転生してもスケルトンだった件   作:perusonazuki

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8話 オークロード

 ゴブリンたち全員が、牛鹿(うじか)の串焼きを食べようとする人間の姿に擬態したリムルを眺めて、緊迫を走らせる。リムルは今、初めて味覚を取り戻したのだ。もし仮に、ここで不味いものを食わせてしまっては、ゴブリンたちにとっても最悪の気分となるだろう。

 無言で肉を眺めるリムル。肉にはいい焼き色が付き、肉からは香ばしい匂いがあたりに漂う。

 リムルは肉の串焼きを手に取った。肉を歯で加え、串から外し、口内に放り込んだ。そしてゆっくりと咀嚼し、下で肉を転がして、ゆっくりと、丁寧に味わう。

 

「うっ!?」

「リ、リムル様......」

「お口に合いませんでしたか......?」

 

 顔を埋めるリムルの反応にどよめきが走り、ゴブリン達皆が冷や汗を浮かべ、問いかける。

 

「ううううう、うんっまあ~い!!!」

 

 リムルは見た目の年相応の笑みを浮かべて、嬉し気に告げた。

 そのことを理解したゴブリンたちは歓喜の叫びをあげ、乾杯の合図がわりに木で作ったジョッキをぶつけあう。

 そして、ジョッキに注ぎ込んでいた酒を飲み始め、宴会が始まった。

 リムルの隣の席にオイラも座り、酒をジョッキに注ぎ込む。

 

「へへ、久しぶりの肉は美味いか?」

「ああ! マジで美味い! 生きてるってこんなに素晴らしいんだな!」

「そいつはよかったぜ」

 

 リムルの皿に運んできた牛鹿のステーキを盛り、ジョッキにそそいだ酒を飲み込んだ。

 

   ◇◇◇

 

豚頭族(オーク)がお前さんたちの里に攻めてきたって?」

 

 気になることを話しているリグル・リグルド・カイジン・老人の大鬼族(オーガ)・赤髪の大鬼族(オーガ)の元に近道で移動し、問いかけた。

 豚頭族(オーク)は確か、Cランクに相当する魔物。単体でもBランクに位置する大鬼族(オーガ)とは、強さの桁が違う。格下の豚頭族(オーク)がわざわざ危険を冒して仕掛けること自体、無謀でありえない事だ。

 

「……事実だ」

 

 オイラの問いを受け、赤髪の大鬼族(オーガ)は真剣な顔で答える。

 

「奴らは来た。

 いきなり俺たちの里を襲撃してきた。火矢を放ち、俺たちの里を燃やして、武装をし、鎧を身に着け、森を埋め尽くすほどの圧倒的戦力。あの忌まわしい豚どもに、里は蹂躙しつくされたのだ」

「鎧?」

「ああ、人間の着用するようなフルプレートメイルだ」

「だとすれば、協力者がいるな。それが  

「ああ、軍勢の中に、()()()()()()()()がいた。あれは上位魔人だ。間違いない」

「で、お前さんはリムルに挑んだってことか」

 

 先ほどから話を聞いていたゴブタが疑問を浮かべ、問いかけた。

 

「つまり、どういうことっすか?」

 

 それにリグルが答える。

 

豚頭族(オーク)が、誰か()()()()()()()()()ということではないか?」

「なるほどっす?」

 

 魔王......もし、魔王が豚頭族(オーク)を配下にしたとしても、何故大鬼族(オーガ)を狙ったんだ? 正直、強い種族なら滅ぼすよりも配下にした方が良いと思うが......恨みでも買ったのか?

 

「じゃあ、その魔王に恨みを買うようなことをしたってことか?」

「分からぬ。ハッキリしているのは、300人いた同胞は、もうたった6人しかいないことだ」

 

「なるほどな~、そりゃ悔しいわけだ」

 

 話を聞いていたのか、リムルは腕を頭の後ろに組み、歩いてこちらにやってきた。

 

「肉は良いのか? リムル殿」

「ちょっと食休み、お前の妹すごいな」

 

 リムルは赤髪の大鬼族(オーガ)の背後にある木にもたれかかりながら、桃髪の大鬼族(オーガ)を見つめる。

 

「薬草や香草に詳しくて、あっという間にゴブリン達と仲良くなった」

「箱入りだったからな。頼られるのが嬉しいんだろう」

 

 そのほかの大鬼族(オーガ)たちも、紫髪の大鬼族(オーガ)はゴブリン達と共に舞を踊り、巨漢の大鬼族(オーガ)は他のゴブリン達と大食い対決を繰り広げ、とても楽しそうにゴブリン達との集団に馴染んでいる。

 リムルはそれらを眺めて、大鬼族(オーガ)に問いかけた。

 

「で、お前らこれからどうすんの?」

「どう、とは?」

 

「今後の方針だよ。再起を図るにせよ、ほかの地に移り住むにせよ、仲間の命運はお前の采配にかかってるんだろ?」

「知れたことを、力を蓄え再度挑むまで」

「お前達当てはあるのか?」

 

 リムルの言葉に、大鬼族(オーガ)は意識してなかったことを突かれたようで、無言で酒を飲む。

 見てわかる通り、ノープランのようだ。

 

「提案なんだけどさ、お前たち全員、俺たちの部下になる気はあるか?」

「は? 部下?」

「まあ、俺達が支払うのは衣食住の保障だけだ。拠点があった方がお前たちにとって都合がいいだろ?」

「しかし、この街を俺たちの復讐に巻き込むことに......」

「まあ、別にお前たちのためだけじゃない。数千、しかも武装した豚頭族(オーク)が攻めてきたんだろ? 誰か魔王が糸を引いているかもしれない」

豚頭族(オーク)どもは、このジュラの大森林の支配権を狙っているのやもしれませんな」

「うん。この町だって、決して安全とは言えないだろうな。

 てなわけで、戦力は多い方が俺達としても都合がいい。逆にお前たちに何かあった時は俺も一緒に戦う」

 

 赤髪の大鬼族(オーガ)は俯いた。そして、問いに対して保留の意思を返す。

 

「なるほど......少し考えさせてくれ......」

「おう、じっくり考えてくれ。

 さてと、俺は肉をもらってこようかな」

「オイラももらってくるか」

 


 

 赤髪の大鬼族(オーガ)は、薄暗い森の中を一人で歩んでいた。すると、蒼髪の大鬼族(オーガ)が木の影から話しかけた。

 

「悪い話ではない。だが、決めるのはお前だ。我らはお前と姫様に従う」

 

 蒼髪の大鬼族(オーガ)の言葉を後目に、赤髪の大鬼族(オーガ)はさらに奥へと進んでいく。

 そして立ち止まり、怒りを噛みしめながら、木に拳をぶつけた。その拳は、怒りを現すように、轟音を立てて木にめり込む。

 

「俺に、もっと力があれば......!」

 


 

 翌日。赤髪の大鬼族(オーガ)はリムルとオイラのテントの元にやって来ていた。

 

「決めたのか?」

大鬼族(オーガ)の一族は戦闘種族だ。人に使え、戦場をかけることに抵抗はない。主が強者なら、なおのこと喜んで仕えよう。

 契約は豚頭族(オーク)首魁(しゅかい)を打ち滅ぼすまででいいか?」

「そのあとは自由にしてもらって構わない。俺たちに協力して国を作るもよし、旅立つも良しだ」

 

 リムルの言葉を受け、赤髪の大鬼族(オーガ)は深呼吸をしてから、跪き、頭を下げた。

 

「昨夜の申し出、承りました。貴方様の配下に、加えさせていただきます」

 

 赤髪の大鬼族(オーガ)は、怒りを抑え、己の不甲斐なさを呑み、一族の頭として決断した。

 ......今すぐ刺し違えてでも殺したいだろう。オイラもその気持ちを痛いほど理解できる。

 

「顔を上げろ。お前さんたちを受け入れる。仲間たちを呼んでくれ」

 

 赤髪の大鬼族(オーガ)はそれに了承し、大鬼族(オーガ)の仲間たちを連れてきた。

 リムルはオイラの手を離れて人化し、ベットの上に立つ。

 

「俺の配下となった証に名をやろう」

 

 リムルの言葉に一同が驚愕し、赤髪の大鬼族(オーガ)が疑問をぶつけた。

 

「俺たち全員に?」

「名前はないと不便だからな」

「しかし......」

 

 桃髪の大鬼族(オーガ)が、リムルとオイラを制止する。

 

「お、お待ちください。名づけとは、本来大変な危険を伴うこと。それこそ高位の  

「大丈夫だ。それともなんだ? オイラ達に名前を付けられるのは嫌か?」

「そういうことでは......」

「異論などない。ありがたく頂戴する」

「若がそういうのであれば」

 

「じゃあ始めるか。お前は  

 

 その時、リムルの視界は暗転し、意識を失った。

 


 

 暗い視界の中、話し声が聞こえる。

 

「そろそろ、魔素を分け与えてやりたいんだが......」

「シオン、そろそろ交代の時間です」

「いいえ、姫様。リムル様のお世話は私がします。どうぞお休みなさってください」

「シオンったらもう......」

 

 やわらかく重い二つの球体が俺の体の上に乗っかていることを理解し、魔力感知を再開させ暗転した視界を回復した。すると、目の前にある肌色の二つの巨峰が目に入る。それが(おっ)π(ぱい)であることはすぐに理解でき、誰が話しているのかを確認した。

 

「あ、リ  

「「リムル様! おはようございます!」」

 

 確認した結果、俺の視界に移るのはサンズと角の生えた人物達。

 えっと、どちらさまでしたっけ?

 記憶が曖昧なんだけど......確か大鬼族(オーガ)達に名付けしようとしてて......あれ?

 

「お目覚めになられたかリムル様」

 

 テントの外からやってきた赤髪の人物が、俺に跪いていた。

 見た目からわかるが、一応確認する。

 

大鬼族(オーガ)の若様だよな?」

「はっ、今は進化して鬼人(鬼人)となり、頂戴した名の紅丸(ベニマル)を名乗っています」

 

 思い出した。サンズが名前考えられないからって全部俺に押し付けて、名づけした途端低位活動状態(スリープモード)になったんだ。

 てか何だって? 鬼人? 大鬼族(オーガ)じゃなくて?

『告・鬼人とは、大鬼族(オーガ)の中からまれに生まれる魔物のことです』

 

 鬼人とやらに進化したベニマルを観察する。

 肌の色が赤色から普通の人間となり、体格は一回り小さくなっている。しかし、内に秘めた魔素量がとんでもないくらい増えていた。それに加え、元からイケメンだったがさらに磨きがかかっている。

 これはあれか? リグルドショック*1の再来か!

 

桃髪の鬼人が、俺の体を撫でながら、しゃがんで俺に話し掛ける。

 

「リムル様、朱菜(シュナ)です。お目覚めに慣れれて本当に良かった」

 

 大鬼族(オーガ)のお姫様か。もともとかわいかったけど、さらにシュッとして美少女になったな。

 スライムの体を動かし、俺を抱えている人物を見上げる。

 

紫苑(シオン)です。リムル様に着けていただいた名前、とても気に入っております」

 

 この俺を抱きかかえている(おっ)π(ぱい)美人がシオンか......野性味が薄れて、知的な雰囲気になったな。

 遅れてやってきた老人の鬼人を見る。

 

「ベニマルの後ろに控えてるのは......」

白老(ハクロウ)だな。オイラも自信はあったが、体制を崩されるとは思はなかったぜ」

「ホッホ、こちらとしても奥義を防がれ、焦りましたぞ」

 

 鬼人への進化の影響で、まだ老人と言えるが随分若くなったようだ。背丈が少し伸び、目もキリっとしている。

 そして、いつの間にかベニマルの後ろに控えていた蒼髪の鬼人に話し掛けた。

 

「お前は確か......」

蒼影(ソウエイ)の名を賜りました。ご回復、お喜び申し上げます」

 

 あまり変化していないが、目元が柔らかくなったような? まあイケメンであることは変わりないな。

 

 というか、なんでたった六人の名づけなのに低位活動状態(スリープモード)になったんだ?

『解・上位の魔物に名づけをした場合、それに見合う魔素を消費します。今回の場合は個体名サンズのユニークスキル『決意者』により、少量ですが魔素を受け取ったため比較的早く回復しました』

 つまり、たった六人に俺の魔素のほとんどを持ってかれたのか......先に言ってほしかったよね。

 ん? 俺が目覚めた時サンズが魔素を分け与えてやりたいって言ってなかった?

『解・個体名サンズのユニークスキル『決意者』はサンズの意思とは独立して存在していると思われます』

 つまり俺の『大賢者』と同じってことか。ていうか…一人足りなくね?

 

 俺は大鬼族(オーガ)は六人組だったことを思い出し、サンズに確認した。

 

「あと一人はどうした?」

「クロベエはカイジンの工房に入り浸ってるみたいだぜ。まあ今こっちに来てるけどな」

 

 サンズの言葉通りに、テントの外から走る足音が鳴る。

 確か、目つきの悪い巨漢だったけど、どうなってるんだろう?

 

「リムル様が目覚めただべか! 元気になってよかっただよ。

 分かったな? オラ黒兵衛(クロベエ)だ」

 

 普通のオッサンになっていた。三十路を過ぎたぐらいだろうか、目元の堀も少し浅くなって普通のオッサンだ。

 

 イケメン(ベニマル)美少女(シュナ)美女(シオン)イケメン(ソウエイ)ロマンスグレー(ハクロウ)ときて、最後に普通のオッサン。

 とんでもなく親近感がわいて、ほっとする。

 

「仲よくしような! クロベエ♪」

「んだ!」

 


 

 場面は切り替わり、一方そのころ。ジュラの大森林に起った異変は、地響きを立てながら浸食を進めていた。

 

 ジュラの森の中央に広がる湖、シス胡。その周囲には湿地帯が広がっており、蜥蜴人族(リザードマン)達が支配する領域である。

 湖周辺には自然によって作られた洞窟が無数に存在する。そのうちの一つの洞窟、蜥蜴人族(リザードマン)の首領がいる洞窟にて、三人の蜥蜴人族(リザードマン)が、豚頭族(オーク)の襲来という報告を行った。

 

「戦の準備をせよ。豚如き蹴散らせてくれるわ」

「数はどのくらいなのだ?」

 

 首領の傍にいる蜥蜴人族(リザードマン)に確認され、三人の蜥蜴人族(リザードマン)は恐怖を纏った声色で告げる。

 

「それが、豚頭族(オーク)の軍勢……その数、およそ20万」

 

 告げられた情報に、その場にいた者全員が驚愕した。

 

「馬鹿な!? 我々の20倍もの軍勢だと?」

「魔力感知と熱源感知で何度も確認しました......この命にかけて真実であります!」

 

 首領は三人の蜥蜴人族(リザードマン)を下げさせ、思考に入る。

 豚頭族(オーク)は繁殖能力が高い。しかし、20万もの軍勢となると、指揮系統などに問題が生じ、そもそもが協調性自体が少なく、食料などの問題も発生する。

 しかし、それらすべてを覆すユニークモンスターが居る。

 その者の名は、

 

「オークロード」

 

 首領がつぶやいた名に、それまで騒然と話し続けていた蜥蜴人族(リザードマン)達が言葉を止める。

 

「20万もの軍勢をまとめ上げてるオークがいるのならば......

 伝説のユニークモンスター、オークロードの存在を疑わねばならない」

 

 オークロード。数百年に一度生まれるとされる、伝説の魔物。同種族である豚頭族(オーク)を統率、指揮できる。喰えるもの全てを喰らい、味方の恐怖という感情すらも喰らう正真正銘の化け物。

 仮定の話ではあるが、もし本当に誕生したのだとすれば、勝てる可能性は皆無に等しい。

 

「可能性の話だ。だが、打てる手は打たねばならない。援軍を頼むべきだな。

 息子よ! 我が息子はおるか?」

 

「ここにおりますよ。ですが、親父殿。その呼び方は無粋ではありませぬか? 吾輩にはがビルというゲルミュッド様からいただいた名前があるのですから」

 

 がビルという蜥蜴人族(リザードマン)は名前で呼ばないことに対して小言を言いながらも、狩猟の目の前に現れ、跪いた。

 

「呼び方などどうでもよかろう。

 お前にやってもらいたいことがある。それは、他種族への援軍の要請だ」

 

 その言葉に少しの間が空き、ガビルは答えた。

 

「......伺いましょう」

*1
進化した魔物の能力が大幅に変化・容姿が若返り、美しい顔を持つこと

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