もしもあのキャラがウマ娘の世界にいたら・・・?   作:龍角散ガム

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劇場版『ウマ娘プリティーダービー新時代の扉』のネタバレを含みます。


映画未視聴の方はご注意ください








金剛雲水×アグネスタキオン

 

「私、アグネスタキオンは無期限出走休止をここに宣言する」

 

 

皐月賞後に開かれた緊急会見でアグネスタキオンから放たれた言葉に会場の記者達だけでなくこの映像を見ていた日本中の人々が言葉を失った。

 

 

「一体なぜ!?まさか怪我を!?」

 

 

「理由をお聞かせください!!」

 

 

記者達がアグネスタキオンに問いかけるも、彼女はニヤリと不的な笑みを浮かべるだけだった。

 

彼女から答えを聞き出せないと判断した記者達は、彼女の担当トレーナー、金剛雲水へと質問を投げかける。

 

 

「アグネスタキオンのトレーナー!!この無期限出走休止について何かお答えください!!」

 

 

大量のカメラのフラッシュに包まれながら、雲水はマイクに手をかけ淡々と語った。

 

 

「多少の怪我はありますが、レース生命に関わるようなものではありません。今回の無期限出走休止は彼女の意思を尊重したまでのことです」

 

 

「そういうことさ。では私達はこれで失礼するよ」

 

 

「ま、待ってください!!」

 

 

記者達の制止に聞く耳を持たず、アグネスタキオンと雲水は会見会場を後にした。

 

こうして弥生賞と皐月賞で人々に圧倒的力を見せつけた一人のウマ娘がレースの世界から去ったのであった。

 

 

***

 

 

「さあトレーナーくん、これを飲みたまえ!!さすれば君の髪の毛も一瞬にしてモサモサになるだろう!!」

 

 

「遠慮する。そもそも俺は自分で髪を剃っているんだ。ハゲじゃない」

 

 

「ハゲも坊主も髪が無いことには変わらないじゃないか。さあ、一気にグイッと!!ほら!!」

 

 

タキオンから押し付けられる試験管を押し退け、雲水はタキオンのパソコンへと目を向ける。

 

 

「それで、研究はどうなんだ?」

 

 

「勿論順調さッ!!」

 

 

試験管を置き、狂気じみた表情でパソコンに向き合うタキオン。

 

 

「ウマ娘はどこまで速くなれるのか!?その可能性の拡がりは!?———私の体では導き出すことができなかったが、その答えは確実に近づいてきているッ!!」

 

 

タキオンのパソコン画面には数々のウマ娘のデータや映像が流れている。

数々のウマ娘のデータの中で特にタキオンが目をつけていたのはジャングルポケットだった。

 

無期限出走休止を受け、ジャングルポケットやダンツフレーム、マンハッタンカフェと一悶着あったのだが、タキオンは彼女達の実力を認めていた。

 

そして、2度もジャングルポケットを負かしたタキオンだが、彼女の闘志が自身の研究に大きな影響を及ぼすことを確信していた。

 

 

「日本ダービーッ!!最も強いウマ娘が勝つこのレースでポッケくんは私に何をもたらせてくれるのかッ!!非常に楽しみだよッ!!」

 

 

狂気的な笑みを浮かべるタキオンに雲水は何も言えなかった。

いや、()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

『・・・才能のないものを振り返るな。実力の世界で同情は誰も救われない』

 

『凡人は踏み潰して進め。暴力的なまでの自分の才能だけを信じろ』

 

『そうしてこそ 俺が報われる』

 

 

 

 

過去の自分の言葉が雲水の頭の中で木霊する。

 

 

「———ああ、そうだな。ポッケならきっとお前に答えをもたらせてくれる」

 

 

雲水の口から溢れた言葉はタキオンには届かなかった。

 

 

 

***

 

 

 

「ウオォォォォォォォォォォォッッッッ!!!!」

 

 

 

日本ダービーを制したジャングルポケットの雄叫びがターフに響き渡る。

皐月賞のアグネスタキオンの走りに勝るとも劣らない走りに会場は観客の歓喜と熱気に包まれる。

 

アグネスタキオンもまた、興奮が収まらず観客席で声を上げていた。

 

 

「素晴らしいッ!!彼女なら私の追い求める答えにッ!!あの境地へと辿り着けるッ!!ふははははははッッッッッッッ!!!!!」

 

 

席を立ち上がり再び狂気的な笑みと声を上げるタキオン。

そんなタキオンを雲水はただじっと見据えていた。

 

「(気づいているか、タキオン。ポッケが走る姿を見たお前の脚が無意識に動いていたことを・・・)」

 

 

 

 

 

 

それからのタキオンは自室に篭り、ひたすら研究を行っていた。

 

雲水も何か思うことはあったのだが、研究を止めるようなことは言わず、トレーニングを促すこともしなかった。

 

 

「俺はカフェやポッケのトレーニングに付き添う。何かあったらすぐに連絡してくれ」

 

 

「分かったよ」

 

 

タキオンは雲水に目もくれずキーボードをひたすら叩く。カタカタとタイピング音が響く中、雲水はカフェを連れて部屋を後にした。

 

 

「———いいんですか?」

 

 

カフェが雲水に問いかける。

 

 

「ああ、今のタキオンに何を言っても意味はない」

 

 

 

 

 

『俺は———間違ってなんかいない』

 

『そうだ、努力では決して頂点は獲れない』

 

 

 

 

 

 

「そう・・・ですか」

 

 

何か言いたげそうなカフェであったが、二人の関係に口を出すようなことではないと判断し、口を紡いだ。

 

 

 

 

 

『マンハッタンカフェが外からぐんぐん差を詰めてきた!!マンハッタンカフェが並んでかわしてゴールインッ!!』

 

 

レースの映像を流しながらひたすらデータを入力していくタキオン。

ぶつぶつと何かを呟きキーボードを叩く。

 

だが彼女は気づかない。

無意識に脚を動かしタタンタタンの床を鳴らしていることに・・・

パソコンで流れるレース映像で自身が走っているかのように・・・

 

 

 

***

 

 

 

「なあタキオン、オレと並走してくれねぇか?」

 

 

秋風がなびく中、タキオンの自室へと足を運んだジャングルポケットはタキオンに並走の依頼をしていた。

 

日本ダービー以降、調子が優れなかったジャングルポケットだったが、トレーナーやフジキセキの助けもあり復活を遂げた。

 

そして、世紀末覇者との戦いジャパンカップを目前としたジャングルポケットは自身のライバルであるタキオンの手を借りようとしていたのだ。

 

 

「すまないが、私は走る気はないんだ」

 

 

「———そうだよな。すまねぇ、無理を言って。だが、ジャパンカップ絶対に見に来てくれ。オレの走りを・・・」

 

 

バツの悪そうな顔をしながら、しかし、笑みを崩さずタキオンに告げたポケットは部屋を後にする。

 

一人残されたタキオンは、部屋の真ん中で立ち尽くす。

すると、窓から秋風と共にウマ娘達の掛け声が運ばれてきた。

部屋の窓に手をかけ、タキオンは外を見つめる。

 

ジャングルポケットと入れ替わるように部屋に入ってきた雲水は、タキオンに声をかけることなく椅子に座りタキオンを眺めていた。

 

悪魔のようなあの男ならどうしたのだろうか。

ケツを蹴り上げて喝でも入れるのだろうか。

そんなのは俺に向いてないなと笑みをこぼした雲水は、来るジャパンカップに期待を寄せるのであった。

 

 

***

 

 

 

ジャパンカップ当日。

ウマ娘達がゲートインを完了し、会場は風音すら聞こえない静寂に包まれていた。

 

誰もが息を呑む中、タキオンはゲートを見つめていた。

 

 

 

ガタンッ!!

 

 

『第21回ジャパンカップッ!!ゲートが開いてスタートが切られましたッ!!!!』

 

 

「「「「「ワァァァァァ!!!!」」」」」

 

 

「あっ———」

 

 

ゲートが開き実況が静寂を断ち切る。

続くように観客達の歓喜に包まれる中、タキオンは無意識にターフに手を伸ばす。

 

 

まだ わたしが げーといん していない———

 

 

『テイエムオペラオーもまずまずの手応えで前の方を進んでいる!!外から一気にトゥザビクトリーか!?一気にトゥザビクトリーが先頭に上がってきましたッ!!』

 

 

「いけぇ!!!」

 

 

「オペラオーッ!!世紀末覇王の力を見せてくれッ!!」

 

 

実況や観客の声が響くが、タキオンの耳には入ってこなかった。

 

 

タキオンはターフを走るウマ娘達を見つめていた。

最強ウマ娘の称号をかけた互いに凌ぎを削り競い合っている彼女達の姿を。

 

 

レースの世界から去ったはずなのに胸の奥が熱くなる。

 

 

この感情は一体なんなのか・・・

 

 

どうして私は観客席にいるのか・・・

 

 

タキオンの瞳から涙が溢れ頬を伝う。

そんなタキオンの姿に雲水は過去の自分が重なった。

 

 

 

 

 

『・・・そうだお前は間違っておらん。決してな・・・』

 

『でも』

 

『俺は———』

 

『俺は——————』

 

『どうしてこんな処にいる』

 

『どうしてあのフィールドで戦っていないんだ』

 

 

 

 

 

『先頭はテイエムだッ!!テイエムオペラオーッ!!テイエムオペラオーッ!!外からはジャングルポケットが差を詰めてきたッ!!襲いかかるジャングルポケットッ!!最強ウマ娘の意地をかけた一騎打ちッ!!』

 

 

「「「「「ウォォォォォォォォォッ!!!」」」」」

 

 

 

最後の直線争いで盛り上がる中、雲水は顔を伏せ涙を流すタキオンの隣に座り頭に手を置いた。

 

 

「トレーナー・・・くん・・・ッ」

 

 

「その涙を決して忘れるな、いいな」

 

 

「うわああああああッッッ!!!」

 

 

実況と観客の歓喜と共にタキオンの泣き声が響くのであった。

 

 

 

***

 

 

「さあ、トレーナーくんッ!!私の走りをしっかりと撮ってくれよッ!!」

 

 

「・・・・・・・・・・・・ああ」

 

 

ジャパンカップの激戦の後、タキオンはレースの世界に舞い戻った。

アグネスタキオンの復活に多くの人々は喜びの声をあげ、ジャングルポケットやダンツフレーム、マンハッタンカフェもタキオンの復活を快く受け入れてくれた。

 

 

タキオンがターフを走る姿を雲水はカメラに収める。

ゆさゆさとドレッドヘアーを揺らしながら・・・

 

 

タキオンがレースに本気になったことで、雲水もタキオンの実験に付き合うようになった。

 

 

薬の副作用で、時には知り合いの栗頭のラインバッカーや百獣の王のようなラインバッカー並みの筋肉ムキムキになったり、身体中が七色に発光しゲーミング修行僧と呼ばれたりしていた。

今も薬の副作用の影響で、坊主頭だった髪が一気に伸びドレッドヘアーへと変化していた。

 

 

「ねぇタキオンさんのトレーナー雰囲気やばくない?」

 

 

「マジでヤンキーとかヤクザ並の圧を感じるんだけど・・・」

 

 

「ア゛ア゛ン?」

 

 

「「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?!?」」シュタタタタッ!!!

 

 

喉の調子が悪く、思わずドスの効いた声をあげてしまった雲水。

その声にビビりヒソヒソと会話をしていたウマ娘二人はその場から逃げ去っていく。

 

 

「はぁ・・・これじゃあ阿含と瓜二つだな・・・」

 

 

トレーナー室にバリカンはあっただろうか。

タキオンを撮影しながら雲水はため息をつくのであった。

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