ハーメルンでは初のSSだし最後に書いたのも10年ほど前にほんのちょろっとなんで緊張してます
―――あれから昨日、通学経路の確認や持ち物制服などのチェックと
実力主義の教室……英語版だとClassroom of the Elite、台湾版や韓国版だとほぼ直訳だが個人的には原作のこのちょっと意訳が入った英題も好きだったりする。
Aクラスで卒業できれば卒業特典でエリート街道間違いなしだし、生徒も短所はあれど光る点を皆持ってるしね。山内とかも……まあ自己紹介のところとかあんだけ口が回るのは凄いと思うわ、うん。
電車を乗り継いで都内に有る高度育成高校行きのバス停まで行き、バスを待つ。
アニメの聖地巡礼をしてるみたいでなんだかワクワクしてきた。写真撮って回りたいけど流石にそこまでしたら目立つしこれから同級生になる同じ新1年生に見られたら恥ずかしいし、割と人通り有るからなあ……残念。
―――お、並んでたら早速原作の主要登場人物達が姿を現した。
後ろの方に我らが主人公、綾小路清隆とそこからもう少し離れたところに櫛田桔梗と高円寺六助が並んでいる。
綾小路清隆。この作品で文字通り最強の男で、やや世間知らずでイケメンでは有るが無表情というか無気力な感じ……と言われているが、実はその正体はホワイトルームと呼ばれる非人道的な施設で育てられた天才少年なのである。
そして高円寺六助。高円寺コンツェルンの跡取り息子で彼もまた勉学スポーツどちらにも優れた作中屈指の天才である。
そして櫛田桔梗。前述の二人とは違い天才というほどではないがコミュニケーション能力に長けていて、何より可愛い。まあ内面を知ってる俺は見た目には騙されんが。……いやしっかしでっかいなあ、何がとは言わんが。
この後のバスのシーンは原作、アニメ、漫画と媒体を問わず登場するシーンなのでここに堀北鈴音を含めた4人が登場することは分かってはいたのだが―――むしろ登場しなかったりその他の異常事態、例えば綾小路が女子になってたりなんか謎の人物が俺以外の3人と仲良く談笑してたりとかしてたら頭を抱えるところだった。見た感じ今のところ俺……いやここからは元同級生の櫛田の目もあるわけだし「私」、の方が良いか。私以外に変化はなさそうだった。
そのまま後ろをしばらく眺めていると、綾小路と目があった。
―――あれ、綾小路こっち見てる!? と、とりあえず笑って誤魔化しとこう!私今美少女だし!
目があってしまったので咄嗟に微笑みかえして、気付けばバス停に到着していたバスに慌てて乗り込む。
とりあえず適当にやや後方の席に座り、ちょっとしたハプニングに遭遇した自分を落ち着けようと深呼吸を―――「ここ、いいですか?」「ひゃっ!?」
うわびっくりした!!!真横に綾小路おる!?
「あー、嫌なら別に「い、いえ別にいいわよ」 「……ありがとう」
……いきなり声かけられたから驚いてしまったがよく考えたら綾小路は堀北の隣に座るんだった、あー驚いた……
しかし間近で見るとやっぱり『この物語』の主人公な事もあり、作中でも言われてるようにイケメンだなあ……
「……オレの顔に何か?」
「お、同じ学校の制服を着てたから、あなたも同級生なのねと思って」
「まあこの学校は一度入学したら基本外出できないそうだから、今このバスに乗っているのは新1年生だけだろうしな」
「そうね……これから3年間高度育成高校で生活していく学友、と言ったところかしら」
学友、と聞いて少し綾小路が反応したように見えた。アニメだと初期から無表情キャラだったのとモノローグがないので分かり辛いが、原作だとこの時期は割と普通の男子高校生っぽさがあったんだよな……
綾小路自身も堀北を「年上にも見えなくもない落ち着いた美人、可愛い」と評価していたし、ましてホワイトルームから出てきて知り合い誰も居ない(厳密には一方的に綾小路の事を知ってる人が他クラスに一人居るが)今の状態なら「友達」とかそれに近いワードには反応するはずだと思って投げてみたがやっぱり……良かった良かった。
「自己紹介がまだだったわね、私は堀北鈴音。あなたは?」
「綾小路清隆だ」
「綾小路君……よろしくお願いするわ」
そう言って私は綾小路に微笑みかける。何としても最初のうちに綾小路と距離を詰めておかなければ……と言った打算もあったが、まあ、なんだ。せっかくの学生生活な訳だし、やっぱり友人は大事にしないとな。
そうこうしているうちに前の方から若い女性と思しき大きな声が聞こえてきた。
会話しているのは若いOLと……やっぱり居た、高円寺だ。
混雑した車内で年配の女性が座れないで困ってるから席譲ってやれやそこ優先席やろ、って話をそこに座ってた高円寺に振ったらまあ高円寺は高円寺で反論するもんでヒートアップして……と言ったシーンだ。
うん、ここも特に記憶にある原作と大きな違いはないな……と思いながら眺めていると、これまた予想通りに櫛田が出てきて高円寺と会話し始めた。
この後櫛田は周りの人に席を譲ってもらえないか声を掛けるシーンな訳だが……
このシーン、櫛田は何考えてたんだろ?やっぱりこれも承認欲求とか「ここで席を譲るように言ったほうが周りからの好感度高そう」とか考えてたんだろうか?そのうち本人に聞いてみたいな……
「どなたかお婆さんに席を譲ってもらえないでしょうか?お願いします」
「お婆さん、こちらの席……どうぞ」
そう言って私は席を立つ。どうせならこの後席を譲る人が出てくるのを待って綾小路とバスが学校に着くまで会話を楽しんでも良かったんだが、いざこうしてこの世界の中で現実としてこのシーンに遭遇してみると原作の綾小路・堀北みたいに無視するのなかなかきつい物が有る。
私が堀北鈴音でなくて例えば心臓が弱く杖をついて歩いている坂柳有栖に憑依したり病弱なオリキャラ転生だったりしたらまあ正当な理由のもとにスルーできたわけだが、そうでもないしなあ。
席を立ってお婆さんを自らが座っていた席まで案内し、そのまま元の席の近くに立っていると櫛田が一瞬かなり驚いた顔でこちらを見ていたのが分かった。
中学時代の堀北は原作初期の堀北に輪をかけて"孤高"で、教師や同級生と衝突することもしばしばあったらしいから他クラスで交流のなかった櫛田でも噂には聞いたことくらいあったんだろうな……
それがこうして普通に老人に席譲ってあげてるんだもん、そりゃ驚きもするわ。
―――こうして、私達1年Dクラスの新入学生を乗せたバスは高度育成高校に向かうのであった。