翌日登校して早速私は前日一之瀬にも言われたように佐倉に謝罪してカメラの弁償───尤も原作通り修理に出すのを手伝うことになるだろう───をする為、佐倉の席に向かった。
「おはよう佐倉さん。昨日はごめんなさい、カメラを壊してしまって……」
「ひっ」
……ほぼ初会話で(わざとじゃないとは言え)カメラ壊した相手とかそりゃ会話しづらいというか普通に怖いよなあ。しかしこれだと会話が成り立たん………
「謝りに行って更に相手を怖がらせるとか何やってるんだ堀北……
「と、友達居ないのは私もだから……」
佐倉まで巻き込みダメージ与えてんじゃねえよアホ之小路。何がしたいんだお前は。
「佐倉、友達ゼロ人の堀北がこうして必死に謝ろうとしてるんだ。どうか許してやってくれないか」
私の友人がゼロだと必然的に私と綾小路君が友人じゃなくなるんだがその辺考えて発言してるんですかね綾小路君?と思い睨みつけようと下げてた頭を上げると、綾小路がこちらに目配せしてきていた。
ま、まさか綾小路君、この一連の流れは私を気遣って意図的に……!? 素敵!抱いて!
……流石に最後のは冗談でも言わないし無理だが、いやしかし、こういうアシスト出来るとは……嬉しいしちょっと驚いた。
「……堀北さんもわざとやったわけじゃないもんね………そ、それだったら1つお願いしたいことがあるんだけど……」
「何かしら佐倉さん、出来る範囲だったら何でも言って頂戴」
まあおそらく
「その、カメラの修理にお店……ケヤキモールにある電器店に付いて来てほしいの」
「そのくらいだったら全く問題ないわ「あと綾小路君にも一緒に来てほしい……です」
……図らずも原作だと櫛田・綾小路・佐倉で行ってた電器店に櫛田抜き
「オレもか?」
「だ、駄目……ですか?」
「いや、問題はない。そのくらいお安い御用だ」
「あ、ありがとう綾小路君……その、ごめんね?付き合わせちゃって」
こうして紆余曲折有りながらも私達は
その日の放課後、私服に着替えて綾小路と佐倉をモール内のベンチで待っていた私の所にある人物が近づいてきた。
「待たせたな堀北」
その人物……綾小路の姿を見た私は、座ったまま硬直していた。
───い、イケメンがおる……!
原作通り半袖のパーカーにTシャツとシンプルな服装ながら単純に素材が良いので凄く様になっている。
イラストやアニメとしてではなく、同じ世界に入って真横で見ると破壊力が凄い。
思わず男(中身)ながら無言でただ眺めていると、流石に不審に思ったのか綾小路が話しかけてきた。
「ど、どうかしたのか堀北? ……この服装、何か不味かったか」
「い、いえ、何でもないわ。 ……よく似合ってると思うわ、その服装」
咄嗟にそう返すと、綾小路は───元々感情が表に出にくいタイプなのでまだ初期のこの段階でもわかりにくいが───心なしか照れたように見えた。
「そ、そうか……ところで今日はいい天気だな」
「話題の逸らし方がいくら何でも露骨過ぎよ……」
ご近所どころか同じ寮の違う階住んでるんだから天気ぐらい分かるわ。
「あ、あの……」
そんなアホみたいなやり取りをしていると
……身バレを気にしてるのは分かるけどいくら何でもその服装は逆に目立つわ。
「ええと……佐倉さん?でいいのよね?おはよう」
「は、はい……すみません、わざわざ来てもらったのに待たせてしまって」
「気にしないで、元々私がカメラを壊してしまったのが悪いのだし」
ケヤキモール内の電器店に向かうと、案の定ストーカーの楠田が電器店の制服を着て店内にいるのが見て取れた。
佐倉が怯えたようになっていることや以前見たブログのコメントなどを考慮しても、この世界でも楠田がストーカーで間違いないだろう。
「どうしたの佐倉さん?大丈夫?」
「な、何でもない……です」
そう言うと店内に向かっていく佐倉。正直、事情を知らなくても多少カンが鋭ければ「あの店員さんが苦手なのかな?」と思いそうなくらい足取りが重そうだ。
店内に入って修理の手続きを始めると、これまた予想通り楠田が佐倉の方を舐め回すように見ながら少しでも時間を延ばすようにねちっこくカメラを検分していた。
……
保証書が有るから無償で修理なので書類に必要事項を書いて終わり……と言う段階になって佐倉の手が止まる。
私が書類を奪って書いてもいいが、ここはやはり……
「あの、ちょっと良いですか?修理が終わったら、オレに連絡をください」
私の横に座っていた綾小路の方に目をやると、流れるような動きで楠田と佐倉の間から書類を持ち上げて必要事項を記入した所だった。
「な、何だい君は?君はこのカメラの購入者じゃ───」
「保証書や購入時のレシートはありますし、問題はないですよね?それにこの学校のシステム的にポイント移動の履歴を見れば彼女がこのカメラを購入したことは一目瞭然ですし」
「……わかりました。どうぞ」
楠田をどうにかやり込めて帰路に就く私達。
「ありがとう綾小路君。あの店員さん、視線が怖くて苦手で───」
「ところで佐倉、あのカメラを持って放課後の特別棟で自撮りをしていたのは、佐倉の趣味なのか?」
おっとここでド直球にそれ聞きに行くのか。マジかよ。
「じ、自撮り? ……まさかあの時、2人とも───」
「……ごめんなさい佐倉さん、須藤君の件で証拠を探していたら偶然佐倉さんの姿が目に入って……」
「……隠しても無駄、ですね」
「私達は目撃者と須藤君が殴りかかったのではないという証拠を探していたのだけど……察するに、佐倉さんがその現場の写真を自撮りの最中に収めてしまった……ということで良いのね?」
「………」
「無理にとは言わないわ。誰にだって秘密の1つくらいあるでしょうし───」
実際この場にいる全員秘密持ちだしな!
「いえ、私にも協力……させてください。目立つのは嫌だけど、でもクラスメイトが困ってるのに何もしないでいるのも嫌だし」
「ありがとう佐倉さん。私達は秘密は守るし、貴女の勇気……尊重するわ」
こうして私達はついにこの事件の重要な証拠、佐倉の写真と証言を手に入れたのだった。