転生ライダーinキヴォトス   作:KIARU

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ファンタジーライフ、楽しいです(遺言)
大変遅れて申し訳ないと常々思っています…


電車と目覚め

 ガタゴトと心地よい揺れ。暗転している視界をゆっくりと開けると、そこは電車の中だった。電車と言っても人は目の前の少女以外おらず、窓の外の景色も空しかない。それでも、電車は止まることなく一定のリズムで走っていた。

 

「ようやく会えましたね。龍塚レクトさん。本当はもっと早く会うつもりだったのですが…お互い忙しかったようですね」

 

 どうやら目の前の少女は俺のことを知っているようだ。…この子めっちゃどストライクな見た目してるな。それよりも血濡れなのが気になるが。

 

「怪我してるぞ。大丈夫か?」

 

「ええ、大丈夫です。ここは意識の狭間のような場所ですから。見た目がそうなっているだけです」

 

 目の前の少女の怪我を治そうと回復薬を取り出そうとしてもアイテムボックスに接続できない。なるほど、現実ではないというのはそうなのかもしれない。

 

「以前お会いした時も、あなたはまず私の怪我を案じてくれましたね。突然このような場所に連れてこられたにも関わらず」

 

「…俺と君は、初対面のはずだが」

 

 まあでもこんな子といつの間に会っていたというなら悪い気はしない。

 

「…そうですね。あ(・)な(・)た(・)と会うのは、初めてになります」

 

 初対面じゃねえか。

 

「ところで龍塚レクトさん。あなたが取り出そうとした薬は本来、ただの人間に使うようなものですか?」

 

 …確かに、言われてみればモンスターの強力な攻撃を飲むだけでチャラにできるような回復アイテムだ。青い謎のキノコと薬草で作れるが、地球人とかが飲んだら悪影響を及ぼす可能性も十二分にあるだろう。何故それをこの少女が知ってるかはともかく、神秘にあふれたキヴォトスの人間や、ハンターやライダーで無い限り使うのはご法度といえるかもしれない。

 

「…大体想像がついたようですね。レクトさんが持っているアイテムや武具の数々は、本来キヴォトスには存在し得ないこの世界に余る力です。それをレクトさんが悪用するなどとは思っていません。ですがレクトさん。よく聞いてください。あなたはライダー(傍観者)であってもライダー(主人公)ではありません」

 

 どちらも同じ言葉だが、ニュアンスでどういう意味かわかってしまう。そう、俺は主人公ではない。ただライダー(主人公)を通して狭い世界を見ていた、一プレイヤーに過ぎない。だからこそ、姿や声が変わっても、何も知らない世界に行こうとも、俺は俺でありたかった。ライダーの価値観を知識として知っていようと、それに沿った行動をしようとも、知った上で俺も考えて、納得して、その選択をしてきた。だから―――

 

「単刀直入に言います、レクトさん。あなたの体は壊れかけています」

 

 そんなことを言われても、後悔なんてしていない。

 

「…反省も後悔もしてなさそうですね。まあ、わかってはいましたが」

 

「ここに呼び出したのは君だろう?何かあるのか?」

 

「レクトさんは、私の知る通過点とは幾つか違う道をたどってきました。今はまだ、それが良い方向に進むかどうかはわかりませんが…私にできることは、その体に宿ってる記憶をレクトさんにわかるように呼び覚ますことです」

 

 どこまで、何を知っているのだろうか、彼女は。

 

「私の知る結末では、レクトさんの存在が滅びを呼び寄せました。ですが、それはレクトさんのせいではありません。それはきっと、先生も同意してくれるでしょう。ですからどうか、自分の存在を蔑ろにしないでください」

「あなたが自らをイレギュラーだと思い込み、自分の身を顧みず他者を助けることに抵抗がないのは知っています。ですがもう、あなたはこの物語の一員なのですから。キヴォトスにはきっと、あなたの帰る場所があります」

 

 彼女の言葉を静かに聞きながらも、自分の心を見透かされた事に内心驚く。それを誰かに話したことはない。まあ美少女だし見透かされてもいいか。

 

「ここでの出来事を忘れてしまっても構いません。あ(・)な(・)た(・)はきっと、この捻じれて歪んだ終着点とは、違う結末を迎えるでしょうから」

 

「ここを出て俺が目覚めた後、また君とは会えるのか?」

 

「…わかりません。ですが私も、レクトさんとはまたお会いしたいと思っています」

 

 なんとなくこの電車に乗っていられる時間が残りわずかな事を感じ取り、連絡先は無理でもまた会えないかどうか聞いてみれば、嬉しい答えが返ってきた。…起きたらまたがんばろ。

 

「あ、そうだ。名前教えてくれないか」

 

「――ふふ、今はだめです。それにきっと、伝えても覚えてられませんから」

「レクトさん、あなたには過酷な運命を強いることになるかもしれません。でも、レクトさんなら大丈夫です。そしてできることならいつか―――」

 

 最後の言葉を聞くことなく、俺の意識は薄れていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…行ってしまいましたね」

 

 誰もいなくなった電車の中で、少女は一人呟く。

 

「気恥ずかしくてこ(・)っ(・)ち(・)では今の今まで会いに行けなかったと言ったら彼は怒るでしょうか」

 

 行ってしまった少年の在りし日の姿を想い、彼女は目を瞑り、穏やかな笑みを浮かべる。

 

「全く、初対面で一方的に告白してきて散々私を弄んだかと思えば、独り先に行ってしまうなんて。酷い男ですね、彼も」

「――できることならいつか、あなたの隣を何事もなく歩ける日を願っています」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…枕低いな」

 

 目覚めた第一声がそれだった。知らない天井だ、なんてもう使い古してるし率直な感想を言ってもばちは当たらないと思う。長い、とても長い夢を見た。ホシノと一緒にライダーとなって、MHSTの世界を主人公として救う夢。…多分、この体の記憶だと思う。なんでホシノがいたのかわからないし、その前にもう一個夢を見た気がするけど、思い出せない。

 

「クックック、困惑しておいでですね」

 

「…黒服」

 

「おや、思っていたよりも敵意がないですね」

 

「…目の前でリンゴの皮剥かれてたら毒気も抜かれる」

 

「そうですか。クックック」

 

 マジで何で俺の病室にいるんだろう。いやこいつは別に自らの肉体でなんかしようというタイプじゃないからいいけどさ。

 

「何故私がここにいるか、という顔をしていますね。…実はベアトリーチェの件に関して謝罪と釈明を、と思いまして」

 

「お前からそんな言葉が出るとはな」

 

「いえ、元から私たちもベアトリーチェには手を焼いていましたので。二年前、レクトさんがビナーに敗れた時、蘇生が開始されたレクトさんの体を完全に殺そうとしたのが彼女です。私は貴重な研究対象が消されるのは嫌だったので、妨害には成功しましたが…妨害だけでした。私達ゲマトリアは個々で研究対象は違いますが、同じ組織なのも相まって完全に阻止するには至らず、レクトさんは2年間眠っていたというわけです。本当なら1ヶ月程度でレクトさんは目を覚ますはずでした」

 

「そうか…理由はともかく、結果的に生かしてくれたのは感謝する」

 

「そして、彼女にレクトさんが倒した雷神のごとき狼の素材を融通したのも私です。私の方では既に研究が終わったものでしたので。ですがまさか、こんなことにはなるとは思っていませんでしたよ。今のレクトさんの体には、本来あるはずの神秘も宿っているようですしね」

 

 申し訳なさそうにする姿勢は見せるも、依然としてこちらを研究対象としてみているのは間違いないようで、不敵な笑みを漏らす黒服。本来あるはずの神秘というのは、俺がこの体の記憶を思い出したことによるものだろう。うさぎさん型に向いたリンゴを差し出してきたので一つ食べる。…悔しいがうまい。

 

 リンゴを咀嚼しながら俺は患者服のポケットに手を突っ込み、あるアイテムを取り出し黒服に渡す。

 

「…これはなんでしょう?」

 

「けむり玉、と呼ばれるものだ。俺のいた世界では敵から確実に逃げられるものとして使われた。この世界でどこまで効くかわからないが、本当に、どうしてもやばくなった時の逃亡手段として渡しておく。5個渡すから一個くらいは研究に使っていい。ただし、この技術に関しては悪用するな」

 

「ほう、これは…。ありがとうございます。さて、私はここいらでお暇させていただきます。ほかにもあなたに会いたい方がいらっしゃるようなので」

 

「できれば、そのけむり玉の出番がないよう祈ってる」

 

 そうして、黒服はいつぞやのように黒いゲートに飲まれ去って行った。

 

 黒服が置いていったうさぎさん型のりんごをもう一つ口にしようとしたとき、病室の窓の前に一つの人影があった。

 

「人は生まれながらにして名を持つわけではありません。が、その例外のレクトさんにも、その名の由来がわかったようですね?」

 

「…慈愛の怪盗」

 

 少し驚きはしたが、まあこいつが出現するときなんてそんなもんだろうと思い、リンゴを構わず自分の口に放り込む。

 

「まあ、自分の過去が明瞭になったってのはそうさ。それでもやっぱりこの世界ではぽっと出だけどな。てかどうやってそのこと知ったんだ?」

 

「ふふ、企業秘密です」

 

 まあだろうな、と思いつつもどこまで俺の事知ってるんだろう…というこの現象がどこかデジャヴを感じる。どこだろう。

 

「…それにしても酷くやられましたね。あなたは私を心配する側なのに、心配をかけさせるような真似をしてどうするのですか」

 

「心配してくれたのか?」

 

「いえ、大丈夫だろうとは思っていましたよ。主に慌てていたのは…おっと。これ以上は彼女らの口から語るべきですね。ではレクトさん、また今度」

 

「あ、ああ。また今度」

 

 俺は七囚人と何で普通に会話してたんだろう…いや、まあいいか。七囚人っつっても先生の生徒の一人だしな。それに俺は警察じゃない。

 

 残数が少なくなってきたりんごをさらに口に運ぼうとすると、病室のドアが開かれた。…二人も病室に来てたのにドア空いたのが初めてってどういうことだよ。

 

「「”レクト!!”」」「「「レクトさん!!」」」

 

 んで、入ってきたのは先生と、補習授業部のみんなと…

 

「相棒!」

 

 ナビルー????




趣味全開で書いてはいる
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