レクト君の身長どっかで言及したと思うんですけど何㎝か結局わかんなかったんですよね(ガバ)。覚えてる熱心な読者さんいたら教えてください
掲示板回書こうと思ってたんですけど筆が乗らなかったのでやめました。
気が付いたら、どこかの裏路地に居た。自分はさっきまで自分の部屋で眠っていたはずなのに、目が覚めれば全くと言って良いほど知らない景色が外に広がる路地裏に横たわっていた。どうしてと思うより先に、自分の恰好がどこかで見たことある物に変わっていることに気づく。
見間違うはずもない。ハクム村のライダー装備だ。左手には絆石が装着されているのも鑑みるに、俺はハクム村のライダーに転生したのかもしれない。
だが、路地裏の外に広がる光景はどう見ても現代的なものだ。しかも歩いてる人はファンタジーにいるような獣人か天使の輪っかがついた女子しかいない。制服っぽいのを着てるから恐らく学生だろうか。
困惑と同時に、これから先、どうすれば良いのか不安が募る。
俺がライダーの力を持っているとして、こんな文明が進んでる場所にモンスターはいるのか?そもそも帰れるのか?帰れないとして、どうして自分がこんな目に遭わなきゃいけないのか。不安しかない。帰りたい。でもその手立てがない。
もう既にどこかで銃声のようなものが聞こえる。ここはこれが普通なのか?だとしたら、俺は生きていけるかさえ怪しい。銃弾なんて基本一発当たったら大怪我、数発当たったら致命傷、悪ければ一発で即死だ。
でも、こんなところで衰弱死なんて御免だ。俺は意を決して路地裏から出た。
瞬間、目の前を高速で何かが横切る。横に顔を向けると、銃を構えたガラの悪い女子が数名突っ立っていた。
「あ“ぁ?ヘイロー無しかよ。うっかり殺しちまうところだったじゃねえか。あたしを殺人犯にしようってか?」
「あ!姉御、鴨が逃げていきましたよ!」
「本当じゃねえか。お前のせいでカツアゲする奴がいなくなっちまったなァ」
何を言ってるのかわからない。人を殺しかけたというのに何故そんな平静なのか。何故銃を人に向けて躊躇い無く発砲できるのか。唖然としているとその不良達が歩み寄ってきて、いきなり銃で頭を殴られた。
女子の力とは思えないほど力強く殴られた俺は、情けなく地面に倒れた。
「なに、を…」
「あ?決まってんだろ。お前のせいで鴨がいなくなったんだから、お前が代わりに鴨になるんだ、よ!」
「っぁが!?」
腹を蹴られ、うめき声が漏れる。
「でも姉御、こいつ鞄どころかポーチも財布も無いっすよ」
「あぁ、だろうな。だから私らの玩具にすんだよ。こいつ男だし、貴重な悲鳴が聞けるかもな!」
その言葉からこれからされる行為は容易に想像できた。察しがついたところで、暴行が繰り返された。
言葉を突く暇もなく、銃で殴られ、蹴られる。初めて受ける集団暴行に為すすべもなく、助けを呼ぶ暇もない。通行人は見て見ぬ振りをしている。
どうして、と考えても、既にその自問はさっきしたばかりだ。答えが出なかったからこそ、一歩踏み出した。その結果がこれだ。
次第に痛覚も麻痺してきたころ、俺の唯一と言っていい
「あ?なんか砕けたな。そこそこ高いもんだったか?しくったなこりゃ」
絆石は限界を迎え砕け散り、俺もすでに肉体は限界を超え、精神面では既に何もかもどうでもよくなっている。いっそこのまま殺してほしい。
その時、俺の体から何かどす黒いモノが渦巻いた。
生物の本能的に忌避されるものであろうそれは、俺の心に深く、深く浸透していった。
俺はその正体が何かわかった。
絆有るところに光満ち、絆無きところに闇満ちる。
「…俺が、黒の狂気だ」
「は?」
そうつぶやいた瞬間、黒い煙が俺の体が急速に広がっていく。
「な、なんだよこれ!おい!お前何をした!」
「あ、姉御!逃げた方が良いんじゃ!?」
俺はさっきまでの苦痛が嘘のように立ち上がり、不良達を見据える。
「黒の狂気は、自然現象の一つと考えられている。オトモンも、絆石もない、お前たちのような矮小な人間が、自然の力に勝てる訳がない。だろう?」
「何を言って…」
「死ね」
黒の狂気に当てられて、意識を失わせる。そしてさらに浴びせ続けると、肉体がしわくちゃになっていき、最期にはミイラのような姿になった。
この世界の全員を殺したい訳ではない。だが、俺自身が黒の狂気になった以上、もう誰にも止められない。俺自身も、死にたくない以上止まれない。この世界に現存するであろう唯一の絆石は、さっき壊された。あとはもう、破滅に向かっていくだけだ。
あれから数カ月がたった。黒の狂気という自然現象と同一化した俺は、既に生物としての枠から外れてるのか、腹が減ることも、眠くなることも、疲れることもなかった。
だから、絆原石がないか、この世界を歩き回った。途中、めちゃくちゃ強い女子が数人、俺を殺そうとしてきたけど、俺の体に銃弾は効かず、逆に相手は強力な黒の狂気を当てるだけで気絶した。
積極的に殺したいわけじゃないので、そのまま放置した。どうせこの世界の生命は、すべて死に行く定めだ。
結局、絆原石は見つからなかった。探してる間にも黒の狂気は世界を蝕み続け、もうそろそろ全てが黒に包まれる。生き残っている人も、もう少ないだろう。
最後に、なんだか口惜しくなって、本当に自分を殺せないのか、一番強かった少女の校舎だと思われるところに来た。
「なぁーんか嫌な感じが強くなったと思ったら、ここに来てたんだね。【黒の天災】。いまさら何しに来たの?もうここには私しかいないよ」
随分と背の低い、小学生かと思ってしまう桃色のロングヘアの女子生徒。確か委員長と呼ばれてた生徒と襲ってきたときは、ホシノと呼ばれていたか。
「まさかいるとは思わなかった。ここはもうずいぶんと前から黒の狂気に覆われているはずだが」
「ずっとここに居たわけじゃないよ。そろそろ世界の終わりが見えてきたから、この校舎も見納めかなって思って来ただけ」
「そうか。…俺は、自身が本当に死ねないのか試しに来ただけだ。その実験の最適な人材は、お前以外に居ない」
「何を今更ッ…!?」
俺の言葉に激昂しかけたホシノが、俺の顔を見て驚く。涙が、溢れていたからだ。
「俺だって、世界を壊したくなんかないッ!でも、死にたくなかった!!死にたくなかったけど、勝手に俺の体からあふれ出る狂気が!世界を蝕んでいくんだ!この狂気を収める唯一の石は、この世界には無かった!緑あふれる山奥も、雪に覆われた地域も、マグマが煮えたぎってる洞窟さえも!この世界には狂気を収めるための石が、一つもなかった!俺の持ってた石が、壊された時点で、詰んでたんだよ…」
「…」
「正直、俺を殺したところでこの狂気が収まるのかわからない。でも、もう終わりにしたい。俺はこのクソみたいな人生に幕を閉じる。お前たちは黒の狂気を収められるかもしれない。利になる可能性はあっても、害はない方法だ」
「…そうだね」
少女は近づき、俺の額にショットガンを突き付ける。少し深呼吸をした後、彼女がトリガーを引いた瞬間、今までにない強い衝撃を受けた。だが、それだけだった。
「やっぱだめかぁ~」
そう言って少女はこちらに倒れ込む。慌てて抱き留めると、彼女の体が急速に力を失っていくのを感じる。
「おい!なんで!」
「いや~、ここに居られたのは私の力で無理やり狂気を防いでいたからなんだけど、今その力を全部弾に込めちゃったからさ。もう狂気に飲まれるんだよね~」
「なんでそんな力込めたんだよ!死ぬの分かってただろ!」
「まあ、全力を出し切れなくて君が死なないのも困るし?私はこのままだとどうせ死んじゃうから、振り切った方が良いかなって…」
「ちょっと待て!今からお前が狂気を受け入れらる体になれば、まだ…!」
「それって今の君みたいになるってことでしょ~?そうなっちゃうのはちょっと嫌だなあ…」
「やっぱり、本当は…君、良い人だね…もっと違う、別の出会い方なら…友達に…」
「なあ、おい!目の前で死ぬな!起きろ!…起きてくれ…」
そこで俺の折れた心は、さらに粉々に砕け散った。腕に抱える冷たい骸に、黒に覆われ暗くなった空。一滴の雨も降らず、一筋の陽光も刺さないこの世界は、完全に黒に覆われた。
そして俺は、