超短め
その後、合流したアビドスの面々と、撤退便になるはずだったヘリで帰還した。
セリカには、怒られた。「無茶し過ぎよバカ!」と。シロコに無言で頷かれ、ホシノは目が座っており、ノノミには悲しい顔をさせてしまった。帰還した際はアヤネにセリカ共々泣きつかれ、先生には──説教された。
"確かに、君のおかげでセリカは助かった。想像を超えるほど、君は強かった。それでも、自分の命を大切にして欲しい"
君が集中攻撃される瞬間を、見ていられなかった。彼はそう言った。
説教というよりは、懇願に近かった。ちょっとだけ泣きそうな顔を見た途端、私は仲間をまた不幸にさせたのだと、実感してしまった。
……相変わらず、嫌なヤツだ、私は。
もう少し仲間を頼れと言いたかったのだろう。それはあまりにも鋭い指摘だ。
確かにあの時、セリカに予備の武器を渡すなりなんなりすれば、もう少しマシになっていただろう。しかし、あの時は【カタカタヘルメット団】が多少無理と無茶をしてでも依頼をこなそうとしていたのが目に見えていた。
だから銃を一度捨て、
集団戦において、格闘は最強の手段である。殴る蹴るだけでなく、両手が素手であることがポイントなのだ。物を投げる。近くにある武器を使える、投擲できる。倒した敵を盾にできる。両手を塞がないので動きやすい。他にも様々なメリットがあったり、後方からの遠距離攻撃に対処できるセンスが必要だとかデメリットがあったりと、色々あるが拳に勝るものはない。かのティンフィスト*1もそう言っていた。
「……すまない」
"そこは、「ごめんなさい」って言って欲しい。君の「すまない」は、口癖になってないかな"
「…………それも、そうだな」
不思議なことだが、この世界の共通語にして、かつての世界では古語だった日本語は、奥ゆかしい部分がある。同じ意味でも、言葉の色が変わるだけで重みも変わってくる。
例えば、今の「すまない」と「ごめんなさい」のように。
言われてみれば、私にとっての謝罪は、軽いものなのだろうな。何度も使えば、色味が褪せてくるように。私はいつから、その言葉を免罪符に人生を歩んできたのだろうか。
だから、しっかりと謝らなければいけないのだろう。
これは私が見せなければならない、反省への誠意だ。
「ごめんなさい」
しっかりと頭を下げた途端、ぐらりと体が揺れた。
「うぁ……!?」
「トウハ!」
「トウハちゃんっ!?」
セリカが慌てて体を支えるが、ぐらつきが止まらない。視界が歪んで見えて、意識が飛びそうになる。謝れたはいいが、これでは微妙に格好がつかないな。
両脚の感覚がない。先程まで歩けていたはずだが、ついに義足が故障したか。ロケランの集中砲火を喰らったり、戦車を持ち上げるなどしたからな。流石に駄目だったか。大破した左腕に至っては、既に感覚がなくて動かせず、動かせるのは右腕のみ。支えられてはいるものの、もう限界だ。
ただ、今の状況はちょうどいい。
「……聞いてくれ、セリカ。君の位置情報を捉えることができたのは、先生の協力があってのことだった」
「……!」
「だから、少しだけでもいいから、認めて……やっ、て……」
その言葉を最後に、私の意識は途切れた。
次に目を覚ました時は、自分が夜の保健室にいることに気づいた。ベッドの上で目覚め、私はその体勢のままため息をつく。
昔はこんなことで倒れることは無かったのに、弱ったな……
起きあがろうとして、カーテンの向こうで話し声が聞こえた。セリカと先生だ。なんだ、認めないなんて言いつつも「先生」だなんてハッキリ言って。ツンデレ丸出しな彼女の感謝の言葉と、しっかりと彼を先生と呼んだことに、私は微笑ましくなった。
ようやく、先生が対策委員会の一員になった。そう思ってもいいだろう。
さて起き上がるか。と思ったら、何故か起き上がれない。
「…………」
Q.何故、私の義肢が四つとも外れているのですか?
A.ベッドの横にいるノノミさんが全部外したからです。
「ホオオォォォォォ!!!?」
「わぁ、面白い悲鳴を上げますね☆」
この世の終わりみたいな叫び声をあげてしまった、私は悪くない。何せ、横を見るとニコニコ笑顔のノノミが、壊れた左義手を抱えて座っていたからだ。若干薄暗かったのもあって、かなり恐怖を感じた。
「ようやく起きましたね、トウハちゃん」
心配したんですよ。その言葉に、ちくりと胸が痛んだ。
思えば、最初に出会った時も、ノノミが様子を見に来てくれてからだったか。あの時は昼間、今は夜だ。時間に比例するように、その時の表情は、反対だった。
「……すまなかった。無茶をして……こんな、倒れてしまうほど動いたつもりはなかったんだが」
「それでもですよ。あんな数を一人で、ボロボロになるまで戦って、みんな心配していたんですから」
義手を小棚の上に置くと、ノノミは私の体を拾い上げ、ぎゅっと抱いた。ふわふわとした柔らかな感触が、顔を覆う。
温かい。魅力的な心地よさに、目を細めてしまいそうになる。ただ、ノノミの表情を見て、胸の中が疼いた。
「義肢を壊してまで戦うのは、これっきりにしてください。じゃないと、ずっとこうします」
ずっと、こう……?この、四肢を取られて身動きができないまま、ノノミの腕の中……?
ぞわっ、と悪寒が走る。アレはアビドスに初めて訪れた日の夜、寝泊まりする場所がないために、ノノミの家に泊めさせて貰った時の記憶が──
「はぅぁ……っ!?」
「……ふふっ。すごいですよね、トウハちゃんって」
耳元にかかる吐息。囁いているつもりはない、と思いたいが、ノノミの甘く蕩けるような優しい声色が、私の耳を直接くすぐる。
「銃も使わずにヘルメット団を圧倒するくらい強いけど、義肢が無いと、こんなに無防備なんですから」
ノノミの手が臀部を這い、腰を掴んでさらに私を抱き寄せる。カッターシャツと下着だけという格好だからか、指と肌の距離はとても近い。
熱い。熱い。熱い。
私の体が、嫌に火照っているのがわかる。全身がむず痒く、心音が高鳴ってゆくのが
「ふふっ、とってもかわいいです♡」
「ひぁ、ゃ、やめろ……っ」
クスクスと、年下の少女相手に恥ずかしがる私を、揶揄うように笑う。
バレている。ドキドキしているのが、ノノミにバレてしまっている。ああ、こうなると心臓の音も、全身が煮えたぎるほど羞恥の熱に焼かれるのも、止まらない。止められない。
「大丈夫ですよ。動けなくなったとしても、アビドスのみんながあなたのお世話をしてあげますから」
優しい手が肌に触れる。指先が肌を伝うと、灼熱のように熱いものを感じる。火傷しそうで、できないこそばゆさ。キヴォトス人に変わってから、自分が「少女」であると認知してから、こうしたスキンシップに
……わからない。わからないよ。
「ぅ、た、たすけて……」
「はい☆ずーっとぎゅーってしてあげます♡」
「ちっ、ちが……ふぁぁ……!」
助けてホッブズ!!私この子に女の子にされてしまう!!
「おい先生こっそり見ているだろ!助けてくれないか!」
"……いやあ、邪魔したら悪いかなと思って"
いい性格してんなぁコイツ……!!
カーテンを開き、相変わらずにこやかな表情を浮かべる先生が入ってくる。
……なぜ、ほんのちょっと距離を空けているんだ?
「義肢、そうだ義肢はどこだ!?右腕だけは生きていただろう!」
"あ、それなんだけど、しばらく義肢没収ね"
とてつもない絶望が、私に降りかかった。
これでは動けないではないか!!
"君は無茶し過ぎたから、しばらくノノミのお世話になってね。ちゃんと反省すること。一応修理の手配はしてあげるから"
「やめろォーッ!ノノミと同棲すると私の貞操がァーッ!!」
「ふふふっ♡こうなると短い手足しか動かせなくなるんです。ソケットが硬いのを除けば、と〜っても抱き心地が良いんですよ?」
"……程々にしてね"
「はい☆」
「ふざけんなマジで!?義肢の修理が終わったら覚えてお、け…………」
よく考えてみよう。義肢、私しか修理できないじゃないか。
義肢の設計図も、メンテナンス方法も、今では私しか知り得ない知識だ。しかも左腕に至っては大破、パーツから取り寄せなければならない。しかし、アビドスの財力ではまずパーツ取り寄せは不可能。そもそも合うパーツがあるのか。パーツや基盤を造るための機材があるのか。修理の手配とは聞いたが他人に任せられるものなのか。片腕だけでできるのか……
あれ、考えれば考えるほど、私詰んでないか???
「う、ぅぁ……ぐずっ……」
「わぁ、トウハちゃんが泣いちゃいました!もー先生〜!」
"えっ、これ私のせい?"
その日の夜は、達磨になってリスポーンし、三日三晩、砂漠を這って歩いたトラウマを思い出して泣いた。
結局、またもノノミの家に誘拐連れて行かれ、好き放題ノノミのぬいぐるみとして扱われた。
代わりに後日、義肢の修理が出来そうな場所へ連れて行ってくれると、先生が提案してくれた。
その場所は、【ミレニアムサイエンススクール】。
私が行ってみたかった、キヴォトス最新の理系学校だ。
シュポガキ……!見れば見るほど俺の性癖をイライラさせる……!
時間的にストーリー更新見れるのは21時くらい(苦渋)
よければ感想、ここすき、評価をお願いします。
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