やっぱりkindleの方が見やすい
話し合いからしばらく後、ベースキャンプの候補やスポットを探しに私は綾小路、佐倉、高円寺と無人島の中を歩いていた。
原作での私は体調が悪かったこともあってかこのベースキャンプ探しには参加しなかったが、事前に体調管理をしっかりしておいた私には休む理由もなかったしな。
それに原作ファンとしては折角だから見ておきたいものもいくつかあった。高円寺がターザンよろしく山の中を駆け回るシーンとか。
平田には3人1組で行動するように言われていたが、クラスの人数的に余りが発生することと
日頃の善行の賜物である。
「無人島でお泊りしたり、遊んだりするって……聞いてたのに……こんな事になるなんて……」
ふと横を見ると、暑さと慣れない山歩きで佐倉が大汗をかきながら小声で弱音を吐いていた。
佐倉は今回の旅行(学校側の説明)のために色々準備してきてたもんな……体力も正直高い方ではないし、辛そうだ。
「さっきの説明の通りなら今回の試験が上手く行けば夏休み明けからはBクラスに成れるかもしれないわ、その為の辛抱よ」
「でも折角、堀北さんと水着まで新調しに行ったのに……島には持ち込めないし、無駄になっちゃった」
すると、その台詞を聞いた綾小路がこちらを振り返ってきた。
「水着……堀北は真面目な方だと思っていたが、案外人並みに旅行に浮かれ気分になることもあるんだな」
……こころなしかこちらを見る視線がやらしい気がする。
「佐倉さんに一緒に来てほしいって頼まれたのよ。
「なるほどな……『島には』ということは、船には持ってきてるのか?」
「ええ……尤も、残念ながら1週間は着る機会は無さそうだけど」
「あ、綾小路君!堀北さん!」
と、佐倉が何か決心したような顔持ちで私達の方に声をかけてきた。
「何だ佐倉」
「こ、この試験が終わったら、一緒に船内のプールで遊ぼ……なんて……」
顔を赤らめてプールにお誘いしてくる佐倉の姿がそこにはあった。
――可愛い子が緊張しながら精一杯の告白をしているのは破壊力が高過ぎる……!!
「オレは構わないが……良いのか?目立つかもしれないぞ」
「う、うん……でも、綾小路君に見せたかったから」
うんうん、これぞ青春……! やっぱ学生の夏休みはこうでなくっちゃな!
せっかくグラビアの仕事にストーカーやホワイトルームと言ったしがらみがないこの高育に来たんだ、一夏の思い出くらい作ってほしいもんだ。
思わず私も後方彼氏面……いや保護者面?になってしまう。
「ほ、堀北さんも水着、持ってきてね! 私が選んであげた水着だから、絶対だよ!」
……おっとそうだ忘れてた、私も誘われてたんだった。
しかし水泳の授業以外で初水着かぁ……しかも競泳水着じゃなくて
まあどうせこの試験と船上試験終わったら
「ええ、勿論そうさせてもらうわ。 折角の友達とのプールだし、ね」
そう言うと佐倉が明るく微笑んだ。
「もう試験の後のデートの予定を立てているとは、余裕なようだね」
唐突に、前を歩いていた高円寺が振り返ってこう言った。 いかん、まだ試験中―――それどころか1日目―――なのを完全に忘れてた。
「
ああ、やっぱり高円寺は原作通りこの島が人の手で管理された試験場としての無人島だと気付いて……ん?なんか今ナチュラルに煽られたような?
「この程度の……?何を言っているのかしら」
「ふっ……君がそういう姿勢ならばそれはそれで構わないさ。私は先を急がせてもらうがね」
「高円寺ー、あんまりオレ達から離れないでくれ」
「問題ないさ、この森なら日中単独行動をしても私ならまず迷うことはない」
そう言うと高円寺はターザンみたいに木のツタを使ってサーカスのブランコのように飛んだり、木から木へとパルクールのように跳んだりしてものすごい速度で森の中を駆け抜けていった。
……原作知識があるからそういう事をするとは知ってた身でも、リアルでこれを見ると改めて高円寺の超人的な体力に圧倒されるな……綾小路なら同じこと出来るんだろうか?
「ほ、堀北さん……高円寺君、行っちゃったけど……良いの?」
「彼なら問題ないでしょう。それより私達も先を急ぎましょう」
こうして高円寺が抜けた3人体制で私達はそのままベースキャンプ候補地やスポットを探し続けるのだった。
森の中をしばらく歩いていると、ようやくお目当てのスポットがある洞窟───尤もここは原作通りならAクラスに占領されているが───が目の前に見えてきた。
「あ、あれ……洞窟?もしかしてスポットなのかな?」
高円寺がいなくなったことである程度ペースを落として佐倉に配慮してゆっくり歩いていたが、それでも山歩きはキツかったらしく息も絶え絶えの佐倉は休憩できそうな場所を見つけられて嬉しそうだ。
尤も前述の理由でここで休憩はまず無理だが。
「……! 誰か出てくるわ」
人が出てくる気配がしたので近くの茂みの中に伏せながら綾小路と佐倉に小声で伝えると、綾小路も気付いていたらしく即座に木陰に身を隠した。
……佐倉の口に手を押し当てて押し倒すような形で。
当然人影に気づいていなかった佐倉からすれば急に綾小路に押し倒されたようなものなので、ただでさえ慣れないアウトドアアクティビティで紅潮した顔が真っ赤になっている。
そんな眼福な光景を横目に洞窟の入口の方を見ていると、予想通りの人物───Aクラスの葛城と戸塚───が中から出てきた。
「運が良かったですね葛城さん、こんなに早くスポットを見つけられるなんて」
「運? いや、ここには上陸前から目をつけていた」
「上陸前から……ですか?」
「無人島に上陸する前に島の周りを船が一周しただろう?あの時に島の地形をおおよそ把握しておいたんだ」
「なるほど……流石です葛城さん!これであの時喧嘩を売ってきた
そのCクラスのメンバーが目の前に居るとも知らずに呑気なことである。しかも手に持ってるキーカードも見えてるし。
「迂闊な言動はよせ、弥彦。俺にはリーダーとしての責任がある」
はいリーダー確認頂きました~! 原作知らなかったら「言うてAクラスで坂柳とてっぺん取り合ってる奴がこんな所でこれ見よがしにそんな発言せんやろ、レッドヘリングか?」とでも思ってしまいそうなほどあからさまなシーンである。
「す、すいません……でもあの時船上で
……赤い髪の男ってのは須藤で黒い髪のは……私だなこれ。
調子に乗って介入したら恨まれるとは、これはちょっと反省せねば。
「………」
こころなしか隣の綾小路の顔が険しくなったような気がする。怖いて。
内心ガッツポーズを決めていると、人の気配を感じたのか葛城がこちらに向かって歩いてきた。
「……葛城さん?」
「ここに誰かいたような気がしたんだが……気のせいか」
葛城達は近くの茂みを少しかき分けて不審者がいないことを確認するとすぐに去っていった。馬鹿め。
「綾小路君、葛城君達も去ったようだし……その、佐倉さんを離してあげたほうが良いと思うのだけれど」
脅威が去ったのでいい加減綾小路の腕にがっちりと押さえつけられてかわいそうなことになっていた佐倉を解放するよう促してやった。
「~~っはっ……!」
「済まない佐倉、咄嗟のことで乱暴な形になってしまった」
「き、きき気にしないで綾小路君……!」
「綾小路君、女子への接し方はもう少し丁寧にしたほうが良いわよ」
「……気を付ける」
綾小路の腕が思いっきり佐倉の胸に当たっていたのを見逃さなかった私であった。このむっつりすけべめ。