ここまで長かった……
6月の末、中間テストも無事に突破した私達Cクラスは浮かれていた。
「試験や授業態度で毎月支給されるポイントは変動する」……4月頭に私が言ったことが事実であると判明して初の中間テストを全教科満点など高得点者多数で赤点もなく突破した以上、7月から支給されるポイントは上がるのではないか?という希望や憶測が広まっていたからだ。
私自身、原作でも0ポイントから87ポイントまで上がっていたことから現在の550ポイントを超えて少なくとも600ポイント、630~640ポイントくらいまではクラスポイントが上がるだろう……とは思っては居たが、しかし私は
───須藤が石崎達Cクラス(この世界ではDクラスだが)3人と喧嘩を起こしてポイントが支給されないからである。
そう、このイベントの為にポイントを浪費するわけにも行かず今後の方針を考える必要があった為全く浮かれてなど居られなかったのだった。
……実を言うと中間テストを無事突破して───しかも原作と違いクラスポイントが550有る上須藤の寝落ち&赤点からの点数購入イベントが起きていないからポイントにも相当余裕がある───少し自分へのご褒美に消費しては居たのだが、それでも自制はするようにしていた。
何故かと言うとこの須藤喧嘩イベント(俗に言う暴力事件)、事前に起きる場所や内容に関しての知識があって多少自由になるポイントがあれば有利に立ち回れるのと、これと並行してもう1つ重大なイベント……佐倉ストーカー事件が起きるからである。
佐倉愛里。1年Cクラス(この世界において)の一見目立たないコミュ障メガネ女子だが実は中学2年で芸能界デビューを果たした新進気鋭のグラビアアイドル……とそのファンでストーカーになる楠田ゆきつと言う電器店の店員が起こす騒動である。
高度育成高校の敷地内にある電器店に勤務する楠田の元にたまたまこの学校に入学してデジカメを買いに来た佐倉が遭遇、以前からファンであった楠田が佐倉の正体に気づきブログと現実双方でストーカー行為を行い、最終的に主人公である綾小路と一之瀬帆波に取り押さえられる……というイベントなのだが、なんとこのイベント、暴力事件と並行して(デジカメを買いに行った佐倉の正体が楠田にバレるのが4月中らしいのでそれを含めればもっと以前から)発生するのである。
どちらもCクラスにとって重大なイベントで、特に後者は万が一対処を間違えれば原作やアニメのように上手く楠田に対処出来ず佐倉に被害が……となる最悪の場合も有り得なくはないので、私は憂鬱な気持ちで6月を過ごしていた。
「何もしないわけには行かないわね」
自分で覚悟を決める為にそう呟いた後、私は2つの事件に関して策を練る為に動き出すのだった。
放課後、まず最初に訪れたのはショッピングモールにある電器店だった。
原作やアニメでの知識があるとは言え、やはり現場と実際の犯人を事前に見ておくに越したことはないだろうと思ったからだ。
面積はそこまで広くはないが、それでも1高校の敷地の中に電器店があるって凄いな……と思いながら店内を見て回っていると、そこに楠田と書かれた名札付きの制服を着た店員が居た。
これが佐倉のストーカーか……と思いながら遠巻きに眺めてみる。
如何せん
尤も、現状「私が一方的に彼を怪しく感じている」だけであって、佐倉の部屋に届いた大量の手紙や佐倉に襲いかかっている瞬間の写真などの証拠が何も無い為に手を出せないのだが。
色々思案しながら暫く彼が店内で働いている様子を見ていると、あちらからも私が目に入ったのか楠田が近付いてきた。
「あの、お客様……何か御用ですか?」
……冷静に考えてみると現状むしろ私の方が同じ店員をずっとジロジロ見ている不審者である。電器店で商品も眺めず店員をずっと見てるってどんな客だ。
何か適当に言い訳して切り上げるか?と思ったが、ふとある事が頭に浮かんだ。
「すいません、カメラを探していて」
「カメラ……ですか?どのような?」
「防犯用に設置して使うタイプの……持ち運ぶようなものではなく備え付けて使うような物で」
「ああなるほど……そう言った商品でしたら何種類か御座いますよ。今幾つかお持ちしますのでお待ち下さい」
そう、監視カメラである。
原作だと綾小路が外村にアドバイスを貰って一之瀬からポイントを借りて須藤と石崎達が喧嘩した特別棟に設置、それを元に石崎達を脅して訴えを取り下げさせる……という展開になるのだが、このカメラ、どうも高育の敷地内で普通に売っているのである。
外には出られない高育の特性上、入手するとなれば必然的に敷地内で買っているのは確かに道理ではあるのだが、なんでこんなもん……と考えていてふと思ったのだ。
バレない程度に小型のカメラを特別棟に仕掛けておけば、事件に関して決定的な証拠映像が得られるのではないか?と。
原作だと証拠が佐倉の撮ったデジカメの写真のみであった為に坂上の証拠としての信頼性の指摘に勝てず結局前述の方法で事件の幕引きをしたわけだが、流石に映像も有れば信頼性が上がるのではないか?と思ったのだ。
映像も編集とか加工出来るだろ、と言われてしまってはそれまでなのだが、しかし同じ事件に関して複数の証拠が出てくる……となれば、信頼性の点を突いてくるのも難しくなるだろう。
そしてまあ、餅は餅屋、家電は電器店……といった具合で、カメラを買いに来たということにすれば私がここに長時間滞在していたのも誤魔化せるし……と、今こうして楠田に相談してみた訳である。
「お待たせしました、何種類か御座いますがどちらになさいますか?」
と、楠田が幾つかのカメラの箱を持ってこちらに戻ってきた。
如何にも防犯カメラ、と言ったデザインの物から小型のものまで何種類もある。
「この小さいのがサイズ的にちょうど良さそうですね、これで」
「かしこまりました、ではこちらで購入の手続きを……」
こうして私は無事に小型の監視カメラを入手した。
……実のところ購入する際、保証書に名前と住所を書くのを躊躇した。
佐倉の部屋を
正直このカメラは今回の事件以降使う予定もなかったので結局保証書は書かずに帰ってきた。
怪訝そうな顔で見られたが、どうせこの事件が終わったらここから居なくなる奴だ。問題はない。