Blue Kenshi【旧作】   作:外道カヤノ

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 陸八魔アル おもしれー女


 今回のイベスト最高でした。
 アイリ……完凸したるからな


第十二話:襲来せし便利屋(3/3)

 

 アビドス側の戦況は、かなり有利だった。

 急遽とはいえ“C&C"が居り、戦術指揮を立てる先生がついている。連携はしたことがないものの、そこは先生の手腕というべきか。息が合わないところが、全くと言っていいほど無い。敵をばったばったとなぎ倒すことができ、ついに前線メンバーが"便利屋68"と接敵するところまで来ていた。

 

「あら、よっと!」

 

 ホシノが持つ折り畳み式の黒い盾が、傭兵の一人を殴り払う。ついでにポンプアクション式ショットガン(SG)──『Eye of Horus』──で追撃を行い、しっかりと意識を刈り取っておく。傭兵という壁が取っ払われたその先には、便利屋68の平社員こと、伊草(いぐさ)ハルカが待ち構えていた。

 

「あ、アル様に近づかせません!絶対に!絶対にぃぃぃ!!」

 

 来ると分かっていたハルカは、目の前に現れたホシノに対して、同じくポンプ式アクション式SG──『ブローアウェイ』──を連射する。

 

「ッ」

 

 ダァン!ダンッ!ダンッ!と次々に散弾が放たれ、ホシノは反射で盾に身を隠す。

 ハルカの目は大きく開かれ、まるで電車に轢かれる寸前かのような恐怖に染まった顔で、無心にホシノへ乱射していた。しかしその射撃は確実にホシノを狙っており、さらに連射速度が徐々に早まっており、途中からコッキングと装填(リロード)を無視するという、「神秘」というものが無ければ明らかに奇妙な現象が起きていた。

 なお、当の本人は神秘を込めたつもりもなく、自身が起こした事象にも気付いていない。

 

「死んでください死んでください死んでくださいぃぃぃッ!!」

「やなこった」

 

 ホシノは、弾切れを待つ選択肢をその場で破棄し、盾に体を押し付けるようにして前身する。

 

「そら、よっとぉ!」

 

 迫り来る盾を止めんとハルカは乱射するが、それでもホシノは止まらない。

 

「ひぃっ!?」

「じゃ、おねむり」

 

 カツン、とハルカの持つSGの銃身が盾に接触したのと同時に、ホシノはほんの僅かに盾から身を出し──ホルスの目を彼女に向けた。

 瞬間、ホシノの体が、勢いよく後ろへとと引っ張られた。

 ホシノがいた地点に、小規模な爆発。それは戦闘が起きる直前、砂漠の方角で見た爆発と同じであり、ホシノは、それが誰の仕業かすぐに理解した。

 

「これ、さっきのか。あ、わざわざどうも〜」

「この程度、お安い御用です」

 

 ホシノは、自身を後ろへ引っ張り上げたアカネに、素直に感謝を述べる。それもそのはず、先ほどの射撃は、僅かに盾から出した顔に向けて放たれた精密狙撃。あのままハルカを撃っていれば、体に直にスナイパー弾と爆発ダメージを浴びていただろう。

 

 一方、前線に飛び込んだアスナは、ぴょんぴょんと跳ねていた。

 ──決してふざけているわけではなく、ぴょんぴょんと跳ぶにはしっかりとした理由があった。それは、彼女の足元。あえて見える形で設置された地雷が、アスファルトの上に転がっていたからだ。

 

「ひょいっと、いよっと!」

「あははっ、面白いくらいに引っかかってくれないなぁ!」

 

 地雷をばら撒いたのは、ムツキ。彼女は自身が好む戦術として、大量の爆発物をばら撒く傾向がある。身の丈の半分以上はある大きさのマシンガン(MG)──『トリックオアトリック』──を片手に、ばら撒いた地雷を避ける相手を狙い、地雷にまみれた足場の上をタップダンスさせるという、楽しい(いつもの)戦術を取ったムツキだが、相手が悪かった。

 

 全部回避されている。ムツキは、冷や汗をかきながら思う。

 身のこなしの良さは見てわかるが、四方八方から銃撃を受けている中で、足元を覆うようにばら撒かれた地雷を避けるというのは、武芸に秀でた達人でも至難の業だ。

 だが、アスナはそれをやり遂げていた。

 

「そこ」

「っ、これは……流石にキツいかな」

 

 地雷を踏み越えて迫るアスナ。その後ろから、シロコの援護射撃がムツキを襲う。火力の高いセリカもムツキを狙うようになり、ムツキは爆発物を再度ばら撒きつつも後退してゆく。

 しかし、そんなムツキに新たなオーダーが入った。

 

「社長から指示!ムツキ、残りの爆弾をアイツらの真後ろへ投げて!できれば沢山!ハルカは爆弾が投げられたタイミングで引いて!」

「……ふーん、おっけー!覚えてろよ〜っ!」

「うぅぅ……っ!」

 

 カヨコの指示で撤退を悟ったムツキは、持ち前のボストンバッグ──に大量に詰め込んだプラスチック爆弾──を、一回転してフリースロー。と同時に、空いた手で缶型の物体を前線へと投げる。

 ボストンバッグを投げた先は目の前ではなく、前線の後方。ノノミが待ち構えている位置だった。

 

『"ノノミ!近くの遮蔽物へ!"』

『! アカネさんの方向にも投擲物!』

「皆さん対爆姿勢を取ってください!前方のアレは煙幕弾(スモークグレネード)です。後ろに注意してッ!」

 

 ムツキが投げたボストンバック爆弾は、前線にいるメンバーの頭上を通り越し、その後ろで防衛線を張っていたノノミへと飛来する。ノノミからでも飛来する爆弾は見えていたため、彼女は数歩下がって遮蔽物に隠れた。

 瞬間、ズドォンッ!ドォンッ!!ボガァンッ!!と、三連続で爆発が起き、衝撃と轟音が前線メンバーを襲う。さらにダメ押しのスモークグレネードが爆発後に噴出を開始し、便利屋や傭兵団がいるであろう位置を白煙が覆い隠した。

 

「ノノミ!」

「こっちは大丈夫です。それよりも!」

『目標、撤退してます!先生、どうされますか?』

『"……追わなくていいよ。早く決着がついたのなら、それに越したことはないからね"』

「わかりました。そちらの指示に従います」

『では、戦闘終了です。皆さん、お疲れ様でした!』

 

 その言葉で、皆が一息ついた。

 

 

 

 

 

 

 一方その頃。

 

「斃れろこのチビ……ッ!!」

「テメェも人のこと言えねぇ背丈だろうがッ!!」

 

 トウハとネルはというと、銃を捨てて互いに組み付き合って戦っていた。

 両者共にボロボロ。石頭を押し付け合い、両手で押し相撲をし、互いの指からミシミシと音が鳴っているにも関わらず、バトルは続いていた。ゲームで言うならば、互いにHPは残り1。しかしどちらも食いしばり*1状態が発動しているために、どれだけダメージを与えようが倒れることはなかった。

 

「私が勝つ!!」

「勝つのはあたしだ!!」

 

「……先生、止めに行ってもいい?見てられないんだけど」

「ご主人様、私からもお願いします。リーダーの暴走を止めるのも部下の責務ですので」

『"あぁ、うん……できるだけ優しく止めてね"』

「「多分無理」ですね」

 

 まさしく「争いは似たもの同士でしか発生しない」を体現したかのような光景に、セリカとアカネは、未だにバトルを続けている二人の元へと歩いていった。

 

 三分後。

 

 頭の上にたんこぶができ、萎れた電気ネズミのような顔になったネルとトウハの横で、アビドスの面々と、残ったC&Cのメンバーは、事後処理を行なっていた。

 

「やっぱり新品。武器も、戦車も、とても三流のチンピラが買えるようなものじゃない」

「”Flake 41“。やっぱり、この間見たのと同じ型ね」

 

 シロコとセリカは、破壊した戦車の部品と、拾った武器の類を並べて観察する。

 

「おや、その戦車はトリニティ製ですが、既に製造停止された古いもののはず。……調達先があるとしても、かなり限られますね」

「こっちのアサルトライフルは、ゲヘナにある企業製のものだ。他の武器や防具も、製造元と企業がバラバラだね。付け加えると、ここにあるモノは全部、キヴォトスでは製造と運用が禁止されてるものだ」

 

 その情報を聞いて、「やっぱり」とアヤネはタブレットでメモを執る。つい一昨日まで襲撃しに来たヘルメット団も、同様の装備を持って襲撃しに来ていた。今回は便利屋が雇ったであろう別口の傭兵団が来たが、傭兵団の装備が軒並み撃破済みのヘルメット団のものと被っているのであれば、僅かな点と点が繋がるもの。

 そして、ホシノが思い出したかのように発言した。

 

「そういえば、昨日の便利屋たちって、600円のラーメン一杯を四人で分け合ってたくらい金欠だった覚えがあるなぁ。おじさん、流石にアレには同情しちゃったけど」

 

 600円の話にトウハとC&Cの面々が「マジ?」と言いたそうな顔を向けたが、アビドスの面々は深々と頷いた。

 

「……ヘルメット団の雇い主は結局わかりませんでした。話を聞く限り、便利屋もおそらく依頼された側。今回の傭兵団は便利屋が雇ったもので、傭兵団の武装は便利屋が買い付けたものでしょうか。ただ、購入先はおそらく同じ」

「色んな"店"を挟んで調達した感じですかね。となると、心辺りは一つしかないです」

「……ブラックマーケット」

 

 トウハと先生を除く、皆が思いついた先は一つ。──【ブラックマーケット】。名の通りの闇市場であり、キヴォトスにおける、明るみの中にある暗い場所。休学や停学、あるいは退学させられた生徒が集い生まれた区域で、そこでは常日頃、禁制品や転売品などの売買が行なわれている。【連邦生徒会】ですら手出しのしにくい犯罪地域にして、そこでしか出回っていないレア物(オタカラ)の発掘現場でもある。

 

 そんなブラックマーケットに用事ができたアビドスの面々だが、何も知らないトウハは、ひとまず推察の中から確定した結論を述べた。

 

「……ブラックマーケットの部分は後で聞くとして、もう背後に何かがいるのは確定だろうな。ヘルメット団といい、今回の便利屋といい、武器防具戦車ヘリといい……相手はよほど自分の手を汚したくないと見た」

「じれってーなぁ。そうまでして手に入れたいモンがアビドスにあるってのかよ」

「む」

「落ち着けシロコ。ネルの言い方はアレだが、私も同じ意見だ。アビドスをモノにするのを企んでいるのか、アビドスに何かがあるのか……ホシノ、アビドス校舎の地下に宝や遺跡があるとか、そんな話はないのか?」

「宝なんてあったら、とっくに借金のカタにしてるかな〜。そもそも、この校舎だって、本来のアビドス高等学校の校舎じゃないしね。砂漠化の影響で立て直した別館だもん」

「……別館、だったのか」

「おじさんが入学した時はとっくにそうだったよ」

"…………"

 

 あまりの情報に、アビドスの事情を知らぬ者は絶句する。特に先生は、アビドスに来た際に、ホシノに言われたことを思い出す。

 

『正直言うと、とても面倒なことだよ?』

 

 先生として、一人の大人として、9億の借金だろうが「助ける」と発言した。だが、その9億の仕組みが、どうにもなるべくしてなった借金とは思えなくなってきていた。

 まるで9憶の借金に至り、アビドスがここまで困窮する過程が、全て何者かの計画であるかのように。

 

『……なるほど。やはり何も知らなかったのですね』

 

 悩んでいるところに、ブーンと近づいて来る白いドローンが一機。ミレニアムのエンブレムが捺印された、モノアイオービット型のソレは、先生の前に顔を出した。

 

「やはり見ていたか、ヒマリ」

『はい。義肢のテスト記録を依頼されたのはウタハさんですが、私は直接見たいと思いまして』

 

 モノアイがホログラム映像を発し、ヒマリの姿が映し出される。雪のように白く、淡い少女。車椅子に乗ったその姿は儚げで、弱々しい。そんな姿に、アビドスの面々と先生は、機械の手足が無ければ動けないトウハとどこか重なるものを感じ、

 

『アビドスの皆様、シャーレの“先生”、初めまして。私は、【ミレニアムサイエンススクール】三年生、ミレニアム最高の超天才清楚系病弱美少女ハッカー、明星(あけぼし)ヒマリと申します』

「うわぁ、いきなり濃いキャラが来たなぁ」

 

 ホシノの言い草と共に、全員が先のイメージを投げ捨てた。

 

『おや、あなたは小鳥遊(たかなし)ホシノさんでしょうか』

「そうだけど、トウハ、この人に私のこと教えた?」

「いや、学校のことは彼女には話したことがないが……」

『現時点で、アビドスの上級学生はホシノさんだけですので、少々調べてさせて頂きました……と、この話はまた後ほど』

「……まあいいか。それで、知らなかったっていうのはどういうこと?」

 

 

 

『【カイザーグループ】』

 

 

 

 ピクリ、と。ホシノが珍しく、明らかな反応を見せた。

 

『砂の件でですね、もし有用性が見出せたのであれば、アビドス最後の生徒会メンバーであるホシノさんに、土地の借用と採掘場の敷設許可を相談を行おうと思っていました。しかし、調べてみたところ……』

 

 ピコン、と。今度はトウハのスマホが音を鳴らす。彼女がスマホを開いて、送られたデータの中身を見る。中身は、土地の所有権に関する複数の資料。【連邦生徒会】押印のものもあり、資料は嘘混じりのない確かなものだと思わせた。

 ──地主が、アビドスではなくカイザーグループという名前になっていることを除けば。

 

「……なんだ、これは」

『現時点のアビドス校舎と、その付近の僅かな部分を除く、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、カイザーグループが地主となっています。ですが、トウハさんは嬉しそうに砂のことを教えてくれました。──本当に、知らなかったようですね』

「ヒマリ……いや、ホシノ、これは……」

 

 知っていたのか。トウハはその言葉を、揺れ動く目でヒマリを見つめるホシノに言えず、佇む。

 過去に土地を売り捌いたことがある。それは、トウハにとっても、アビドスの面々も、話半分で知っていたことだった。本当に砂漠と化してしまった場所、管理の手が届かない場所は、どうやっても握り締め続けることは難しい。だから売り捌いたことについては、トウハにでも理解できる。

 

 だが、これは売り過ぎだ。明らかに、アビドス校舎のある土地以外のほとんどが、カイザーの手に渡っていた。

 仮に借金を全額返したとしても、今度は土地を取り返すためにまた金を積まなければならない。

 

『一部、カイザーPMCが所有している土地もあるようですね。かつてアビドス本校があった場所でしょうか。どのみち、カイザーグループが関わっていることには変わりないでしょう』

 

 あなたは、これからどうされるのですか?

 ヒマリから突き出された言葉に、ホシノはただ、口を開けずにいた。

*1
根性とも言う。HP1の状態で生き残る。





 今回の話に至っては、かなり思い悩んだ部分があるので、後々変更を加えるかもしれません。

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