もしもあのキャラがウマ娘の世界にいたら・・・?   作:龍角散ガム

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ブルアカやってたら遅れたゾ

あと今回は長めなので注意

元ネタはアニメこち亀の111話『兄として...!』というエピソードになります。
兄として弟の結婚式のために行動する『両津勘吉』という人間をよく表した私の好きなエピソードの一つですね。


両津勘吉×シンボリルドルフ

 

 

今日は学校も休みでトレーニングも無い休日。

エアグルーヴからの買い物のお誘いを断った私は亀有へと足を運んでいた。

 

普段の私は皇帝として、トレセン学園の生徒会長として活動しているが、今日の私にはそれらの肩書きを持たない一人の学生だ。

 

トレセン学園周辺の静かな街並みとは異なり、様々な人々が集まる亀有駅に都会の雰囲気を感じながら私は目的の場所へと向かう。

 

亀有駅から5分ほど歩くと目的の公園に到着した。公園の外から中を見渡すと、ラジコンや飛行機のおもちゃで楽しそうに遊んでいる子供達が目に入った。

男女ウマ娘問わず睦まじく遊ぶ集団に一人、青を基調とした警官服を着た男性が子供達の中心となって遊んでいた。

 

子供達よりも子供らしく、しかし、みんなから慕われているその男性が私の目的の人物である。

警察の仕事はどうしたのかという疑問も浮かんだがおそらくいつものようにサボっているのだろうと結論付ける。

出会った時から変わらない彼を見て無意識に笑みをこぼした私は公園に入り、その男性に声をかけた。

 

 

「やあ、両さん。相変わらずだね」

 

 

###

 

 

私が両さんと初めて出会ったのは、中川財閥に招待された結婚式だった。

 

その結婚式は中川家の遠い親戚の結婚式だった。

中川財閥とシンボリ家も遠い親戚関係であることもあるが、それ以上に3冠ウマ娘がいる名家として特別に結婚式に招待された。

 

私は小さな頃からお偉い方との会席や結婚式に参加していた。だが、その日の結婚式は今までで———いや、私のこれからの人生を含めても一番記憶に残る温かい結婚式だった。

 

正直に言うと、私はお偉い方との関わりが嫌いだ。コネを広げるために偉い人物に媚びへつらい自分をアピールする人物と、自身の自慢話を語る人物。

損得で縁を広げていく大人の世界が私にとって非常に醜く、そして悲しいものに見えていた。

 

その日の結婚式もいつもと同じような世界が広がっていた。勿論、中川財閥の親戚ということもあり品のある人物ばかりで今までのような醜い世界ではなかった。

 

しかし、それでもお偉い人物ばかりの集まりであることには変わりない。

お偉い方の独特な雰囲気を感じていた私はいつものようにシンボリ家として恥のないように振る舞っていた。

 

 

「今こそ飛躍の時であり、時代は大きく変わろうとしています。そこで私は———」

 

 

次期大臣候補の先生の挨拶を私は淡々と聞いていた。先生の挨拶は非常に退屈で、参加者も窮屈そうに聞いていた。

そんな空気を一瞬に変えたのが両さんだった。

 

 

「はいそこまで!長すぎるのでこの辺で終了です」

 

 

先生の話を遮りマイクを奪った両さんは、司会がいるにも関わらず結婚式を進めていく。

 

 

「弟の金次郎は子供の頃寝小便ばかりしていたどうしようもない人でした」

 

 

「に、兄さん・・・(照)」

 

 

「ご覧ください!これが父親です!実に人の良さそうな顔をしています!人が良すぎて保証人になり、その結果仲見世の支店を潰してしまいました!!」

 

 

「よ、余計なことを・・・!!!(照)」

 

 

「私どもの親戚は職人のオンパレード!親戚だけで家が一軒建ちます!皆チャキチャキのイキの良い貧乏人ばっかりですが、まだ誰も銀行強盗をしていないのが自慢の一つです!」

 

「また、親戚には107歳をトップにジジイババアがいっぱいおります!ぼーっとしているからつい長生きをしてしまうんですね!」

 

 

「「「「「「あはははははははっ!!」」」」」」

 

 

冗談混じりの両さんによる両津家の親戚の紹介で会場に笑い声が響く。

最初は両さんの行動に疑いや蔑みの目を向けていたが、結婚式が進むにつれ全員が笑顔になっていった。

さらに、首を絞めていると料理が喉を通らないとネクタイを緩めるように提案し会場の緊迫した空気をより柔らかいものへと変えていく。

 

 

「お待たせしました。お色直しを終えて新郎新婦が入場です!」

 

 

両さんの紹介で現れた新郎新婦は、神輿に乗って登場した。神輿の担ぎ手の雄々しい掛け声とともに神輿が揺れ、会場内を盛り上げる。

私を含め、多くの人物は、初めて間近で見る神輿の迫力に圧倒された。

 

その後の両さんはねじり鉢巻を付け、樽酒を割り全員のグラスに柄杓で酒を注いでいった。

 

「さあみなさん!!二人の幸せを祝ってガンガン飲みましょう!!飲んで飲んでホテルの中の酒を飲み尽くしましょう!!」

 

 

「「「「「「おーッ!!!」」」」」」

 

 

酒の力もあるだろうが、それ以上に両さんが作り出した会場の雰囲気に全員が飲まれていった。

 

 

「気に入った!おたくの植木、全部俺が手を入れてやる!」

 

 

「本当か!?そりゃあ助かる!!」

 

 

そこには家系など関係なく、誰もが平等に接する温かい世界が広がっていた。

 

 

『誰もを導く頂点となり、皆を導くウマ娘で有りたい』

 

 

幼い頃から受けてきた英才教育の上で私が掲げた理想。

両さんは、それを体現した人物のようだった。

彼のようになりたい。

そう思った私は、静かに会場から去っていく両さんを追いかけた。

 

 

###

 

 

 

 

「待ってください!!」

 

 

両さんのお父様と一緒に帰宅する両さんを見つけ、私は急いで声をかけた。

 

 

「嬢ちゃんどこかで見たことが・・・」

 

 

「バカ親父。シンボリルドルフだよ!!」

 

 

「ああ!!通りで見たことあるわけだ!!」

 

 

「突然お声がけして申し訳ございません。ですが、両津さんにどうしてもお聞きしてほしい相談があります・・・」

 

 

私は二人に軽く挨拶をした後、自身の悩みを打ち明けた。

 

私は、皆を導くウマ娘として多くのウマ娘からの相談を受ける。

以前は無意識に威圧感を与えてしまい声をかけてくれるウマ娘は多くなかったが、トレーナーくんの手助けもあり今は多くのウマ娘が声をかけてくれるようになった。

 

そんなウマ娘達の中には、怪我や自身の実力に限界を実感し、トレセン学園を去っていくウマ娘もいる。

そんな彼女たちの悩みを私は解決することが出来ずにいた。

 

良いトレーナーと出会う?

 

練習を重ねていけばいつかは実る?

 

そんな安易な言葉をかけても彼女達のためにはならないのは分かっている。

世の中には努力をしても敵わない才能の壁があるのだ。

 

 

『諦めなければ、必ず夢は叶う』

 

 

いつの日か、私が相談をしにきたウマ娘に対して放った言葉だ。

その言葉を聞いた彼女は、涙を流しながら私に叫びをあげた。

 

 

『それは・・・それは才能がある人だから言える言葉です!!会長には分からないでしょうね!?私みたいな『凡人』の気持ちなんて!!!』

 

 

私は何も言い返すことができなかった。

そのまま彼女はトレセン学園を去っていった。

 

私は『天才』と『凡人』の区別をしたことはない。

『天才』も『凡人』も関係ない、全てのウマ娘が幸せになれる、そんな世界を作り上げたいのだ。

 

だが、私は『天才』側のウマ娘なのだ。

『天才』には『凡人』の気持ちが分からない。

その言葉が私の胸の奥で棘のように突き刺さる。

 

だからこそ、私は両さんのようになりたいと思った。

名家も関係なく等しく関わることができ、皆を導くことができる人間に———

 

 

 

私は両さんに全てを打ち明けた。

そして、両さんは私の悩みを黙々と聞いてくれた。

少し考えた後、両さんは私に問いかけてきた。

 

 

「お前の言う幸せな世界ってのは一体なんだ?」

 

 

「・・・・・・誰もが等しくレースで輝くことができる、そんな世界です・・・」

 

 

「馬鹿か。レースに等しいも何もあるか」

 

 

「なっ!?」

 

 

私は理想の世界を否定され、言葉を失った。

 

 

「レースってのは、一人一人のウマ娘が勝利に向けて努力し、1着を勝ち取った者だけが輝く弱肉強食の世界だ!!それを誰もが等しく輝ける世界だ??ふざけるな!!」

 

「みんなで手を繋いで一緒にゴールするのか!?勝ったことのないウマ娘のために1着を譲るのか!?お前の言う世界はこういう世界だ!!努力をする者を侮辱するふざけた世界だ!!笑わせるな!!」

 

 

「では・・・どうしたらいいんですか!!勝利を手にすることができないウマ娘は・・・みんなが幸せになれる世界を創るにはどうしたら!?!?」

 

 

分かっていた。

私が想い描く世界は正しくないことを。

平等という名のウマ娘達を縛り付ける呪いの鎖で溢れた世界であることを。

 

だが、私達ウマ娘はレースがあるからこそ輝けるのだ。

 

———いや、違う。

 

私は知らないのだ。

レース以外でウマ娘が輝ける世界を———

 

 

「言い過ぎだ勘吉!!」

 

 

「いでっ!!殴ることはないだろ!!ワシは事実を言ったまでだ!!」

 

 

現実を突きつけられた私は、自分の無力さに絶望し涙を流しながら拳を強く握った。

そんな私を見た両さんは、私に一つ提案をしてきた。

 

 

「来週の日曜日は空いているか?」

 

 

涙を拭き、何も予定がないことを確認した私は言葉を発さず無言で頷く。

 

 

「なら朝の9時に亀有公園に来い。ワシがお前さんに見たことない世界を見せてやる」

 

 

そう言い両さんはその場から去っていった。

私はその場で立ち止まり両さんの背中を見つめることしかできなかった。

 

 

 

###

 

 

あっという間に時間が過ぎ去り、両さんに指定された日になった。

私は言われた通り亀有公園へと向かった。

 

 

「約束通り来たな!じゃあワシについて来い!」

 

 

そう言われた私が連れてこられたのは超神田寿司というお寿司屋さんだった。

最初はそこで食事をするのかと思ったが、なぜか両さんに制服を渡され、超神田寿司で働くこととなった。

 

 

勿論、寿司を握ったことがない私が寿司を握ることはなく、ウマ娘の身体能力を生かして出前を届ける仕事を行った。

私は、この町を全く知らないため出前到着の時間が遅れてしまったが、出前を頼んだ人々はみんな私を責めることなく温かく迎えてくれた。

 

 

その日は丸一日超神田寿司で働き、アルバイト代を受け取りその日を終えた。

お金は必要ないと超神田寿司を経営する夏春都さんに伝えたが、労働者に給与を与えるのは当たり前だと言われ渋々受け取った。

 

 

その後両さんと共に亀有を軽く案内された後、再び空いている日時を指定されその日は解散した。

 

 

 

 

 

その日以降、私は何度も両さんに呼ばれては配達や工事など様々なアルバイトを行った。

亀有の温かい人々と関わる中で、私はレース以外の世界を知ることができた。

 

そして、アルバイトを繰り返す中で私は思いがけない人物と再会した。

それは、以前私が何も言い返すことができずトレセン学園を去っていった彼女であった。

 

彼女も私の存在に気がつき最初は気まずい空気が流れたものの、彼女の後輩として働くうちにそのような空気は消え去っていった。

 

私は彼女とトレセン学園に在籍していたときのように。

いや、それ以上に間近に接することができた。

 

 

『あははっ!!まさか会長さんが私の後輩になるとは思いもしてなかったよ!!』

 

 

と彼女は茶化すように私に話しかけてくれた。

それは、以前の会長と生徒という関係ではなく、歳の近いウマ娘同士の関係のようだった。

 

そんな彼女に私は感謝しつつも、胸の奥の棘がチクチクと突き刺さる感覚を感じていた。

 

 

 

 

その日のアルバイトが終わった後、私は彼女に謝罪した。

あの時、キミに何も言えなかったことを。

キミの助けになれなかったことを。

しかし彼女は、

 

 

 

『別にもう気にしてないよ!!今の私、トレセン学園にいた頃より幸せだもん!!それに、私もあの時会長に失礼なこと言っちゃったでしょ?だからこれでおあいこってことで!!』

 

 

 

と笑いながら返してくれた。

そんな彼女がとても眩しく、救世主のように見えた。

私は周りの人の目を気にすることなく嗚咽を漏らした。

 

 

その日、私のUmainに一人のウマ娘が追加された。

 

 

エアグルーヴ、テイオー、シリウス、シービー、マルゼンとは少し違う友達。

 

 

その夜、布団に入りながら彼女とトークを交わした。

トークが終わると、私は彼女のアイコンにお気に入りマークを付けて眠りについた。

 

 

 

私の胸の奥に突き刺さっていた棘は消え去っていた。

 

 

 

 

###

 

 

 

 

「どうだ?世界は広いだろ?」

 

 

「はい・・・・・・私はウマ娘が輝くにはレースしかないと思っていました。だけど違った・・・レース以外でもウマ娘は輝けるんだって・・・」

 

 

「確かにウマ娘にとってレースは何よりも大切なことだろう。だけど、レース以外にもウマ娘には・・・いや、人間には輝ける場所がたくさんある。それを忘れちゃいかん。誰もを導く頂点として皆を導く存在になるなら余計にな」

 

 

「はい・・・・・・ねぇ、両さん?」

 

 

「ん?なんだ?」

 

 

「ありがとう」

 

 

 

 

###

 

 

「おいルドルフ!お前さんもやってみろ!」

 

 

「これは・・・コマかい?」

 

 

「ベーゴマだよベーゴマ!!知らんのか?なら教えてやろう!!ワシはベーゴマだと負けなしだからな!!」

 

 

ラジコンや飛行機のおもちゃ遊びに飽きた子供達とベーゴマを行う両さん達。

私は両さんに誘われベーゴマを手に持った。

 

 

「こら両津!!勤務中に何サボっているんだ!!」

 

 

「げぇっ!!!部長!?!?」

 

 

「待て!!待たんかばっかもーーーん!!!!」

 

 

いつものように大原部長と追いかけっこが始まる。

そんな両さんを見て私は自然と笑いが込み上げてくる。

すると、子供の一人が私の袖を引っ張ってきた。

 

 

「お姉ちゃんベーゴマ知らないの?なら俺が教えてあげるよ!!」

 

 

その子に続いて俺も、私もと子供達が私の周りに集まってくる。

 

 

「ふふっ・・・では、教えてもらおうかな」

 




シンボリルドルフのヒミツ①
・休日はよく亀有に出没するらしい。

シンボリルドルフのヒミツ②
・無敵のウマ娘とも知られる彼女だが、とある人物にはレースでも勝てないらしい(その人物が勝った時に報酬がある条件付きの場合)

シンボリルドルフのヒミツ③
・昭和の遊びに詳しいらしい。

シンボリルドルフのヒミツ④
・レースの相談だけでなく、レース以外の進路相談役としても生徒達から非常に頼りにされている。本当に辛そうな生徒に対しては相談を受けた後、亀有のとある交番の住所が書かれた紙とある人物に渡す用の菓子折りを渡すらしい。
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