Blue Kenshi【旧作】   作:外道カヤノ

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 ポケットモンスター
 配布アイリ完凸/バンカズとバンヨシ


 お財布こわれる


第十一話:襲来せし便利屋(2/3)

 『光の剣(クルージーン・カサド・ヒャン)』。この名を付けたのは、とある“あだ名好きのトリニティ生”。

 

 きっかけはモモックス。トウハの戦闘シーンを見た彼女は、トウハに“砂塵を破壊せしアガートラーム”なる何とも痛い名を送ったことだ。昨日のミレニアム訪問時、先生の送迎が来る30分前に全力で検索をかけたトウハが彼女を特定。さらに、ウタハも交えて三者で即席の通話*1を行い、右腕義手にだけ搭載された“武器結合強化射撃システム”の名前を捻った。

 結果、ウタハが付けたがっていた『光の剣』と、トリニティ生が提案した同じ意味を持つ『クルージーン・カサド・ヒャン』が、そのままダブルミーニングとなってシステムの名前となった。

 

 ちなみに義肢の名前は決まったのか。と問われると、未だに決まっていないのが実情である。

 

 武器結合強化射撃システム。

 そのシステムは、義手と固有武器を一時的に合体させるもの。合体すると肘から先が銃身そのものとなり、義手を動かす生体電流をエネルギー化して弾丸に固着。その弾丸は電流を帯び、さながらレールガンの如く()()()()()()()()()()()射出される。

 ようは、擬似的な強化弾丸を義手内で生成し、射撃できるというもの。*2

 

「あッ゛つッッッ!?」

「ッおぉォッ!?」

 

 その威力は絶大。弾丸は射線に従って灼熱の光を放ち、空気を焦がすほど。

 しかし同時に、義手と砲身がとてつもなく発熱し、使用者の右腕を一時的に使用不可能とさせる。

 

 トウハは撃った衝撃と熱で悲鳴を上げ、ネルは命の危機を感じて全力で回避した。そんなことがあり、互いに攻撃がストップ。ほんの短い間とはいえ、静かな時間が流れた。

 

『……エンジニア部がトウハさんの義肢を改造していたとお聞きしていましたが、まさかこれほどとは』

『"さ、サイコガン…(感涙)"』

『先生ほら、ティッシュだ。とりあえず涙を拭って欲しい』

『何あれすっご……』

 

アレがあれば銀行の金庫扉も一発

『とてつもない威力でした☆……トウハちゃんは後でお話ですね』

『大丈夫なのアレ。トウハの右腕真っ赤っかだけど』

『全然大丈夫じゃなさそうだね〜』

 

「マジであっつ!?この時くらい痛覚遮断を入れろエンジニア部!」

(あっぶねェ……!今の当たったら、ゼッテー打撲だけで済まねぇだろ。なんてモン作りやがったエンジニア部!?)

 

 各々が感想をこぼし、戦闘中の二人は互いに出たものに対して戦慄する。しかし、そんな浮いた時間が生じたその時を狙ったかのように。右腕をブンブンと振り回し、何としてでも冷却しようとしていたトウハの頭部に向かって──

 

 一発の弾丸が、彼女の額に命中。瞬間、ネルにまで衝撃が届くほどの爆発を起こした。

 

「んなッ!?」

『"トウハ!?"』

 

 ズドォンッ!!と、黒煙に包まれたトウハ。驚愕するネルと先生を他所に、突然の出来事に慌てつつも冷静に対処していたアヤネは、解析結果を叫ぶ。

 

『敵襲、敵襲です!相手は、昨日のっ!?』

『"──ロナ、襲撃者の特定が可能ならして!"』

 

 アビドス校舎正面から、五百メートル先。アヤネがドローン越しに見たものは、小規模な傭兵集団。工事現場で働くような、ピンク色の作業着と白い安全ヘルメットに身を包んだ傭兵少女たちが複数。彼女らは戦車を二台連れ、その戦車の上に、ゲヘナ生徒が四人いた。

 その内、ゲヘナ生については、校舎にいるアビドスの五人と先生は見覚えがあった。

 

 明るいワインレッドの髪の、眼光が鋭い少女。陸八魔(りくはちま)アル。

 鳥を彷彿とさせる、前髪だけ黒色に染めた白髪の、目つきが鋭い少女。鬼方(おにかた)カヨコ。

 無邪気な笑みを浮かべる、白髪サイドテールの少女。浅黄(あさぎ)ムツキ。

 オドオドとした様子を見せるが、持っているショットガンを校舎に向けて構えている、紫髪の少女。伊草(いぐさ)ハルカ。

 

『"──“便利屋68”?昨日のッ!?"』

 

 動く戦車の上に立ち、金の装飾が施されたスナイパーライフル──『ワインレッド・アドマイアー』──を構えたまま佇むアルは、効果有りと判断してようやく銃を下ろした。

 

「フフッ、決まりね」

 

 あの一撃は確実に入った。そう確信した彼女は、不敵な笑みを浮かべる。昨日、美味しいラーメンを食べて仲良くなった生徒が、まさか今回のターゲットだとは思いたくもなかったが、これも傭兵の定め(あるある)だ。

 先に、見覚えはないがターゲットの内であろうアビドス生を狙撃できた。後は彼女らを相手にするだけ。

 と思った瞬間、突如ハルカが、アルに向かって飛びついた。

 

「アル様ッ!!」

「えっ!?」

 

 ハルカがアルに抱きつき、押し倒したのと同時に、ギィイィィンッ!!とオレンジ色に光る極太の線が、アルの頭の上を通り過ぎた。可視化された熱そのもの。それは、チリチリとアルの頭を焦がす。

 

「……な」

 

 咄嗟にハルカが気付き、庇わなければ、間違いなくアルの顔面にぶち込まれていたであろうレーザーのような何か。

 

「な……っ」

 

 そして、アルは見た。自身が着弾させ、爆発させたポイント。黒煙が晴れたそこには、若干焦げているものの、それほどダメージが入っているようには見えないターゲットの姿。ターゲットは赤熱化した右腕をアルへと突き出しており、明らかに先程の熱線を放った者だと主張していた。

 

 

 

「何よアレェーーーーーーッ!?!?」

 

 

 

 トウハは──キレていた。

 

「陸八魔アル、か。なるほど、昨日皆が友達ができたと言っていたという……」

 

 かねてより、トウハは銃撃戦を何度か経験している。頭を撃たれることもあれば、背中にヘリのガトリング砲を撃ち込まれた経験もある。だが、元から頑丈かつ神秘の濃いトウハには、痛くも痒くもないもの。しかし、ここ最近になって神秘の濃い生徒の一撃を貰った。

 

 横で呆然としているネル。そして、先のアルの一撃。しかも、アルに関しては通常よりも神秘が込められたスナイパー弾を脳天に撃ち込まれた。

 ついでに、勝負への横やり。かつての世界では、世界を滅ぼすと決め込むほどには、自身の力に対して自信がある少女。戦士としての誇りが心臓でできている程度には、勝負というものに真摯さがある。

 

 結果、久しぶりに痛い一撃を喰らい、さらに勝負の横やりを入れられたトウハ。彼女の怒りという名のテンションは、上限突破するほどにブチ上がった。

 

「だが、キヴォトスがこんなのだからな。やはり学園が違えば「昨日の友は今日の敵」*3ということか……」

 

 臨界点まで熱された右腕など、もはや気にも留めない。ただ一つ、トウハは今決めたことを宣言する。

 

 

 

「殺してやる……殺してやるぞ!陸八魔アル!!」

 

 

 

『"せ、戦闘開始ィーッ!みんなトウハが傭兵と便利屋を薙ぎ倒す前にこっちから迎撃!ネルはトウハを止めて本当に殺しかねない!"』

「ッおぉ!?マジかコイツ!」

 

 ガビーン!と顔から効果音を放つアルに向かって飛び出そうとしていたトウハを、ネルは慌てて正面に立ってぶつかりに行く。トウハは、前が見えていないのか、獣のような唸り声を上げてネルを引き剥がさんとしていた。反射的に止めなければと思って回り込んだが、どうやらその選択肢は正解だったらしい。

 

『"カリンは校舎屋上から狙撃、アカネも一緒に行ってお願い!アスナは撹乱をお願いできるかな!?今は協力して欲しい、この借りは必ず先生として返すから!"』

『あらあら、そんなお願いをしてよろしいので?ですが、良いでしょう。リーダーはトウハさんの足止めをお願いします』

『構わない。どのみち、こんな風になる気がしていたんだ』

『いいよーっ!ご主人様のお願いだからね!』

『"ごしゅ……!?"』

「ッく!さっきより強ェ!」

『"……ネル、頼んだよ。今は君しかトウハを止められない!"』

 

 組みついてもなお押し行かんとするトウハだが、痺れを切らして左腕を振り上げる。目に見えるほどまとわりついた殺気。それを察知したネルは、左のSMGで咄嗟にトウハの左拳を撃つ。

 

「いい加減退けッ!」

「ッゥ!」

 

 ズガガガンッ!!とマガジンに残った弾丸を全てを吐き出して止めた左拳は、大きく弾かれてトウハを一歩後退させる。つかさずネルはトウハの腹部に蹴りを放つが、それは赤熱化した右腕に止められ、逆にトウハの左足先(トゥ)キックがネルの脇腹に打ち込まれた。

 

「ぐ、ゥ゛ッ」

 

 減り込み、突き刺さる。臓器が潰されたんじゃないかと思えるほどの衝撃と、重さがネルの腹部に襲い掛かる。だが、そんな痛みとは慣れっこだ。ネルは右のSMGをトウハの胸部に当て、零距離で発射した。

 

 

「あァ゛!?その程度か!!」

 

 

 怒り──闘気という名の、ネルの神秘が爆発する。

 瞬時にリロードされた左のSMGをつかさず発射し、撃ち込む。先程とは逆。三十を超える弾丸が僅か二秒でトウハの腹部に減り込み、彼女の体がくの字に曲がって飛ぶ。だが、トウハは自身の体が飛ぶ寸前、赤熱化した右腕を──否、ドッキングが解除されたSRをネルに向けた。

 

「そこを、退けェッ!!」

「──!!」

 

 先と違い黄金の稲妻を纏っておらず、弾丸が強化されていないものの、ほぼ至近距離でスナイパー弾が発射された。今のネルにそれを避ける術はなく、神秘を伴った凶弾が、彼女の右肩に着弾する。

 

(ッてェ!!久しぶりだこんなのッ!)

 

 重い一撃。右肩の関節が外れた感覚と、砕けた感覚が同時に押し寄せ、衝撃を殺せずにネルの体はよろめいた。だが、悲鳴を上げない。何故なら、

 

「──そんなモンかよ!」

 

 ネルの闘気は、この程度で途切れない。

 

(しぶといッ!私にはあそこのアホ面女に用がある。だが、コイツ!!)

 

 一方で、ネルよりもダメージレース的に敗北しているトウハは、腹部にかかる痛みに歯を食いしばりながら、地面に着地する。ネルの右肩が垂れ下がっているのを見て、攻撃力を削らせた──とは思わない。むしろ、逆に彼女の闘気が、神秘の濃度が上昇しているように思えた。

 

「やり手だな、貴様……!」

「ハッ!なまじリーダー務めてるだけあってな、あたしは強ェんだ。そう簡単にくたばるかよ」

「その威勢、どこまで続くか見ものだな」

「キヴォトスに来てばかりの青二歳に負けるはずねェだろ」

 

 ならば、とトウハも拳を握る。二度も灼熱の腕と化す強化システムは使う気がないのか、右手にSRを持ったまま、左拳を前に出して構える。ネルもまた左手を前に出し、腰を下げて構えた。

 

「斃れろ、ネル──!」

「調子に乗んな──!」

 

 二者は互い得物を向け、同じタイミングで砂を蹴り上げる。C&Cのリーダー、対策委員会の暴力担当の決闘はハプニング飛び込んでもが続く。どちらかが斃れるまで、終わらぬ闘いとなった。

 

 

 

 一方、便利屋68のリーダー、アルはというと盛大に慌てていた。

 何せ、アビドスに襲撃するのは予定通りだったものの、そこにミレニアムの特殊部隊、C&Cが紛れ込んでいるなど、完全に想定外の事態が起きていたからだ。

 

(なんであの()()()がここにいるのよ!?まさかアビドスが雇った?けど、どうやって!そ、それよりも!)

 

 もう一つの想定外。それは、狙撃した生徒から放たれた異色の(レーザー)。実際にはエネルギーを纏っただけの実弾なのだが、アレには誰も対処できないだろうと判断した。あんなのが何度も撃たれれば、大金を叩いて買った戦車はおろか、当たれば大怪我で済まない気がしたのだ。

 

「カヨコ、撤退するわ!みんなを引き上げる準備をしましょう!」

「撤退には賛成だけど、コイツら思った以上に強い!それに……」

 

 サプレッサー付きのハンドガン(HG)を撃って応戦するカヨコは、戦況を一番広く見ていた。その上で、彼女は言う。撤退は難しいと。何せ、今の戦況は明らかに便利屋側が不利。追加で雇った傭兵団は、元々士気が低かったのもあって、既に壊滅。僅かに残っている傭兵メンバーはとっくに逃げているか、C&Cの狙撃手(カリン)、あるいは強襲兵(アスナ)、もしくはアビドス最年長にして最も強い盾役(ホシノ)にワンパンチされているかのどちらかだ。

 

「私たちだけでも逃げよう社長。この状況で皆一緒には無理」

「それは……っ」

 

 そして、撤退が難しいもう一つの理由。それは便利屋68のリーダー、陸八魔アルは──とても傭兵(アウトロー)には向いていない、底なしの善人であることだ。

 

「……それは、駄目よ。せめて助けられる子たちも逃がしてあげないと!」

 

 そうなると思っていた。カヨコは予想できた反応に、思わずため息をつく。しかし、だからこそ便利屋68に付いていくと思えるのだ。彼女は、撤退と傭兵の救助の二つを視野に、この場を切り抜ける戦略を捻り始める。

 

 戦いは始まったばかりにしてクライマックス。互いに譲れない生存を賭けた戦いが、決闘の側で始まろうとしていた。

*1
なお絵面は顔の見えない圧迫面接

*2
似ている例として挙げれば、FPSゲーム『APEX』に登場するSR武器、センチネルのチャージ射撃に近い。

*3
"逆だよ"

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