Blue Kenshi【旧作】   作:外道カヤノ

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第二十三話:既定路線のイレギュラー(3)

 

『……ふふっ、なるほど』

 

 先生を狙って、か。目的は明確になったが、動機は……戦力確保か?いや、ここまで謎解きをされたのなら、本人の口から出てくるだろう。

 私は腰を低くしたまま、煙の中に紛れる。

 

『あぁ、便利屋にカヨコさんがいることをすっかり忘れていました。呑気に話している場合ではありませんでしたね。まあ構いません』

 

 またも、アコは指を鳴らす。ザッザッザッ……と、アスファルトを規則正しいリズムで踏み締める音。それが四方八方から。流石マンモス校と言ったところか。兵の数は予想の倍はいるようだ。

 

「……私が思ってる以上に数を揃えてきたね」

『少々やりすぎかとも思いましたが……シャーレを相手にするのですから、これくらいあっても困らないでしょうし。それに、そちらにはかの機械義肢の暴君“アレサ”が居ますから』

「ッ!?」

 

 何故私の名が上がる。いや、そこではなく──荒砂(あれさ)トウハではなく()()()だと?

 その名を、かつての名を知っている者は、私かビープくらいのはずだが。

 まさか、ゲヘナにもいるのか?

 

『それにしても、流石カヨコさんですね。先ほどのお話は正解です……いえ、得点としては半分くらいでしょうか?確かに私は、シャーレと衝突するという最悪のシチュエーションも想定していました』

 

 アコは残念そうに表情を落とすが、まさに今がその最悪のシチュエーション。便利屋はもちろん敵対するとして、アビドス、ないし先生までもが対立している。

 

『しかし、この状況を意図的に作り出したわけではありません。それだけは信じていただきたいのですが……どうやら、難しそうですね』

「当たり前でしょ!?こんなことしておいて、許せない!」

『それはカイザーが所持する無人地帯に侵入したことですか?書類上としては、事実立ち退きが全て完了と明文されておりましたので。我々はアビドスへの侵略行為は一切行っておりません。あなた方はここをアビドス自治区だと思っているようですが、そちらの方が勘違いでは?』

「……それで、先生をどうしたいの?」

 

 シロコが今にも動き出したそうにしているが、自制しているな。しかし、よく舌が回る。

 ん?ムツキと目が合った。ふむ、なるほどな。OK、やろうか。

 

『えぇ、長くなりますし、本題に入りましょうか。きっかけは“ティーパーティー“でした。もちろんご存知ですよね、【ゲヘナ学園】と長きにわたって敵対関係にある、【トリニティ総合学園】の生徒会のことです。

 そのティーパーティーが、シャーレに関する報告書を手にしている……と。そんな話が、うちの情報部から上がってきまして』

 

 ムツキと合同で作業を行なっている間にも、アコの話は続く。ティーパーティーがシャーレに関する報告書……ファウスこほん、ヒフミか。あの子は、律儀にも私たちのことを話してくれたのか。

 

『当初は私もシャーレとは一体何なのか、全く知りませんでしたが……ティーパーティーが知っている情報となれば、私たちも知る必要があります。それで、チナツさんが書いた報告書を確認しました』

「確認するのが遅くないです……?」

『連邦生徒会長が残した正体不明の組織……大人の先生が担当している、超法規的な部活。さらに、当該の先生は、今まさに超法規的権限を利用した作戦を立案しようと画策している噂があります。……どう考えても、怪しい匂いがしませんか?』

 

 ……なるほど。

 先生の様子を見ると、無表情を貫いている。作戦についてはこちらも詳細を知らないが、立てていることを知っているのは、アビドスの私たちと、先生が連絡を取り合っているらしい【ミレニアム】のみのはず。

 敵対陣営の情報を的確に傍受し、あのミレニアムとのやり取りをも傍受するか。ゲヘナの情報部、あまり侮れないな。

 ……チナツはもう少し労ってもいいだろう。報告書の確認が遅れるとか、あまり風紀委員会の現場を想像したくないな。

 

『シャーレという組織は、とても危険な不確定要素に見えます。これからのトリニティとの条約にも、どんな影響を及ぼすのか分かったものではありません。ですからせめて条約が無事締結されるまでは、私たち風紀委員会の庇護下に先生をお迎えさせていただきたいのです。ついでに、居合わせた不良生徒たちも処理した上で……といった形で』

 

 無理だな。条約──『エデン条約』で合ってただろうか。アレは締結までかなり時間があったはず。それまで先生がゲヘナの庇護下に?面白い冗談を言ってくれる。

 

"言い分は理解したよ。アコ、回答だけど──トウハ、ムツキ、ハルカ"

「了解」「りょーかい☆」「い、いきますっ!」

 

 

 ズドォォォオンッ!!ドンッ!!ドガアアァァァァンッ!!

 

 

『ッ!?』

"悪いけど、理由が何であれ、()()ゲヘナの元には行けないかな。今の私は、アビドス対策委員会の臨時顧問。それと、【シャーレ】としての業務中だ。作戦──仕事内容は、いずれ【連邦生徒会】を通じて、各学園に発表をしようと思っていた内容だったけど、君たちは早まったようだね"

 

 街中で起きたのは、連鎖的な爆発。ムツキ、ハルカが用意した爆弾類を、私が隠密でコソコソ設置した甲斐があったな。おかげで、包囲網の三割はこれで脱落。広範囲に点々と爆撃したおかげで、ある程度の混乱も誘えているな。

 

"作戦についての認可は、連邦生徒会から許諾が降りている。準備もできていた……けれど、()()()()()()()()()()()。つまりね、アコ。今の君たちはアビドス自治区への襲撃に関係なく『敵』だよ"

『なッ!?っ……そ、そんな、いえ!そんな訳がありません!どうせ超放棄的権限を利用した強引な──え、何……このPDFファイル、ッ!』

"今、連邦生徒会から降りた許可証書を君に送ったよ。シャーレは連邦生徒会の直轄組織だ。だからね、いくら権限があると言っても、連邦生徒会の法には従うし、私もその一員だから、筋は通さなければならない。他ならぬ大人なら、尚更ね"

 

 スッ、とタブレット端末に数回触れる先生。瞬間、ミサイルの如く戦場へ発射されたシロコは、目の前の敵に無慈悲な銃撃を喰らわせる。自転車(バイク)で飛び出し、置き土産に大量のグレネードを投げつけまくるシロコを止められる者は、誰もいない。

 さらに、爆発。

 

"シロコはそのまま強襲。ノノミ、いつも通り陣地防衛をお願い。リロード時はセリカに背中を預けて。セリカも支援と弾幕を頼んだよ。アルとカヨコは、それぞれイオリとチナツに集中砲火。優先対象はチナツね。ハルカ、アルの盾役(タンク)を任せたいから戻ってきて。ムツキも暴れ回っていいかな。シロコと面制圧をして欲しい。トウハは──手加減してね"

「私を何だと思っている」

 

 皆が、先生の指示で一斉に動き出す。私もまた、動き出すとしよう。

 隠密を解き、近くにいた風紀委員の一人の首根っこを掴む。やることは単純、コイツを重量武器代わりにするだけだ。

 

「ぅあ!?」

「ルぉ、らアァァッ!!」

 

 その場を薙ぐように一閃。掴んだ風紀委員の肉体を通じて、重く、重なる感触。しかしそれすらも、吹っ飛ばす。勢いでぶん投げてしまったが、一度に七人程度は片付いたので、むしろプラスだろう。

 そのまま、『鉄杖』をリロードして近場の風紀委員の頭部を撃つ。

 

「がッ!!」

「次」

 

 タァン!と、.338ラプア・マグナム弾の炸裂音が響く。これで九。

 

「止まれ!」

「待てっ、動くな──」

 

 至近距離で機関銃を発射しようとした二人に急接近し、片方の腹部に左の一撃、もう片方はバレルを胸部に当てて発砲。これで十一。

 十二、十三、十四。

 

「次」

 

 十七、二十、二十六。

 

「く、来るな……ッ」

「お前で二十八人目」

 

 恐るな。眠る時間が来ただけだ。

 タァン!と響く。これくらいで、私の周辺は片付いたか。チラリと先生がいる陣地を見れば、死屍累々。アスファルトの上で大量に寝そべる、風紀委員の姿が見える。その中でも、最も色濃いメンツであるイオリとチナツは、瀕死ではあるがまだ倒れていないようだ。

 

『……ぐ、いいえ!それでもです!第八、第十三部隊は突入!それ以外で生きている方は撤退、部隊の再編成を行います!イオリ、チナツも下がって補給を受けてください!例え連邦生徒会を盾にされようとも、これだけは……!』

「まだ来るの……!?これほどの数、アコの権限で呼べる兵力じゃない。ってことは、まさか風紀委員長が……?」

「え゛っ!?彼女が来るの!?無理無理無理!!逃げるわよ早く!」

「いや、まだそうとは確定していない。落ち着いて社長……」

"……そろそろか"

「ん?」

 

 状況はこちらが有利だ。例えこのまま増員が来ようと対処はできるだろうが、体力の消耗が激しい。特にシロコとセリカは連戦中の身。既にシロコの手持ちに、グレネードは残っていない。セリカも息を切らしている。

 面倒だが続けるか。そう思った時だった。

 

 

 

 

『やれやれ、アコ。だから僕は言ったはずだ。早まるな、と』

 

 

 

 

 この、声は。

 

"!? 誰だ"

『戦闘中すまない。だが、こうでもしないと止まらないと思ってね……通信は繋げたぞ』

『アコ』

『……え? ひ、ひ、ヒナ委員長!?』

 

 先生とはまた違う、地鳴りのような低い声色。その後にヒナと呼ばれる少女らしき声が聞こえたが、私にはどうでも良かった。

 

『アコ、今どこ』

『い、い、委員長がなぜこんな時間に……?』

『どこにいるの』

『私は……そ、その、えっと……ゲヘナ近郊の市内の辺りです!風紀委員のメンバーとパトロールを……』

「思いっきり嘘じゃん!」

「やっぱり独断だったか……」

『ハァ……アコは本部の集中管制室だ』

『じゃあそっちはお願い。サッドニール教授

 

 新たに、ホログラム映像が表示される。

 一人は少女。雪山のようにボリュームのある髪と、神々しさを感じさせる紫の瞳が特徴的な、小さな体躯の少女。おそらく、彼女がかの風紀委員長、空崎(そらさき)ヒナなのだろう。

 

 もう一人は──見慣れた機械の顔。

 三つのカメラレンズを納めた六角形の目に、おそらく口を模したかのような四角形のデバイス。全体的に逆三角錐のような頭部は、とてもレトロチック。キヴォトスに一般的に存在する機械型の人間と比べると、いささか古過ぎるようなデザインに見えるだろう。白衣──ではなく、光沢を放つ白いダスターコート*1──に身を包んだ姿は、確かにビジュアルは『教授』。そして、ダスターコートの胸ポケットには、ゲヘナの校章。

 

 サッドニール。彼は、かつての世界で、ビープと同じくらい長い時間を共にした、仲間の名だ。

 見た目も、その喋り方も、変わらない。機械人(スケルトン)の一人。

 

 いや、待て。

 

「お前は美少女になってないのかよ!!!!」

『……久しぶりだな、アレサ。いや、荒砂トウハだったか?』

 

 戦況に終わりが訪れる、その寸前。

 通信越しとはいえ、突如介入した風紀委員会と、教授になっていたかつての仲間の存在により、戦は一時的に止まる。

*1
MOD由来





 Kenshiの機械人、スケルトンはバイオニクル(かつてレゴ社が販売していた組み立て式の玩具)みたいな見た目なんですよね。非常に無骨で、カッコいいともダサいとも違う、なんとも実際に古代の時代に生まれ生きていたかのようなデザインをしております。人らしくも、その見た目は完全に機械である。そんな容姿です。
 興味があれば、是非ともKenshiをプレイ、または検索してみてください。

 サッドニールはKenshi原作で出てくるネームドキャラです。原作では一人称は「私」で固定なのですが、翻訳の影響かスケルトンは全員一人称が「私」ですので、少々変えています。なんとなく、彼ならそう喋るかな、と。

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