ミカに会いに行く…と決めたはいいものの、残念ながら俺はミカとモモトークを交換していなかった!正確にはビナーに敗れてスマホがぶっ壊れた時に新調したスマホにはミカの連絡先が入っていない。モモトークに関してはアカウント復旧のための必要な情報忘れたしな。しょうがない。アポなしで他学区の生徒がトリニティ内に入れるとは思えないし、どうするかな…。
そういえばよくミカと一緒に行ってたカフェがあったな。試しに行ってみるか。
久しぶりに青電主装備に身を包み、さらにアビドスの制服を重ね着する。先生がゲーム開発部に行ってる間に溜まっている書類の山は一旦見なかったことにし、トリニティ自治区へとレウスに乗って飛び立つ。ミカに会えるといいが…会えなかったらまたミカがシャーレに突撃してくる羽目になる。この前のホシノとの一件のようなことはそう何度もあってほしいものではない。最悪ナビルーにカメラハッキングしてもらうか…。
そんな心配は杞憂に終わり、ミカと二年前よく行っていたカフェに、彼女はいた。表情に陰があるのが気になるが…
「ミカ、言った通り会いに来たぞ。相席いいか?」
「レクト君!?」
自分で疑問形で聞いておきながらもミカの様子が気になるので有無を言わさずミカの反対側の席に座る。
「会いに行こうと思ったんだが、スマホを新調した後連絡先を交換するのを忘れててな。もしかしたらここに居るかもと思って来たんだ」
「そうなんだ…それで本当に会えちゃうなんて、私たちの間には強い繋がりがあるみたいだね…なんて」
「実際あるだろうな。他校同士のただの友人で、2年間音沙汰無しだったのにまたこうして会えてる。なにかしら強い縁がなかったら会うこともなかっただろう」
「そうだけど…ふーん。レクト君にとって私はただの友人なんだ」
「なんだそのめっちゃ不満そうな顔」
そのむーってやってる顔めっちゃ可愛いけど、今のどこが地雷だったのか全く分からんぞ。え?「ただの友人」ってワードアウトだった?
「別にー。私の事お姫様って呼んだ癖に、ただの友人止まりってことに不満なんてないですよーだ」
「いや、あれはだな…」
思えば俺はどうしてミカの事をお姫様と呼ぶようになったのだったか。そう、確かあれは二年前このカフェで一緒にティータイムを過ごしていた時の事だ…
『レクト君ってさー、困ったらすぐ駆けつけてくれるヒーローみたいだよね』
『どうした急に』
『だっていつも連絡したらすぐ来てくれるじゃん。しかも竜に乗って』
『だったらミカは囚われのお姫様ってとこか?まあミカは囚われてもいないしお姫様って程か弱くもないが』
『ちょっと!それどういう意味!?』
『まあいいんじゃないか?最近は囚われてるだけのお姫様も珍しいと思うし』
『折るよ?』
『何を!?』
そう、あの一件から偶にお姫様って呼ぶことになって、ミカが満更でもなさそうな顔をするから、最初はネタを擦ってるような感覚だったのに自然とそう呼ぶことが増えたんだ。
「普通に俺が始めた物語だったわ…」
「どうしたの急に?」
「いや、うん。ただの友人をお姫様呼ばわりはしないなと思ってな」
「でしょでしょ?やっぱお姫様って呼ぶような関係って…」
そこまで言ったところでミカの顔が赤くなり黙ってしまった。一体何を想像したのだろうか。お姫様と呼ぶような関係って姫とその家臣とかじゃないか?どっか赤面する要素あったか?
ミカが硬直してる間に注文を済ませ、フリーズしてるミカの再起動を試みる。
「それで、どうしてあんな落ち込んでたんだ?」
ミカは少し驚いたような顔をした後、憂いを帯びたような表情をしながら語りだした。
「…やっぱレクト君にはわかっちゃうかー。…私ね、取り返しのつかない失敗をしちゃったの。最初は今よりいい未来を求めて動いてただけだったのに、気づけばもうどうしようもないくらいに歪んだ結果を生み出しちゃったんだ。私、こんな事望んでなかったのに、どうしてこうなっちゃったのかな…」
夢の中の少女が言ってたのは間違ってなかったらしい。ミカは途轍もなく大きな失敗をしたようだ。取り返しの無い、最悪の。俺はカウンセラーでも精神科医でもないから、ミカの心の苦しみを推し測ってやることはできない。でも…
「ミカがどうしてそんな失敗をすることになったのか、俺は知らない。でも、例え器が割れてしまったとして、完璧な修復が二度とできなくても、欠片を拾い集めることはできるはずだ。そしたらいつの日か、ひび割れた器になって使えるくらいにはなってるかもしれない。例えならなかったとしても、今を諦める理由にはならない。それになミカ、取り返しの無い事だと思ってても、ミカっていう人物の事は、誰かが見てる。俺も含めてな。だから、諦めないでくれ。ミカにはお姫様でいてほしいから」
そう言い切ると、ミカは困ったように笑った。
「そんなこと言われたら、頑張るしかないじゃん。…ずるいなあ、私の騎士様は」
「騎士って柄でもないけどな。…何かあったら頼ってくれて良いからな」
「それだったらまず連絡先交換しなきゃじゃんね」
「忘れてた…」
モモトークを交換したところで、注文したチーズケーキが来たので調子が戻ってきたミカの話に相槌を打ちながら食べることにした。
幼馴染のナギサに関する愚痴なのか惚け話なのかわからない話をずっとしてた。やっぱ変わんねえなミカ。
「じゃあミカ、俺はそろそろ行くよ」
「あ、もうこんな時間なんだ…」
「ミカも遅くならない内に帰るんだぞ。お姫様が夜遊びなんてしちゃいけないからな」
「も~、レクト君自分の都合のいい時だけお姫様って呼んでるでしょ?」
「ソンナコトナイヨ」
そんなことはない。断じてない。これ以上追求されるのは嫌なのでそそくさと退散する。ミカの分の会計も払い、一緒に店を出た別れ際に「待って」と、言われ足を止める。
「もし、もしね?こっから私がさらに失敗を重ねて、どうしようもないところまで落ちちゃっても…レクト君は助けてくれる?」
「当たり前だ」
「そっか…うん、ありがとね。じゃあまた今度」
どこかすっきりした表情のミカに別れを告げ、レウスに乗って帰る。
ミレニアムプライスの受付終了及びゲーム開発部の新作完成まであと4日もない。それまでにシャーレの仕事をある程度片付けておかなければ…先生、帰ったら先生しかできない仕事山積みになってるからな。覚悟しろよ。
そういえばレウスを二年間俺のいない間アビドスを守った功労者として何かご褒美をあげるべきって思ってたんだよな…何が良いだろうか。やっぱ肉かな…え?一緒に昼寝?いいけど…地味にオトモンの言ってることわかるんだよな。はっきりと文字で分かるわけじゃないけど。とにかく、これは明日も昼寝で潰れるかな。シャーレの仕事の時間…隙間でやるしかねえ。
シャーレに帰った俺は寝る直前まで書類仕事に勤しむのだった。
エデンどうすっかな…(考えなし