救いのない世界で、君を救いたい   作:にぎり飯

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間隔が空いてしまってすみません。お待たせしました!ついにアスカ登場です!


アスカ、襲r…来日(前編)

太平洋上、輸送ヘリには4人の男女が乗っていた。

 

「うおぉぉぉ!ミル55D輸送ヘリ!こんなことでもなけりゃ、一生乗る機会ないよ!全く、持つべきものは友だな!」

「ほんまにミサトさんとデートですか!?この帽子、今日この日のために買うたんです!」

 

乗っている軍用ヘリに興奮してビデオを回しているケンスケやどこで買ったのか小洒落た全く似合っていない帽子をミサトさんに自慢するトウジにゲンナリする。かと言ってツッコミをする気も起きない。2人を連れてくるのは失敗だったかな。持っていたリュックに頭を乗せる。かといってナズナや綾波はこれなかったんだ。

 

 

ミサトさんの話はいつも突然だ。この日も晩ご飯を食べてるときに唐突に言われた。

 

「シンジくん、次の日曜日空けておいてね」

「いいですけど、でもなんで?」

「その時のお楽しみよ♪」

「も〜、ミサトさん。こういうときは報連相ちゃんとしてくださいっていつも言ってるじゃないですか」

「サプライズは取っておくものでしょ?ナズナちゃんはつれないわねぇ。ね、レイ?」

 

わかっていないとばかりに肩をすくめ、綾波に同意を求めるミサトさん。でも聞いた相手が悪かった。彼女は持ち前のマイペースで問いに答える。

 

「情報は多い方がいいわ。何をすればいいのかわからないもの」

「レイもか…。わかったわよ!その日にNERVドイツからエバー弍号機とパイロットが移送されてくるの。私とシンジくんはそのお出迎え」

「え、私とレイは!?」

「ちょ、ちょっと!」

 

ナズナが驚いて身を乗り出す。その勢いで倒れそうになったナズナの味噌汁を慌てて掴んだ。

 

「あ、ごめん。というかミサトさん、なんでシンジは良くて私達はダメなんですか?めちゃくちゃ興味あったのに」

「それがナズナちゃんは検診、レイはいざという時のために待機ってことなのよ」

「そんなあ〜。ただでさえ検査は面倒臭いのに」

「村雨さん、検査は大事よ」

 

綾波に続いて僕もガックリと肩を落とすナズナを慰める。

 

「元気出してよ。あとでちゃんと何があったか話すからさ」

「その約束忘れないでよ?」

「もちろん」

 

そうそうそれから、と僕らの話が落ち着いたタイミングでミサトさんが続ける。

 

「その分お友達を2人は運べるから、よくうちに来るあの子達を誘ったら?」

 

次の日、トウジとケンスケを誘ってみたら、案の定二つ返事で了承した。

 

 

 

「おぉ!空母に戦艦の大艦隊!!!それに国連軍が誇る空母、オーバーザレインボー!」

 

何度目になるかわからないケンスケの興奮による大声に物思いから醒める。彼がベッタリと張り付いた窓の先には艦隊が近づいてくるのが見えた。この先にいるっていうセカンドチルドレンやエヴァ弍号機は何者なんだろう?僕は胸を躍らせた。

 

そして僕らを乗せた飛行機はオーバーザレインボーの甲板に着艦すると、ケンスケはヘリから勢いよく飛び出した。

 

「すごいすごいすごい!すごすぎる!!!」

「待て!待たんかい!」

 

空母に乗るというなかなかない経験にカメラを左右に振って撮影するケンスケに、思っていたよりも強い風に飛ばされた帽子を追いかけるトウジ。トウジの呼びかけにも関わらず好き勝手に飛んでいた帽子は少女に踏み潰されることでようやく止まった。

 

少女は可愛らしく、明るい茶髪をツインテールにし、黄色いワンピースを着ていて到底軍人には見えない。ということは彼女がセカンドチルドレンなのだろうか。

 

「ハロー、ミサト。元気してた?」

 

日本人とは違った容姿から出される流暢な日本語に少し面食らう。話しかけられたミサトさんは面識があるようでフレンドリーに言葉を返す。

 

「まあねー。あなたも背、伸びたんじゃない?」

「他のところもちゃあんと女らしくなってるわよ」

 

そしてミサトさんは僕らの方を振り向いて言った。

 

「紹介するわ。弐号機専属パイロット、セカンドチルドレン。惣流・アスカ・ラングレーよ」

 

そう言った途端に強風が吹いた。あ、まずい。僕は反射的に顔を背ける。その途端に皮膚を平手で叩く音が二つ聞こえ、思わず耳を塞ぐ。それから恐る恐る音のしたほうを見ると、ケンスケとトウジが頰を抑えていた。よく見れば抑えている方の頬が赤くなっている。状況から察するに風のせいで巻き上がったスカートの中を2人が見て、惣流さんに殴られたらしい。

 

「何すんや!」

「見物料よ。安いもんでしょ」

 

文句を言うトウジに不機嫌そうに言う惣流さん。トウジも負けずに言い返す。

 

「なんやて!?そんなもん、こっちも見せたるわ!」

「何するつもりよ!」

「ちょっとやめなよ、トウジ!」

 

ズボンに手を突っ込みだしたトウジを止める。

 

「なんで止めるんや!このままやとワシの腹の虫がおさまらへん!!!」

「惣流さんはわざと見せたわけじゃないんだし、トウジがわざと見せるのは…」

「なんやシンジ、この理不尽を見て見ぬふりすんのか!?ワシは…」

「トウジくん?そういうの、女の子にモテないわよ?」

「ミ、ミサトさんがそない言うんやったら止めますわ」

 

トウジは渋々と言った様子でズボンから手を抜いた。ミサトさんの力は偉大なのかもしれない。その様子を見ていた惣流さんはフンと鼻を鳴らす。

 

「で、噂のサードチルドレンどれ?まさか…」

 

と言って嫌そうにトウジに顔を向ける。ミサトさんはそれを否定して僕の方に手を向けて紹介する。

 

「違うわ。この子よ」

「ふーん。少しはやるようだけど、冴えないわね」

 

褒められたのはさっきの強風のことだろうか。僕の顔をじっくり見た惣流さんは興味なさそうに評価を下す。そして自信満々に胸を張って言い放った。

 

「使徒を三体倒したらしいけど、私が来たからにはアンタ達の出番はないわ!特に1人で使徒と戦えないような奴にはね!」

 

ナズナとの相性悪そうだな…。

 

 

私はエリート。他のエヴァパイロットとは違う。えこひいきで選ばれたファースト、親の七光りのサード、その金魚のフンのフォース、その誰とも違う。特にフォースには格の違いってやつを見せつけてやる。エヴァも1人で操縦できないくせに調子に乗っちゃって。NERVドイツではアンタと私のどっちが優れているかなんて言われてたけど、そんなの私に決まってる。エヴァに乗るための訓練をずっとやってきた私がフォースに劣ってるなんて有り得ない。それを私は日本で証明してやる。私の方が…私の方がアンタなんかよりも数倍優れてるんだ。もしアンタが私の邪魔をするつもりなら、絶対にエヴァに乗ろうだなんて2度と思わないように蹴落としてやる。アンタみたいな素人がATフィールドを張れるわけない。絶対にズルをしているに決まってる。

 

 

僕達は合流した惣流さんを連れて管制室に向かうと、出迎えたのはオーバーザレインボーの艦長と副艦長だった。敬礼をしたミサトさんに艦長が言う。

 

「長旅ご苦労。しかし、まるでボーイスカウトの引率のお姉さんだな」

「引率であることに変わりはありませんが。この度は、エバー二号機の輸送援助、ありがとうございます。こちらが非常用電源ソケットの仕様書です。」

 

艦長は苦笑混じりに話す。ミサトさんはそれに少し驚いたようだが、すぐに仕事人の顔に戻る。

 

「うむ。事前の連絡の通りだな。しかし、いくらあなた方NERVが使徒戦の専門家と言っても、海は我々の領域。許可なく土足で踏み荒らすようなことはくれぐれも謹んでくれたまえ」

「万一の事態に対する備えです。では、この書類にサインを」

 

ミサトさんは書類とペンを艦長に差し出した。しかし、彼は首を横に振る。

 

「引き渡しは新横須賀に陸上げしてからでもよかろう。エヴァ弍号機、並びにその操縦者の輸送が本艦の任務である。くだらないと思うだろうが、我々にも国連海軍としてのプライドというものがある」

「…わかりました。有事の際、特に使徒が襲来した場合は我々ネルフの指揮が最優先であることをお忘れなく」

 

ミサトさんはあっさりと引き下がっているけど、国連の人相手にしっかりと牽制することも忘れていない。でも、なんとなく淡々と話していく感じはリツコさんのようだった。

 

「相変わらずのようだなあ、葛城!」

 

妙に馴れ馴れしい口調が聞こえ、振り向くとミサトさんと同年代くらいの男性がいた。その人は精悍な顔にも関わらず、スーツをだらしなく着崩し、父さんほどにはないにせよ無精髭を蓄えてニヒルな笑みを浮かべている。惣流さんはパッと顔を綻ばせるとその男性に甘い声を出しながら駆け寄っていった。今はこんな男の人が人気なんだろうか。ミサトさんは嫌な顔をする。

 

「加持さぁん!」

「うげぇ!加持ぃ〜!?」

 

管制室は大所帯になって一気に騒がしくなったため、僕らは外に出ることにした。

 

 

葛城一行が出ていって艦長と副艦長だけとなった管制室では艦長がため息混じりにつぶやく。

 

「本来ならば我々が最前線で戦うべきなのだが、子供に、しかも我々の子や孫と変わらない年の子に任せるしかないとは。葛城一尉も優秀とはいえまだ若い。あまりにも未熟だ」

 

副艦長がその独り言とも取れる呟きに応える。

 

「しかも彼らは巨大なおもちゃに乗って戦っていますからね。まるでSFですよ。もしそうであれば我々は彼らを引き立てるための、化け物にやられるかませ犬ですかね」

「はははっ。そうに違いない。ところで君、NERVからのもう一つのお使いはどうなっている?」

「はっ、作戦通りに進めております、艦長どの。定時には起動できるかと」

「うむ」

 

国連軍はNERVとの協力関係を築き始めていた。

 

 

船の食堂で僕らはおしゃべりをしていた。

 

「今つきあってる奴、いるの?」

「アンタに関係ないでしょ。それよりもなんでアンタがここにいんのよ」

「アスカの同伴ってとこかな。また仲良くしようぜ、葛城?」

 

大人の色気たっぷりに話しかける加持さんと煩わしそうなミサトさん。ミサトさんにあしらわれた加持さんはこちらに顔を向けた。

 

「君は葛城と同居してるんだって?」

「え、はい。他のパイロットと一緒に住んでます」

 

突然の質問に意図がわからず困惑する。加持さんはニヤリと口角を上げた。

 

「彼女の寝相の悪さ、治ってる?」

「「「ええぇ〜〜〜〜〜!?」」」

「何言ってんのよ!?」

 

驚くトウジ達や惣流さんに嫌そうな顔をするミサトさん。

 

「加持さんの予想通りだと思いますよ」

 

加持さんは少し驚くと

 

「相変わらずか。それにしたってもうちょっと驚いてくれたっていいんだぜ?シンジ君?」

「なんとなくそうなのかなと思ってたので。でもなんで僕の名前を知ってるんですか?」

「そりゃ知ってるさ。NERVでは君と彼女さんは有名だからね。エヴァを初めて実戦で動かし、初めてATフィールドを発生させたサードチルドレンとフォースチルドレン」

 

僕はその言葉に眉を顰める。そんな褒められるようなものじゃない。

 

「ただの偶然ですよ。ナズナだってそう思っているはずです」

「才能さ。村雨さん、だったかな?彼女もきっとそうに違いない」

 

褒められているのを不満に思ったのか惣流さんがむすっとした顔をする。そんな顔をされて睨まれても困るんだけど。そして急に立ち上がった。

 

「サードチルドレン!」

「えっと、何?」

「ちょっと付き合って」

 

何のつもりかはわからないが、いいことではなさそうだ。

 

 

私は面倒臭い検査が終わると発令所に向かった。そこにいたオペレーター三人衆に声をかける。日向さんは第三東京市周辺のセンサー類の確認、青葉さんは他組織との連携のモニター、マヤさんはさっきの検査の分析をしているようだった。3人ともそれほど忙しくはなさそうなので声をかける。

 

「お疲れ様です。状況は変化なしですか?」

「ああ。パターン青のパの字もないね。」

「君も検査ご苦労様」

 

日向さんや青葉さんが答えてくれる。このまま雑談をしてしまうことにした。

 

「聞いてくださいよ〜。リツコさん、私が抵抗できないのをいいことにあんなことやこんなことを私で試そうとしてて、えらい目に会いましたよ〜」

「ナズナちゃん、先輩だってあなたを元に戻すために色々頑張ってるんだからそんなこと言わないであげて」

「わかってますけど、流石に検査中に含み笑いし出すのは怖すぎますって。マヤさんから何か言ってくれませんか?」

 

特に採血用の注射器持って笑い出すのは固定用の器具破壊して逃げ出したくなるくらい怖かった。

 

「先輩楽しそうだったし、私には言えないかな…。それに知りたいことを調べてる時に笑顔になっちゃうのはちょっとわかるし」

 

お前もか。

 

「普通に怖いですからね…?」

 

そんなマヤさんは見たいような見たくないような。

 

「さってと、そろそろ作戦開始ですね」

「はい。太平洋全体をカバーするパターン青の検出装置の起動試験ですね」

「私もマヤさんのサポートで入ります」

「にしてもよく考えたね。これなら海中からの使徒の発生をいち早く検知できるし、しかも海に撒く役割を弍号機運搬のついでにオーバーザレインボーにやってもらうなんて」

 

日向さんが言ってくれたように、原作にはないけど探査機を撒くことにした。表向きには今日来るガギエルみたいな海から来る使徒を早期発見してオセローみたいな艦隊の被害を最小限にすることだけど、本当はNERVと国連を協力させて少しでも信頼を得ることだった。『まごころを君に』展開を回避するために、徐々にやっていくしかない。…攻略対象が組織の乙女ゲーかよ。私たちはパソコンを操作し始めた。

 

「太平洋海中潜航型使徒探査装置、起動シーケンス開始」

「葛城さんはいないがこういうのはちゃんとしないとな。オーバーザレインボーにコンタクト…繋がりました」

 

日向さんが作戦の総指揮、オーバーザレインボーとの連携の仲介役を青葉さんがする。私とマヤさんは一斉起動を行う役割だ。

 

「ナズナちゃんは起動を確認したらセンサーに異常がないか見ててね。その間にネットワークを全部繋いじゃうから」

「わかりました」

 

そして探査機が起動し始める。だが、ものの数秒で異常が現れた。モニターを見つめていた私が真っ先に気づき、報告する。

 

「弍号機格納中のオセロー周辺にパターン青!」

「えっ!?」

「「なんだって!?」」

 

予想よりも早かったか…!

 

 

その少し前ー

惣流さんを先頭に艦隊の一つのオセローに飛び移る。ここまでに目的は一切説明されていない。流石に痺れを切らせて彼女に尋ねる。

 

「えっと、惣流…さん?」

「アスカでいいわよ」

「アスカは…なんでこんなとこに僕を連れてきたの?ミサトさん達から離れちゃったし、戻ったほうがいいんじゃないかな?」

 

するとアスカは鬱陶しそうに僕を振り返る。

 

「アンタばかぁ?なんで私がアンタにいちいち説明しなくちゃいけないのよ?いいからアンタは私についてくるの!」

 

と強引に話を切り上げられて先に進んでしまった。見失わないように慌ててリュックを背負い直すと彼女についていく。追いついた頃にはアスカはテントのシートをめくって中に入っていった。弍号機はまず目につくのは機体の鮮やかな赤、そして二対の緑眼だった。初号機も大概だったけど、厳つい。

 

「赤いんだ。弐号機って」

「違うのはカラーリングだけじゃないわ!」

 

冷却用のLCLに浸かっている機体の上に登ってアスカは仁王立ちする。

 

「所詮、零号機と初号機は開発仮定のプロトタイプとテストタイプ。訓練なしのアンタ達なんかにいきなりシンクロするのがその証拠よ」

 

僕らを馬鹿にする言葉を忘れずに吐くと、彼女はばっと手で弍号機を指し示す。

 

「けどこの弐号機は違うわ!これこそ実戦用に造られた世界初のエヴァンゲリオンなのよ!正式タイプのね!」

 

零号機も初号機も特徴的すぎるから違いがわからないなぁ…。そのとき、急に地面、じゃなかった。船が揺れる。僕らは近くのものに掴まってかがみ、揺れが治るまで待つ。

 

「水中衝撃波?場所が近いわ」

 

そう言って走り出すアスカの後に続く。そして甲板に出て最初に見えたのは爆発して沈んでいく船だった。海中に何かいる。白くて今まで見たことのないほど大きい魚みたいな生き物が、海中を暴れ回って船を沈めているんだ。そしてここまで大きい生き物で考えられるのは一つしかない。

 

「まさか…使徒!?」

「あれが?本物の!?」

 

アスカが驚いてその生き物を見つめる。早く対処しないと、あれが第3新東京市で暴れたら…!

 

「第一種戦闘配置…!」

 

そのとき、アスカが横を向いて呟く。

 

「チャーンス…」

 

突然鳴り出した船の警報に驚きながら、とんでもなく嫌な予感がした。

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