テストを
「皆に聞いてほしいことがあるの」
「今から中間テストに大きく役立つあるものをCクラスの皆に配布するわ。自分の分を受け取ったら、後ろの席に回してもらえるかしら」
そう言って私達はコピーしてきた過去問とその回答を配っていく。
原作だとクラスの生徒の勉強意欲を削がないようにするために前日の放課後に配布したわけだが、須藤が夜中寝落ちして英語───よりにもよって須藤の苦手教科───の過去問を覚えられないままテストに臨んで赤点を取る、というトラブルが発生したため私達は事前に平田君や綾小路君などとも打ち合わせて少し早めに配布することにした。
勉強意欲が削がれて勉強しなくなり悪影響が出る、という点については私達のクラスは4月からある程度ちゃんとした授業態度で全員授業を受けていること、茶柱先生がちゃんとテスト2週間前に試験範囲の変更を伝えてくれたことなどの影響で試験勉強も問題なく出来ているから大丈夫だろうと判断した。
4月の一番最初にポイント変動のことに関して明かすの、やり過ぎたか?と私自身心配していたが今回に関してはむしろ好影響で良かった。
「櫛田さんなにこれ、問題集?櫛田さん達が作ってくれたの?」
事前に平田君経由でサクラを頼んでいた軽井沢が受け取った過去問を手に質問してくる。
「ううん、これ3年生の先輩からもらった過去問なの!」
「この学校の1年生の一番最初の小テストと中間テストは毎年同じ問題が出るそうなの。2年生の先輩にも見せてもらった所同じだったから信憑性は高いと思うわ」
ポイントに余裕がある為、以前櫛田と一緒に声をかけた3年生の先輩に2年生の生徒からも問題を入手できないかどうか相談していたのだ。
追加で5000ポイント支払うことで快く引き受けてくれた3年Dクラスの先輩には感謝しかない。
私は原作知識で毎年問題が同じだと知っているとは言え、2年生の先輩からも貰えれば客観的な信憑性が高まるだろうと考えてのことだった。
「そうなの!?櫛田さんに堀北さんありがとう!」
ほぼほぼテスト合格が確定となり大きく盛り上がるCクラス。流石にこの後今日、水曜、木曜とあればいくらCクラスの勉強が苦手な面々でもここまで培ってきた学力と暗記した過去問で問題なく試験は突破できるだろう。
「櫛田ちゃんマジ最高~!俺達Cクラスの女神だわ!」
「これあるならもう勉強しなくて大丈夫そうだな」
「毎年問題が同じなのはこのテストのみだから、これ以降の期末や中間テストはちゃんと勉強しておかないと赤点で退学になるわよ?」
「うげ~マジかよ堀北……まあとりあえず今回はこれ有るから良いか」
赤点組の男子生徒から油断しきった声が聞こえてきたので、一応釘を刺しておく。
「あと、この事は他クラスの人には言わないでおいてもらえるかしら?5月の初めに茶柱先生が言っていたように授業やテストで私達の評価が変わるなら、私達のクラスだけ高得点を取ればその分他クラスにクラスポイントで差をつけられると思うの」
尤も原作だとこの試験で他クラスから特に退学者などが出なかったことを考えるに他クラスでもなんだかんだで過去問ゲットしてこの試験を通過してたんだろうとは思うが。
「よっしゃあ!100点とってやるぜ!」
カバンに過去問を仕舞い込んで寮に戻るCクラスの生徒達を見ながら、帰り支度を始めた櫛田に私は声をかけた。
「櫛田さん、その……4月から今日に至るまで、色々ありがとう」
「気にしないで堀北さん!むしろ堀北さんの4月のあの質問とか過去問を貰うって発想がなかったら、私達のクラス大ピンチだったもん!」
今までの2ヶ月弱の期間のことに対して改めて礼を言うと、微笑んで返答してくる櫛田。
しかし私はそれが虚飾であると知っている。
だが、ここで櫛田に対して
櫛田本人がストレスを溜め込みながらクラスの人気者をやっている事も考えると正直不安定な不発弾かなにかが真隣にあるようで落ち着かないのだが、やむを得ないことだった。
「……これからもよろしく、櫛田さん」
「こちらこそっ」
金曜日を迎え遂に試験本番の日になった。
茶柱先生が1時間目の試験科目、社会の問題を手に教室に入ってくる。
「欠席者は居ないようだな。お前達、試験勉強はやってきたろうな?」
「バッチシっすよ佐枝ちゃん先生!なんなら全教科満点取っちゃいますよ!」
茶柱先生の声掛けにおどけて答える池。この調子なら大丈夫そうだ。
「それは大した自信だな……喜べお前達、今回と7月の期末テストを赤点無しで乗り越えたらご褒美が有る」
「ご褒美!?」
「夏休みに無人島でバカンスだ。4月に水泳の授業があっただろう?あれは海に囲まれた無人島で泳げない生徒が居ないように、という学校からの配慮だ」
茶柱先生の発言に俄に騒がしくなるCクラス。
「無人島……泳ぐ……ってことは水着!!?」
「マジかよ櫛田ちゃん達の水着姿が拝めるのか!?」
「やるぞお前ら!Cクラス全員で無人島だ!!」
「「「うおおおおおお!!!!!」」」
いやあ思春期男子のこういう情熱って熱いね~、自分の思春期はこんな風に一緒に盛り上がる奴居なかったからちょっと眩しい光景だ……
そんな事を考えながらクラスを眺めていると、隣の席から綾小路がこちらに視線を向けてきていた。
「……何かしら綾小路君」
「……いや、堀北は参加するのかと思ってな」
「茶柱先生が全員の前でこのイベントについて発言した、ということはおそらく全生徒……いえ、1年生全員参加の学校行事なんじゃないかしら。そうなったら当然私も行くことになるわね」
「そうか。堀北はあまりこういう事には参加しなさそうなタイプに思えたからな」
「中学までの私なら強制でもない限り参加しなかったでしょうね……ところでなんでそんな事を?」
「……いや、ちょっと気になってな」
「綾小路君、男子が思う以上に女子は
「それにさっき男子が雄叫びを挙げてた時、一緒に綾小路君も叫んでたじゃない。見れば分かるわ」
「……」
「折角の機会だし友達を1人にはさせないわよ、安心して」
表情を変えずにそう答えると、綾小路の雰囲気がこころなしか明るくなったような気がした。
そして始まった中間テスト。1~4時間目は午前中で休み時間を挟んで5時間目に最後の科目、英語と言った構成だ。
試験問題を手に取る。うん、貰った過去問と全く同じ問題だ。自力でも問題なく解けるが、せっかく過去問を覚えてきたわけだしそれを使おう。
各科目が終わるごとにクラスを見回していたが、どうやら4時間目までの科目でトラブルがあった生徒はいなさそうだ。
どの生徒も試験開始ギリギリまで過去問を頭に詰め込もうとしてはいるが、あくまでラストスパートと言った感じで全く覚えてない焦りなどは感じられない。
そして休み時間。私は念の為に須藤の様子を確認することにした。
「須藤君、調子はどう?」
「堀北か。今最後の追い込みをかけてる所だよ」
「昨日はちゃんと眠れた?試験勉強しながら寝落ち、なんてしてないわよね」
「途中寝かかったけど起きて勉強したぜ。それに火曜から3日かけて過去問は頭に叩き込んどいたからな、問題はねえ」
良かった良かった、ここで「英語だけまだ目を通してない」とか言われたらどうしようかと思った。尤もポイント有るから点数買えば良いだけの話だけど。
「ところで堀北、わざわざ俺達のために勉強会開いたりこの過去問貰ってきてくれたりありがとうな」
「お礼なら櫛田さんにも言って頂戴、彼女も色々尽力してくれたから」
「堀北には初日のコンビニの件といいマジで世話になりっぱなしだからな、マジで恩に着るぜ」
そして私達は最後の科目、英語を終了して中間テストが終わった。
数日後、今日は試験結果が返却される日だ。
クラス内には緊張が走っている。
「お前達、よくやった。Cクラスからは10人以上の全科目満点の生徒が出ていて、平均点も高い」
開口一番、茶柱先生のこの発言にざわめくCクラス。
「
この茶柱先生の発言に歓喜の声が上がる。
Cクラスは全員が中間テストを無事通過したのであった。