Blue Kenshi【旧作】   作:外道カヤノ

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 本日、朝と夜で二話分の投稿を行っております。




第十九話:『先生』

 

 アビドス高等学校からD.U区へ。シャーレのオフィスに戻れたのは、午後二十時の頃。

 今日は、明日が休みの日なので、コンビニ(エンジェル24)でジュースとつまみを買ってから、滅多に人が来ないところなんで*1、そこでしこたま溜め込んでいたプラモやソシャゲをやってから寝──ない。

 

 残業の時間だ!!(絶望)

 

 先生()は激怒……できない。何故なら、この残業は自分で持ってきた仕事だからだ。誰かのせいにしたいが自分の顔しか浮かばない。

 数日後、早ければ三日後辺りに始動しようとしている作戦。これらを詰めるためにも、今から最高速度で作業しなくてはならない。間に合うか?いや、間に合わせろ。何のための『先生』だ。

 

 アビドスを──ホシノを救うと決めたのだ。そのための作戦は、これまでのアビドスが受けた苦難と、彼女の心を晴らすためのものだ。困っている生徒のためなら何でもやる、それが『先生』だろう。

 

 デスクに着いてから、連邦生徒会長から託されたらしいタブレット端末、『シッテムの箱』を作業用PCに接続する。充電要らず、超ハイスペック、中にはスーパーAIの【アロナ】ちゃんがいるこの端末だが、今回ばかりは少しアロナちゃんに頼らざるを得ないかもしれない。

 

"アロナ、これから例の作戦を詰めいくんだけど……今から私が連絡する時、誰にも傍受されないようセキュリティを強めてくれる?"

『はい、お任せください!先生、残業は程々にしてくださいね?』

"きょ、今日だけは許して……"

 

 アロナ。シッテムの箱に在住する、不思議なシステム管理者にして、メインOS。海に浸かった、半壊した教室の中に住まう、水色の髪の少女だ。可愛らしくも、復号化(デコード)が上手くいっていないような機械的な声が特徴的だ。この子は機械の中の住民のはずだが、甘いものを欲しがったり、居眠りする様子は、まるでキヴォトスの生徒のよう。実際、アロナの頭の上には、感情の起伏で変化するヘイローがある。

 

 そんな彼女にめっ!されつつも、私は作業用PCからモモトークを開き、通話モードへ。最初の連絡先は、【連邦生徒会】の連邦生徒会副会長、七神(なながみ)リンちゃん。

 ついでにヒマリに、モモトークでメッセージを送っておく。……爆速で返ってきたな。よし。

 

『もしもし、こちら連邦生徒会……どうされましたか、先生』

"夜遅くにごめんね。今、時間は大丈夫かな"

『えぇ、問題ありませんが。急用でしょうか?』

"そうだね。できれば、今すぐにでも連邦生徒会の許可が欲しいものがあってね……資料を送ってもいいかい?これを見て判断して欲しい"

『……なるほど。構いません。確認してみましょう』

 

 ホログラムに映るのは、大人びた少女。一応学生、ではあるのだろうか。尖った(エルフ)耳と、細いフレームのメガネが特徴的な、凛とした顔立ちの女の子だ。深海色のロングヘアと、きちっと白を基調とした連邦生徒会の制服を着こなしている姿は、大人に見間違うほど綺麗だ。かわいいね。

 

 私がリンちゃんに送ったのは、今日ゲットできた【ブラックマーケット】の書類。本当は利息の集金確認書類だけを手に入れるはずだったが、ヒフミのファインプレーで直近の取引明細もファイルサイズでゲットできている。アビドスの利息が悪用されている証拠の他に、他校やブラックマーケット間の暗い取引の詳細までもが記されている。この情報は、ブラックマーケットに手出しできなかった連邦生徒会にとっても、欲しかった情報だろう。

 

『ふむ、これは……まさか。今日、ブラックマーケットで大きな爆発騒ぎがあったと耳にしましたが、先生?』

"あ、後で弁明はさせて……"

『はぁ……ある程度状況は読めました。それと、今から先生がやろうとしていることもです』

 

 流石リンちゃん。

 ついでにと、私はもう一つの資料を送る。

 

"こっちは別の資料だけど、見てくれる?"

『わかりました。……ミレニアムからの提供資料ですね。ウィルスチェックに引っ掛からなければいいのですが』

"…………(心当たりがある顔)"

『……確認できました。こちらは、地主情報ですか。殆どがカイザー系列が地主となっているようですが、先程のものとの関連性は?』

"結構ある。元々アビドス本校があった場所の地主がカイザーPMCになっていて、さっきの取引明細を見たら分かると思うけど、お金が妙に多めにそちらに流れていってる"

 

 あぁ、緊張する。

 まるで今の気分は、嫌いな上司がギッシリ詰まった会議室の中で、自作のパワポを回している時のようだ。

 相手はリンちゃんとはいえ、今は公務の最中だ。

 

"カイザーローンは、借金返済のための利息を正しく徴収することなく、利息をブラックマーケットの犯罪取引、違法売買契約に回している。これがまず一つ"

 

 考えろ。いや、自分の中でまとめたはずだろ。どうしてメモを残していなかった馬鹿野郎!

 アドリブだ。行き当たりばったりでも、説得する材料を作り上げてみせろ。

 

"【アビドス高等学校】は“カタカタヘルメット団”から、執拗に襲撃を受けていた。その支援をカイザーローンが行なっており、証拠として集金確認書類に、カタカタヘルメット団への補助金500万円相当の記録がある。これが二つ目"

 

 もう一つ、いやまだある。

 金銭のやり取りを完全にアナログ管理し、内部で処理することで徹底的な情報隠匿を可能にしていたようだが、原本が一つでも漏れれば、その隠匿性は無意味と化す。

 

"カイザーローン……いや、“カイザーコーポレーション”はアビドスの土地を完全占拠しようとしていた。これはアビドス高等学校へ執拗に攻撃し、約9億の借金を課せることで残りの生徒らを強制的に立ち退かせようとしていた。動機は不明だが、企業が学園に対して危害を加えていることは事実"

 

 そして、最後のピース。

 

"カイザーローン、オクトパスバンク、八足銀行、ミカド金庫……これらカイザー系列の銀行が、こぞってブラックマーケットを経由し、“カイザーPMC”へ資金を流している。送金元は、元アビドス本校に建設された、カイザーPMC駐屯基地。彼らが元アビドス本校で何をしているのかは、全くもって不明"

 

 息を吸う。

 

 

 

"【シャーレ】は現在、【アビドス高等学校】の支援を行っている。私は、アビドスと【カイザーグループ】間で行われている、この不透明な資金の詳細を知る必要がある。アビドス高等学校から明らかに不当な金銭搾取を行う【カイザーグループ】に、資金利用の詳細の開示請求、並びに現地の強制捜索を行いたいと考えている。そのため、【連邦生徒会】には、これらの捜査令状を書いていただきたい"

 

 

 

 ──言い切った。言い切ってしまった。

 

 

 

 私はもう戻れないだろう。このやり方は、私がこれまで見て、()()()()()『先生』のやり方ではない。

 

 

 

 だけど、やるしかなかった。

 あんな曇りついた彼女の顔を見て、動かなければと思ったのだ。

 いずれ私は、既定路線(原作)から外れた報いを受けるだろう。それでも、私はあんな姿を見たまま放っておけやしない。

 

 

 

 ──私は、今の(■■)は、先生だから。

 

 

 

『…………なるほど』

 

 リンちゃん──七神リンの反応は、わからない。

 

『一つ、質問があります』

 

 静かに、凛とした顔を向ける。ホログラムのはずなのに、目の前に、本物の七神リンが見つめているように思えて、心臓が止まったかのように錯覚する。

 

『我々に許諾を頂かずとも、【シャーレ】の権限を使えば、強制捜索など容易にできたはずです。やろうと思えば、アビドスに課せられた借金をシャーレに移譲することも、【カイザーグループ】を強制解散させることも、可能であったはず。シャーレが超法規的機関であるのは、それほどの権利と権限を持ちうるからです』

 

 知っている。けど、借金を移譲させる手段は思いつかなかったな。……やめておこう。この路線で走ると決めた以上、不要なチャート変更は不確定要素を生み出す。

 

『にも関わらず、わざわざ我々の許諾を頂こうとする理由を、教えていただけますか?』

"あの子を助けたいからだ"

 

 不思議と、今度は即座に口に出せた。

 ……いやこんなこと、言うつもりじゃなかったはずだが。リンちゃんも驚いてるし。

 

"……ごめん、今のは忘れて。相手はのらりくらりと連邦法*2を躱してまで、ここまでやってきた、ルールの穴を突く手練れだ。だから、私は可能な限り正々堂々と勝負した、い……んだけど、リンちゃん?"

『……ふふっ。いえ、今ので十分です』

 

 クスクスと笑うリンちゃん。今の部分に、おかしなところなんてあっただろうか。

 

『この件に関しては明日、連邦生徒会内でも共有します。令状の発行についても、おそらく通るとは思いますが……』

"ありがとうリンちゃん!"

『まだ決まった訳ではないですよ』

"はい……"

 

 とにかく、これで連邦生徒会の許諾は降りたと思っていいだろう。一番重い任務をクリアしたと思うと、どさりと背中が椅子とくっついた。どれほど緊張していたのか。私の背中が、少々痛い。

 

『……なんだか、最初に見た時と顔つきが変わりましたね』

"……え?"

『いえ、何でもありません。ひとまず、この資料はアユム*3に確認させます。よろしいでしょうか?』

"構わないよ。夜遅くにごめんね"

『今回の件は、我々にとっても必要な業務でしたので。このくらいであれば構いませんが……それほどの熱意を、普段の業務にも注いで欲しいものですね』

"本当にすみませんでした"

 

 やはり仕事はクソ。ハッキリわかんだね。お姉さん許して。

 プツンと切れる通話。これで山を超えたわけだが、まだやるべきことは沢山ある。次は、ミレニアムに連絡を取ろう。と思っていたが、時刻は二十一時を過ぎようとしている頃だ。いつも業務に追われてる連邦生徒会*4ならともかく、今この時間にモモトークで話せる相手は、流石に限られてくるだろう。

 

 一応、ユウカに連絡をとってみるかな……いや、そうだな。どうせなら……いや待て、作戦を詰めてから……あと、当番募集(ガチャ)で来た子たちにも聞いてみよう。あ、そうすると作戦漏れの可能性が出てくる……うーん……いや……やっぱり…………それと…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 透き通るような、綺麗な空を見た。

 

 天を貫くほど高い、光の柱(サンクトゥムタワー)が見えた。

 

 銃弾が頬を掠める。

 

 可愛らしい女の子が、銃撃戦を街中で行っている。

 

 ──どこの紛争地帯だここは。そう思った。

 

 

 

 この世界を知っている。この世界は、物語だ。正確には、ゲームなのだが。

 私はこの世界に来てしまった。ただの『ゲームのプレイヤー』であったはずなのに。私はゲームの世界を、物語を楽しむ『観客』であったはずだ。なのに、気付けば私が物語の主人公(プレイヤー)となっており、窓に映る自分の姿を見れば、『先生(知らない大人)』となっていた。

 

 初めてみる銃撃戦は、恐ろしいと思った。

 美少女が並んでいる。ゲームで見たあの子が動いている。なんてテンションは引っ込んだ。後々『シッテムの箱』の庇護(アロナちゃんバリア)に守られるとはいえ、一発で致命傷足り得る一撃が、雨のように飛び交う場所で指揮を取れだなんて、出来ると思えなかった。

 

 けれど、やるしかなかった。

 

 【シャーレ】の担当顧問となり、様々な生徒と触れ合った。自分というものを出来るだけ抑え込み、覚えている限りの『先生』らしい振る舞いをした。書類仕事には四苦八苦した。何せ、報告書の作成は割とアナログな部分が多いため、キーボードだけじゃなくペンも動かす必要があった。その点では、当番の子たちにどれだけ助けられたか。

 

 『先生』の業務には、まあまあ慣れた。アビドスからの手紙が来た時には、ついにか、と思った。

 もう生徒を見て興奮はしない。おっぱいが明らかに大きい子(羽川ハスミ)を見てもグッと我慢……

 

 できるわけねーだろ〜〜〜〜〜〜!!浦和(うらわ)ハナコとか見たら絶対鼻の下伸びるわ!!

 

 …………ただ、今はもう私は『先生』だ。

 子供の模範となる大人。そうでなくてはならないから。

 

 (よこしま)な思いは、正直消し切ることはできない。けど我慢しなければならない。

 足が魅力的な子(銀鏡イオリ)を見たら飛びついてしまうかもしれない。子供相手に欲情したら伝説の校長の再来だろ。

 あの子(天童アリス)は例のアレなんか知らない。当然だ。汚すぎる。

 隕石落とす子(聖園ミカ)にゴリラとか言ってしまいそうで怖い。正直、対面したくない。既にアレはあの学園も含めて事態はスタートしている。

 あの子(砂狼シロコ)はどうしてそんなに私に懐くんだ。私は、そんなに良い人間じゃないのに。

 

 アビドスは廃校にさせない。

 ミレニアムにアレを降ろさせない。

 『エデン条約』は絶対に締結してみせる。

 RABBIT小隊も助けなきゃ。

 紛争調停委員会にも赴く必要がある。

 

 道半ばで死ぬ可能性は、ある。

 

 私は『先生』じゃない。だから、知らぬ場所でバッドエンドへの道筋を踏むかもしれない。

 

 本当は怖い。行きたくない。

 

 家に帰りたい。女の子に囲まれているとはいえ、皆銃器を持って当たり前のように運用してる。

 

 『大人のカード』の使い方がわからない。アレでどうやって『先生』は奴らに対抗していたんだ。

 

 

 

 

 死ぬかもしれない。死にたくない。

 

 

 

 

 私は先生の器じゃない。私は観客だった。どうして私なんだ。

 

 

 

 

 教えてくれよ、なあ。連邦生徒会長。

 

 

 

 

 『選択』を誤り続けた人生を送った『大人』に、『先生』が務まるわけないだろ。

 

 

 

 

 (■■)はただ、あの【青春の物語(ブルーアーカイブ)】が好きな、ただの人間なのに。

 

 

 

 

 あの子たちの笑顔を、

 

 

 

 

 幸せそうにはしゃぐ姿が、見ていたいだけだったのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だからですよ」

 

 

 

 

 

「大事なのは経験ではなく、選択」

 

 

 

 

 

「あなたにしかできない選択の数々」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 選べというのか。

 

 

 

 

 ■■()が、子供たちの未来を。

 

 

 

 

 選ばなければならないんだな?

 

 

 

 

 あなたではなく、(■■)が、この物語の終着点を。

 

 

 

 

 だけど、きっと■■()は、【青春の物語(ブルーアーカイブ)】に寄り添えない。

 

 

 

 

 だって、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オレは、生徒の曇る顔なんて見たくないからな!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今に見ていろ、物語。

 

 

 

 

 私に『先生』をやらせたんだ。

 

 

 

 

 だったら私も、『先生』として好きにさせて貰う。

 

 

 

 

 長々とした絶望の積み重ねなんて要らない。

 

 

 

 

 最後に希望が勝てばいい。

 

 

 

 

 

 

 

"RTAしようぜ!チャート変更だッ!!"

 

 

 

 

 

 

 

 このキヴォトスは、既に私が知ってるキヴォトスじゃない。

 

 

 

 

 勝つための要素はある。不確定要素もだ。

 

 

 

 

 だからなんだ。ただの人間には勿体ないくらいに、いっぱいカードはある。

 

 

 

 

 勝負を始めようじゃないか。

 

 

 

 

 私が綴る、この【物語】で。

*1
生徒は家か部室に帰る時間

*2
キヴォトスにおける法律

*3
【連邦生徒会】調停室担当、岩櫃(いわびつ)アユム。いつも大量の書類を抱えており、おっぱいで書類が歪曲している。

*4
と、シャーレ








・先生

 知っての通り、ブルーアーカイブにおける主人公(プレイヤー)にして、唯一の生身の人間。
 この先生はキヴォトスの『()』から来ており、『先生』となってしまった以上、原作ルート尊守を貫こうとした。が、義手義足の全然知らんアビドス生が居たり、時系列的に実装段階でもないはずなのにヒマリと縁ができたり、ホシノの曇る顔を見てウァァ!!オレモイッチャウゥゥゥ!!!ウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥウウウウウウウウ!イィィイィィィイイイィイイイイイイイイイイイイ!!となった。

 早々に覚悟完了。





・リンちゃん

 先生が見た目以上にビビりだったり、自身や同僚の胸に目が結構な回数行っているのを見て、原作より信頼度がちょっと低かった。が、以前と比べて顔付きが良くなったのと、ブラックマーケットの調査ができそうな資料をゲット出来てイイ顔をしている。

 なお調査そのものは先生に丸投げ予定。先生は残業確定である。





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