綾小路から衝撃の事実を伝えられた翌日、隠しカメラは回収したもののもう1つ今回の事件で重要なものをまだ手に入れられていない私は少し焦っていた。
───目撃者・佐倉愛里の証言と彼女のカメラの写真である。
原作だと
いくら原作の流れでこれが確実とは言え、自分のことを嫌っている人にそんな重要アイテムの回収とか頼みたくないと思うのは人として仕方のないことだろう。
「はぁ………」
「どうしたんだ堀北? ……昨日の件か?」
打開策が思い浮かばずため息をついていると綾小路が心配したのか小声で声をかけてきた。
いや櫛田の件も悩みではあるけど目下最優先課題は別のところにあるんだよな……
「いえ、目撃者かもしれない人がこのCクラス内で見つかったのだけど、どう声をかけたら良いか悩んでしまって」
「Cクラス内に?誰なんだ」
「佐倉さんよ」
「ああ、佐倉か……4月の水泳の時に池達が話してた記憶がある」
おい、池達が話してたってそれ明らかに胸の大きさの話じゃねえか。何あいつらと同レベルの覚え方してんだ。
いやまあたしかに彼女を見て第一印象が
「……綾小路君の女子の覚え方に問題があるのはともかく、彼女、須藤君が証言を募った際に1人だけ目を伏せてたのよ。それに休み時間や放課後、1人で何処かへ向かうことが多いみたいだからもしかして……と思って」
「それだけの証拠で女子の行動を追いかける堀北もどうかと思うが……」
……思わぬ反撃が返ってきた。こやつめ。
「だから話しかけてみようかと思ったのだけど、彼女はどうも引っ込み思案というか人付き合いを避けている節があるからいきなり声をかけても上手く行かなさそうで……それにそういう事が得意な櫛田さんはその、ね?」
「頼みづらいと」
「この状況をどうしたものかと思って……」
「……ならとりあえず佐倉が放課後1人で何処へ行くのか確認してみて決めたら良いんじゃないか?何をしているか分かれば、そこから解決の糸口が見つかるかもしれない」
あ、その手があったか……原作知識があるからどうしてもゲームのクエストみたいに原作のイベントを起こしてフラグ立てるみたいなやり方に思考が囚われてしまっていた、やはり持つべきものは相談できる友人だな。
「それが良さそうね。ありがとう綾小路君」
「気にするな。オレも一緒に行くか?」
「そうしてくれると助かるわ」
こうして私達は2人して佐倉を追いかける事になったのである。
……ストーカーと勘違いされたりしないよな?これ。
そして放課後、いつものように1人で教室を出た佐倉をこっそり距離をとって2人で後をつけると……やはりというべきか、彼女は特別棟に向かっていた。
佐倉は元々自撮りをするためにあの人気のない特別棟に行ってたわけだし、ブログを毎日更新する関係上何度か足を運ぶだろうとは思っていたが……ちょうど良かった。
「須藤が喧嘩をした特別棟で佐倉は何をする気なんだ?」
「さあ……ともかく、中に入りましょう」
流石に「彼女実はグラビアアイドルでブログに上げるための写真撮ってたんですよ!」なんて説明するわけにも行かないので適当に誤魔化して特別棟に入ると、まさに今制服のブレザーを脱いで伊達眼鏡を外した佐倉がデジカメで自撮りをしているタイミングだった。
「これは……自分の写真を撮ってるのか?佐倉にそんな趣味があったとは」
「言い方がいやらしいわよ綾小路君。……それにしても佐倉さん、眼鏡を外すと印象が大きく変わるのね」
「アレはレンズの屈折具合から言って伊達眼鏡だし、おそらくわざと印象を変えて目立たないようにしていたんじゃないか?」
よく一瞥しただけでわかるな綾小路。流石のチートスペックな肉体だぜ。
「印象を……「まずい堀北、佐倉がこっちに来る」えっ?」
影からこっそり佐倉の自撮り風景を眺めていたらなんと佐倉がこちらに向かって歩いてきていた。当然鉢合わせになる私達。
「え……堀北さん……?それにもう1人は……」
「………こ、こんにちは佐倉さん」
気まずい沈黙が流れる。
「オレ達は須藤の喧嘩の件で事件が起きた現場である特別棟を調べて回っててな……佐倉は?」
綾小路君ナイスフォロー!
「え、えと、私はその、趣味の写真を……」
「写真?どんな写真を撮るのかしら」
「ふ、風景とか……です」
「クラスメイトなのだから敬語じゃなくても……ところで佐倉さん、この特別棟で写真を撮っていたということはもしかして」
「し、失礼します「待って!」
立ち去る佐倉を呼び止めようとした所、つい腕が当たり……彼女は持っていたデジカメを落としてしまった。
「あっ!」
甲高い音を立てて床に落ちる佐倉のカメラ。
慌てて佐倉は拾い上げるが、どうやら電源がつかなくなってしまったらしい。
「え、嘘……カメラが……」
「ごめんなさい佐倉さん、大丈夫?」
「わ、私は平気ですけど、カメラが……」
「落とした拍子に壊れてしまったのかしら……申し訳ない事をしてしまったわ、カメラは私が弁償───「わ、私の不注意ですから!すいません」
そう言うとこの場を走り去る佐倉。困ったな……
「堀北、お前今のわざとやったのか?大胆なことをするんだな」
「わざとあんな事をするわけがないでしょ……」
そうして話していると、今度はさらにもう1人がやってくる。
「あれ、堀北さんに綾小路君!こんな所でどうしたの?」
「一之瀬さん?」
Bクラスの学級委員長こと一之瀬帆波である。本来人気のないはずの特別棟なのにえらいエンカウント率高いな今日は。
「2人はデートの最中だったりした?ならごめんね!」
「……私達はそういう関係ではないし、そうだとしても流石にこんな何も無い所でデートはしないわよ………一之瀬さんは?」
人気のない特別棟でデートって、それデートって言うかどっちかって言うといかがわしい事する流れだろ。ここならカメラもないし。
「CクラスとDクラスの喧嘩の件聞いたよ!それで何か役に立てないかなと思って」
一之瀬さんホントに良い人だよなあ……
原作だとここで堀北は一之瀬を最初疑うが、まあなにせ知識がある私には疑う理由もない。ここは素直に甘えさせてもらおう。
「それは本当?ありがとう、Bクラスの協力が得られるなら嬉しいわ」
「友達のためだからね!」
どうも図書館での一件で友達認定されたらしい。あの時もこっちから迷惑かけてしまっただけに少し申し訳ない気分になってくるな……
「それで目撃証言とかは見つかったの?」
「今目撃者と思われるCクラスの女子と話してたんだが、堀北がその女子の持ち物を誤って壊してしまってな……オレ達の前から走って逃げてしまったから途方に暮れてる所だ」
完全に私の落ち度とは言え改めて言われると辛い……
「そ、それは災難だったね……なんとか謝って証言してもらったほうが良いんじゃないかな?」
「……その件に関しては申し訳なく思っているし、そうするつもりよ」
「私達は目撃者をまだ見つけられてないから、何か分かったら連絡するね!」
「ありがとう、一之瀬さん」
「そうだ、綾小路君の連絡先を教えてよ!堀北さんとは前に交換したけど綾小路君とはしてなかったし」
「ああ、オレで良かったらいつでも連絡してくれ」
一之瀬は綾小路と連絡先を交換すると、他の所で目撃証言を探すために立ち去っていった。
「これでまた新しい連絡先が1件……か」
「良かったわね綾小路君、女子の連絡先が貰えるなんて池君達に自慢できるわよ?」
「そうだな……これが高校生らしい青春ってやつなんだろうな」
ホワイトルームでずっと育てられた綾小路には貴重な経験だろうなあ……
それこそこうして普通に同年代と交流するのも初めてだろうし。
「ちなみにそれで何件目なの?」
「女子だけなら3人目だ。1人目は堀北、2人目は櫛田、一之瀬は3人目だな」
「良かったじゃない。この調子でもっと増やせると良いわね」
「ああ」
特別試験とか
大切な思い出になるからな、こういうのは。
個人的にもっと綾小路と堀北が遊んだりするシーンを入れてみたいんですが如何せん原作の流れ優先してしまって中々入れる時間がない……
また何処かで小ネタ集やりたいですね