【試走】ブルーアーカイブRTA 称号『特異現象消失』獲得 エイミチャート…?   作:和泉 元エイミ

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Part14/12

「何のためなのかよく分からないRTAのPart14、はーじまーるよー……はぁ……」

 

 こうして私がRTA紛いの何かを続けているのは何故だろう。

 償いか、惰性か、それとも『破壊しろ』の命令に中途半端に従っているだけなのだろうか。

 

 称号を獲得し終えたら、その次は?

 ……どうするんだろう。結局のところ、私には何も分からない。

 

「というかRTAするなら1人の方が圧倒的に速いなぁ。勝手気ままに動けるし誰も傷つけないし……」

 

 チャートにちゃーんと書いておきましょう

 ……なんてね

 

 

 

 

 とあるビルの屋上に立ち、遠くに見えるシャーレのオフィスを静かに眺める。街の灯りが夜空に輝き、数々の窓から漏れる光が穏やかに揺れていた。

 

 夜風が肌を優しく撫で、火照る体を冷やしてくれる。風に乗って車の音や人々の話し声が聞こえてくるが心に響くことはない。目の前に広がる都会の景色には無数の物語と可能性が詰まっているようで少しだけ羨ましかった。日常の喧騒の中でそれぞれの物語を生きている名もなき彼らはこの世界がゲームであることを知らない。全知でも知らない、私だけが知っている残酷な真実。

 

 この世界がただのゲームであるという冷徹な現実を知った時、意外にも私はあまりショックを受けなかった。むしろ、全てが妙に納得できるような気がした。

 “エイミ”の不可解な振る舞いや行動の全てが腑に落ちた。

 

 得られたのはそれだけじゃない。色彩の嚮導者として役目を引き継いでしまったのかは分からないが『メニュー画面』が見れるようになって手に入れた称号をいつでも確認できるようになった。

 

 称号『クーデター成功』

 条件:所属する学校の「生徒会長」を排除する

 

 称号『もう戻れない』

 条件:名簿に登録された生徒を2名殺害する

 

 たとえ元通りに修復しようが、やり直し(再走)しようが、私の記憶という記録媒体に保存された罪の証は決して消えない。鮮明に焼き付けられたあの光景はどんなに時間が経っても色褪せることなく私の心に重くのしかかる。RTA紛いのことをしているのは目を背け続けるためなのかもしれない。

 

 ……やめよう、こういうことを考えるのは。()()飲まれてしまいそうで怖いから。

 

 

 Keyが入ったGGAはシャーレにある。

 私はてっきりミレニアムにあるものだと思っていたけれどC&Cとゲーム開発部が数日前にシャーレに入ったまま出てこない。ということは本当にあの場所にあるのだろう。

 

 これから起こるイベントはチャートにも攻略Wikiにも載っていない未知の領域。私というイレギュラー(ガバ)が起こした不明なイベント。何が起こるかは分からない。だけど少しだけ、心が躍っていた。

 

 

 

 

 

 

 

「お疲れ様です」

 

 人の出入りが少なくなる時間を見計らい、その辺で買ったコートを身に纏って正面から堂々と入る。シャーレへ立ち入るための許可証は問題なく使えた。見慣れない人でも正規の手順を踏んで堂々としていれば、案外怪しまれないものである。

 そもそも、キヴォトス各地には星の数ほど学校が存在し、そこから多くの生徒がここへやってくる。見慣れない生徒が一人や二人いたところで、それは日常茶飯事だ。私はその雑多な流れに巧妙に紛れ込み、周囲の目を気にすることなく建物の中へと足を踏み入れた。

 

 悪い大人(ゲマトリア)の二人からの情報によるとGGAはこの先にあるらしい。コートの中で手汗を拭いながらも、心臓の鼓動を抑え、冷静さを保っているふりを続ける。その場の空気を読んで、身を隠しながら一歩一歩を慎重に進めていく。

 

「……知ってたならもっと早く教えてほしかったな。そしたらわざわざ宣戦の布告をする必要なんてなかったのに」

 

 

 

 

 

 “第二訓練場”

 シャーレ内部にある訓練場。市街地を再現した遮蔽物がいくつか用意されている施設だ。

 

「……バカにしてるの?」

 

 そこの中央に目立つように置かれていたのはカゴと棒とGGA。

 獲物が餌に気を取られてカゴの中に入って餌に夢中になっている間に素早く糸を引くとカゴが勢いよく地面に落ちて獲物を閉じ込めるアレだ。引っかかるのは鳩ぐらいだろう。

 

 ただ、油断はしない。相手は先生とミレニアムの全知だ。近づかずに狙撃して……

 

 

 

 

「いや、想定通りってことか。それはこっちもだけど」

 

 狙いを定めようとした瞬間を狙って後頭部に飛んできたライフルの弾を()()()()受け止める。

 

「……この感じ、カリン先輩か」

 

 続けて飛んでくる二発目をステップで巧みに避ける。が、軽く着地したその瞬間カチリと足元から不穏な音が響いた。

 

「爆弾……!!」

 

 爆発によるダメージはほとんどなかったが、濃密な爆煙が視界を完全に塞いでしまった。咳き込む間もなく、爆煙の中から私を取り押さえようとする人影が現れる。アスナ先輩だ。その動きは迅速で、鋭敏な感覚を駆使しまるで煙の中でも全てが見えているかのようだった。振り払おうとするも両腕は動かない。いつの間にかネル先輩から羽交い絞めにされていた。彼女の腕は鉄のように固く、逃れることは不可能だった。そのまま足をアスナ先輩にホールドされ動けなくなる。

 

「捕まえた!」

「今だ!」

 

 ネル先輩のその声に反応するかのように爆煙が晴れる。そこに居たのは……

 

「光よ!」

 

 

 

 

 

 

 訓練場で二度目の爆発が轟音と共に起こり周囲の空気が震えた。爆風が巻き起こり砂埃と煙が渦を巻いて視界を遮る。アリスの攻撃を正面からまともに受けて立っていられる生徒など通常ならば一人もいないだろう。

 

「やったか!」

「ちょっ、アリスそれフラグだよ!」

 

 通常ならば

 

「ぎゃっ!」

「クソッ……お前投げ技好きだなぁ!」

 

 煙の中からネルとアスナがゲーム開発部に向かって放り投げられる。 

 そこに変わらず立っていたのは例外中の例外。アリスの攻撃が直撃してもなお、微動だにせず立ち続けるエイミの姿があった。

 ある程度予想はしていたものの信じられない光景に、その場の生徒たちは息を呑みエイミの存在が次元を超えたものであることを感じ取る。訓練場の空気が一変し、緊張感が張り詰めた。

 

「大人しくするって選択肢はあるか?」

「ない」

「じゃあぶん殴ってでも大人しくさせねぇとなぁ!」

「……今度は途中で誰かが止めて引き分けなんてことにはなりませんよ。ネル先輩」

「そうか、安心しな。こっちもゲーム機壊して勝ち逃げなんてことさせねえから」

「アリスも、先生も、みんなも居ます!レイドバトルです!」

 

 ……いいなあ、楽しそうで

 

――

 

 攻撃手段が限られているとはいえ、それでも個の力では圧倒的にこっちの方が強い。それなのに

 

 

 

「リーダー!そっち行ったよ!」

「任せろ!」

 

 C&Cはチームワークでこちらの隙を的確に突いてくる。

 __私にもあんな風に頼れる仲間が欲しかった

 

 

 

「ぎゃっ!」

「ごめんユズ、カバーお願い」

『任せて!』

「アリス行きます!」

 

 ゲーム開発部はC&Cに負けず劣らずの連携でアリスの攻撃を確実に通してくる。 

 __私もあんな風に好きなことに夢中になってみたかった

 

 

 

「最近のウタハ先輩、かなり落ち込んでて見てるのがツラいから後でちゃんと仲直りしてください!」

「チヒロ先輩にしたことも許してないからちゃんと謝ってね!」

 

 エンジニア部の2人とヴェリタスによる妨害で思うように動けない。

 __私はあなたたちを傷付けたくはなかった

 

 

 

 攻撃を防ぎきれなくなってじわじわと押されている。「発熱」のリキャストを完全に見切られていた。

 ここまでの生徒を動かせて、正確な指揮ができて、それに応えてくれるぐらいに信頼されて……すごいなあ先生は

 __私もあんな風に優しく導いてほしかった

 

 

 

 

 

「羨ましいよ……みんなが」

「捕まえました」

 

 決着はついた。白い装甲を纏ったアビ・エシュフ(飛鳥馬トキ)に押さえつけられ、まったく動けない。

 

 その白い装甲は訓練場の明かりや炎を反射してキラキラと輝いていた。まるで神聖な光を放つかのようにどんな汚れも寄せ付けないその姿は全身だけでなくヘイローや心までが黒く煤け傷だらけになってしまった私とは対極的な存在であることを、嫌でも伝えてくる。

 

「……離して。また、燃やしちゃう前に」

 

「だったら好きにしなさい。その装甲はあなたが砂漠に忘れていったビナーの残骸と()()()から得たデータをもとに火力を計算、ビナーの装甲を拝借し強化することであなたがいくら燃やそうとしても燃えないように設計しているわ」

「私とリオの合作ですよ!……ユズが操縦したあのアバンギャルド君とかいうふざけたロボットもそうですが」

「ふざけてなどいないわ。それにあれはアバンギャルド君MK-IIよ」

「部長……リオ会長……それに先生……」

 

 決着がつき、外から指示や分析を行っていたであろうリオ会長とヒマリ部長と先生の3人が訓練場へと入ってきた。

 

「そもそも、今のエイミはみんなを燃やすような子じゃないって分かってたよ」

「そうですね。本当にKeyを破壊することだけが目的だったら前のエイミは容赦なく全員焼き払っていたでしょうから」

 

 

 なんで……

「どうしてまだ……迎え入れようとしてるの⁉︎」

 

 いつの間にか泣いていた。内側でしか流すことができなかった涙が今は堪えきれずに頬を伝って流れ落ちる。

 

「停学期間が終わってもなかなか登校しようとしない不良生徒を連れ戻そうとしてるだけよ」

「素直じゃないですねぇリオは、エイミもですけど」

 

「停学……?今更何言ってるの、そんなので済むわけないでしょ……だって、ウタハ先輩やチヒロ先輩、他のみんなにもひどいことしちゃったし、校舎もめちゃくちゃに壊しちゃったし……先生の奇跡(お助けシステム)で助かったとはいえリオ会長も、トキも……殺しちゃったし…………」

「エイミ!」

 

 ぺちん、と部長のビンタとも言えない何かが情けない音を立てて私の顔をかすかに揺らす。今日受けた攻撃の中で一番ショボかった。それでも、力の弱さとためらいが込められた一撃に逆に胸が締め付けられた。

 

「ちゃんとこっちを見てください!今なら見れるでしょう!?」

「…………っ」

 

 まっすぐ、部長の眼を見つめる

 

「ほら、あなたはもう自由なんですからしたいこととか言ってみなさい?」

「そんなことない、自由なんかじゃない、私は…………」

 

 私は……

 

「あら、さっきの戦いで楽しそうにしたのは見間違いでしたか?」

「違う……」

 

「それにエイミはずっとヒマリのことを部長って呼んでるよね。……本当は戻りたいんじゃないの?」

「…………それ、は」

 

 違う、ダメなんだ。

 

 

 

 

 

「大丈夫、今のエイミならこれからやり直せる……いや歩いていけるはずだよ」

 

 そっか

 

「…………たい」

「よく聞こえませんね、ほらもっとこっちに来て、優しくて素敵な部長に聞かせてみてください」

 

 部長が目配せをすると、トキは押さえつけていたアームをゆっくりと持ち上げて私を解放した。その瞬間、自由を取り戻した私は崩れ落ちそうになりながらも、部長の腕の中に引き寄せられた。部長の腕に優しく包まれると温かかった。

 

「…………つがしたい……」

 

 その温もりは、心の奥底にこびりついた不安や恐怖を一瞬で溶かすかのようだった。部長の胸に顔を埋めると、彼女の鼓動が優しく耳に響き、自然と再び涙が溢れてきた。安心感と共に、これまでの緊張が一気に解け、身体中の力が抜けていくのを感じた。

 

「部長と……一緒に部活がしたい……!!」

 

 一度壊れてしまった感情のダムから洪水にのように涙は止めどなく溢れてきた。これまで心の奥深くで抱え込んでいた悲しみや絶望が一気に押し寄せてくる。冷たい涙が頬を伝う感触に現実の温かさを嫌でも思い知らされた。心の中でだけ流していた涙が抑えきれずに外へと溢れ出し、その一滴一滴が私の抱えていた痛みや苦しみを物語っている。それを優しく部長は受け止めてくれた。

 

「C&Cみたいに頼れる仲間が欲しい!!ゲーム開発部みたいに毎日楽しく過ごしたい!!」

「うんうん、いいですねぇ」

 

「ヴェリタスとかエンジニア部とかリオ会長とか……みんなにちゃんと謝りたい!!仲良くしたい!!」

「私も手伝ってあげますから、ね?」

 

「シャーレの仕事もちゃんと手伝ってあげたい!!一緒にショッピングとか行きたい!!おいしいご飯食べに行ったり……カラオケ行ったり……」

「それじゃあ今度一緒に行きましょうか、良かったら他の人も誘って」

 

「あとは……あとは……!!」

 

 そのまましばらく、部長の胸の中で泣き続けていた。

 部長の手が背中を優しく撫でるたびに、その温かさと優しさが私の心に染み渡り、無言の慰めが伝わってきた。言葉にならない感情が溢れ、その温もりの中で私は初めて心からの安らぎを感じていた。

 

 

 

「……任務完了ね。C&Cは各々好きなタイミングで解散してもらって構わないわ。トキはデータを見るから一緒に来なさい」

「はい、皆さんお疲れさまでした」

 

「おう……なんか色々言いてーことがあったけど、後にすっか!」

「そうだね、皆も今日はありがとう。好きなタイミングで帰っていいよ。今は……二人きりにしてあげようか」

 

 リオ会長と先生の解散宣言で少しずつ、訓練場から人が消えていく。

 

「アリス知ってます!あれはトゥルーエンドってやつです!今度エイミもゲームに誘いましょう!きっと上手です!……あ、もちろんケイも一緒ですよ?」

『…………』

「そうだねー、今はなんか仲良くなれそうな人って感じが…………ケイ?」

「それってもしかして廃墟の時の……?」

「そ、そういえばアリスちゃんこっそりGGAいじってたよ、ね?」

「はい!アリスのお姉さんです!」

 

 

 

 

 

 

 

 訓練場から人がいなくなり二人きりになった。

 静寂の中、泣き疲れてようやく落ち着いた私は部長に優しく支えられながらシャワールームに連れて行かれた。シャワーの温かな水が全身を包み心の重荷も少しずつ洗い流されるように感じる。部長の手は驚くほど優しく、奇麗で、丁寧に私の体を洗ってくれた。その温もりと優しさに私はまた泣きそうになったが今度は涙が出なかった。シャワーで分からなかっただけかもしれない。

 

 洗いながら教えてくれたことだけど、ヒマリと先生の呼びかけでみんなは集まってくれたらしい。ウタハ先輩とチヒロ先輩と色々後始末に追われているセミナーは来なかったみたいだけど、それは仕方ない。後でちゃんと謝罪しに行く。唐突に言われても信じることができないようなヒマリの推理を話したのにこうして大勢集まってくれたのは人望のなせる業だ。

 ……ちなみに推理は結構惜しい、85点ぐらいだと思う。流石は全知だ。

 そう伝えたら調子に乗り始めたのでシャワーの水をぶっかけた。楽しかった。

 

 その日はそのままシャーレに泊まることにした。

 ベッドに一緒に横たわると、部長がさっきのお返しとか言って私に抱きついてきた。部長の体温が心地よく、安心感に包まれながら少しずつ眠りに落ちていった。同時にその温もりが少し暑苦しくもあったけど、その温かさが今の私には必要だった。部長の寝息が静かに聞こえる中、私はそのまま引きはがすことなく部長の腕の中で眠り続けた。

 こんなに安心して眠れるのは本当に久しぶりだった。

 

 

 ようやく、ようやく“私”は完全に解放された。

 

 

 称号獲得『信頼できるパートナー』

 条件:1人の好感度を90以上にする

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