すみません、話数と内容の調整のため、文章を追加して再投稿しました。
4400文字辺りから新しい内容となっております。
眩しいほどの快晴、朝だ。
今日は自由登校の日。とはいえ、私は校舎の一室を借りて生活しているので、朝起きた時点で登校したも同然なのだが。
部室の扉を開くと、ノノミがホシノに膝枕をしていた。ホシノはご満悦そうで、どこか以前よりもリラックスしているようにも見えた。
「邪魔するぞ」
「邪魔するなら帰って~」
「トウハちゃん、どこで覚えたんですかそのノリ」
「いや、この場合はホシノだろう」
なんというか、こんなノリをかつての世界でもやっていたような気がする。もしかして万国共通なのだろうか。*1
「トウハちゃんも、どうですか?膝枕」
「えっ、私も……いいのか?」
ぽんぽんと膝を叩くノノミ。アビドスの中で最も大きな体躯の持ち主であるノノミの膝枕だ。そして、ホシノのとろんとした表情を見るに、さぞ心地いいに違いない……ウッ、ノノミ宅に来た時の記憶が。
そんなことを考えていると、ホシノがギュッと両腕でノノミの膝を覆った。
「ざんねーん。トウハくんの席はおじさんが占拠しちゃったんだ~」
「と、いうわけなので売り切れです☆」
「ホシノォ!!」
「ふふ~ん。手に入れたくば、おじさんを退けてみるのだ〜」
「
「んぐぐぐぐお゛お゛お゛お゛お゛」
「トウハちゃん!ホシノ先輩の顔がシワシワになっちゃう!」
べったり引っ付いている顔面から剥がそうとしたら、アスファルトに張り付いたガムの如き粘りでホシノが対抗してきた。噓だろ、あの時*2より力を籠めているはずなのだが、全く微動だにしない。やはり神秘か?神秘パワーなのか???
ホシノの顔面がばかうけ並に伸びそうになったところで敗北を認め、大人しく近くの椅子に座る。
登校したとはいえ、やることはない。何故なら、今日は先生がアビドスに来ない日だからだ。授業もなければ、技術ノートも戦術教育BDも切らしているため、暇つぶしできるアイテムがスマホくらいしかない。SNSで話題のソシャゲでも始めてみるのもアリかもしれないが、
──昨日の夕方以降、先生は「仕事をする」と一言皆に残し、今はシャーレのオフィスにこもりっきりらしい。あの作戦について、詰めている頃なのだろうが。
「……そういえば、他のメンバーは?セリカは大方バイトだろうが」
「シロコちゃんは、トレーニングで近辺をサイクリングしてるはずですよ。アヤネちゃんは図書室でお勉強です」
「そうか。うーん……どうしたものか」
「……ん~っ、よく堪能した。おじさんはもうちょっと昼寝してくるかな」
「はい☆行ってらっしゃい、ホシノ先輩」
「ん、じゃあまた昼食時に」
と、ゆったりとした様子で部室を去ってゆくホシノ。扉を閉める寸前、戦う時の眼差しが見えた気がしたが、できれば気のせいであって欲しいものだ。
今は待つしかない。それは、ホシノが一番分かっているはずだろう。
「……落ち着かん。たまには散策してみるか」
「あら、珍しいですね。どこに行くんですか?」
「紫関ラーメン辺りだ。どうせ、昼になったら皆そこに集まるだろう?」
行ってらっしゃ~い。と、声をかけて貰いつつも、部室を出る。
先生が来るまでは、"カタカタヘルメット団"が毎度のように襲撃しに来るため、狙撃手兼防衛線として、私が常にアビドス校舎に留まっていた。おかげで、外を散策できたとしても、行ける場所はまだ機能しているアビドス市街地区のコンビニくらいだった。
今のアビドスであれば、物資は潤っているし、ノノミとアヤネがいる。襲撃が来てもなんとかなるだろう。シロコならば何かあっても高速で戻ってくるだろし……ホシノは、本当に今昼寝をしているかは不明だが、まあ大丈夫か。
そんなわけで、歩いて数十分して市街地。ここも砂漠化の影響か、あちこちに砂が溜まっていた。生きている店や建物は少なく、ざっと見た感じ八割くらいが空き家か、廃墟だ。
本来ならば、D.U.区のように一般キヴォトス人や生徒たちが行き交っていたはずの場所。私はその景色を知らないが、その跡はうっすらと見えてくる。
「寂れているな」
企業オフィスらしき五階建ての建物は、砂の影響かガラスがところどころ割れていた。おかげで不法侵入し放題だ。ただ、流石にこうなる前に元いた住民はどこかへ行ってしまったのだろう。部屋には家具一つ、ケーブルの一つすら残されていない。荒らされた後でもあるのだろうな。
私はその中をお邪魔し、階段を上ってゆく。
ドン!ドン!と扉を叩き、錆びたドアノブをピッキング(物理)して開く。屋上へついた私は、そこに腰を下ろした。
鉄柵の先は、アビドス砂漠と、埋もれゆく市街地、そして天にも届く
なんとなく、この光景は忘れてはならない。そう思ったからだ。
「ホシノから許可が降りたら、ここら一帯を解体して、出てきた建材や鉄材やらを売っぱらってみるか……あ、駄目か」
今頃思い出したが、ここはもう【カイザーグループ】……確か"カイザーコーポレーション"が地主となっている。先ほど建物の一部をピッキング(物理)してしまったわけだが……まあバレなければOKだろう。むしろ、地主になっておいて、市街地の管理がこの有様なのでバレる気がしない。
他にも、色々な建物を巡る。
大半がやはり廃墟となっているが、生きている建物がいくつかあった。病院だったり、市役所だったりと、必要最低限の公共施設が残っている程度だ。用事はなかったので訪れはしなかったが、当然ながら活気は感じられない。ゆくゆくは、立ち退いてしまうのだろうか。
……紫関ラーメンもだ。朗らかなあの大将から、そんな話は聞いていない。しかしカイザーのことだ。立ち退きの勧告を行っていそうな気はする。
「まだ早いが、行ってみるか」
昼時までまだ一時間程度、余裕がある。しかし、なんとなくお腹が空いた私は、そのまま紫関ラーメンへと向かった。大通りというのに、寂れた雰囲気の街並みにポツンと立つ木造一軒家。店の暖簾をくぐろうとすると、見知った影を見つけた。
「……先生?」
"あっ"
「おい、逃げるな」
先生がいた。しかも、今すぐにでも寝たそうな顔をしている。
「徹夜や無茶するなと、誰かさんに言われなかったか」
"はい、言われました……ただ、仕事は九割終わったよ"
「……そっか。思ったより早かったな」
"リフレッシュもかねてね。お腹は空いてる?私は朝食食べずに仕事ぶっ続けてからさ、もうお腹ペコペコなんだ"
「シャーレはブラック、と。これは
"すいません勘弁して!もう徹夜はしないから!"
「ホントか?……まあ、今回は状況が状況だから許すか」
入り口で駄弁るのもアレなので、そのまま店に入る。いつもの柴大将*3に挨拶を交わし、先生と一緒にカウンター席に着く。
キヴォトスにおける一般人は、大抵動物か機械の姿をしているのだが、柴大将のようなチャームポイント……と言っていいのだろうか、傷痕のある一般人はいない。特に、柴大将は銃社会のキヴォトスには珍しい、切り傷だ。もしかしたら、柴大将は過去に剣を振るっていたことがあるのだろうか。……かつては
「いらっしゃい!今日は珍しい組み合わせだな」
「どうも。いつもの柴関ラーメン一つ。ニンニクラー油アリで」
「あいよ。先生は?」
"同じで。トッピングは麺大盛だけでお願いするよ"
「おう、いいぞ。つかぬ事を聞くが、先生は仕事終わりかい?お疲れさん」
"ははは、ありがとう"
穏やかな時間。注文を取った柴大将がカウンターでラーメンを作り始める間、私は店の中を一瞥する。セリカがいるかな、と思って探してみたものの、今日は居ないようだ。おそらく別のバイトをしているか。
話すこともないので、ふと気になったことを柴大将に聞いてみる。
「柴大将、聞きたいことがあるが、いいだろうか」
「構わんよ!んで、何だい嬢ちゃん」
「……カイザーコーポレーションから、店の立ち退きの勧告とか来たことはあるか?」
ピクリ、と柴大将の腕が止まったが、すぐに手を動かし始める。そのままキッチンの音が響き渡り数秒後、柴大将は一息つき、苦笑いの顔を向けた。
「ついにバレちまったか。まあ、そうだな」
コトン、と置かれる二つの杯。赤く色付けられたラーメンを私は手に取り、大盛ラーメンは先生が取る。空腹を誘う醤油の香りが漂うが、私の意識はそちらよりも柴大将に向けられた。
「カイザーコーポレーションがここの地主になっちまったのは、知ってそうだな。そっちから退去通知が来ている。まあ、俺ももう歳だ。そろそろ店を畳もうかとも考えてたし、案外ちょうどいいかなと思うところもあってなぁ……ほら、麺伸びちまうぞ」
「……突然話してすまない。だが、そうか」
いただきます。その合図から、言葉は出なかった。するすると口の中に入る麺。柴関特製スープに絡んだ麺と、ラー油の味が口いっぱいに広がる。麺の触感と、スープの味の組み合わせは最高だ。そこに、ラー油の辛さが相まって、刺激的な最高の味となる。
美味い。思わず顎が溶け落ちそうになり、次の麺を求めて箸が進む。麺だけでなく、具材にも手を付け始めると、そこから止まることはない。あぁ、美味い。
美味い。だが、これがもう食べれなくなるのか。
そんな私の杯の横に、コトンと置かれる小鉢。それは、頼んだ覚えのない半
「あんまりしんみりされちゃあ、味が変わっちまう。ハンカチ代わりさ、元気出しな」
「……ありがとう」
なんだか、このキヴォトスに来てからか、涙もろくなったような気がする。自分がうら若き乙女になったからか、それとも、アビドスの面々の温かさに心を溶かされたか……良いことなのは分かっているものの、こうも感情が揺れ動きやすくなると、何とも言えない。
スッと、横からハンカチが差し出される。先生の手か。私は彼のハンカチを借りると、滲み出た涙を拭った。
"大丈夫?"
「ズズッ……うん」
忘れたとはいえ、私はかなりの年月を生きている。こんな
引っ張られているのだろうか。この体躯相応に、精神が捻じれていっているのか。
……食事をしている時に、考えるものではないな。
残りのラーメンのスープをおかずに、半炒飯を堪能する。チャーシューの端をそのまま使っているのか、味が染み込んでいて美味い。無限に食べれるな……ラーメンと共に半炒飯を食べる人の気持ちが理解できたかもしれない。
と、また箸を進ませていると、店に客が訪れた。
「邪魔するわ……あっ」
「邪魔するなら帰っ……なにっ」
"おや、便利屋"
「いらっしゃい!お、アビドスさんとこのお友だちか」
「どもども~。あ、先生とアイツじゃん!」
振り返ると、そこにはあのメンツ。"便利屋68"の四人が、紫関ラーメンにやってきた。まさか、昨日の今日で遇ってしまうとは。いや、昨日はあちらが一方的に顔を合わせてきたような、
ともかく、顔を合わせてしまったのなら仕方がない。
「何しに来た」
「何って、普通にご飯食べに来ただけなんだけど」
何やら考え込んでいる様子のアルの前に、白と黒で分けられた髪の少女……確か
「いや、それならいい。美味しいからな、紫関ラーメン」
「……?う、うん。そうだね……?」
「何故疑問形なんだ……」
普通にご飯食べに来たのなら別にいいだろう。と思って返したのだが、意外そうな様子を見せるカヨコ。喧嘩っ早いと思われたのか?まあ、流石に店の中で戦闘を始めることはしないだろう。……いないよな?いる気がしてきた。*5
"まあ座って。奢ってあげるから"
「へっ!?い、いえ、そんな施しは要らないわ。だって」
「さっすが先生!太っ腹~!」
「……社長、昨日は融資受けれなかったし、朝食買えないくらいに手持ちはないんでしょ?だったら大人しく奢って貰った方がいいよ」
「う、うぐぅぅ……」
大変そうだな、と眺めつつも、私は完食した。
「ごちそうさま。先生、私は付近を散策してくる」
"あ、トウハ。少し君に聞きたいことがあるんだ"
「なんだ?」
先生に呼び止められて振り返ると、いつもの様子と違い、仕事をする時の真剣な眼差しをこちらに向けていた。
"トウハって、『外』ではいろんなものを作ってきたんだよね?"
「あぁ、そうだが」
"具体的に、作れるものをリストアップして欲しいんだ。できれば今日中に私に送って欲しい"
「……了解した。必要なんだな?」
"もちろん。止めてごめんね、先に行ってていいよ"
なるほど。先生の頼みとあらば、やるか。
紫関ラーメンに入った便利屋らに見送られながら、私は店を出ていく。
「作れるもの、か」
ちょうど暇していたため、近くの建物に背中を預け、スマホのメモ帳を開く。一つずつリストアップしていこう。
まず、義肢。こちらは専用の製作台、あるいは工具と材料さえ揃えばどこでも製作は可能だ。あ、電力もいるか。私が今使っているミレニアム製の義肢──『シーズ』*6──は、私が会得した義肢のレシピとは製法が違い過ぎるため製作はできない。いずれウタハから
次に、武器。これは銃以外になってしまうが、近接武器全般、クロスボウならば、上述のように環境と材料があればどこでも造れる。なお、こちらはちゃんとした部屋を用意しておかないと、色々と危ない。何せ鉄を溶かすところから始めるという、本格的かつ前時代的な製造法のため、セッティングは大変だろう。
他にあるとすれば、簡易的な家、普通の家、スネイルハウス、ドームハウス、要塞、古代の研究所、古代の図書館、アッシュランドのドーム*7……建物ばっかりだな。
ミレニアムが喜びそうなものとなると、製鉄用の工業機械、自動採掘機、自動建材製造機、水耕栽培施設、小型風力発電機、火力発電機、バイオ燃料抽出機、ハシ……いや止めておこう。この技術がガチの犯罪都市に蔓延したら不味い。*8
他に作れるものと言ったら……普通に畑と、キッチンや洗面台、トイレやテーブルとかの家具、裁縫台と衣服と……あ、メイド服も作れるな。あとセーラー服。スク水も作れた気がする。*9鎖帷子の製作もできるし、それを利用した防具の製作もできるな。あと鎧。包帯も作れるし、他に医療器具とか、あと医療薬の製作もできる。ただ、医療系の物資に関してはキヴォトスの方がレベルは上かもしれん。ここは先生と要確認だろう。
残るものは料理と、普通に何でも働けることくらい……
「……割と多くなったな」
自分で書いたのが信じられない程度にはびっしりと、簡易的な設計図も含めて書き込んだメモ帳のデータ。それを先生にモモトークで送りつけた。……面白いほどアップロードに時間がかかっている。
ある程度やることはやった。そう思い、私はモモトークでアビドスの皆を呼ぼうとした。
「……置…………でもいけま……」
「わかった……あそ……間違…………だな?」
「…………し、しかし……本当に…………か?民間の店ですよ?」
「どうせ…………コちゃ…………って言って……」
──寸前で、咄嗟に隠密体勢となる。
聞きなれない声。声色からして、複数の少女。またも【ヘルメット団】か?あるいは。背中を預けていた建物を影にし、声が聞こえた方角へ目を凝らす。
黒い制服と、黒い学生帽、赤い腕章。腕章には「風紀」と白い文字で描かれているのが見えた。そんな見慣れない生徒が多数。十人以上はいるか?その横には、同じ腕章を着けた、カッターシャツと黒スカートという、かなりラフな格好の、銀髪のツインテール。褐色肌なのと、ラフな格好なため、あの中で一番目立っているだろう。
「ほら、早くしろ」
「了解……一般の方、もし居たらすみませんッ!」
銀髪の生徒が指示すると、黒制服の一人が、迫撃砲を構える。その射線は──紫関ラーメンの店舗。
「──ッ!?不味いッ!!」
隠密などしている暇などなかった。危険察知本能に従って飛び出す。瞬間、耳に届く炸裂音。目先に見える、ミサイル弾頭と、驚愕する見慣れぬ生徒ら。
不思議と、世界が遅く見える。私は鼻先へと近づいてくる弾頭に向かって、蹴りを放つ。
「間に合え──」
ズドオォオンッ!!
下半身の感覚が消滅──いや、生きている。右脚で弾頭を蹴りつけた瞬間、私は爆発を直に浴びて吹っ飛んだ。アスファルトにバウンドし、一回転したところで、体勢変更。紫関ラーメンを背中に、地面に爪を立てて強引に止まった。
危ない。なんてヤツらだ。まさか不良でもなさそうな、一般学生すらも店を破壊するような輩ばかりなのか。流石キヴォトス。
「んなッ!?なんだアイツ!」
「……それはこちらが聞きたい」
銀髪の生徒が敵意を剥きだしにして、私に目を向ける。店の破壊は未然に防げたが、奴らが何者か、たった今思い出した。
赤い腕章。「風紀」の文字。そして、部下の多さ。地獄の園の秩序を守る、キヴォトス最高の戦闘力を持つ生徒が属する部活といえば一つしかない。
「そちらは、【ゲヘナ学園】の"ゲヘナ風紀委員会"の所属と見た。いかなる理由を以て、アビドス自治区に攻め入ったか!聞かせて貰おうじゃないか!!」
さて、先生や便利屋共も先の音で気付いたと思うが……まさか、作戦決行前にこんなイレギュラーが発生するとはな。
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両方ともプレイ中(済み)
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