オーバーザレインボーの管制室では突然の敵襲に、対応に追われていた。
「使徒とやらの発見のための装置を起動する前に来られるとは、何とも間が悪い」
「各艦、回避運動を行え!」
「被害、多数発生!」
「海中ミサイルも目標に着弾前に爆発しています!」
相手が戦艦や戦闘機ならともかく、未知の生物相手との戦闘経験は国連海軍は無いに等しい。いくら歴戦のオーバーザレインボーを始めとした艦隊といえども苦戦を強いられていた。そこへ入ってきたミサトが何か言う前に、NERVと繋がっていた無線から今まで聞こえていた男性の声ではなく、少女の声が流れ出した。
『こちら、NERV本部。オーバーザレインボーに襲撃中の未確認生命体は解析の結果、第6使徒と断定。それに伴い、この戦闘ではNERV作戦部長、葛城ミサト一尉を最高指揮官とします。異存はありませんか?』
「しかし、この艦隊では私が最高責任者だ!勝手な真似はよしてもらおう!」
そこにミサトが近づく。
「それは承知の上です。艦長。しかし、使徒戦において我々の指揮が最優先なのはご存知のはずです。これからの戦いでは、あなた方はあの使徒に傷一つつけることすら出来ないでしょう。エバンゲリオン弍号機を起動させます」
「何を…!」
『我々は国連軍を侮っているわけではありません。むしろ、世界を守ってきたという歴史と功績は尊敬に値します。しかし、使徒にはATフィールドというバリアがあり、それを破れるのは地球最高レベルの高出力兵器かエヴァンゲリオンだけです。戦闘機が海中では戦えないように、使徒はエヴァンゲリオンでしか戦えません』
「艦長、許可を」
艦長は黙り込む。ここでNERVに頼るのはプライドや国連軍の威厳に関わる。しかし、このままでは使徒の攻撃によってどうなるかわからない。
「…分かった。発進を許可する。だが我々も我々の判断で行動させてもらう」
「では、協力関係ということで」
ミサトはそう締めくくると、無線機に呼びかけた。
「そこにいるのはナズナちゃんね?」
『はい』
「弍号機に発進の許可が出たことを伝えてちょうだい。パイロットは実戦が初めてだからサポートしてあげてね」
『連絡が取れればすぐにでも』
ミサトは初めての海上戦に頭を回転させ始めた。
アスカは赤いバックを回収すると、僕の腕を掴んで走りだした。僕はなすすべもなくついていく。すると、階段のところで止まった。
「ちょっとここで待ってて!」
と言って階段を降りていった。彼女がどういうつもりなのか分からなくて下を覗こうとするが、布が落ちる音に動きが止まる。やがて空気が抜ける音に僕の推測が間違っていなかったことを知る。その直後に赤いプラグスーツを着たアスカが現れた。そして、同じスーツを投げつけてくる。
「それ着てさっさと行くわよ」
「僕も乗るの!?」
「当たり前でしょ。パイロットがエヴァの中以外どこに行くっていうのよ」
そう言ってスタスタと進んでいくアスカ。僕は慌てて呼び止めた。
「あ、待ってよ!僕、自分のプラグスーツは持ってるんだ。だからアスカのは返すよ!」
「はあ!?先にそれを言いなさいよ!」
持っていたリュックを示すと、アスカは僕の手からスーツをひったくった。僕は苦言を呈したかったが、そんな時間もないので同じように階段下で着替えるとアスカはエントリープラグの前でふんぞり返っていた。
「私の見事な操縦、目の前で見せてあげるわ!当たり前だけど、邪魔はしないでね」
僕をエヴァに乗せるのはこのためか。
他のエヴァの中っていう慣れない場所に少し緊張しながらサキエルが来た時のナズナのようにシートの後ろに立つ。アスカは目を瞑って何かを喋りだした。
「LCL Fullung. Anfang der Bewegung. Anfang des Nerven anschlusees. Ausloses von links-Kleidung. Synchro start」
突然警告文がプラグのモニターに表示される。それを見たアスカは僕の方を振り向いた。
「思考ノイズ!邪魔しないでって言ったじゃない!あんた、日本語で考えてるでしょ。ちゃんとドイツ語で考えて!」
「僕、クーゲルシュライバー(ボールペン)しか知らないんだけど…」
理不尽な要求に不満を感じる。日本人のほとんどはドイツに関係があったりしないしその言語を喋れる人はもっと少ないだろう。ナズナにドイツ語を習っておくべきだったかな。でもエヴァの操縦で必要になるとは思わないって。
「もういいわよ!思考言語切り替え、日本語をベーシックに!」
自由奔放な、悪く言えば自分勝手なアスカの行動にこれから共闘することになるかと思うとゲンナリする。しばらくすると弍号機が起動した。すぐに外部から通信が入る。NERV本部みたいだ。
『弍号機パイロット、聞こえますか?第6使徒襲撃に伴い、オーバーザレインボーからすでに発進許可が出ています』
「ナズナ!」
「ナズナ?ってことはあんたがフォースチルドレンね。一体どういうつもり?」
急に剣呑な雰囲気でアスカが尋ねる。
『シンジも乗ってるのか。セカンドチルドレン、私はフォースチルドレンの村雨ナズナ。名前を聞いてもいいかな?話はそれからでもいいでしょ?』
「…惣流・アスカ・ラングレー」
アスカの様子に驚いたのか少し息を呑んだ後、ナズナが話し出す。
『…よろしくね。アスカが訓練を積んでるのは知ってるし、シンジもいるから大丈夫だと思うけど、私は葛城一尉の指示でサポートすることになってるから』
「ふん。アンタがいなくても私にかかれば使徒なんて余裕よ」
『期待してるよ。まずはオーバーザレインボーにある電源ソケットを回収に行こうか。シンジもアスカの手伝いを頼んだ』
「分かった」
僕は険悪な雰囲気にならなかったことに少し安堵しながら頷いた。
管制室で新たに報告が入る。
「オセローより入電!弍号機、起動しました!」
「しかし本気ですか!?弍号機はB型装備のままです」
B型装備とはエヴァの通常の状態である。汎用人型決戦兵器の名の通り、いずれかの戦闘スタイルに特化しないことであらゆる戦闘にも対応することができる。ただし、水中を除いて。水の中ではエヴァは壊れた機械のように動かなくなってしまうのだ。
『葛城一尉、弍号機と連絡が取れました。シンジも中にいます』
『海に落ちなきゃいいんでしょ?』
2つの連絡にミサトが笑みを浮かべる。
「準備ができたようね。アスカ!出していいわよ。それから非常用電源を甲板に出しといて!」
使徒は弍号機が甲板に立ち上がった途端、オセローに向かって直進する。
「行きますっ!」
オセローが沈むのと同時に弍号機は跳躍し、近くの戦艦に絶妙なバランスで着地する。長い間訓練してきた賜物である。ナズナはそれに合わせ連絡を飛ばす。
『艦隊すべての船に勧告。踏まれたガムになりたくなければ甲板に出ないでください!』
ナズナが普段行っていることを思い出しながら、アスカが集中して戦えるようにシンジはできることを考える。
「目標は8時方向!活動限界まで58秒だよ!」
「分かってるわよ!」
いつの間にか使徒の位置がNERV本部からの共有情報のおかげでモニターでいつでも確認ができるようになっている。
『オーバーザレインボーの準備は終わってるよ。そこまでのルートも表示させてる』
その言葉にアスカは次の船を睨みつけると、膝を曲げて跳躍の構えをとった。
「飛ぶわよ!」
「うん!」
そして弍号機は見事な八艘飛びを披露する。それを支えるのはアスカの巧みな操作技術と絶妙な位置に配置された船の数々。
「エヴァ弍号機、着艦しまーす!」
そして大きな音をたてオーバーザレインボーに着地する。大きく傾いたものの、エヴァがすぐに重心を戻したことで被害が甲板に乗っていた戦闘機が海に落ちるだけで済む。トウジ達はこの非常時にミサト達のいる管制室に避難していたが、ケンスケは戦わずに海の藻屑となっていく戦闘機を見て『もったいない…』とため息をつくのだった。
「来るよ!9時方向!」
「外部電源に切り替え…完了」
活動限界のアラームが止まったことによりエヴァに乗っていた2人は少しホッとする。しかし、これでようやくまともに戦えるようになったレベルだ。
「新横須賀まで抑えてくれれば零号機が合流できる。不利な環境で使徒の能力もコアの位置もわからない以上、損耗は少しでも減らそう」
『この程度、私だけで十分よ!アンタの指図は受けないわ!』
確実に事を進めようと提案したナズナだったが、アスカの反論に思わずマイクを一度ミュートした。頭を抱える。
「はぁ…。ある意味予想通りの反応ではあるからそこは別にいいんだけど…。私、アスカに相当嫌われてね?気に触るようなこと……色々やってんなぁ…」
だが、ずっとそうしているわけにもいかないので再びマイクのミュートを解除した。
『オーケイ。とりあえず、使徒の能力とコアの位置の把握をしよう』
「武装はあるの?」
「プログレッシブナイフで十分よ」
そのとき、使徒が水面に浮上する。その白い体は今までの使徒よりもはるかに大きかった。それは海から飛び出すと、牙の生える口を大きく開いて弍号機に飛び掛かる。
『そのままでは落ちる!受け流して!』
「分かってるわ…よ!」
弍号機は大きな水柱を立たせて使徒を海に叩き落とす。シンジは何かに気づいた。
「使徒の口の中、コアがあった!」
「なんですって!?」
『確かに口の中だね。これは厄介なことになったなぁ…』
モニターのはじに映される先ほどの弍号機から見えた映像。それが一時停止して拡大される。小ウィンドウ画面いっぱいに映されたのは使徒の喉の奥に光る赤い球、コアだった。
場所は移り、オーバーザレインボー甲板では
『おーい、葛城〜』
使徒と弐号機を睨みつけていたミサトが呼ばれていた方を振り向くと、船の中に格納されていた戦闘機が発進体制に入っていた。その操縦席に座るのは加持リョウジ。
『届け物があるんで俺行くわ〜。あとは宜しく、葛城一尉〜』
戦闘中にも関わらずなんとも呑気な声で飛び去っていく戦闘機。
「なぁっ!?あいっつ…」
「に、逃げよった…」
管制室の面々はその行動に呆れることしかできなかった。
葛城ミサトは弍号機がガギエルの攻撃を受け流しているのを見ながら頭を抑え、もう一度尋ねる。
「コアは口の中、そう言ってるわけね?ナズナちゃん」
『はい』
お互い、無線機越しに顔は見えないが苦い顔をする。使徒の能力は今のところ確認してないとはいえ、全く心配はないと言えばそうではない。口内に入って一気にコアにプログレッシブナイフを突き刺せばそれでいいのだが、未知の生物の口内に入るのだ。何があるかわからない。
「いいわ。弍号機を使徒の口内に侵入させ、ナイフでコアに攻撃。これが1番手っ取り早い」
『なっ、使徒の能力はまだわからないんですよ?それはあまりにも危険では?』
「いいえ。口の中こそ最も安全な場所よ。コアがあるのがその証拠。もし、口から先のサキエルやラミエルみたいに荷流子砲を放つなら当たる可能性のある口の中にコアはないわ。それに、牙を生やす必要もないし、荷粒子砲もとっくに撃ってるはずよ」
ナズナは少し黙り、ミサトの案を脳内で検討する。
『…なるほど。それなら反論する理由もありませんね』
「聞こえてたわね?この作戦でいくわよ」
その問いに弍号機に乗っている2人が答える。
『使徒の口に飛び込まないといけないなんて、ナンセンス!』
『どっちにしてもやるしかないよ。艦隊の砲撃を合わせるのは難しいはずだし』
イラつきつつも納得したアスカの様子を確認すると、ミサトは続ける。
「では、作戦は使徒の攻撃に合わせ、弍号機が口内に侵入、ナイフでコアの撃破。国連艦隊は撃破確認後、使徒の顎部を砲撃し口を開かせ弍号機回収の援護を。よろしいですね?」
「うむ。使徒が死ねばATフィールドが発生しないので攻撃が通る、ということだな」
隣で聞いていた艦長が頷く。
「それでは、作戦開始!」
弍号機が使徒の攻撃のタイミングを伺う。
「使徒が1番大きく口を開いた時に飛び込もう」
「うるっさいわね!こっちは集中してんのよ!」
『来るぞ!』
ガギエルが真っ白な体から真っ赤な口を開いて迫ってくる。その口が閉じられる前に、弍号機は自ら餌になった。そしてガギエルの巨体は船の上に落ちるかと思われたとき、空に浮き上がった。
「はぁ!?」
『そうくるか』
ミサトとナズナの驚く声をそのままにフワフワと空を泳ぐガギエル。そして釣竿にかかった魚のように空中でのたうち回り始めた。その勢いで船が右に左に大きく揺れる。このまま暴れられれば航行どころではない。ミサトは弍号機に急いで呼びかける。
「アスカ!コアの破壊はどうなってるの!?」
『ダメ!足首が歯に挟まってこれ以上奥に進めないわ!』
確かによく見ればガギエルの口の隙間から弍号機の赤い足がはみ出している。シンジも状況を分析する。
『使徒が浮いてるおかげで口の中でも多少は動けるけど、コアに届くには一度、使徒の口を開かせないと!』
ミサトは狂ってしまった作戦のリカバリーを模索する。
「ナズナちゃん!使徒の口の中にエバーが入れたってことはATフィールドは中和できてるってことなのよね!?」
『その可能性が高いです』
ラミエルやナズナが生み出す肉眼で確認できるほどの出力ではなくても、エヴァが持つATフィールドはパイロットとのシンクロ率によっては使徒のそれを中和するには十分である。ミサトはこれが働いたと考えたのだ。
「使徒の口を開かせる!目標を第6使徒、誘導対空ミサイル発射!」
『誘導対空ミサイル発射しました!着弾まで7秒!』
ミサトと同じ、対使徒用の兵器を統括している作戦部の日向マコトが報告をする。それに合わせ、艦長も指示を出した。
「全艦、使徒に集中砲火!その場に縫い付けるんだ!外したら我々がミサイルの餌食になるぞ!」
全ての艦隊、すべての砲塔がガギエルの方を向き、火を吹く。全方位から撃たれ、ガギエルは右にも左にもいけない状態となった。爆発の光と煙がその場を埋め尽くす。そのとき、遠くから光が近づいてくるのが見えた。それは高速で近づくと使徒に命中し、爆ぜる。そのダメージはガギエルの顎の力を緩めさせた。
「あと、もう、ちょっとっていうのに…」
ガギエルの噛む力がいくら緩んだと言っても口が開かなければ意味はない。弍号機は右手を下顎に、左手を上顎に当ててどうにか足が通る隙間を開けようとしていた。アスカが目の前のコアを睨みながら念じる。
「開いて、開いて、開け、開け!」
シンジも操縦せずともエヴァに念じる。
「開け開け、開け!」
2人の気持ちが最高点に達したとき、何かと繋がる感覚が2人を襲った。
(なに…これ?心地いい。なんでもできる気がするわ!)
(この感覚、知ってる…ラミエルと戦ってる時に感じたのと同じだ…)
そのとき、弍号機の目が緑色に輝き、腕の力とガギエルの顎の力との均衡が崩れる。少しずつ、少しずつ、ガギエルの口が開き出した。
「「開けぇ!」」
バカンとガギエルの口が開く。空いた隙間で足を引き抜き、弍号機が口の奥に滑り込む。そして、その勢いのままナイフをコアに突き刺した。
バキン
コアが割れ、ガギエルが浮力を失う。力なく海に落ちて行くときに非常電源のケーブルが勢いよく巻かれた。それに合わせ、弍号機はガギエルの口内を踏み台にして飛び出す。そして見事オーバーザレインボーの甲板に着地し、使徒との海上戦闘を終えた。
新横須賀港着いたシンジが見たのは防波堤の近くに待機している零号機とエヴァパイロットの2人だった。棒立ちしているレイと、横で手を振っているナズナに出迎えられながらNERV関係者が降りてくる。アスカは船のタラップを降りた後、彼女たちの前で仁王立ちをした。
「アンタたちが日本のエヴァパイロットね!私はセカンドチルドレンの惣流・アスカ・ラングレー。NERVのお払い箱になりたくなければせいぜい頑張ることね!」
「…」
「ほら、レイ、さっき練習したでしょ」
ナズナは黙っているレイを小突いて促す。
「綾波レイ。ファーストチルドレンよ。よろしく」
「ふーん。無愛想だけど挨拶はできるのね」
それから、と一気に剣呑な目でナズナを睨みつける。彼女はその剣幕に若干押されつつもフレンドリーに話しかける。
「Ich freue mich, Sie kennen zu lernen. Mein Name ist Nazuna. アスカが来てくれて心強いよ。これからよろしく 」
そう言って握手しようと左手を出したが、案の定無視をされた。
「ATフィールドを自由に張れるからって調子に乗れるのは今のうちよ!すぐにその化けの皮を暴いてやるんだから、それまで震えて待つことね!」
(どっちのアスカでも好きなのにどうしてここまで嫌われなくちゃいけないのか…。結末を変えたいからとはいえ、NERVで有能ムーブが十中八九の原因だろうけど、利用価値を示さないと最悪消されかねないからな…)
アスカの過去を知っている故に彼女の挑発に乗ることはなかったが、これから待ち受ける苦労を想像して頭痛がしてくるのだった。そのとき、彼女たちの耳にトウジたちの会話が入ってきた。
「シンジ!さっさと降りてこんかい!」
「やっ、やだよ!せめてもうちょっと待って!」
「碇、覚悟を決めろよ、男だろ!」
彼女たちが船の乗り降り口に目を向けると、トウジとケンスケが船から何かを引っ張り出そうとしていた。その奥にシンジがいるのだろう。訝しんだナズナはアスカとレイをその場に残し、彼らに近づいた。
「おーい、どうしたの?」
「村雨!?ちょっと待って」
「は?なになに?」
「村雨、ちょっと言いにくいことなんやが…」
「待って!もう僕から言うから!」
そう言ってようやくシンジが出てくる。彼は女物のプラグスーツを着ていた。色が青と白であることから村雨ナズナのものであることを想像することは容易かった。
「え?い、いや、あの、待ってシンジ。えぇ…?」
「ちっ、違うんだよ!」
明らかに困惑するナズナと必死に弁明しようとするシンジ。ナズナは予想だにしなかったことに狼狽えた。
「確かに何かあった時のためにプラグスーツは持って行けって言ったけど…私のを持っていくのはちょっと予想外だったかな…」
「ちょっと聞いて!」
ナズナはシンジにとって気まずくなると思われるアスカのプラグスーツを着る展開を避けるため、自分のものを持っていくよう言っていた。だが、シンジが持っていったのは彼女のものであった。
「いや、別に責めてるわけじゃないんだよ?人の好みは色々だし、私はそれを否定するつもりはないし…。ただ10年くらいの付き合いがあるのにそれに気づかなかった私が不覚を取ったといいますか、ずっと言ってくれなかったことを悲しいと言いますか…」
「誤解だよ!ごめん。お願いだから話を聞いて。敬語やめて!ちょっと距離取らないで!」
それからシンジの必死の弁明の結果、彼の間違いでナズナのプラグスーツを持って行ってしまったこと、彼女でもない女子であるアスカのスーツを着るわけにもいかず、仕方なく着るしかなかったということがわかった。
「なぁんだ。間違えただけかあ〜。びっくりしたよ」
「本当にごめん!」
もちろん彼女は最初から間違えてしまったのだろうとは予想がついていた。だが、ちょっとだけシンジをからかってしまいたくなったのだ。
「というかアスカにそれで行って何か言われなかった?」
おそらく彼女のスーツを着て弍号機に乗り込む時のことだろう。
「変態って言われたけど、僕らのスーツほぼ同じだから間違えたって言ったら納得してくれた」
シンジはそのときに『こいつまじか』という視線を向けられたことは黙っていることにした。それからナズナは思い出したようにケンスケに声をかけ、2人はその場から離れた。シンジたちをはじめ、その様子を見ていたアスカたちも不思議そうに様子を眺める。
「なんの話をしてるんや?」
「さあ…?」
2人はコソコソとしばらく話し、ケンスケが指を3本立てると、ナズナは首を横に振り、指を2本立てる。ケンスケはそれに大きく頷くと、2人は固い握手をした。この間、この意味を理解できたのは1人もいなかった。
数日後、退屈な学校の朝礼は突然破られる。
「惣流・アスカ・ラングレーですっ!よろしくっ!」
アスカが来日した日では一切見せなかった笑顔を見せる。
(相変わらず豹変ぶりすげぇ…コワ)
アスカが加わり、NERVは一層騒がしくなるのだった。