Blue Kenshi【旧作】   作:外道カヤノ

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 ストーリー読み直し&プロット整理につき短め。続けようと思ったらキリが悪くて……


第十三話:砂が覆い隠したもの

 

「ヘッヘッヘ!手負いのゲヘナ生、しかもいい感じの衣装を着てやがる!」

「金品置いて行きなァ!絶対コイツには沢山あるぜ!」

「ボロ儲けだ。美味すぎる!」

 

 と、見た目だけで多大な評価を受けているが、実際は真逆で素寒貧なゲヘナ生たちこと、"便利屋68"の四人は、アビドス市街地にてチンピラに絡まれていた。

 

「こっちは出す金も財布もないんだけど」

「冗談言ってる場合!?包囲されちゃったんだけど!」

「アル様、こっ、殺しますか!?殺しますよね!?殺していいですよね!?」

「傭兵団もこのタイミングで消えるか、寝返っちゃったね~。まあ安給なら、裏切って追い剥ぎする側に回った方がお得なのかな?」

 

 絡まれたというよりも、包囲網を敷かれたと言ってもいい状況。チンピラの数は便利屋の倍以上、さらに雇っていた傭兵団の少女たちもそちら側に行き、アルの表情は蒼白を通り越して青一色になりつつあった。

 本命であったアビドスとの戦闘は短時間で終わったが、その間に消耗した弾薬と爆弾等は想定以上。マトモに戦えるのは、弾薬に若干の余りがあるアルと、カヨコだけ。逃げる手段の煙幕弾(スモークグレネード)も、対アビドス戦で使ってしまったため、品切れである。

 

「包囲されてるのなら、逆に威圧で散開させる。社長、地面にアレ撃てる?」

「……撃ちたいところだけど、包囲されてるから撃たせてくれる隙がないわ。ねえムツキ、本当に爆弾品切れなの?一個でもあればいいのだけど

「ごめんアルちゃん、さっきので全部切らしちゃった。アメならあるよ」

「今は要らないわよ!?後で貰うから……一歩でも動けば集中攻撃されるのは見えてるのよ。けど、一点でもいいから視線を逸らせれば……」

 

「あァ?何ゴチャゴチャ話してやがる!もういい、コイツら全員まとめてブッパだ!」

 

 包囲するチンピラがアサルトライフルを構え、360度から銃口を向けられる。カヨコは冷や汗を流しつつも、撃たれるより先に自らの神秘を解放せんと、得物たる拳銃を握り──

 瞬間、トスッ、と聞いたことのない音が、チンピラの足元から鳴った。

 

「おん?……()?」

「ッ!」

 

 その一瞬を、カヨコは見逃さない。自らの神秘を込めた凶弾を、頭上へ撃つ。パァンッ!!と、サプレッサー付きの拳銃から発せられたとは思えない音が、周囲のチンピラたちに恐怖を与え、驚きと怯みという形でチンピラたちをその場に縫い付ける。

 同タイミングで動き出したのはハルカ。僅かに残った散弾を前方に向かって浴びせ、強引に道を切り開く。

 

「殺されてくださいいいぃぃぃいぃぃいいぃっ!!」

 

「っづアぁ!?」「コイツいきなりッ!」

「なんッ!?お前たち撃て!撃て撃て撃て!」

 

 ハルカによって瓦解する包囲網。ムツキもまた機転を利かせ、マシンガンを抜いてばら撒く。混乱している最中に放たれた弾丸が、恐怖に染められたチンピラたちをなぎ倒してゆく。

 

「そーれっ!全部あげちゃうんだから!」

「走って!今のうちに!」

 

 アルの掛け声を最後に、四人は走り出した。ハルカが作った道を抜けると、すぐに道路が見える。包囲網は案外小規模だったようで、便利屋たちは逃げおおせることができた。が、後ろから怒号や罵声が聞こえてくるため、しばらくは走り続けることになるだろう。

 

「ナイスタイミングよカヨコ!一度遠回りしてから戻るわよ!」

「うん……そうだけど」

 

 釈然としない様子で走るカヨコの様子に、アルは疑問符を浮かべる。チラリと後方を見たカヨコだが、すぐにアルへ「何でもない」と返した。

 

(あの矢、いや……()()()()()()()()。一体、何者?)

 

 後方を見た時、一瞬だけしか見えなかった影。

 妙に大人びた背丈の、一メートル以上はある巨大な得物を脇に抱えた人影の姿を、カヨコは脳裏に秘めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 正午。

 事後処理が終わり、日が空の真上を登った頃。“C&C”の面々との別れの時間が来た。

 仕事で来たにも関わらず、なし崩しで協力することとなった彼女だが、依頼料金として【シャーレ】が、先生が一つ彼女らに「貸し」を作ることとなった。先生は、いつ支払いが来るのか待ち構えることとなったが、あまり気にしてはいないようだ。

 

「じゃあな。アビドスと、先生。んでトウハ、勝負は着いてねえ。ぜってー次は勝つからな」

「……悪いが、しばらくは難しそうだ。だが、覚えておくよ」

 

 私──荒砂(あれさ)トウハと、ネルとの試合は無効試合となった。当然ながら、試合中に敵襲を喰らい、その最中も戦っていたものの、セリカとアカネに止められ、結局勝負はついていない。

 次は勝つ。と言いたいが、後ろでガッチリとノノミが笑顔で私の肩を掴んでいるので、しばらく無理そうなのは確定している。

 

「ひとまず、納品物の結果に関しては、あちらの研究次第ですが二週間以上はかかるかと。もし再度必要になった場合は、もう一度訪れるかもしれません。その時は、今度こそ“新素材開発部”が来るかと思われますので」

「はい。その時は私に連絡をお願いします。えっと、これを。私のモモトークの番号です」

「ありがとうございます。ふふっ」

 

 方や事務的にだが、悪くない関係ができたアヤネとアカネは、それぞれ今後の話だったり、モモトークの連絡先交換などをしていた。互いに戦術指示を行う立場である二人の間で、シナジーが合ったのだろうか。

 

 その一方で、先生は──

 

"こっちからも確認できた。偽装されてたね、コレ"

『……いかなる方法で確認したかは知りませんが、そうですね。地主の情報が巧妙に隠されていました。個人、あるいは中小企業の手持ちになっていたようですが、これら全ては“カイザーコーポレーション”の傘下です。そして、【カイザーグループ】に紐づいています。ただ、それ以外の情報は取れませんでしたね。おそらく()()()()()()()()()()()、オフライン管理でされているものかと』

"なるほど。ありがとう、ヒマリ。お礼はまた今度に"

『この程度であれば問題ありません。それに、シャーレの先生とは、一度お会いすべきだと思っておりましたので。ドローン越しとなってしまいましたが、今後ともよろしくお願いします』

 

 ミレニアムのドローン越しに、ヒマリと話していた。

 事後処理の途中で判明したことだが、アビドスの土地がカイザーグループという、悪い噂が絶えない企業の手に渡っていた。試しにモモックスで検索をかけると、「ブラック企業」だの「騙された」だのと、良いものが見えない。その中には、アビドス以外にも被害に遭ったと叫んでいる学園の生徒の情報も混じっており……私はそっと検索結果を閉じた。

 

"どうして、こうも隠してまでアビドスを攻める?"

『そこは私にも。ホシノさんは──』

"──今は、そっとしてあげて"

 

 ホシノは、心あらずといった様子で、アビドス郊外の方角を見ていた。

 アビドスの土地がこうなっていたことは、彼女にとっては想定外だったらしい。あの時、絞り出されるように「知らなかった」と言った彼女の言葉を、嘘だと思うほど気は狂っていない。

 ──こうなるとは思っていなかった。私には、そんな風に聞こえた。

 

"対策委員会の一人として、この問題は必ず解決するよ"

『そうですか。──こう言ってはアレなのですが、【ミレニアム】としては、此度の問題への関心はありません。ゲヘナやトリニティを引き合いに出すつもりはないのですが、こうした政治問題は、当然ながら当該の学園で解決すべき問題です。先述の二校であれば、契約や、()()()と称した嫌がらせを行うこともあるでしょう』

"……肝に銘じておくよ"

『えぇ。今日は()()このような問題が起きたので、()()()()()()()()を取り持っただけです。……とはいえ、私は追加で何かを求めることはしません。私は澄み切った純正のミネラルウォーターの如き心の持ち主ですからね。単純な欲望や自己優位性の保持などのために人に物をせびることはしませんとも』

"…………"

『なんでしょう。そのなんとも言えない微妙な表情は』

 

 …………*1

 解決すべき問題が一気に出てきたが、同時に倒すべき敵というものが生えてきた。やることも、準備することも。

 

 ともあれ、既に時間は昼時。これから食事を、という気分ではないものの、体を動かして腹が空いているのは誰もがそうだろう。

 ドローンがC&Cのトラックに入り込んだのを見て、アカネがエンジンを稼働させる。僅か数時間と短い間だったが、とても充実した時間だった気がする。トラックに乗り込んだC&Cのメンバーたち。発進する寸前、アスナが車窓から身を乗り出し、手を振った。

 

「じゃあ、またねーっ!今度、遊びに行くよー!」

「アビドスの皆様、短い間でしたが、お世話になりました」

「ン、じゃあな」

「またいつか。よろしくね」

『それでは、ごきげんよう。またいずれ会いましょう』

 

「ん、今度は私と戦おう」

「今度はお土産持ってきなさいよねー!」

「またいつか、お会いしましょう!ばいばーい☆」

「アビドスの砂をよろしくお願いします!さようならー!」

 

「……いっちゃった。じゃあね〜」

"バイバイ。またいつか"

「今度またそっちに行く時によろしく頼むぞー!」

 

 遠ざかってゆくトラックを、手を振って見送る。タイヤに掘り起こされた砂が舞うが、車の風に靡かれ、まるで追うように彼女らの姿を覆い隠し、やがて見えなくなった。

 まだ昼時だというのに、何かが終わったかのような、胸がすくむ感覚。あちらはこれでひと段落しただろうが、こちらはむしろ、ようやく始まりの一歩に踏み入ったところだ。あぁ、それにしても、

 

「……けむたいな」

 

 久しぶりだ。こんなにも、拳が軋むほど握りしめたのは。

 

*1
(눈_눈)





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