読者の皆様のおかげです!
入学して3週間程が経ち、クラス内の空気がある程度変わってきた。
予想通りというべきか悪くなってると言うべきか、Dクラス生徒の授業態度がちょっと不真面目になってきている。
原作通りの三馬鹿は大騒ぎしてるわ女子は軽井沢中心にスマホいじったり今日の遊びの予定立てたり……という次元にまでは至っていないが、少なくとも初日に平田と櫛田が私の推測を肯定して広めてくれた時程の真面目さや緊張感はない。
須藤も遅刻せずに来てはいるが、眠そうだ。
まあ正直、100でも200でも残っていれば良い程度にしか考えていない……むしろそのくらいから高くてもBにはならない程度が理想だ。
そんな風に1日授業を受けていると、こちらに誰かが近づいてきた。
「堀北さん、ちょっと良いかな?」
クラスの人気者、櫛田桔梗である。
「あら櫛田さん、何か用かしら」
「今日皆でカフェに行くんだけど、堀北さんもどうかなって思って」
そう言えば特に無下に断ったりはしていないから、まだ直接
正直女子と居ると緊張するのと、ホワイトルームの外のものが全て初めてで何でも新鮮な反応(それと少しの際どい発言)を見せてくれる綾小路が面白くてつい一緒に居る事が多いこと、また個人的に原作やアニメに出てきた施設や名場面の舞台───特別棟や2期EDで有名な階段等───を聖地巡礼めいてまわったりしていた為に時間が合わなかった、というのが正直なところなのだが。
「ありがとう、ぜひご一緒させて頂くわ」
「そんな畏まらなくてもいいよ~、同じクラスメイトなんだし!」
そんなこんなでカフェ、パレットに到着した。
実をいうとここには来たことがなかったので、聖地巡礼リスト埋め的な意味で渡りに船だったというのも櫛田の誘いを受けた理由の1つである。
なにせ女子の団体客が多いカフェなので、いくら今の私は女子生徒とは言え心理的に入りづらいものがあったのだ。
「今日もすごい人気だね~」
「女子生徒に人気がある、とは聞いていたけど……こんなに人がいるなんて」
「そう?でもこの時間は割とこのくらいだよ」
櫛田と一緒についてきた松下と森はやはり彼女と同様にここに来慣れているらしく、こちらの発言に対して補足を入れてきた。
「皆は何にする?私はカフェラテとショートケーキにしようかな」
「私はカフェラテとパンケーキで」
原作でも出てきたメニューだし、ちょっと体験してみたかった。
コラボカフェとかで再現メニューとかそれ風のものは食べられても、作中に出てくるものそのものを食べることはまず叶わないからなあ……
突然の憑依でこの世界に来てしまい、色々困ることもあったが、こうして原作の世界に入って一住民としてこの世界を体感できるのは正直ファンとしてとても嬉しい。
そんな事を考えていると、ふと櫛田と松下が一瞬こちらに視線を向けてきたのに気がついた。なんだろう?
「……?」
小さく首を傾げるも、すぐに視線を元に戻してしまい理由はわからずじまいだ。
「ねえ堀北さん、私堀北さんとこうしてお話するの初めてなんだけど……趣味は?普段はどんな事してるの?」
会話の先鋒になったのは松下だった。まあたしかに今まで一切接触がなかった同級生となると気にもなるか。
「趣味……読書かしら。あとは校内を散策したりね」
「読書?どんなの読むの?」
おっと少し困った質問が来たな。正直に答えるとつい最近まで読んでいたのは『バトル・ロワイアル』だった───この学校の閉鎖的で外に出られない様はまるで同作の舞台になる無人島みたいだな、と思ったからケヤキモールの古本屋で買ってきたのだ。
しかしこれ、「全く同クラスの生徒と交流のない女子」が読んでるって素直に言って、ウケが良い本とは思わない……
「『ハリー・ポッター』ね。昔読んだことはあったんだけど、なんとなく読み返したくなって」
これなら無難だろ。
「ハリポタとか懐かし~、子供の頃流行ったよね」
「ちょっと前にテーマパークもやってたよね、櫛田さんは行った?」
「うちの実家からは遠くて……」
こうして会話を楽しんでいると、突然森がこんな質問をぶち込んで来た。
「ところで堀北さんってさ……好きな人とか居るの?」
「特には居ないわ」
まあ
「えっ、堀北さんって、その……」
「綾小路君と付き合ってるんじゃないの?」
「!!?」
カフェラテリバースしかけたぞオイ!
「だって初日から一緒に居る姿見たって人が何人も居るし……」
「水泳の時とか仲良さそうにしてたし!」
言われるとたしかにそう見えなくもない……のか?
いやしかし私にそういう感情はない。
そりゃあ何にでも新鮮な反応を見せる綾小路を見て「かわいい」と形容することはあるが、どちらかと言えば……なんだろう、まあ少なくともそういう意味での好きではない。
「高育に来る時に乗ったバスが一緒だったのと席が近いのがきっかけでよく話したりはするけど、それくらいよ?」
「え~、またまた~」
「それに綾小路君、実家が厳しかったみたいで世情に疎いところがあるから……初日にコンビニに行った時、『この値段は外のコンビニと比べてどうなんだ』って聞いてきたのよ?カップ麺も初めて食べたって言ってたし」
「綾小路君もしかしてお金持ち!?」
「それはわからないけど、実家で書道とピアノを習っていたらしいし……可能性としては有り得そうね」
「堀北さんやっぱり綾小路君のこと詳しくない?もしかして……」
「あくまで席が近い友人というだけよ」
とりあえず、櫛田やその他女子のクラスメイトとも(前者に関しては表面上は)なんとかやっていけそうだ。
こうして4月は穏やかに過ぎていった。
そして数日後、授業の初めに茶柱先生が紙束を持って入ってきた。これはいよいよ
「お前ら静かに……いや
おお、ついに来た小テスト。最後の3問だけ高1レベルだと解けない問題が入ってるやつだ。
「え~テスト~?」
「これ堀北さんが前言ってた『私達の評価が~』って奴じゃない?」
小テスト、のワードが聞こえた瞬間、教室内が授業開始時点より騒がしくなる。
そりゃ初日に私が「私達の評価次第で来月はポイント減るかも」という話をぶち上げたからなあ……
「……安心しろ、このテストは
……ちょっと茶柱先生の言い方が優しい? これはDクラス、まず0ポイントは回避出来てそうだな。
「な~んだ、良かった」
教室に安堵のため息が流れる。まあ成績には反映されないからなあ、文字通り。
「では配布するぞ。まずは……」
一応この学校に来てから体力維持のための運動と並行して授業の予習復習もしているが、そういう次元じゃない問題だよなこれ……
試験終了後、綾小路に声をかけてみる。
「綾小路君、さっきの小テストだけど……どうだった?」
「半分ほどしか解けなかったな」
「……あのテストの問題の大半は入試問題より下のレベルの問題よ?その意味が解ってて言っているのかしら」
「入試も半分くらいしか解けてないしな、オレは」
嘘こけどっちも全問題解けるけどわざと50点になるように調整したんだろうが。今指摘したら怪しすぎるから言わないけど。
「……綾小路君、100点満点のテストの平均点は一般的に50点じゃない事が多いわよ?テストの難易度にもよるけど、もっと上じゃないかしら」
「……それは知らなかった」
篤臣さん、ホワイトルームに「一般社会入門」みたいな科目作ったほうが良いですよっと。
ようやく4月末まで来れました。これも読者の皆様のおかげです。
改めてありがとうございます。
ちなみにパレットでのシーンで櫛田と松下が一瞬違和感を覚えたのは堀北がメニューを見ずに注文した為です。
とは言えカフェラテは櫛田が注文した後、パンケーキも一般的なメニューの為2人ともすぐにこれを忘れました。