キャー!サクラコ様素敵!できれば天井前に来てね!(血涙
これから苦楽を共にする補習授業部のイカれたメンバーを紹介するぜ!
推しのゲリラ公演に参加するためにテストをすっぽかした!阿慈谷ヒフミ!
学園内を水着で徘徊!浦和ハナコ!
教材用催涙弾の倉庫で立てこもり!約一トンの催涙弾を爆破!白洲アズサ!
ただのバカ!下江コハル!
そしてそいつらと一緒に補習を受ける二留の俺、龍塚レクト。これはテンションがおかしくなっても仕方ないと思う。
「俺が二留…二留かぁ…」
「元気を出してください、レクトさん!頑張って勉強すればきっと卒業資格くらい取れますよ!アビドスの皆さんにはお世話になりましたし、私でよければいくらでも勉強に付き合うので…!」
ヒフミめっちゃ良い子だ…でも試験すっぽかしたんだよな…
「あはは!二留なんて初めて見たわ!」
「あらあら、駄目ですよコハルちゃん。レクトさんは二年間昏睡してたんですから」
「えっ…そうなの…?」
「そういうことになってるな。俺からしたら一瞬の出来事だったけど」
「えっと、その…ごめん…」
「謝罪は受け取るし全然許すんだが、なんでハナコはそのこと知ってるんだ?」
「女の子の秘密を探るのはご法度ですよ~」
隠してないけど広めてるつもりもなかったんだけどな…俺が言った以外で知ってる人がいたら各学園の情報部とか生徒会だと思ってた。
「と、とにかく!私はあんた達と違って正義実現委員会のエリートなの!さっさと合格点を叩き出して、こんな部からはおさらばしてやるんだから!」
「元より学力が足りなかった者同士が補習のために集まった部だ。長く留まる理由もないし、私も異存はない」
「えっと…大変言いにくいのですが、全員が試験で合格点を出さないとダメなんです…」
「え?」「そうか…」
「つまり、これから全三回ある試験の内、一回でも全員合格すれば良いってことだ。俺は厳密には補習授業部じゃないから全員の内にはカウントされないが、さすがに学力が心配なので一緒に勉強はする。…流石に3年までの認定試験受けて学年上げなきゃな」
というかゲヘナとか絶対出席してるやつもテスト受けてるやつもロクにいないのに学年上がっていくんだ…おかしいだろ。
「なるほど。じゃあ私たちは補習授業部がその目的を果たすまで、一蓮托生というわけですね。レクトさん以外」
「俺だけ仲間外れみたいに言うのやめてもらえる??」
「よろしいのですか?レクトさんがこのグループに入れば男子生徒一人、女子生徒四人、大人の女性一人。なんだか怪しい香りがしませんか?ねぇ、コハルちゃん?」
「な、なんでそこで私に振るのよ!怪しい香りとかそんな…その…とにかくダメ!」
「あら?どうして顔を赤くしてるのですか?いったい何を想像したのか是非教えてください、コハルちゃん」
「な、何よ!にじり寄って来ないで!ああもうバカ!エッチ!頭ピンク!」
そう言ってコハルは教室から逃げ去っていった。
「…先生、大丈夫かな、この部活」
「”頑張ってみるしかないね…”」
頭を抱える俺、苦笑いする先生、未だニッコニコなハナコ、無表情なアズサ、若干顔を赤くしながらあわあわしてるヒフミ*1…俺、この部でちゃんと勉強できるかな…
と、不安要素しかなかったが、毎日この教室にしっかりと全員集まり、勉強自体は恙なく進んだ。ヒフミは勉強がめちゃくちゃできるというわけではないが、元々ペロロ様のために試験をすっぽかしただけであって、落第するような学力ではない。となると問題は残りの3人+部外者1名なのだが、ハナコは何故落第したのかわからないほど頭がいいし、教え方も上手い。おかげでアズサやコハル、そして俺もハナコに勉強を教わっている。コハルはハナコを警戒してるが教えてもらったことに関しては理解…してるのかな…不安だな。教科書と睨めっこしてもわからない部分だけハナコに聞いているが、今までハナコの説明でわからなかった箇所がない。ついでだし部外者ではあるが、これなら俺も十分に勉強できそうだ。
さっきハナコに感謝の意を伝えたら若干様子がおかしかったが何かあったんだろうか。
そうして第一次特別学力試験の日があっという間に訪れ、後日試験の結果が届いた。
手応えはあった。他のみんなは別として。ハナコとヒフミはまあ、大丈夫だろう。アズサもしっかり勉強してたし…コハルだけが不安だ。元々入れられた理由がただの学力不足だし…
これで不合格者が出れば、合宿が決定されるわけだが…女5人男一人の合宿とか拷問なので勘弁してほしい。ただでさえ普段から男一人で肩身が狭いのに。助けてくれ柴大将。
「それでは先生!試験の結果発表をお願いします!」
「”うん、それじゃあ読み上げるね”」
ヒフミ:72点 合格
アズサ:32点 不合格
コハル:11点 不合格
ハナコ:2点 不合格
レクト:84点 合格
「はい!?」「??????」
「ちっ、紙一重だったか…」
「アズサちゃん!?全然紙一重って点数じゃないですよ!?それにコハルちゃん、まさか今度は3年生用の試験を受けたんですか!?」
「い、いや…その、結構難しかったし…」
「全然基礎中の基礎のレベルでしたよ!?ハナコちゃんに至っては2点って何があったんですか!?すごい勉強できる感じでしたよね!?」
「確かに私、そういう雰囲気があるみたいですね~。まあ、成績は別なのですが」
「これで合格点は私と、レクトさんだけ…きゅぅ…」
「”ヒフミ!?しっかりして!”」
「俺もヒフミみたいに倒れたら現実逃避できるかな…」
「”レクト!?やめてね!?”」
「あら、先生。お疲れ様です。どうやら最初の試験は上手くいかなかったようですね。ですが試験はまだ二回、残っておりますので…」
「”試験に3回とも落ちたら、皆はどうなるの?”」
「そうですね…今日は先生にお伝えしたいこともあったのですが、関係ある話ですのでそちらを先にお答えしましょう。…三回とも試験に落ちたら、彼女達は退学になります」
「”キヴォトスにおける学籍がどういうものか、分かってて言ってるんだよね”」
この世界での学籍は、国籍に等しい。学籍がなければ身分を証明することもできず、口座は凍結され、その身一つでこの銃弾が飛び交う世界で生きていかなければいけない。このキヴォトスには、そうなってしまいブラックマーケット等で暮らす学生も少なくない。だから問いかけた。と言っても、三大校の一つのトップが、その重さを理解していないはずもない。
「もちろん、分かっています。そもそも補習授業部は、生徒を退学させるために作った部活ですので」
「”…そのために、シャーレの権限を借りたんだね”」
「騙すような形になってしまい申し訳ありません。ですが、これはエデン条約の締結のために必要なことなのです。…あの補習授業部の中には、裏切り者がいますから」
「”裏切者?”」
「ええ、そうです。エデン条約を脅かすテロリスト、と言えばいいでしょうか。残念ながら、特定までは至りませんでした。で、あれば。容疑者を一つの箱にまとめて、丸ごと処分できるようにしておく…補習授業部はそういった部活です。…ごめんなさい。こんな血生臭いことに先生を巻き込んでしまいました」
「”ナギサの懸念はわかった。でも、私は私のやり方で、この問題に対処させてもらうね”」
事情は分かった。でも、補習授業部は退学になんてさせないし、ナギサにそんなことをさせなきゃいけないような状況にもさせない。
「…そうですか。分かりました。どうかこの行く先が苦痛を伴わないものであることを、願っています」
私はナギサに背を向け、その場を後にした。誰も犠牲にさせず、誰も誰かに手をかけることのない決意を抱いて。
…その決意は既に、遅すぎたのかもしれない。
実はやろうと思えばそこそこ勉強のできるレクト君です。
脳筋じゃないです。