カメラを修理に出した後佐倉から綾小路と私にグラビアアイドルであることの告白があったりちょっとした
佐倉からの証言も取りつけているし
「大丈夫か堀北?当事者の須藤以上に緊張してるんじゃないか」
緊張しまくりだよこちとら……前世じゃ裁判員の経験もないし特にこういったもめ事の経験もなかったからここ数日緊張しっぱなしである。
しかしこの教室内にはわざわざ勇気を出して証言に応じてくれた佐倉や事件の当事者である須藤も居る。だからあまり不安にさせないように気をつけていたのだが……綾小路には分かってしまうか。
「……そう見えないように気をつけていたのだけど、見て分かるようじゃ駄目ね」
「誰だって同級生の停学や
「兄さん……生徒会長の前で無様な姿は見せられないわね。改めて気合を入れ直せたわ、ありがとう」
尤も私は原作知識で堀北兄がこの審議に来るのを知ってたがな!
そうこうしている内に審議の予定時刻が迫ってきたので、私達は職員室に向かった。
職員室に到着すると、ドアの前に茶柱先生が立っていた。
「よく来たなお前達。審議の準備はしてきたか?」
「はい、茶柱先生。 万全に仕上げてきました」
ガチガチに緊張してはいるが、ここは虚勢を張ってでも毅然とした姿勢を見せておくべきだろうと考えてはっきりと返答する。
と、茶柱先生が予想だにしてなかった返答をしてきた。
「……肩の力を抜け堀北。そんな事では示しがつかんぞ」
えっ私そんなに緊張してるの丸分かり?……やっぱ堀北鈴音本人のようにはいかないか……
所詮私は堀北鈴音に成り代わっているだけの凡人、いやコミュ障陰キャの凡人以下……と自分を卑下していると、茶柱先生が頭を撫でてきた。
「担任として、お前はこのCクラスを上手くまとめ上げていると私は思っている。自分を信じてやってみろ」
………原作と印象が全く違ったので顔を見上げて呆然としてしまった私は悪くないと思う。流石にびっくりした。
Cクラスの審議参加者全員で4階にある生徒会室に向かうと、その中には既に待機している人物が数人居た。
生徒会書紀の橘、Dクラスの担任・坂上、審議当事者4人、……そして生徒会長の堀北学である。
ここでビビったら負けだ、と自分に言い聞かせて真っ直ぐ生徒会長の方を見据える。
すると生徒会長殿はこちらに一瞬視線を送り───そしてすぐに手元の書類に目線を戻した。
……大丈夫だよなこれ?
「それではこれより、先月末頃に発生した暴力事件についての審議を始めます。進行は生徒会書紀・橘が務めます」
そして橘書紀がCとDクラス双方から聞き取った主張を説明する。
「小宮君達Dクラスの生徒4名は『須藤君に特別棟に呼び出されて話し合いをしている最中に急に激昂して殴りかかられたので反撃した』と主張していますが、これに関してCクラスの須藤君は異論はありますか?」
早速生徒会から質問が来た。
事前に須藤や佐倉には審議対策に色々指導しておいたが、はたしてちゃんと出来るかどうか……
「そいつ……Dクラスの言ってる事は嘘……です。俺がDクラスの小宮……君に特別棟に呼び出されました」
よしよし、とりあえず少しでも丁寧に取り繕おうとしてる姿勢をアピールできてるな。
何もやらないよりはマシだろう。
「俺はあの日、同じバスケ部の小宮と近藤に部活の後で話があると特別棟に呼ばれました。小宮……君……は普段から部活の最中に邪魔してくることがあったので、その事でなんか話があるんじゃねえかと思ったんです」
「それは嘘です、僕達が須藤君に呼び出された側です」
「ああ!? ……俺……が小宮に呼び出されました」
……なんかリミット限界な感じはあるがよく抑えてる須藤!もう少し!
「わかりました。須藤君と小宮君の間には以前からこのような諍いがあったんですか?」
「……い、いさ……かい?「口喧嘩とか言い争いって事だ」あった……ありました。ありがとな綾小路」
綾小路ナイスアシスト。沸点限界まで行ってた須藤も干渉が入って少し冷静になったみたいだし、本当にちょうど良かった。
「どのような物でしたか?」
「練習中に嫌がらせをしてくる事があった……ありました。俺が先にレギュラー候補に選ばれたことに嫉妬してきたんだと思います」
「その須藤くんの発言に意義を申し立てます。須藤くんはそれを誇示したり僕達のバスケの腕前をばかにするような発言をしていました。」
「はあ!?お前らだろうがいつも最初に突っかかってくんのは!」
「ちょっと須藤君、落ち着いて!」
一旦落ち着いたと思ったらこれか……まあ須藤の沸点低いの分かってて仕掛けてきてるんだからなDクラスは。
「……双方の発言に食い違いがあるようですね。これでは証拠によって判断を下すしかなさそうです」
両者が喧嘩寸前になってるのを見て、毅然とした様子でこう述べる橘書紀。
しかしまあ高3でこの時期だと17歳か?自分が17の時にこんな風に複数人の話し合いの進行とかきちっとまとめて進めていく事とかまず無理だったな……と考えると橘書紀は凄いと思う。
作品の展開上そうならざるを得ないとは言え、大人びた高校生多い世界だよなあよう実世界は。まあ弱冠9歳で世界の危機を何度も救ってる子とかも居るし、フィクションならではなんだろうな。
「生徒会長、Cクラスは証拠として須藤君の事件直後の診療記録を提示したいと思います。よろしいでしょうか?」
さて、ここからは私も積極的に審議に参加していかないといけないな。
まず私は「須藤が殴られて怪我をした」と言う事実を主張する為にその証拠を出した。
「許可する」
「この診療記録によれば事件直後の須藤君には暴行によって出来たと見られる複数の怪我が有るとの事です。須藤君の証言を踏まえて、今回の事件は須藤君を4人がかりで待ち伏せして呼び出した上に一方的に暴行を加えた悪質な事案であると私達は主張します」
すると当然、Dクラス側───それも担任の坂上先生───からも反論があった。
「生徒会長、Dクラスの生徒4人も同日に負傷して診察を受けています。また先程の堀北さんの発言は悪意のある推測であり、あくまで今ある証拠としては『喧嘩によって同日に双方が負傷した』としか言えないと思いますが?」
「……そうですね。Cクラスの堀北さん、これに対して反論はありますか?」
よしきた。ついにここでキーアイテムその1を……
「生徒会長、私は証人として生徒の入室を求めます」
「許可する。該当する生徒は速やかに入室してください」
そしてついにキーアイテムその1を持った証人こと佐倉が生徒会室に入室してきた。
ガチガチに緊張してるのがここから見ても分かるくらいだが、頑張れ……
「い、1-Cの佐倉愛里……です」
「Cクラスですか? 生徒会長、当事者である須藤君と同じCクラスの生徒の証言は公平性を欠いていると思いますが」
「……彼女の主張を聞いて判断しましょう。佐倉さん、証言をお願いします」
「………」
「佐倉さん?」
おい嘘だろ佐倉、これ手助け要るかな……
などと思案していた矢先、佐倉が大きな声でこう言った。
「Dクラスが先に須藤君に殴りかかってました!」
「なるほど、須藤君が所属するCクラスの生徒が須藤君に有利な証言……ですか。都合のいい偶然もあるものですね」
「坂上先生、失礼ですがそれはどういった意味での発言でしょうか?証言に対する反論であれば明確にそうと明示して発言をお願いします」
「いえ……佐倉君、と言いましたかね? なにかその証言を裏付ける証拠はありますか?」
「証拠はこれ……です!」
その台詞と共に、佐倉は叩きつけるようにして何枚かの写真を提出した。
「これは……」
「須藤君が石崎君に殴られてた時の写真……です」
「……了解しました。この写真はこの審議の重要な証拠として───「生徒会長! 異議を申し立てます!」なんですか、坂上先生?」
すると焦った坂上先生が反論してきた。尤も原作知識が有る私には予想通りの反応ではあったが。
「まず第一に、これはあくまで『須藤君が石崎君に殴られて居た瞬間』の写真であって『Dクラスの生徒からCクラスの生徒を暴行し始めた』証拠では有りません!それに佐倉君、この写真はどのようなカメラで撮影したのかね?」
「で、デジタルカメラ……です。私がこの学校のケヤキモールで購入した───」
「デジタルカメラの写真であれば撮影日時や写真そのものの加工は容易なはず。生徒会長、私はこの写真の証拠能力に疑義を呈します」
そう来るとわかってたよ坂上先生。
だからここで私は
「生徒会長、Cクラスはもう1つ証拠を提出したいと思います。
「許可します。 橘、映像をスクリーンに」
「はい、会長」
そうして私が送信した動画データの再生を始める橘書紀。
そして映し出された映像は───
「おい石崎、ここで待ってれば須藤の野郎は来るんだよな?」
「ああ、そういう手筈になってる。大人しく待っとけよ?」
「小宮、お前の言う通り来てやったけどなんでわざわざこんな所なんだよ?ここ暑いし正直部室とかでも───おい、なんだお前ら?」
「お前が須藤か?小宮と近藤に山脇が世話になったらしいじゃねえか」
「……小宮、誰だよこいつ等?俺はバスケのことで話があるって言うから来てやったんだが」
「バーカ、今になっても気づいてねえのか? 顧問の先生にレギュラーの内定貰ってるんだろ須藤?それを辞退してくれたら何もしないで帰してやる」
「……そういう事かよ。辞退なんかしねえ、さっさと失せろ雑魚が」
「良いのか?こっちは4人だぞ?」
「1人相手に4人じゃないと怖くてレギュラー辞退の"お願い"も出来ねえ雑魚が何人居ようと───」
須藤がそう発言すると、山脇と呼ばれていた生徒が殴りかかり……そして喧嘩が始まった。
須藤は4人を相手に結構善戦しているが、それでも時折殴られたり掴まれたりしている。
しかし須藤の方が圧倒的に強いのか、Dクラスの4人は1人1人ノックアウトされていく。
「ぐはっ……」
「これに懲りたら2度と喧嘩売ってくるんじゃねえぞ、Dクラスのカスが……」
「へっ、今に見てろ……後で後悔するのはお前だ、須藤」
「後悔? ………まさかお前ら」
須藤の発言を最後に途切れる映像。
この映像が流れた生徒会室は、沈黙が流れていた。
顔を青褪めている石崎達Dクラスの生徒。
まさか本当にDクラスから殴りかかった上に罠に掛けるようなことをしていたとは思っていなかったのか、呆然としている坂上先生。
そして、
まあ当然か、この映像は私以外誰も知らなかったわけだし。
私は隠しカメラで撮影したこの映像を、以前中間テストの過去問を送ってもらった3年の先輩が2年の過去問を貰った2年の先輩にデータを渡し、それを匿名のメールアドレスを作りそこから送信してもらう形で入手していたのだ。
直接ポイントやメールなどのやり取りをしたことのない先輩だから、疑われることはないだろう。
お礼のポイントは後日この審議が終わってから前述の3年の先輩経由で送る手筈になっている。
そうして全員が沈黙している生徒会室で、私はこう発言した。
「この映像を見れば須藤君が"悪意のある"Dクラスの生徒に呼び出された挙げ句一方的に難癖をつけられたあと4人がかりで暴行を受けたのは明らかですね、坂上先生?」
「……っ」
「とは言え須藤君に多少挑発的な言動が見えたのも事実です。 須藤君には言動や立ち振る舞いに関しての口頭での注意指導、Dクラスの生徒には主体的に一連の事件を引き起こした悪質さを踏まえて停学などの処分が妥当かと思います」
「おい堀北、なんで俺まで怒られなきゃいけねえんだよ」
「須藤君、あなた映像内でもDクラスの生徒を雑魚呼ばわりしてるし以前図書館でもそれで喧嘩になったじゃない……これくらいは妥当だと思うのだけど」
「ちっ……わーったよ」
「……証拠は出揃ったようですね。それでは生徒会長、審議の採決をお願いします」
「Dクラスの側から暴行を行っている証拠が複数存在すること、4対1という人数差を踏まえて今回の事案はDクラス側に大きな非があるとしてDクラスの4名の生徒に3週間の停学とDクラスにマイナス100クラスポイントの処分を下します。またCクラスの須藤君に関してもやや挑発的な言動が散見される事からクラス担任及び男子バスケットボール部顧問による言動や生活態度に関しての指導を行うものとします。 ……これでよろしいですか、坂上先生と茶柱先生?」
「Cクラスとしては異論は有りません」
「……証拠がある以上Dクラスとしてはこれを受け入れざるを得ませんね……残念ですがこれを受諾します」
「そ、そんな……!!」
「やべえよ龍園さんにぶっ飛ばされる……!!」
「Dクラスの生徒は静粛に! では、以上を持ちまして今回の審議を終了します」
生徒会室を出て、私はまず須藤に声をかけた。
「お疲れ様須藤君、茶柱先生やバスケ部の先生から指導は有るけどこちらとしてはクラスポイントや停学などのペナルティは無し……良い形に評決を持っていけたと思うのだけど」
「ありがとな堀北、堀北の助けがなかったらどうなってたかわからねえ……」
「気にしないで。クラスメイトの為だもの。それから佐倉さん、貴女も証言、感謝するわ。緊張したでしょう、わざわざ来てくれてありがとう」
「い、いえ、そんな……証拠で言えば堀北さんが提出した映像の方が決定的な決め手って感じだったし、私なんて……」
「仮にそうだとしてもよ。佐倉さんが勇気を出してここに来てくれた……それは非常に大事なことだと思うわ。改めてお礼を言わせてもらうわ」
「勇気…… そうだね、私も……」
「……佐倉さん?」
「な、なんでもないの!気にしないで」
こうしてDクラスとの審議はCクラスの圧倒的有利な結末で終わったのであった。
そうして帰ろうとした私達に、2人組が近づいてくる。
「審議では上手くやっていたようだな、鈴音」
───生徒会長の堀北学と書紀の橘茜である。
「お疲れ様です、兄さ……いえ、生徒会長」
「今は審議も終わっているから畏まらなくてもいい。 ……成長したな、鈴音」
学から直接褒められるとは思っていなかったので驚く私。つられて下げていた頭を上げると、学が手を伸ばして撫でてきた。
「……クラスの皆とも協力できているようだな。
「はい、兄さん……!」
どうやら堀北兄からも今回の審議は好印象だったようだ。
生徒会室からCクラスまでの道を歩いていると、前方から1人の男子生徒が近づいてくるのが目に入った。
「まさかあの場を撮影した映像があるとはな……やってくれるじゃねえか」
龍園翔。 Dクラスの王を自称するクラスのリーダーで、原作では今回の事件を皮切りに無人島や体育祭、そして軽井沢を人質にとっての綾小路とのバトル……と、1年生編を通してCクラスに挑んでくる男だ。
「……貴方は?言動から察するに、Dクラスの生徒のようだけど」
「お前らは俺が潰す。せいぜい待ってるんだな」
それだけ言うと、龍園は立ち去っていくのだった。
「今のがDクラスのリーダーだろうな」
「ええそうね、あとで一之瀬さんに心当たりがないか聞いてみましょう」
龍園が立ち去った後、私と綾小路は歩きながら会話をする。
「ところで堀北、1つ良いか?」
「何かしら綾小路君?」
「あの映像、
……まあ綾小路なら気づくか。
「……何のことかしら、あれは匿名で提供されたもので………」
「あんなピンポイントな位置、タイミングで撮影してた奴が人気のない特別棟に2人も居たのか? 1人は佐倉だが、じゃあもう1人は?」
「さあ、
「ストーカー? 待て、それはどういう……」
「私の口から言えるのはこれだけよ」
そう言うと私は足早にその場を去った。これに先日の電器店での出来事を加えて、佐倉のストーカーの存在に目を向けてくれると良いが。