ここまで長かった……
5月1日の朝、スマホのアラームで目を覚ます。
4月30日の夜はよく眠れなかった……我らがDクラスのクラスポイントがどうなっているのか心配でなかなか寝付けなかった。
───前世ならこういう時は酒でも飲んで眠るんだけど、今はそもそも高校生だしなあ
こういう時はこの高校生という身の上は不便である。
早速、スマホでポイントの振込額を確認すると……55,000ポイントと出た。
想像以上のポイントだった。原作の0ポイントよりは遥かに良い。
上出来だな、とスマホでクラス内のチャット画面を開くと……
大騒ぎになっていた。
ポイントの支給額が先月から大幅に減っていた事、既に先月の支給ポイントをすべて使い切ってしまったごく少数の生徒の嘆きのコメント、そして何より……
「堀北鈴音が初日に言った内容が合っていた」という話が多く見られた。
───これ登校し辛い……
とは言え言い出した張本人がこの事態に休むわけにも行かず、朝食と身支度を済ませて部屋の外に出ると………
───部屋の外には既に1年Dクラスの女子が数人、待ち構えていた。
「……おはよう」
「あっ堀北さん!」「ねえポイント見た!?」「どうやって分かったの!?」
案の定質問責めにされる。
「皆落ち着いて!」
と、そこに救いの手が差し伸べられる。 櫛田である。
「ここで話してても解決しないし、遅刻しちゃうよ!それに堀北さんだって一人一人の質問にバラバラに答えるより、教室で全員集まってからの方が良いんじゃないかな?」
救いの手かと思ったらさらっと全員への説明を約束させやがった。いやするつもりではあったし、そうしないと収集つかなかっただろうから良いんだけれども。
「……櫛田さんの言う通りよ。まずは教室まで行きましょう」
教室に着いてみると、そこも既に登校していた男女の生徒で大騒ぎになっていた。
私がドアを開けて中に入ると、一斉に全員が振り向く。
「堀北~、俺ポイント全部使っちまった!今月支給額5万5千しか無いのにどうしよ!?」「堀北さん、疑ってごめん!あたしもうちょっと授業頑張ればよかった!」「堀北さん!」「堀北さん!」「「「堀北さん!!!」」」
ほぼ全員───高円寺や綾小路、それに事態を収拾しようとしている平田や櫛田は除く───がこちらに殺到してきた。
───これ命の危険が有る奴!
そう判断して一旦後ずさろうとすると、ドアから別の人物が入ってきた。
「お前達静かにしろ。 着席次第ホームルームを始める……が、その前に質問したいことが有るやつはいるか?」
「先生、あの、今月5万5千ポイントしか振り込まれてなかったんですけど、これってもしかして……」
「……お前達は賢いのか愚かなのか、一体どちらなんだ全く……」
そう呟くと、茶柱先生は衝撃的な───私には予想通りの───言葉を放つ。
「おめでとう。今日からお前達はCクラスだ」
一旦静かになった教室内がまたざわつき始める。
「え?C?」「なんで、私達Dクラスだよね?」「これは……まさか」
「私が初日に説明し、そして
と、ここで平田が手を上げて発言した。
「先生、ということはポイントが減額された理由はやはり……」
「推察した通り、授業中の私語やスマートフォンの使用、正当な理由のない遅刻欠席……そういったものが減点の主な原因となっている」
「マジかよ……」「やっぱり毎月10万じゃないって堀北の発言は正しかった!」
「これ以上の説明はこの部分に関しては必要なさそうだな。続いてこれを見ろ」
茶柱先生が持っていた模造紙を広げる。そこには A:940 B;650 C:550 D:490と記載されていた。
「これは各クラスごとの成績を数値で表した物……クラスポイントだ。このクラスポイントは当初全クラス1000ポイントで新入生は4月の入学式を迎えることとなる」
「そして私はお前達をどうやら見くびって居たようだ。 ──おめでとう、お前達は歴代のDクラスの中でも屈指のクラスポイントを残したまま5月を迎えている。尤もそれはAクラスにも言えることだが」
「あれ、でも紙にはCが550って……」
「このA~Dクラスの名前はポイントの上下で変わる。お前達が490ポイント未満だったら今でもDクラスだったし、逆に941ポイント以上保持していた場合Aクラスで5月を迎えていただろう」
「そしてこのAからDまでの……失礼、AとBクラスを見てほしい。この並びを見てなにか気づかないか?」
「Aの方がポイントが格段に高いだろう?本来、AからDクラスのクラス分け段階でAクラスに優秀な人材、Dクラスに不良品……という風に生徒が振り分けられていたんだ。尤も、お前達は実力でその評価を覆してみたわけだが」
不良品、と言われて顔をしかめる生徒が何人か出てくる。
厳密に言うと元Dクラスは主に
どのクラスもそうでは有るんだが、元Dクラスは特に各タイプの長所も短所も大きい奴が配属されている印象だ。
「そしてこれが先日行った小テストの結果だ。───この結果でよくDからCクラスに成れたものだ、お前達は」
上から点数を見ていくと、高円寺・
平均点は……四捨五入して69点? やっぱりちょっと上がってるな、初日の注意喚起の影響が多少出てたか。
「この学校ではテストで平均点の半分未満の点数を取ると退学処分になる。今回の場合、34点未満が退学になっていた計算だ。」
あ、退学になっていたであろう人数とボーダーぎりぎりの生徒は原作と同じだ。ちょっと点数が上がってるが、それに伴ってボーダーも上がってるからなあ……
「そして最後に……この学校の卒業後進路の100%保証は、卒業時にAクラスに所属している生徒にのみ行われる……特典が欲しければせいぜい足掻くことだ」
「次のテストは中間テスト、3週間後に行われる。
───こうして私達の実力至上主義の教室が、ついに本当の意味で幕を開けたのである。
茶柱先生が退出した後、教室内の目線が再び私の方を向く。
「おい堀北!お前これ初日に全部わかってたんなら、もっとちゃんと注意してくれよ!」「やめろって春樹……」
口火を切ったのは山内だ。そしてそれを窘める須藤。
「だめだよ山内くん!堀北さんはちゃんと説明して警告してくれてたよ!」
そこに平田まで入ってきた。あっこれは……
「山内、自分がゲーム機買ったりキモい賭けやってスッたの堀北さんに責任押し付けてんの?キモ……」「うわ~……」
ただでさえ巨乳をコンプレックスにしている長谷部が山内を攻撃し、そこに女子の中で一際目立つ軽井沢が共感したせいで山内が一気に集中砲火を浴びる。
こっちに批難が集中しないのは良いことなんだが、このまま放って置くと教室内がめちゃくちゃになる上に平田が深刻なストレスを溜めることになる。
どうにかしないと……
「み、皆落ち着いて!今は誰かを責めたりしている場合じゃないよ!」「そ、その通りです、今は次のテストの対策を……」
櫛田や意外なことにみーちゃんが女子を宥めようとしているが、女子の大半が山内を含め賭けの中心人物───運の悪いことに大半が赤点組の男子───を睨んでいる。
「醜いねえ」
と、ここに来て高円寺が口を開いた。醜いものが嫌い、と公言する高円寺だけに思うことがあったんだろう。
「なんだと高円寺!」
「学校側からの評価ごときでここまで争えるなんて、ほとほと呆れ返るね」
「そういうお前はどうなんだよ!授業中足上げてたり爪ヤスってたりしてたじゃねえか!」
「ふん、アレを見給え」
文句なしの同率1位である高円寺。
「私には学校の評価など関係ないからね。卒業後も高円寺コンツェルンを継ぐことが決まっている……特典など必要ないし、学校の評価など所詮彼らが勝手につけただけに過ぎない」
言いたい放題言うと、高円寺は再び沈黙した。
……皮肉にも高円寺の空気読まない発言のお陰で緊張していた空気が霧散し、ようやく私達Cクラスは落ち着きを取り戻したのである。
決して山内くんが嫌いという訳ではないんです、ただ書いてたらついこういう展開になってしまって……