ようこそ理想郷へ   作:ナムさん

71 / 71
おまけ ガラスの向こう側

「私たち同じクラスだよ!一緒に教室にいこっ!」 

 

 バスっていう車の中で話してた人が私に指示をする。

 名前は櫛田桔梗。名前は2つに分けることが出来る。私もそう。

 1つめ、苗字で呼ぶことが普通らしい。だからこの子は櫛田。あの場所とは違うから気を付ける。

 

「Dクラスは......あそこだね」

 

 1年Dクラス。

 数字とアルファベット、そしてクラスというもの。そこには人が集まっていた。

 ガラス越しに見ていたあの場所に似ている。でも、ここにいる人たちは楽しそうだった。

 ここが私の新しい場所。  

 ここでは私は何をすればいいんだろう。

 それは誰も教えてくれなかった。あの場所に戻った方がいいのかな。でも戻り方も分からない。

 とりあえず私が座らなきゃいけない場所に座る。

 すぐ傍に窓がある。外を見た。色のある空。あの場所が使えなくなってからよく見るようになったもの。いつ見ても慣れない。

 外を見ていると、私の隣に誰かが座ろうとしてる気配を感じた。

 

「......ねぇ」

 

「......え、オ、オレ?」

 

「うん......」

 

 声を掛けて、その人の顔を見る。

 私はここで何をすればいいのかをこの人に聞こうと────。

 ......なんだろう。この人を見てると、何かを感じる。それを言葉には出来ない。

 

「えっと、どうした......んだ?」

 

「私は......何をすればいいの?」

 

「え?」

 

「私の役目、それは何?」

  

 私の感じたものはよく分からなかったから、聞きたかったことを聞くことにした。

 

「待機してればいいんじゃないか......?」

 

「......わかった」

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()

 それなら従う。

 

「そ、そういえば実はオレはお前と同じバスに乗ってたんだ。凄かったな、あそこでお婆さんをおんぶしようだなんていいだすなんて」

 

「......?何が?」

 

 凄いっていうのは褒められてるということ。

 その理由は分からない。

 

「いや、なかなか出来ることじゃないからな。あの場でああいうことができるの」

 

「ふーん......」

 

 聞いてもよく分からなかった。

 

「やっぱり結構力あるのか?」

 

「......そうなの?」 

 

 ここではどうなんだろう。全く分からない。

 

「いやそうなのって言われてもオレは知らないけど......」 

 

「へー......」

 

「あー......小さい頃運動部だったりするのか?」

 

「さぁ......?どうなんだろ......」

 

 運動はしてる。運動部っていうのは分からない。私は運動部なのかな......。

 

「えーと......」

 

「......?」 

 

「......」

 

「......」

 

 なんか困ってる。どうしてなんだろ。

 

「......自己紹介でもするか?」

 

「自己紹介?」

 

「オレたちお互いに名前も知らないだろう?これから1年間同じクラスなんだしせめて名前ぐらいは知っておかないとな。オレは綾小路清隆。よろしく」

 

 綾小路。聞いたことがある。

 

「......綾瀬心音。よろしく、綾小路」

 

『綾瀬心音』

 

 それが私の名前であり、識別番号。

 何度壊れても、それだけは変わらない。

 だから私は壊れても問題ない。いくら壊れたって、自分だけは失う事なんてないから。

  

 

 

 それが綾小路との出会い。

 そうして過ごしていくうちに、いつの間にか3ヶ月近くが経っていた。

 そして私は、綾小路にあることを聞いた。

 

「綾小路。私とあなたは違う、よね?」

 

 私はたくさんのものを壊してきた。 

 何となく、綾小路もそうなんじゃないのかと思った。

 

「......当たり前だ」

 

 否定。

 違うと言われなかったけど、それは分かった。それなら仕方ない。勝手に仲間なんじゃないかと思ってごめんね。

 私には皆のような『人間らしさ』なんてものは殆ど残っていない。

 嬉しいや悲しいは分かる。でも、笑えないし、泣いたこともない。恐怖が分かるのに恐怖を感じない。怒っている人は分かるのに私は怒ることが出来ない。

 生まれつき脳が壊れていた私は、感情をどうやって表現すればいいか分からなかった。  

 そうしてあの場所で過ごしていくうちに、もう感情そのものがいらないとすら感じた。

 いらないから、壊す。そんなものよりも『綾瀬心音』に求められているものの方が大事だから。

 ずっとそうしてきた。そのはずなのに、私はいつまでもあの場所でいなくなっていった、誰一人として名前も知らない子たちを思い出してしまう。

 どうして────『寂しい』という感情は私の中から消えてくれないんだろう。

 

 




なんで綾瀬は綾小路を『最高傑作』だと疑わないのか。自分とは違うと否定されたから、それだけです。

よう実0巻を持っていますか?

  • 持っている
  • 持っていない
  • 持っていないけど内容は大体知っている。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

ようこそアイドル至上主義の教室へ(作者:黒岩)(原作:ようこそ実力至上主義の教室へ)

Bクラスに可愛いアイドルを入れただけの話。なおその兄はヤリ○ンとする。▼1年生編完結しました。


総合評価:6673/評価:8.62/連載:96話/更新日時:2025年12月16日(火) 18:00 小説情報

ようこそ享楽至上主義の教室へ(作者:アネモネ)(原作:ようこそ実力至上主義の教室へ)

デスゲーム開催に胸を弾ませて高校入学を果たしたCクラス所属の子の話。▼なお、デスゲームなんてなかった模様。▼1年生編、終わり。2年生編、開始。▼匿名希望の方よりファンアートをいただきました。ありがとうございます。▼【挿絵表示】▼X→https://x.com/wind_flower00▼特殊タグ無し版→https://syosetu.org/novel/33…


総合評価:11170/評価:8.79/連載:127話/更新日時:2026年06月20日(土) 13:39 小説情報

コミュ力おばけと幼馴染(♀)がイチャコラするだけの話(作者:百合好きの獣)(原作:ようこそ実力至上主義の教室へ)

櫛田桔梗ちゃん可愛い……▼けど彼女がヒロインの二次創作が少ない……▼ついでに女の子同士でイチャコラしてほしい……▼そんな思いから産まれた怪文書▼


総合評価:5482/評価:8.66/連載:36話/更新日時:2024年02月14日(水) 18:16 小説情報

鶏が先か、卵が先か(作者:楊枝)(原作:ようこそ実力至上主義の教室へ)

彼女は傍観者である。しかし忘れてはならない、彼女は傍観者である前に、この世界に生まれ落ちた等しく一つの生命であること。▼そして正しく、彼女は彼と同類であると___。▼*主人公は綾小路の隣にぬるっといるだけで、何もしようとしないし騒動に巻き込まれるのを華麗に避けようとする話です。


総合評価:11922/評価:8.99/連載:41話/更新日時:2026年06月02日(火) 20:00 小説情報

ようこそ孔明のいる教室へ(作者:tanuu)(原作:ようこそ実力至上主義の教室へ)

高度育成高等学校に入学したのは三国志蜀漢の天才軍師諸葛孔明……ではなく同姓同名の青年、諸葛孔明(もろくずよしあき)だった。▼ここに、新たなる実力至上主義の教室が始まる。▼【挿絵表示】▼諸葛孔明イメージ▼【挿絵表示】▼旧バージョンはご愛顧の声に応え、チラシの裏に投稿しております。▼https://syosetu.org/novel/382495/▼本作品に登場…


総合評価:13264/評価:8.25/連載:89話/更新日時:2026年04月07日(火) 07:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>