吐き出した。入学式のときに説明したはずだ。この学校は実力を測ると。そして今回、お前たちは0という評価を受けた。それだけに過ぎない」

 

 茶柱先生の説明はオレがこの学校に来て感じた違和感や疑問を次々と解決していく。最悪の形ではあるが。

 つまり、オレたちDクラスは10万という巨額のアドバンテージを一月で失ってしまったということだ。

 

「では、せめてポイント増減の詳細を教えてください......今後の参考にします」

 

「それは出来ない相談だな。詳細な査定の内容はこの学校の決まりで教えられないことになっている」

 

 社会でも同じだ。仮に社会に出て企業に入ったとしても詳細な人事の査定内容は教えられないことがほとんどである。

 

「無駄話が過ぎたな。ここからが本題だ」

 

 手にしていた筒から白い厚手の紙を取り出し、それを黒板に貼り付ける。

 

「これが各クラスの成績だ」

 

 その紙にはAクラスからDクラスの名前とその横に数字が表示されていた。

 オレたちDクラスは0。Cクラスは490。Bクラスが650。そして一番高い数字がAクラスの940。

 

「ねえ、おかしいと思わない?」

 

「ああ......ちょっと綺麗すぎるよな」

 

「えーびーしーでぃー......いーえふじー......」

 

 オレと堀北が数字の並びにある奇妙な点に気づいた隣で、綾瀬が指を折りながら舌足らずな発音でアルファベットを唱えていた。なぜかDから先まで唱えているが。

 

「この学校では優秀な生徒たちの順にクラス分けされるようになっている。優秀な生徒はAクラスへ。ダメな生徒はDクラスへ。見ろ。お前たちは自らで最低ランク、最悪の不良品であることを証明した」

 

 不良品という単語に綾瀬が一瞬ピクッと反応する。そして堀北は表情が大きく強張っていた。

 

「しかし感心もした。1ヵ月で全てのポイントを吐き出したのは歴代のDクラスでも初めてだ」

 

 茶柱先生のわざとらしい拍手が教室に響く。

 

「さて、お前たちにもう一つ伝えなければならない残念なお知らせがある」 

 

 黒板に追加する形で貼り出されたもう一枚の紙。そこにはDクラスの生徒たちの名前。そしてその横には数字が並んでいた

 

「先日やった小テストの結果だ。お前らは中学で一体何を学んできたんだ?」

 

 高得点を取っている生徒もいるが、クラス全体で見るとDクラスの学力は低いと言わざるを得ない。須藤は14点という数字を取っているし、綾瀬に至っては0点である。そもそも小テスト開始と同時に眠っていたから仕方なくはあるが。

 

「良かったな。これが本番だったら7人は入学早々退学になっていたところだ」

 

「た、退学!?どういうこと、ですか?」

 

「この学校では中間テスト、期末テストで1科目でも赤点を取ったら退学になることが決まっている。今回のテストで言えば、32点未満の生徒が全員対象となる」

 

「は、はああああ!!!??」

 

 赤点の対象者となった生徒たちは驚愕の声を挙げる。そんな中、同じく対象者である綾瀬は落ち着きを払っていた。

 

「そんなのありかよ!!退学とか冗談じゃねぇって!」

 

「それが学校のルールだ。腹をくくれ。それともう一つ付け加えておこう。この学校では高い進学率と就職率を誇っているが、その恩恵を受けられるのはAクラスのみだ」

 

「え......!?」

 

「そんな馬鹿な......!」

 

 驚愕の事実に動揺する一同。当然多くの生徒たちが不満を訴えるが、いくら喚こうが覆ることはなかった。それがこの学校のルールなのだと。

 

「浮かれた気分は払拭されたようだな。それだけでもこの長いホームルームにも意味はあったかもな。中間テストまで3週間。まあじっくりと熟考し、退学を回避してくれ。お前たちなら赤点を乗り切れる方法はあると確信している」

 

 そう言って茶柱先生が教室を去ろうとすると、綾瀬がガタッと音を立てて席を立った。

 

()()

 

「どうした綾瀬。質問か」

 

 綾瀬が茶柱先生を下の名前で、しかも『先生』とすらつけずに呼ぶことにまず驚いたが、茶柱先生は注意する素振りすら見せず、それどころか綾瀬が挙手したのを確認すると、どこか嬉しそうにニヤッと笑った。

 

「うん。聞きたいこと、ある」 

 

「なんだ、言ってみろ」

 

「私たちにまだ、価値はある?」

 

「そうだな。それはお前たちの努力次第だ。私もお前たちの価値が完全にないとまでは言わん。これでいいか?」

 

「......そう。それなら、いい」

 

 綾瀬が静かに席に着く。その質問を最後に茶柱先生は今度こそ教室を後にした。

 

 

 

 

 

「ポイントが入らないって、これからどうするんだよ......」

 

「私もうポイント全部使っちゃったよぉ......」

 

 茶柱先生が居なくなってからの休み時間、教室の中は騒然、いや、酷く荒れていた。

 

「みんな、ポイントなくなっちゃったの?」

 

「みんなではないだろうけど、この様子を見ると大半は使いきってしまったようだな」

 

「気の毒な反面、自業自得とも言うわね」

 

 確かに、1ヵ月で10万も散財するのは少々問題がある。

 

「先月、あなたたちはどれくらい使ったの?」

 

「オレは2万くらいじゃないか、ざっくりだけど。綾瀬は?」

 

「......さあ?......えっと、あった。はい」

 

 そう言って綾瀬は携帯を渡してきた。その画面には自分のポイントが確認できる画面が表示されており、82,460ptと表記されていた。綾瀬もかなりポイントに余裕があるようだ。

 

「綾瀬さん。そんな大事なものを不用意に見せるのは止めなさい」

 

「私......間違ってた?」

 

「あんまりよくはないだろうな。今はみんなポイントがないから、そんなにポイント持ってるって知られたらたかられるぞ」

 

「......そうなの?気を付けた方がいい?」

 

「ええ。そうして頂戴」

 

 今月は0ポイント。このままだと来月もどうなるか分からない。そうなれば必ずポイントがないから助けてくれと懇願する生徒は出てくる。実際、山内もオレにコーヒーをたかってきたわけだしな。綾瀬はそういうのに流されそうだから釘を刺しておかないと危険だ。

 

「ポイントよりもクラスの問題だ......ふざけるな......!なんで俺がDクラスなんだよ......!」

 

 怒りの声を挙げたのは幸村というメガネをかけた生徒。小テストでは90点と高得点を取っていた。あの異様にレベルの高い問題を一問だけ解いていたということだ。そんな学力をもつ自分が落ちこぼれのDクラスなどと言われても納得なんて出来はしない。

 そしてそれは堀北にも当てはまることだ。

 

「お前も幸村と同じなんじゃないか」

 

「......ええ、そうね。とても納得なんて出来ないわ」

 

 堀北は苦虫を噛み潰したような顔でそう答えた。

 オレも能力だけで見たら堀北がDクラスなんて信じられない。それなら一体どうして堀北はDクラスなのか。考えられる要因はある。

 

「みんな、授業が始まる前に真剣に聞いて欲しい。特に須藤くんと綾瀬さん」

 

 まだ騒然とする教室で、平田は教壇に立ち生徒の注目を集めた。

 

「チッ、なんだよ」

 

「......私?」

 

「今月、僕たちはポイントを貰えなかった。このままだと卒業まで0ポイントで過ごすことになるかもしれない」

 

「そんなの絶対嫌!」

 

「だからこそまずはマイナス要素を減らさないといけない。そしてそのためにはクラス全体で注意しなければならない。遅刻や授業中の私語は止めるようお互いに注意するんだ。もちろん、携帯を触るのも居眠りするのも禁止だね」

 

「え......」

 

 居眠り禁止と聞いて、綾瀬が消え入るような声を出した後、その場で固まった。

 

「は?なんでお前の指示をうけなきゃならねぇんだ。真面目に授業を受けたところでポイントが増えるわけじゃねぇだろ」

 

「でももし仮にせっかくポイントが増えたとしてもそこを直さないとまたマイナスになってしまうんだ。だからこそ君にも協力してほしい」

 

「だけどポイントの増やし方もわからねぇんじゃ無駄だろ。せめて増やし方見つけてから言えよ」

 

「僕は須藤くんが憎くて言ってるわけじゃないんだ。不快にさせたなら謝りたい。だけど須藤くん、いやみんなの協力がなければこの先ポイントを得られないのも事実だ」

 

 平田は頭を下げつつ須藤を諭す。しかし、その思いが須藤に届くことはなかった。

 

「......お前が何やろうが勝手だけどよ、俺を巻き込むな」

 

 この場にいることに居心地の悪さを感じたのか、それだけ言うと須藤は教室を出た。

 

「須藤くんってほんと空気読めないよね。遅刻だって一番多いしさ。須藤くんが居なかったら少しくらいポイント残ってたんじゃない?」

 

「だね......もう最悪。なんであんなのと同じクラスに......」

 

 須藤を非難する嫌な空気が流れる中、教壇を降りた平田がオレたちの席の前までやってきた。

 

「堀北さん、それから綾小路くんに綾瀬さんも少しいいかな。放課後、ポイントを増やすためにどうしていくべきか話し合いがしたいんだ。是非君たちにも参加してもらいたい。どうかな?」

 

「どうしてオレたちなんだ?」

 

「全員に声をかけるつもりだよ。だけど一度全員に声をかけても、きっと真剣に耳を傾けてくれないと思うんだ」

 

 だから個別にお願いしていくことを考えたのか。こんなときにでも率先して行動する平田は偉いな。

 

「他を当たって貰える?話し合いは得意じゃないの」

 

「無理に発言しなくてもいいよ。その場にいてくれるだけでも、十分だから」

 

「申し訳ないけれど、意味のないことに付き合うつもりはないから」

 

「そうか、ごめん......もし気が変わったら参加してほしい」

 

 堀北の拒絶を受けて、平田もこれ以上は無理に誘わなかった。

 

「綾小路くんは、どうかな」

 

 正直参加してもいいと思っていた。クラスの大半は参加するだろうし、だがそこに堀北が不在になったら、須藤と同じ異物扱いを受ける可能性がある。

 

「あー......パスで悪いな」

 

「いや、僕こそ急でごめん。でも、気が変わったらいつでも言ってね。綾瀬さんはどうする?」

 

「んー......話し合いに私の役目はある?」

 

「役目......君だけに何か特別な役目を押し付けるつもりなんてないよ。この話し合いはみんなで解決していくべきだからね」

 

「......役目がないなら、私はいらない。何も出来ないから」

 

「君がいらないだなんて決して僕らは思わない。それでも、駄目かな?」

 

「......明日から、起きてるようにするから。だから、ごめんね......」

 

「......分かったよ。無理だけはしないでね」

 

 役目のない自分を不要と判断し、綾瀬は参加しようとしなかった。

 了承を得られないと思った平田は少し寂しそうにオレたちを一瞥してからこの場を去る。

 

「綾瀬。お前大丈夫なのか?授業中ずっと寝てたのにいきなり寝るななんて言われて」

 

「......多分」

 

 少し自信なさげに答える綾瀬。生活習慣は簡単に治せるものじゃないから苦労がつきまとうだろうな。

 

「平田くんも大変ね。わざわざ頭の悪い生徒を集めて対策を練るなんて。そんなのむしろ泥沼に嵌まって余計に混乱するだけよ。それに私は今の状況を受け入れることなんて出来ない」

 

「受け入れることなんてできない?それってどういう意味だ?」

 

 堀北はオレの質問に答えず、それ以降黙り込んでしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 放課後。平田は黒板を使って対策会議の準備を進めていた。

 対策会議の参加率は平田の求心力を伺えるもので、堀北、綾瀬、須藤、数人の男女を除きほぼ満席だ。気がつけば参加しないのに残っているのはオレだけ。本格的な話し合いが始まる前にさっさと出てしまおう。

 

「綾小路ぃ~!」

 

 机の下から今にも死にそうな顔をした山内が飛び出してくる。

 

「うおっ!?な、なんだよ。どうした?」

 

「このゲーム機、2万ポイントで買ってくれよぉ~。ポイントなくて何も買えないんだよ!」 

 

「全く欲しくない......大体2万ポイントなんて無理だ。無い袖は振れないぞ」

 

 まだポイントに余裕はあるが、こんなものに2万ポイントを払ってまで山内を助けようとは思わない。

 

「ちぇ。あっ、待てよ!綾瀬ちゃんなら────」

 

「お前......さすがにそれは......」

 

 女の子にまでたかろうとする山内にドン引きする。

 

「わ、分かってるって!冗談冗談!!」

 

 どうだか。山内のことだからあまり信用はない。

 

『1年Dクラスの綾小路清隆くん。同じく1年Dクラスの綾瀬心音さん。担任の茶柱先生がお呼びです。職員室まで来てください』

 

 穏やかな効果音の後、無機質な案内が教室に響いた。

 まさかの呼び出し。それに綾瀬までか。授業中ずっと寝ていた綾瀬ならともかく、オレは特に注意を受けるようなことをした覚えがない。何となく重いクラスの視線を背中に受けつつ、オレは教室を抜け出した。

 職員室の扉の前まで来たが綾瀬はいない。もしかしたら先に職員室に入っているかもしれない。少し待つのも手だが、茶柱先生を待たせるのもなんか怖いのでオレは扉を開けることにした。

 ぐるっと見回すが、綾瀬と茶柱先生の姿は見えない。仕方ないので鏡で自分の顔をチェックしている先生に声をかける。

 

「あの、茶柱先生いますか?」

 

「え?サエちゃん?えーっとね、さっきまでいたんだけどぉ......」

 

 振り返った先生は、セミロングで軽くウェーブのかかった髪型の今時の大人って人だ。親しそうに茶柱先生の名前を呼ぶ。

 

「ちょっと席を外してるみたい。中で待ってたら?」

 

「いえ、廊下で待ってます」

 

 注目を浴びるのが嫌だったので廊下で待つことにした。すると何を思ったのか、先ほどの先生がひょっこりと廊下に出てきた。

 

「私はBクラスの担任の星之宮知恵って言うの。佐枝とは高校からの親友でね。サエちゃんチエちゃんって呼び会う仲なんだよ~」

 

 意外なところから茶柱先生の情報を耳にしたが、正直あまり使い道のなさそうな情報だ。

 

「ねえ、サエちゃんにどういう理由で呼び出されたの?それにもう一人呼ばれてなかった?ねえねえ、どうして?」

 

「さあ。オレにはさっぱり......」

 

「理由も告げずに呼び出したの?ふーん......ねえ、君の名前は?」

 

 ジロジロ上から下まで見回されながら質問攻めされる。

 

「綾小路、ですけど」

 

「綾小路くんかぁ。かなり格好いいじゃない~、モテるでしょ~」

 

 なんか面倒くさそうだったからわざと嫌そうにしてみたが、星之宮先生はそれすら楽しむように積極的に近づいてきた。なんだか魔性の女みたいだ。

 

「綾小路......ちょっと迷って、遅れちゃった」

 

「......え!?」

 

 綾瀬が遅れてやってくる。

 オレの隣に来る綾瀬を見て、星之宮先生が驚きの声を挙げた。

 

「え!え!?わぁ、君!すごいカワイイ〜!!もしかしてDクラスにいるものすご~いカワイイ子って君のこと!?えー!どうしてうちのクラスにきてくれなかったの〜!?私かなしいぃぃ......シクシク......」

 

「......ごめんね?泣かないで」

 

「いいのよいいのよ!謝らなくたって!サエちゃんのクラスの子ならいつでも遊びにいけるし!」

 

 ケロッと切り替わる星之宮先生。その切り替えの早さは少し恐怖を感じる。

 

「あ、そういえば君、名前は?」

 

「......綾瀬心音」

 

「綾瀬さんかぁ、よろしくね〜!ね、ね。私のことはチエってよんで?」

 

「......チエ?」

 

「キャー!素直な子ねー!まったくもぅ!」

 

「チエ、ど、どうしたの......?」

 

 やや興奮ぎみになった星之宮先生は綾瀬に勢いよく抱きついた。綾瀬も珍しく困っている。

 そしてそのままオレと綾瀬の顔を見比べ、ニヤニヤし始めた。

 

「ねえねえ、綾瀬さんは彼氏とかいないの?それとももしかして実は綾小路くんともうそういう関係だったり〜?」

 

「......?綾小路とは友達だよ?」

 

「あらー、綾小路くん残念だったね〜。これは今のとこ脈ないかも。でも諦めちゃダメよ?男の子は積極的にアタックしなきゃ!」

 

「はぁ」

 

 一人で勝手に盛り上がる星之宮先生についていけない。この人本当に教師なのか?うちの女子たちとそう変わらないように見える。ノリとか。

 

「......チエ、いい匂いする」

 

「あら!じゃあ綾瀬さんにもお裾分けしてあげる!うりうり~!」

 

「あぅ......」

 

「お前は何をやっているん......だ!」

 

 突然現れた茶柱先生が、綾瀬の胸に頭を擦りつけていた星之宮先生のケツに手に持っていたクリップボードで強く叩いた。

 

「いったぁ!?ちょっとやりすぎじゃない!?」

 

「うちの生徒にアホなことしてるからだろ」

 

「サエちゃんに会いに来たって言うから不在の間相手をしてあげてただけなのに~......」

 

「悪かったな2人とも。このバカの相手をさせて。さあ、ここじゃ何だ。生徒指導室まで来て貰おうか」

 

 生徒指導室って......それって素行不良の生徒が行くところじゃないのか。やっぱり綾瀬が授業中寝てたから?そしてその責任がオレに?もしそうだとしたら横暴だ。訴えてやる。

 

「......なぜお前までついてくる」

 

「冷たいこと言わないでよ~。だってサエちゃんが2人も呼び出してお話なんて気になるじゃなーい?普段絶対そんなことしないでしょ?」

 

 星之宮先生はニコニコしながら答えた後、オレと綾瀬の背後に回り込み、オレたちの肩に手を置いた。

 

「もしかしてサエちゃん、下克上でも狙ってるんじゃないのぉ?」

 

 下克上という言葉を皮切りにピリッとした空気が流れる。

 

「バカを言うな。そんなこと無理に決まっているだろ。それよりもお前に客だぞ」

 

 茶柱先生が視線を向けた先には薄ピンク色の髪をした美人の生徒がいた。星之宮先生はBクラスの担任。Bクラスの生徒、だろうか。

 

「はぁい。あ、そうだサエちゃん」

 

 星之宮先生が背中を向けてその生徒の元へと向かう途中、何かを思い出したようにこう言った。

 

「綾瀬さんってカワイイよね。()()()()()()()()、さ」

 

「......私?」

 

「......言っている意味が分からんな。いいから早くいけ」

 

 何か含みがありそうなことを言って星之宮先生はいなくなった。よく分からないが男が踏み込めない女同士の何かを感じたとだけ言っておこう。

 そしてオレたちは程なくして指導室へと入る。

 

「で......何なんですか?オレたちを呼んだ理由って」

 

「うむ、それなんだが......ちょっとこっちに来てくれ」

 

 指導室の中には入り口の他にもドアがあり、そこを開くと給湯室になっていた。

 

「いいか。私が出てきて良いというまで黙ってここにいろ。決して物音を立てるなよ。破ったら退学にする」

 

「は?言ってる意味が────」

 

 ピシャッと扉が閉じられた。オレと綾瀬は目が合い、首をかしげる。お互い何がなんだかよく分かっていない。

 一応待っていると、指導室のドアが開く音がした。

 

「失礼します」

 

「あ、ほりき......むぐ......」

 

 さっそく禁忌を破ろうとする綾瀬の口を塞ぐ。どうやら指導室を訪ねてきたのは堀北のようだ。

 

「それで、私に話とは何だ?」

 

「率直にお聞きします。なぜ私がDクラスに配属されたのでしょうか」

 

「なぜお前はDクラスであることに不満なんだ?」

 

「私は入学試験の問題は殆ど解けたと自負していますし、面接でも大きなミスをしたと思えません。少なくともDクラスになるとは思えないんです」

 

 堀北の気持ちも分からないでもない。堀北は自分が優秀だと思っているタイプだ。そしてそれは自意識過剰などではなく、実際に優秀だと思う。先日のテストも幸村、高円寺に続き同率1位を連ねていた。

 

「問題は殆ど解けた、か。本来なら入試問題の結果など個人に見せないが、お前には特別に見せてやろう」

 

「随分と用意周到ですね。まるで私が抗議に来る、と分かっていたようです」

 

「これでも教師だからな。生徒の性格はある程度理解しているつもりだ。堀北鈴音。お前は確かに今年の一年の中では同率で3位、1位、2位とも僅差と優秀な成績を収めている。しかし、学力に優れたものが優秀なクラスに入れると誰が決めた?そんなことは我々は一度も言ってない」

 

「ですが......学力も一つのステータスであることには間違いありません」

 

「それを否定するつもりはない。しかし、この学校は本当の意味で優秀な人間を生み出すための学校だ。それだけで上のクラスに配属されると思ったら大間違いだ。それに、冷静になって考えてみろ。学力だけで優劣を決めていたなら須藤たちが入学できたとおもうか?」

 

 須藤はもちろん、池や山内も勉強はできない。それでも日本屈指の進学校に入学できている。

 

「っ......それでも私がDクラスであることは納得できません。私がDクラスに配属されたことが間違っていないかどうか、再度確認をお願いします」

 

「残念ながらDクラスに配属されたことはこちらのミスではない。お前はDクラスになるべくしてなったんだ。念のために言っておくが、上に掛け合っても答えは同じだ。だが悲観する必要はない。朝にも話したが、お前たちの価値が完全にないとは言わん。努力次第ではAクラスへと上がれる可能性は残されている」

 

「未熟な者が集まるDクラスがどうやってAクラスよりも優れたポイントを取れると言うのですか。どう考えても不可能じゃないでしょうか」

 

 堀北の苦言ももっともだ。今回の圧倒的なポイントがそれを示している。

 

「それは私の知ったことじゃない。その無謀な道を進むかどうかは個人の自由だ」

 

「......今日のところはこれで失礼します。ですが私が納得していないことだけは覚えてください」

 

「分かった。覚えておこう。ああ、そうだった。他にも指導室に呼んでいた生徒がいたな。お前にも関係のある人物だぞ」

 

「関係のある人物......?まさか......兄さ────」

 

「出て来て良いぞ。綾小路、綾瀬」

 

 こんなタイミングで呼んでほしくない。よし、このまま出ないでおこう。

 

「綾小路。いかないの?呼ばれてるよ?」

 

 ガクッとずっこけそうになる。こうなっては出ざるを得ない。

 

「はあ......いつまで待たせれば気が済むんスかね」

 

 わざとらしくため息をつきながら指導室へと戻る。堀北は当然驚き戸惑っている。

 

 

「......聞いてたの?」

 

「いや?何かを話してるのは分かったがよく聞こえなかったな。意外と壁が────」

 

「堀北、入試で3位だって。すごいね」

 

「......」

 

 あっさり聞いた内容をばらしてしまう綾瀬。オレの思いを汲んでほしかった。

 

「はっはっは!綾瀬は素直で良い子だなぁ。綾小路、お前も見習ったらどうだ?」

 

「......先生、なぜこのようなことを?」

 

 これが仕組まれたことに気づく堀北。当然ご立腹である。

 

「必要なことと判断したからだ。さてお前たち。お前たちを指導室に呼んだわけを話そう」

 

「私はこれで失礼します」

 

「待て堀北。最後まで聞いておいた方がお前のためになる。Aクラスへ上がることのヒントに繋がるかもしれないぞ」

 

 背を向きかけてた堀北の動きが止まり、そして椅子に座りなおした。

 

「手短にお願いします」  

 

 茶柱先生はクリップボードに視線を落としながらニヤニヤ笑った。

 

「お前は面白い生徒だなぁ、綾小路」

 

「茶柱、なんて奇妙な苗字をもった先生ほど面白い男じゃないすよ、オレは」

 

「茶柱って言いにくい。どうしてそんな苗字なの?」

 

「お前たちなかなかいい度胸じゃないか。全国の茶柱さんに土下座してみるか?んん?」

 

 こんな苗字をもった人なんて全国探してもいるもんか。

 

「入試の結果を元に、個別の指導方法を思索していたが、お前の入試結果を見たときは心底震えたぞ」

 

 クリップボードから見覚えのある入試問題の解答用紙が並べられていく。堀北はそれを見て驚いた様子でテスト用紙を食い入るように見て、オレへと視線を移した。

 

「国語50点、数学50点、英語50点、社会50点、理科50点......おまけに今回の小テストも50点。これが何を意味するか分かるか?」

 

「50点が......いっぱい......?」

 

「いやまあ、そうなんだが......こほん。綾小路、意図的にやっただろ」

 

「まさか、偶然って怖いっスね」

 

「ほう?ならこの数学の問5、この問題の正解率は学年でたったの3%だった。が、お前は複雑の証明式も含め完璧に解いている。一方、こっちの問10は正解率は76%だ。こんな解答がちらほら散見しているのが分かるだろう。そして小テストでも似たような傾向が見られた。果たしてこれも偶然か?」

 

「偶然です。証拠はありません」

 

「あなた......どうしてこんな訳の分からないことをしたの?」

 

「だから偶然だっての。隠れた天才とかじゃないぞ」

 

「どうだがなぁ。ひょっとしたらお前よりも頭脳明晰かもしれないぞ」

 

 ピクリと堀北が反応する。先生、そろそろその余計な口出しやめて貰えないでしょうか。

 

「おー......良く分かんないけど綾小路もすごいんだね......」

 

「......まさか、彼女も......」

 

「あー......そのことなんだが......」

 

 綾瀬にも何かあると踏んだ堀北に茶柱先生はばつが悪そうな様子で口淀んだ。

 そしてすぐに切り替え、険しい顔になる。

 

「綾瀬。お前に関しては本気で生徒指導しなければならない。お前はいつも私の授業中でもお構いなしに寝ているが、もうそんな余裕はないぞ」 

 

「当然です。授業中の態度も減点対象になる可能性がある。そんなことは私が許しません」

 

「違うんだ堀北。私が言いたいのはそういう意味ではなくて、いやそれも間違ってはないが......とりあえずこれを見ろ」

 

 疲れたような顔でため息を吐き、何枚かの紙を机の上に広げた。オレと同じように入試試験の答案用紙のようだ。

 

「これは......酷いわね......」

 

 堀北も茶柱先生のようにため息をつく。

 国語7点、数学3点、英語2点、社会9点、理科8点。

 悲惨だ......二桁を越えている教科がない......

 

「綾瀬さん。一応確認だけど真面目にやったのよね?」

 

「うん。全力でやったよ?でも全然わかんなかった」

 

「......」

 

 多分本当なんだろう。もし仮に綾瀬が手を抜いてたにしてもここまで酷くはならない。

 普通ならある程度一定の基準は保つ。でなければまず入学試験自体が不合格になるからだ。誰もがこんな惨状で入学できるだなんて思わないだろう。

 これが正真正銘、綾瀬心音の学力だ。勉強も運動もできる文武両道タイプの天才なのではというオレの思惑はあっけなく砕け散った。

 つまり綾瀬は運動だけできる須藤などと同じタイプということ。この見た目で脳筋なのかよ。()()()()()()()()()()

 

「ここまで酷いのは私も始めてだ......これを見たときはさすがに頭を抱えたぞ......」

 

 須藤のような生徒も受け入れるこの学校でもここまで言わせるのは相当なものだ。

 しかし、裏を返せば学力という要素を排除してまでも綾瀬にはこの学校に入学するほどの実力があるということでもある。

 

「このように綾瀬の学力は壊滅的。このままでは確実に退学だろう。だからお前たちで綾瀬をフォローしてやれ」

 

「ですが......さすがにここまでのレベルは......」

 

「堀北。随分弱気じゃないか?お前は学力において自分は優秀だと自負しているんだろう?それなら綾瀬一人ぐらい救ってみせろ。それにそのために綾小路も紹介してやっただろ?なに、お前がAクラスに上がることを目標にしているならこれも最初の試練だと思えばいい」

 

「......!」

 

 挑発的な態度で堀北を煽る茶柱先生。分かりやすい挑発ではあるが堀北には効果覿面(てきめん)のようだ。

 

「これは忠告だ。綾瀬を救ってみせろ。それが出来なければAクラスへの道は諦めるんだな」

 

 最後にそう言い残して茶柱先生によるありがたい指導は終わった。

 職員会議があるからとオレたちは背中を押され廊下へと放り出された。

 茶柱先生はなぜオレたちを呼び出し、堀北と鉢合わせたのだろうか。綾瀬のためだけだとは思えないが。

 

「綾瀬を救えなければAクラスへの道は諦めろってやつ、どう思った」

 

「さぁね。もしかしたら生徒1人救えないようでは実力が足りないとでも評価されるのかもね」

 

「......ま、そうかもな」

 

 適当に堀北に同調しておく。

 

「それにしてもさっきの点数......偶然なの?」

 

「当事者がそう言ってるだろ。それと意図的だって根拠はあるのか?」

 

「根拠はないけれど......」

 

「ならこの話は終わりだ。それよりも問題は綾瀬だ」 

 

 これ以上突っ込まれるのが面倒だったので綾瀬に話をシフトした。

 

「綾瀬は特に数学と英語が苦手そうだったけど、どこまでできるんだ? 」

 

「足し算とか引き算とか......あと九九の段は全部言えるよ?英語は......まいねーむいず......えっと、それならできる」

 

「それは小学生レベルだぞ......」

 

 しかも最後は誤魔化している。

 

「私、勉強は出来ない。知らないことばっかり。でも......私は勉強出来るようにならないと駄目なんだよね......?」

 

「ええ、そうね。勉強は学生にとって重要なものなのよ。勉強をすることが学生の役目でもあるんだから」

 

「須藤たちはそう思ってなさそうだけどな」

 

「うるさいわね。水を差さないで」

 

 綾瀬は少しの間考え込み、オレたちを交互に見た。

 

「役目......それなら私、勉強頑張る。だから教えて、色んなこと」

 

 また役目か。先ほどの平田とのやりとりでも出てきた単語だ。そう言えば入学当初のときもオレに『私の役目、それは何?』って言ってたっけ。

 役目ならやる。役目じゃないならやらないを二極化でもしているのか?

 もしかしたら綾瀬にとって一種のやる気スイッチみたいなものなのかもしれない。

 とにかく綾瀬の気持ちは伝わった。

 

「......まぁ、やれるだけのことはする」

 

「そうなってくるといよいよ時間がないわね......綾瀬さん。今日からでも勉強を始めるわよ。今から図書室......は席が空いているか不安ね。仕方ない。特別措置として今日は私の部屋でやることにしましょう」

 

「お、堀北の部屋にお邪魔できるのか。女子の部屋は初めてだから緊張するなぁ」

 

「あなたは呼んでないわ。綾瀬さんを見ながらあなたに付き合ってる余裕なんてないの。第一あなたみたいな男子を部屋に入れるわけないでしょう?」

 

「ですよねー......」

 

 たとえ堀北とはいえ女子の部屋は見ておきたかった。それに綾瀬に翻弄される堀北も。

 

「それと生活習慣の見直しも徹底してやるわよ。私が見る以上、徹底的にね」

 

「う......」

 

 やたら気合いが入っている堀北に綾瀬が気圧される。綾瀬にとって厳しい試練になりそうだ。

 

「......私はAクラスを目指す。いいえ、必ずAクラスに上がって見せる。そのためにはあなたたちに協力してもらいたいの」

 

「協力ぅ?まず第一Aクラスを目指すなんて相当大変だぞ?」

 

「分かってる。だからそのことについてはまた追々話すわ。とりあえず考えが纏まったら対策についても話すわね」

 

「いや協力なんてしな......ガッ!......ゴフッ!!!え!?なんで綾瀬も!?」

 

 拒絶の意思を伝えると何度目が分からないチョップが二回も飛んできた。堀北が目配せした瞬間に綾瀬が反応したのだ。いつの間にそんな連携を......

 

「大丈夫、力抜いた」

 

「嘘だ!絶対嘘だ!綾瀬のやつめっちゃ痛いんだからな!」

 

「ほんとなのに......そんなことよりも綾小路、堀北頑張るって言った。だから私たちも頑張ろう......?」

 

「うっ......」

 

 今度はオレが綾瀬に気圧される。くそぅ......なんとかして打開策を考えねば......

 果たしてこの二人を前にしてオレは抗えるのだろうか。オレは別にAクラスなんて目指さなくてもいいのに。

 

 

 

 

 

◯高度育成高等学校学生データベース

 

氏名 綾瀬心音

 

クラス 1年D組

 

学籍番号 S01T004735

 

部活動 無所属

 

誕生日 10月30日

 

◯評価

 

 

学力 E

 

知性 E

 

判断力 E

 

身体能力 A

 

協調性 D-

 

◯面接官からのコメント

 

学力、知性、判断力に大きな問題があり、面接時の質疑応答では困難を極めた。また入試結果では学年最下位と早急な対策が求められる。

その反面、身体能力では数十年に一人と評価されるほどの逸材であり、当校設立以来、本生徒の右に出る生徒は卒業生を含め存在しないと思われる。

極めて特殊な生徒であること、別途資料による事情等からDクラスへの配属が適正と判断。

 

 

 

◯担任からのコメント

 

まだ入学して間もない時期ではありますが、彼女の特別な事情から早期の経過報告が求められると判断しました。

 

5/1 現段階では大人しい生徒です。引き続き経過を観察します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




学籍番号の法則は分かりませんが自分なりに意味を込めてひよりと一緒にしました
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