これで2巻分はとりあえず完結です。
翌日学校に登校すると、教室内は審議にCクラスが勝った───尤も須藤も完全にお咎めなしではなかったが───事で須藤の友人である池や山内達を中心に大盛り上がりになっていた。
「やったな須藤!Dクラスの連中ざまあみろってんだ!」
「へへ、まあつってもこの後ちょっと指導とか有るけどな……」
「でもDクラスは4人停学でクラスポイント100引かれるんだろ?ならこっちの完全勝利じゃねーか!」
当事者の須藤本人よりテンションの高い池達に囲まれて須藤は少し照れているようだ。
本人も喧嘩っ早いのを改善するように努力しているみたいだし、これに関しては一件落着だろう。
しかし、もう1つの問題が……
「おはよう堀北、昨日の話なんだが……」
「あの話は流石にここでは出来ないわ、人前で出来る話じゃないでしょう」
そう、綾小路に隠しカメラの件と佐倉のストーカーの件について説明しなくてはならないのである。
須藤の審議の証拠に使う為に自分で仕掛けたカメラについて誤魔化す為にストーカーの事を口にして去ると言う明らかに怪しいムーブをしてしまったので追求が来るのは避けられないとは思っていたが、いざ来られると対応に困る。
───いっそのこと
その発想も頭に浮かんだが、どういう受け取られ方をするのか分からない事、未来にどういう影響を与えるか分からないこと、それに───正直に言って拒絶されることが怖かった。
いや、「外の世界に出てきて初めて出来た女友達が頭のおかしいやつだった」くらいの受け取られ方だったらまだ良いのだが、気持ち悪がられたり拒絶されたら辛いものが有る……こちらとしてもこの世界初の友人(打算込みで近づいたとは言え)なのでそれは避けたい。
……でも綾小路が人にそういう反応を示すのあまり想像できないから正直ちょっと見てみたくも……いや、やめよう。
「……解った。───説明はしてくれるんだよな?」
「必ずするわ」
そうして迎えた放課後、私達は人が居ない所……ということで特別棟に来ていた。
「それで堀北、佐倉の件なんだが……ストーカーと言うのは、佐倉のブログにあったコメントの主ということで間違いないか?」
「ええ、そうよ。そしてそのストーカーは───」
「あの佐倉と行った電器店の店員だな?」
流石に綾小路ならここまですぐに探り当てるか。
佐倉がグラビアアイドルで有ることを私達に明かしてくれた際見せてくれたブログ。
そこにストーカーからコメントが来ている事は佐倉は話してくれなかったが、先日の私の発言を受けて綾小路はブログ内からコメントを見つけ、そして先日の電器店に行った際の佐倉と店員の不自然な態度……そこから答えを導き出したのだろう。
「……あの電器店での佐倉の態度、店員の不審な様子からして何か事情が有ると思ったが……まさかストーカーだとはな」
「だから修理をしに行くのに私達に同行を求めたのよ、佐倉さんは」
「佐倉が嫌がっているようだったからオレの名前と住所を修理の際に書いて出したのは正解だったという訳か。……尤も既にあの時点でストーカーは佐倉の本名と住所を知っていたようだが」
「おそらく最初に電器店で彼女がカメラを買った時ね……その時点ではまさか目の前の店員が自身のファンでストーカー行為をするようになるとは考えていなかったでしょうし」
佐倉はマジで運が悪いよな。この学校の特殊な環境から考えてまさかこんな事になるとは思っていなかっただろう。
「それで綾小路君、1個心配なことがあって……昨日の審議の後、佐倉さんの様子が変だったの。何か決心したと言うか……覚悟を決めたような顔をしていたわ」
「この状況で……まさか佐倉は自身でストーカーと決着をつけるつもりか?」
「……有り得るわね」
「このままだと佐倉が危ない、居場所は分かるか?」
「ちょっと待って、たしかこの学校のスマホには連絡先を交換した相手の現在地を表示する機能があったはずよ」
「……そんな機能が?」
あれ、知らなかったのかこの機能?池達が教えてくれたもんだと思ってたんだが……
「ええ……佐倉さんの現在地、電器店の裏口になってるじゃない!」
予想はしていたが、やっぱり1人で対峙しに行ったか……こちらには綾小路が居るし不安はあまり無いが、万が一ということもあるし、すぐに行ったほうが良いだろう。
「走るぞ!」
私が佐倉の居場所を告げると綾小路は全速力で飛び出していった。 ……速いな!私も女子の中じゃ小野寺や一之瀬を除けば足の速い方だが、全速力の綾小路は格が違う……
綾小路を追いかけて電器店の裏口に着くと、そこでは佐倉とストーカーの店員が口論になっていた。
「どうして僕を拒絶するんだい、雫ちゃん……僕は雫ちゃんを愛してるのに!」
「もうこんな手紙を送ってくるのはやめてください!迷惑なんです!」
そう言うと佐倉は持っていた手紙の束───ストーカーから送られてきたものだろう───を地面に叩きつけた。
彼女なりに勇気を出しての行動だろうが、出来れば誰かに相談して欲しかった……
「雑誌で君をひと目見て、その後ここで君に会って……君と僕は運命で結ばれてるんだよ!なのにどうしてこんな事をするんだ!」
「い、嫌……!」
拒絶する佐倉を壁際に追い詰める
スマホのカメラを起動しながら2人に近付く私と綾小路。
「うわ~何してんすかオッサン、いたいけな女子高生相手に……」
「嫌がる女性を暴行なんて……最低ね、貴方」
「な、何だ君たちは……!?」
人がこんな所に現れると思ってなかったのか、驚くストーカーを横目にストーカー行為の証拠である手紙をカメラに収めていく。
「何かしらこの手紙は……文面からして一方的に好意を寄せてたみたいね」
「そして拒絶されたら乱暴とか、オッサン終わってんな」
……先程から綾小路が威圧感を出すためか不良っぽい口調をしているのだが、本人にそういう知識がない上に普段の彼を知っている私からすると違和感が凄まじい……こんな状況なのにちょっと笑えてきた。佐倉の手前抑えるが。
「一連の現場はこのスマホでしっかり撮影したわ。 ───終わりよ、貴方」
「ううううるさい!そこを退け、このガキ!」
証拠を押さえられて激昂したストーカーがこちらに向かってくるが───
「………おい。いい加減にしろよ、アンタ」
一瞬で目の前に割り込んだ綾小路が全力で彼を投げ飛ばして、ものすごい力で固め技をかけた。
「あだだだだ、折れ、っ……!?」
「綾小路君、今学校と警察を呼んだわ!すぐに来るわよ」
そう言うと観念したのか抵抗を諦めるストーカー。
その様子を眺めていると、佐倉がようやく事態を把握したのかこちらに目線を向けてきた。
「あ、綾小路君に堀北さん?どうしてここに……」
「昨日の審議の後、何か決心したような顔をして居たのと貴女のブログにあった不審なコメントが気になって……それに電器店であの男と対面していたときの様子を思い出して、何かあったんじゃないか……と思って」
「そ、そうだったんだ…… 駄目だね私、せっかく勇気を出しても1人じゃ何も出来ない」
「いえ、勇気を出して行動したことは立派だと思うわ。……これからは何か悩むことがあったら私や綾小路君にも相談して」
「ありがとう、堀北さん、綾小路君…… 実を言うと私、堀北さんのことちょっと苦手だったんだけど……そんな私を審議と今回とで2回も助けてくれて、本当にありがとう」
……そう言えば佐倉になんか避けられてるって感じることがあったな。Dクラスとの審議のための証拠集めの際もそうだが、それ以前から違和感はあった。
最初は人見知りなのと雫として活動していることがバレるのを恐れているから過剰に警戒しているんだと思ってたが……私「が」苦手?
「……ご、ごめんなさい堀北さん! その、
……なるほど、真相が解った。 いやちゃうねん。そんな変なこと考えながらずっと見てたわけでは……でも佐倉のその身体の
「堀北お前、どんな目線で佐倉を見てたんだ?こいつのこと言えないんじゃないのか」
綾小路が締め上げているストーカーに一瞬ちらっと視線をやった後こちらを見る。
「……不快な思いをさせてしまったようね、ごめんなさい佐倉さん」
「き、気にしないで堀北さん!私を助けてくれた堀北さんは悪い人じゃないって解ったから!」
こうしてちょっと恥ずかしい事実を知った私達の所に警備員と警察、更に連絡を受けた担任の茶柱先生が来てこの事件は無事に終息を迎えたのである。
ストーカーの楠田は佐倉に乱暴しようとした事や以前からのストーカー行為、また
起訴されたらおそらく実刑判決は免れないだろう。
また、電器店と学校から管理責任の不行き届きがあったとして謝罪と慰謝料代わりなのかプライベートポイントが送られた。
被害者の佐倉本人はそれを受け入れ、暫くブログの更新を休止することにしたらしい。
事情を伏せての休止告知だったためファンは悲しんでいたが……まあ仕方ないことだろう。
そして審議とストーカーへの対処を終えた私達Cクラスは無事1学期の終業式を迎え、夏休みに突入したのだった。
ストーカーを警察に引き渡して事情聴取を終えた後、オレは寮の部屋で1人思索に耽っていた。
あの日堀北は佐倉にストーカーが居ることを説明してオレも最初は納得したが、1つ疑問が残っている。
「
佐倉の様子が不審なことに気づいてオレと2人で後をつけに行った時、堀北はまだ佐倉が特別棟で自撮りをしていることを知らなかったはずだ。
あの後佐倉に遭遇してカメラを壊してしまった一連の流れのあとにもう1回特別棟に行ってそこで隠しカメラを発見した……とすれば辻褄は合うが、ならそうと説明してくれれば済むはずだ。
「堀北……お前はオレの友人……なんだよな?」
あの部屋を飛び出して入学したこの学校で初めて出来た友人、堀北鈴音。
その友人を疑わざるを得ない出来事を前に、オレは柄にもなく動揺していた。
TS憑依堀北さんと綾小路君が遊んだりお互いにドキドキしたりさせられたりするシーン書きたい