もしもあのキャラがウマ娘の世界にいたら・・・? 作:龍角散ガム
ついに来ましたこのペア
ちょくちょく他のお話に出てきたこの2人(+1人)ですが
冴羽獠×メジロマックイーンと同じくらい
いや、それ以上に書きたかったお話です
パコン!!パコン!!
トレセン学園のテニスコートでは激しいラリーの応酬が続いていた。
「腕は鈍っていないようだな、手塚ァ!!」
「お前もな、跡部!!」
試合をしているのはトウカイテイオーのトレーナーとフジキセキのトレーナーである。
かつて、全国中学生テニストーナメントで争っていた2人だが、あの頃と同じように、
いや、あの頃以上に熾烈な戦いを繰り広げていた。
「どっちが勝つと思う?」
「私はフジキセキ先輩のトレーナーだと思う」
「えー?トウカイテイオーさんのトレーナーだって負けてないよ」
2人の試合にたくさんのギャラリーが沸いていた。
観客達はどちらが勝つかを予想しているようだ。
「頑張ってー!!トレーナーさん!!」
「ボクのトレーナーなんだから負けたら許さないからねっ!!」
フジキセキとテイオーはコート内のベンチで自身のトレーナーを応援している。
「はっ、ウォーミングアップはここまでだ」
「ああ、そうだな」
フジキセキのトレーナーが1ポイント先取する。
お互いにウォーミングアップはここまでだと言い、フジキセキのトレーナーは力を解放するように緑のオーラを全身から放つ。
それに対抗するようにテイオーのトレーナーは羽織っていた上着を放り投げ、左手を真上に掲げて宣言する。
「勝つのは・・・俺だッ!!!!」
「「「「「「キャーーーー!!!!」」」」」」
テイオーのトレーナーの宣言に観客達は甲高い声で歓喜をあげた。
そんな自身のトレーナーの姿を見て、テイオーはふふっと笑みをこぼし少し昔を振り返るのだった。
###
トウカイテイオーと言えば、誰もがこう答える。
【無敵の帝王】と。
彼女は中等部にして皐月賞、日本ダービーを制覇した日本で知らない人はいないほどの有名ウマ娘である。
3度の骨折を乗り越え有マ記念で奇跡の復活を遂げた彼女の勇姿は数々のファンやウマ娘達に勇気と希望を与えた。
だが、人々は知らない。
その骨折を乗り越えるまでのテイオーの苦難を。
彼女の脚は異常なまでに柔らかく、テイオーステップと呼ばれる彼女の得意技で数々のウマ娘を打ち破ってきた。
だが、柔らかすぎるが故に負傷しやすい脚であった。
1度目の骨折は日本ダービー後に起きた。
『無敗の三冠ウマ娘になる』
その頃彼女がよく口にしていた言葉である。
誰もがその宣言通り無敗の三冠ウマ娘になるのだと確信していた。
だが、現実は残酷だった。
骨折により彼女は菊花賞の出場を断念。
無敗の三冠ウマ娘の夢は挑戦することさえできずに消え去った。
当時の彼女は自らの夢を諦めなければならない現実とぶつかり心が折れかけるも、担当トレーナーや友人の助けもありなんとか持ち直すことに成功する。
三冠ウマ娘を逃したとしてもライバルと戦うことに意味を見出した彼女はメジロマックイーンと天皇賞春で戦うことを決意し再びトレーニングに勤しんだ。
2度目の骨折は天皇賞春後に起きた。
メジロマックイーンとの激戦を繰り広げるテイオーであったが、結果は惨敗。
レース後のテイオーの様子に違和感を覚えたトレーナーが直ちに病院へと運んだ。
そこで再び骨折していることが発覚した。
しかし、今回の骨折は比較的軽症であると宣言され、1度経験しているテイオーはそこまで追い詰められることはなかった。
しかし、この時テイオーのトレーナーは勘づいていた。
自身の優れた観察眼によりテイオーの脚が以前と比べて壊れやすくなっていることを。
だが、トレーナーはそのことを伝えなかった。
1度骨折から復活している彼女を追い詰めるようなことは出来なかったのだ。
それに、常に自分が側で支えていれば再び骨折することはないという考えもあったのだろう。
医者の診断通り、2度目の骨折はすぐに完治した。
周りの友人も2度目の骨折を心配していたが、いつも通りのテイオーの姿を見て安心していた。
3度目の骨折は宝塚記念を目指している最中に起きてしまった。
その日は、トレーナーが家の用事でトレセン学園を留守にしていた。
トレーナーはテイオーにオーバーワークをするなと念入りに指示をしていた。
しかし、テイオーはトレーナーの指示を無視して過度なトレーニングを行なってしまった。
その結果、3度目の骨折を招いてしまったのだ。
テイオーはすぐに病院へと搬送され、その事実を知ったトレーナーもすぐに搬送された病院へと向かった。
トレーナーがテイオーの病室のドアを勢いよく開くと、そこにいたのは目のハイライトが消えポロポロと涙を流すテイオーの姿だった。
医者はレースに復帰するのは厳しいとテイオーとトレーナーに告げた。
トレーナーの
トレーナーの肩を借りながら病院のベッドへ運ばれたテイオーは、
「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・」
と無気力にトレーナーに謝ることしかできなかった。
それからテイオーはトレーナーの伝手もあり幾つもの病院を転々としていた。
しかし、どこの病院へ行っても診断は同じ。
トレーナーは決して諦めてはいなかったが、テイオーの心は既に壊れていた。
「もういい・・・もういいよ、トレーナー・・・」
トレーナーの手を握り、テイオーは弱々しく発した。
それからのテイオーはレースから離れ、普通の女子中学生として過ごしていた。
ゲームセンターやカラオケ、公園などで遊ぶ毎日を淡々と過ごしていたのだ。
トレーナーやトレーナーの従者もテイオーの付き添いで外出をすることが多かった。
特に、トレーナーが用意した高級紅茶や高級料理はテイオーに大きな衝撃を与えていた。
一見、充実した生活を送っているように聞こえるが、当時の彼女を知る人々は、彼女を見てはいられなかった。
レースを行なっていた頃の明るさは消え去り、目にハイライトは宿っていない。
長期間レースに出てないテイオーを見てファンの人々も無敵のテイオー伝説は幕を閉じたのだと心の奥で受け入れていた。
そんなある日、テイオーは理事長室へと向かっていた。
レースに出れないウマ娘がいつまでもトレセン学園に在籍していることは出来ない。
そう判断した彼女は退学届を提出しに理事長室へと向かっていたのだ。
理事長室の前に着くと、中から会話が聞こえてきた。
「お願いです理事長。テイオーは・・・テイオーは必ず復活を遂げます・・・!!」
「そうは言ってもな、ルドルフ会長・・・」
中では自身の尊敬するシンボリルドルフが理事長を説得していた。
彼女は信じ続けていた。
必ずテイオーは復活すると。
対する理事長もテイオーの復活を心待ちにしているのだが、世間や生徒達の声もあり決断しかねていた。
(カイチョー、そんなにボクを信じてくれるなんて・・・でももうボクは・・・)
2人の会話を聞いていられなかったテイオーは自身で決断するために理事長の扉に手をかけた。
「理事長、自分からもお願いします」
扉を開く前にもう1人の声がテイオーの耳に入ってきた。
(トレーナー・・・・・・?)
扉を少しだけ開け、隙間から理事長室を覗く。
テイオーは部屋の中の光景を見て固まった。
「テイオーはまだ死んでいない」
「跡部トレーナー・・・・・・」
どんなに心が折れようと、ルドルフとトレーナーは自分を信じ続けてきた。
そして、あのプライドが高いトレーナーが理事長に頭を下げてまで自分を信じ続けてくれているのだ。
それに対して自分はどうだ?
トレーナーへの恩を仇で返すようにレースの世界から逃げ、多くのウマ娘が必死にトレーニングをしている中遊んでいた。
そんな自分が惨めで、情けなくて、悔しくて・・・
『トレーナー!!ボクね、カチョーみたいなウマ娘になるのが夢なんだ!!』
『あーん?』
かつて、トレーナーと交わした会話を思い出す。
『この俺様の担当ウマ娘なんだからそんな緩い夢掲げてんじゃねぇよ』
『えー??ならどうしたら良いのさ?』
『【無敵の帝王】、これくらいの夢じゃないと俺様の担当ウマ娘は務まらないぜ』
テイオーは気づくと理事長室の扉を開け、理事長の前で床に頭をつけていた。
カランカランと松葉杖の倒れる音が響き、理事長とルドルフがテイオーに視線を向ける。
「テ、テイオー!?どうしてここに!?」
ルドルフの声を無視し、テイオーは告げる。
「ボクからもお願いしますッ!!もう一度・・・もう一度だけボクにチャンスをくださいッ・・・・・・!!!!」
「テイオー・・・」
ポロポロと涙を流し、嗚咽で上手く言葉を発せられていないが、それでもテイオーは理事長に懇願する。
「お願いしますッ・・・!!ボクはなるんだ・・・ならなきいけないんだッ!!絶対ッ・・・絶対にならなきゃいけない・・・・・・ッ!!」
「【無敵の帝王】にッ!!!!」
理事長室は静まり返り、テイオーの嗚咽だけが響く。
静寂を断ち切ったのは理事長だった。
「分かった・・・もう一度だけチャンスを与えよう」
「ッ・・・・・・ありがとうございますッ・・・・・・!!」
「ただしっ!!」
理事長は「約束」と書かれた扇子を開き、テイオーの肩に手を置く。
「絶対に無茶をしてはならない。いいか?」
「ッ!!はいッ!!!!」
テイオーは再びレースの世界へと帰ってきた。
以前のような活気を取り戻したテイオーを見た友人達は涙を流しテイオーを迎え入れる。
その日からテイオーの辛いリハビリが続いた。
時には挫けそうになることもあったが、自身を信じ続けてくれる人達を想い乗り越える。
【無敵の帝王】を目指して・・・・・・
###
『さあ、今年もいよいよこの日がやってまいりました。暮れの中山レース場。吹き荒ぶ寒風をも跳ね返す程の異様な熱気がターフと観客席を包んでいます。GⅠ有マ記念です!!』
その年を締めくくる大レース有マ記念。
観客達の熱気が会場を包む中、今日の主役とも呼ばれるトウカイテイオーがターフへと現れる。
「テイオー!!待ってたぞ!!」
「頑張ってー!!!」
「良い結果残せよー!!」
自分を待ってくれていた観客達の声を心の奥から受け入れたテイオーは観客達に手を振るう。
「テイオー!!!!長期間レースに出ていなかったけど本当に大丈夫なのか!?!?」
観客席から自分を心配する声が聞こえてくる。
その声を区切りにテイオーを心配する声が広がり、観客席は不安に包まれる。
観客席を見たテイオーは目を閉じる。
すると、瞼の裏にはいつも自分を支えてくれたトレーナーの姿が映る。
「ふふっ・・・・・・ッ!!!」
テイオーは勝負服のマントを宙へ放り投げ、左手を真上に掲げて宣言する。
まるで、自身のトレーナーのように。
「勝つのは・・・
トウカイテイオーのヒミツ①
・紅茶に詳しい
トウカイテイオーのヒミツ②
・テニスが強いらしい
トウカイテイオーのヒミツ③
・夢は今も昔も、そしてこれからも無敵の帝王