ネット小説はほぼROM専でハーメルンは初投稿ですよろしくおねがいします
「……何処だここ」
この時は未だ認識していなかったが、「俺」が「堀北鈴音」としてこの世界に現れてから最初の一言がこれだった。
うだつの上がらない毎日。学生時代から読んでいたラノベもあまり読まなくなり、入浴中や食事中に一緒に見やすいアニメや手軽に読める漫画を趣味として過ごす日々。
特にハマっていたのが所謂転生物の作品だった。
転生して得たチート能力やその転生先の知識――俗に言う原作知識や未来知識、或いは転生前から習得していた職業などが由来の専門的知識を活かして異世界やタイムスリップした過去の世界で活躍する主人公を見るのが好きだった。
そんないつも通りのある日、帰宅途中に通勤経路にある小さな町工場から爆発音のような音がしたのを聴いて心配半分恐怖心半分で恐る恐る顔を向け……一回目よりも更に大きな爆発音がしたのを最後に「俺」の意識は途絶えた。
――そして気がついたら『ようこそ実力至上主義の教室へ』に登場するキャラクターの1人である堀北鈴音になっていた、というわけである。
最初は驚いた、なにせ爆発が起きたと思ったら全く知らない部屋――それも明らかに女子の学生と思しき人物の部屋で倒れてたんだから。
起き上がってぼそっと出た独り言の声がおかしくて最初は爆発で気管などに大怪我でもしてしまったのか、というか怪我とかしてないのかと自分の身体を眺め回してさらに驚いた。
なにせ目に入る自分の身体が女の子のそれだったんだから。
混乱したまま部屋を見回してふと室内にあった鏡が目に入り――そこで俺はどういった状況なのかを認識した。
つまり「俺」は「堀北鈴音」になってるんだ、と。
――堀北鈴音!?よう実の超重要人物じゃねえか!
――転生物とかに憧れがないわけではなかったが、原作にあまり関係ない脇役とかあるいは死亡や退場が確定してる悪役令嬢とかじゃないのかこういうのは普通!?
――これ俺の一挙手一投足で原作の展開大きく変わるよな!?責任重大だろこれ!!
堀北鈴音。『ようこそ実力至上主義の教室へ』に登場するキャラクターで、主人公である綾小路清隆と同じ1-Dに所属する文武両道の優等生……ではあるのだが、登場当初は兄に「孤独と孤高を履き違えている」と評価されるくらい友達は居ないし作ろうともしない主人公にもかなりツンツンした態度ををとる……といったキャラである。
物語の主要人物の1人で、もしその堀北鈴音になってしまった……憑依、と言ったほうが良いのだろうか?してしまったとなると、物語に与える影響はとても大きいだろう。
とりあえず現状を把握しようとして部屋の中を見ていたところ、時計やカレンダーを見ると今は入学式前日の早朝……といったところか。
どうやらここはアニメなどで描かれていた高育の寮の部屋ではない別の部屋であるようだった。
つまりここは堀北鈴音の実家の自室であるらしい。
もう既に高育の寮に送って良い最低限の私物は送ったあとのようで、部屋の中に高育宛の宅配便の伝票が置いてあった。クソ、何か役立ちそうなアイテムでも仕込めればよかったのに。
部屋の中は整理整頓されていて、机の棚には賞状や小中学校の教科書、高校用の参考書、それに卒業アルバムなどが置いてあった。
手にとって中を……やけにデカくて重いなこれ。なんだ?
中を開いてみて原因が判明した。ざっと見てみたところ、1学年34,5人ほどの学級が10クラスくらいある。
単純に人数多いからページ数多くてデカいのか……たしかに原作でも「全校生徒1000人を超えるマンモス校」と言っていたから1学年はその3分の1でそのくらいの人数になるのか。
そしてページをめくっていくと……あった、中学時代の堀北鈴音と、それとは別クラスのページに載っていた櫛田桔梗の写真である。
櫛田桔梗。堀北鈴音として高度育成高校に行くならおそらく一番の障害になる人物である。
彼女は中3の2月頃、つまり今から1ヶ月ほど前に彼女のクラスで学級崩壊を巻き起こし、そして全く面識がなかったとはいえ同じ中学校出身である堀北鈴音をその秘密を口封じするために退学させようとする厄介な奴である。
その上、彼女は堀北鈴音と違い人付き合いが良く、男女問わず友人も多い――もっとも、それを無理してやり続けたからストレスを溜めてしまいそれが学級崩壊に繋がるんだが。
コミュニケーション能力だけではなく勉強やスポーツも堀北や綾小路、高円寺といった男女の最高峰には及ばずとも十分に高い水準で出来る為、外面はいいのだ。外面は。おまけに胸も大きいし。
堀北鈴音が特別小さいわけではないんだが、如何せん櫛田や佐倉、長谷部といったDクラス女子の上位陣と比べると……と、今は自身のものである胸を見下ろすと思う。ま、まあただでさえ慣れない女子の身体で更にバカでかいものをぶら下げてると動きづらいとか有るだろうし……うっ。
いかんいかん、思考が脇にそれてしまった。今は櫛田の問題だ。
櫛田なあ……創作物のキャラクターとしては嫌いじゃないけど、今こうして同じ世界にいてこっちに積極的に敵対してくるとなると話は変わる。
この学校、退学になっても他の高校とかに編入出来るとはいえ、だからってじゃあむざむざ櫛田の思惑通り退学してやるかって話なんだよな。堀北鈴音もそれを望まないだろうし。
どうせなら3年間きっちりここで学んでAクラスで卒業したいもんだ。
しかし櫛田はどうしたもんか……俺も正直口が立つ方ではないし、友だちを作って人を動かして……ってのは出来そうにない。堀北鈴音の記憶や知識を辿ってみてもそういう方法とか全く出てこないし。
櫛田……うーん………――あ、そうだ。櫛田のブログ。
櫛田の本性がバレて学級崩壊を引き起こさざるを得なくなった原因であるあのブログ、あのブログを保存できれば、万が一櫛田と直接対決や交渉することになった時有利に立ち回れるんじゃないか?
よっしゃ!そうとなれば早速検索だ!
うおおおおGoogle!Bing!DuckduckGo!俺に力を貸してくれえええええ!!!!!
―――探せど探せど櫛田のブログやその過去ログ、魚拓やWebアーカイブの類は出てこずせいぜい場末のネット掲示板で「〇〇中学校学級崩壊」みたいな話があっただけだった。クソ。