山内に対する負の信頼強過ぎるw
あの後、遅刻や私語について注意するという当たり前のことをクラス全体で再度徹底するように決めたりして、ひとまず授業を受けた後放課後に改めてテストについての対策……おそらく勉強会の開催等だろう、について話し合うことになった。
原作だと
初日の件が正しかったと証明されたことも有り、今まで殆どのクラスメイトと交流がなかったにも関わらず一気にクラス中の注目を集める人物となってしまったからだ。
女子が平田や高円寺、綾小路に賭けと無縁だった幸村や三宅と言った一部を除いた男子全員を白眼視している状況ではあったが、話し合いはなんとか穏便に進んでいた。
完全に0ポイントでは無い分、ある程度皆精神的余裕があったのかもしれない。
それ故に軽井沢がクラスの女子にポイントをせびったり山内がゲーム機を売りつけようとする事もなかった。 4万5千ポイント減っているとは言え、まだ5万5千ポイントは毎月もらえるわけだからな。
そうして過ごしていると
……ん? 2人同時? ここは綾小路だけ先に呼び出される流れでは?
かなり困惑しながら綾小路と2人で職員室に向かう。
「失礼します。茶柱先生はいらっしゃいますか?」
「佐枝ちゃん?今は席を外してるみたい」
中から若い女性の声で返答があった。この声は間違いなくBクラスの担任である星之宮知恵先生だろう。
酒好きで恋愛話好き、一見ちゃらんぽらんなように見えて腹の奥底では色々企んでいるようなタイプの若い先生だ。ちなみに茶柱先生とAクラスの真嶋先生とは高育の同学年という繋がりがある。
「あ、貴方達は……へえ、この子が……」
「どうかなさいましたか?」
「Dクラスなのに初日で5月以降の支給ポイントやクラスポイントの事を看破してたすごい新入生と、水泳未経験にも関わらず50m24秒で泳ぐとんでもないスイマーの卵がいるって話題になってたのよ」
めちゃくちゃ話題になってる……教職員の間だけだと良いんだが。
「いえ、私はそんな大したことは……」
「またまた~、謙遜も行き過ぎると嫌味よ?貴女がBクラスに居たら、私のクラスは今頃BじゃなくてAになってたと思うわ」
「私のクラス……?」
「あ、自己紹介が遅れちゃったわね。 私は星之宮知恵。1-Bの担任よ」
まあ私は別に知ってたけどね。
「それで今日は佐枝ちゃんに何の───「もう来ていたのか。今から2人とも生活指導室に来てくれ」
ようやく我らが茶柱先生のおでましだ。遅い。
「ねえねえ佐枝ちゃん、貴女が新入生を生徒指導室に呼び出すなんて珍しいじゃない。どういう風の吹き回し?」
「これはCクラスの事であってお前には関係ない」
「5月にいきなりDからCクラスに成れるようなクラスの立役者を集めて下剋上の算段でも立てるつもりだった?」
「……お前には関係のない話だと言っている」
「……ふうん、そういう事。これ以上邪魔して怒らせちゃまずいし、私は退散しま~す」
こちらに言いたいことだけ言うと星之宮先生は去っていった。
嵐のような人だ……
───生徒指導室に着くと、茶柱先生は開口一番こう切り出した。
「お前達、Aクラスを目指す気は有るのか?」
「少なくとも私はそのつもりでいます」
「綾小路は?」
「……オレは………」
おっと、これは綾小路に良くない影響与えそうか?ならこちらから助け舟を出す事も───
「まあまだ未定ならそれはそれでいい。それより堀北、お前は綾小路の事を
何処まで……と来たか。原作知識が有るから何でも答えられるが、この場合は不審さを出さないように私が知っていたらおかしい事は言わないように気をつけねば。
「同じクラスで隣の席の男子生徒で……水泳が得意なのと、書道とピアノをやっていた事までは」
「そうか。勉強面については?」
「……入試と前回の小テストがどちらも半分ほどしか解けなかった、と聞いて少し驚いた覚えがあります」
「おい堀北」
綾小路が少しイラッとした様子で声をかけてくる。いや聞かれたからつい……
「半分ほど……か。事実では有るが大きなミスリードが含まれているな?そうだろ、綾小路?」
「オレには何のことかわかりませんね」
「あくまでしらを切るか……なら仕方ない」
あっこれ綾小路のテスト答案暴露くるな。間違いない。
「綾小路は50点ほどしか取れなかったんじゃない、意図的に全教科で50点を取ったんだ」
やっぱり来た。
「50点を……?」
ここは茶柱先生に合わせてすっとぼけておくか。
「そうだ。証拠に、小テストでは正答率90%のごく簡単な問題を間違えているのに最後3問のほぼ正解者がいなかった問題に正答したりしている……偶然と言うには不自然だろう?」
「……偶然ですよ偶然」
「入試でも全く同じことをしておいてか?」
「綾小路君、以前話した時100点満点のテストの平均点を50点だと思っているような事を話していたけど、もしかして……」
「完全にクロだな」
「だから偶然ですって。オレには隠れた天才とかそんな事実はない」
いや思いっきりそうだろ。陰の実力者ガチ勢だろお前。
「そろそろ職員会議だから2人とも、指導はここまでだ。速やかに帰寮しろ」
そう言って茶柱先生は生徒指導室を出ていってしまった。私達も次いで部屋を出て、職員室を通り抜けて廊下に出る。
「綾小路君、先程はその……ごめんなさい」
「堀北が謝る必要はないだろ」
「いえ、これは私なりのけじめだから……」
「………」
「綾小路君にはなにか事情があってあれをやったのよね?なら私はこれ以上詮索したりはしないわ」
「その方が良い」
「………その上で非常に厚かましいとは分かっているんだけど、その、もし綾小路君さえ良ければ……」
「……Aクラスに上がるのに協力してほしい、か?」
「ええ」
「それは部活動紹介の時に出てきた堀北と同じ苗字の生徒会長……兄か?あの人物と関係しているのか?」
「それも有るわ。でも……私自身の意志で、この1年Cクラスの仲間とともに戦ってAクラスにまで共に歩んでいけたらな、と思っているの」
それは正直な私の意見でも有る。協力してAクラスで卒業、やっぱりこれこそが王道だろう。
「その為に、綾小路君にも、クラスメイトとして、仲間として、友人として……力を貸してほしいの。……駄目、かしら?」
「オレは事なかれ主義だからな……こういう事はあまりしないんだ」
「……っ………そう、なら───」
「だが、友人の為に力を貸す……というのはオレも悪いことじゃないんじゃないか、とも思っている」
「───!!」
「この学校で初めて出来た友人だからな、堀北は」
「……ありがとう、綾小路君」
「水泳と茶道とピアノならとりあえず任せてくれ」
「……書道とピアノ、でしょ?ふふっ」
私は綾小路と握手をしながら、そう言って微笑んだ。