気がついたらハーメルン12周年だそうで驚きましたね、もうそんなに経ってたとは
青い空!広がる大海原!そして豪華客船!
私達高度育成高校1年生は豪華客船に乗って2週間のバカンスに向かっていた。
が、しかし、原作知識のある私は知っている。これは真っ赤な嘘だと。
そう、この2週間で2個のクラス対抗の特別試験が行われるのである。
最初の1週間は無人島でのサバイバル、もう1週間は船内で行われる頭脳戦となっている。
そんな未来を前にしてただ豪華客船に浮かれていられるわけもなく、私は船に乗り込んだものの他の生徒のようにこのクルーズを楽しめず憂鬱な気分になっていた。
それに、試験以外にも懸念事項はある。
それは、前半の無人島試験では堀北鈴音は体調を崩した状態で試験に突入し、最終的に天候の悪化と綾小路(とそれに唆された山内)のせいで高熱を出し、挙句の果てに試験のキーアイテムであるキーカードを巡って伊吹と殴り合いになり最終的に伊吹に負けて気絶し綾小路に抱えられる形で教師陣の許に連れて行かれリタイアする……という原作の展開だ。
体調に関しては試験の数日前から念入りにチェックして
この世界では
実際今朝この客船が停泊している港に向かう為のバスに乗り込む際もDクラスの方からこちらに向けて敵愾心の篭った視線を多数感じた……こちとら根はただの貧弱オタクなので正直怖い。
そんなこんなで、せっかくの夏休みに豪華客船でクルーズ……と言う状況にもかかわらず、1人寂しく過ごしているのだった。
元々友人が少ない上にこんな陰気な奴と過ごすやつ居ないだろ。
「あ、あの……堀北さん?大丈夫?」
そんな事を考えていると、私の現状数少ない友人の1人である佐倉が声をかけてきた。
彼女もあまり社交的ではない方だからか、周りには誰も居ない。
「平気よ。ただその、私はこういう場所に慣れてないから」
「そうなんだ……私も撮影で海に行くことはあったけどこういう船は初めて」
まあ確かにグラビアアイドルの撮影で浜辺で撮る事はあっても豪華客船で撮影ってなかなか聞かないしな。
「ねえ、堀北さんさえ良かったら船内を一緒に見て回らない?」
「……そうね、折角の機会だし、そうさせてもらうわ」
……まああんまり悩んでても仕方ないか。佐倉が折角誘ってくれたわけだし、色々見て回るとするか。
「堀北さんは何処か行きたいところとかある?私はスパとか───『生徒の皆様にお知らせします。間もなく無人島がデッキから見えて参ります』」
ちょうど出かけようとしたところでこの放送か……タイミング悪いな。
『
さて、この放送が流れたということはいよいよ無人島試験が開始直前……いや、この段階で情報収集するのも試験の鍵だし既に始まってると言っても過言ではないのか?とにかく、これは重要なイベントの一つである。
この放送の後にこの船は島の周りをゆっくりと一周した後、上陸して試験についての説明が行われた後試験開始になるわけだが、ここで島の大まかな地形とかを把握しておけるんだよな。
メモとか写真が持ち込めるわけじゃないから頭に焼き付けるしか無いのが難点だが……まあ、なにせこの身体は頭脳明晰な堀北鈴音のそれである。それくらい本気を出せばなんてこと無いだろう。
「何だったんだろう今の放送?」
「気になるわね……私はデッキに行って確認してくるわ」
「なら私も」
こうして私と佐倉は2人でデッキに向かうのだった。
デッキに向かうと放送を聞いて集まってきたのか、多くの生徒でごった返しになっていた。
佐倉と2人で人をかき分けながら前に進んでいくと、前の方から怒声が聞こえてきた。
「てめぇ何しやがる!」
「フン、DからCへ成り上がったとはいえ所詮は不良品の集まりか……この実力主義の学校で俺達はAクラスとして認められた生徒なんだよ、雑魚は道を開けろ」
で、出た~~~!! 三下丸出しのセリフで登場して1年生編の最後に退学になる奴こと戸塚!
早速須藤と思いっきりモメております!
「ッチ……!」
かなり罵倒されたにも関わらず一学期色々あったからかすごすごと引き下がる須藤。
ここちゃんと成長してなかったら喧嘩して無人島試験参加できないとか有り得るんだろうか……?初期須藤のまんまなら有り得そう。
「不良品とは聞き捨てならないわね」
まあ、とは言え
「な、何だお前は?」
「最低限のマナーも守れないような無礼者に名乗る名などないわ」
「なんだと?お前もCクラスのようだが、不良品のくせに何を偉そうに───「何をしている弥彦」か、葛城さん!」
お、そうこうしているうちにAクラスの(現状)ナンバー1が現れたか。
葛城康平。Aクラスを坂柳と二分するリーダー格の生徒で、身体的事情から坂柳が無人島試験と船上試験に参加できない為暫定的にAクラスのリーダーを務めている生徒である。
真面目でいい人、両親祖父母を亡くし病弱な妹を親戚に預け学費生活費無料のこの学校に来た苦労人の秀才……と言った感じの人なのだが、とにかく作中ロクな目に遭わない人でもある。
原作では戸塚の凡ミスと自身の判断ミスでこの無人島試験と船上試験でこてんぱんに打ち負かされ、その後も全く活躍できないまま最終的にAクラスを去る……と言う、正直ちょっと同情したくなる運命なんだよな。
尤も私が主人公である綾小路達の所属するクラスに居る以上敵ではあるので、手加減するわけにもいかないのだが……
そんな事を考えていると葛城がこちらと戸塚の方を交互に見渡して事情を把握しようとしているのが見て取れた。
「貴方はAクラスの生徒?そこの戸塚君が私のクラスの生徒に一方的な言いがかりをつけていたから、口を挟んだまでよ」
「何? ……それはすまなかった」
「な……葛城さん!? こんな奴らに謝る必要なんて……!」
「俺達Aクラスの品位が疑われるような言動は慎め、弥彦」
「……っ!」
流石に尊敬し慕っている葛城に窘められるというのは効いたようで、渋々こちらに頭を下げてくる戸塚。
全く、余計なことに時間を取られてしまった……と思いながら無人島の方に目をやると、ちょうどまさに今船が無人島の周りをゆっくりと一周していくところだった。
私は当初の予定通り、その島の風景を目に焼き付けておくことにした。
これから1週間、私達が今年度最初の特別試験を行う島を。
『これより、当校が所有する無人島に上陸します。生徒の皆さんはジャージに着替えて、携帯電話を持って集合してください。なおそれ以外の私物は全て部屋に置いてくるように──』
船内放送のアナウンスに従って集合場所に向かおうとすると、目の前に1人の男子生徒が現れた。
「堀北か。……船内で見かけなかったが、今までどうしてたんだ?」
綾小路か。
流石にこの世界ではクラスポイントも温存してとりあえず今の段階でCまでは昇格してるから大丈夫だと思いたいが……
「1人で船内を散策してたら、佐倉さんと出会って……どこかに出かけようとしたらさっきの放送が流れてしまって、結局特に何もしてないわね」
正直折角の豪華客船なんだからもっと素直にレストランで舌鼓を打ったりプール行ってみたりすりゃ良かった。
尤も無人島試験が終わればこの船にまた戻ってくるから永久にその機会がないわけじゃないけど。
「そうか……ところで堀北、何か違和感を感じないか?」
「違和感?」
「いや、これからペンションでバカンスするにしては私物の持ち込みが禁止されたり、持ち物検査まであったり……何かやけに厳重だなと思ってな」
「……言われてみればそうね。船の後方にヘリが1機搭載されてたけど、いくらここが本土から離れた無人島とは言えちょっと過剰なくらいの体制ね」
まあ私はこれから何が起きるか知ってるんだけどね、とは言えない。
「確かにな……ただオレはこういうところに来るのは初めてだからな、緊張しているのかもしれない」
「あら、そうなの? 何にせよこれから
こうして私達1年生は無人島へと降り立った。