転生してもスケルトンだった件   作:perusonazuki

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2話 ゴブリンと牙狼族

「で、どうするんだ?無限牢獄は?」

 

 オイラの言葉に、ヴェルドラは腕を組み発言した。

 

『脱出方法があるならありがたいが...実はな、あと100年も待たず我の魔素(エネルギー)は底をつくところだったのだ。魔素はもれ続けておるし...』

 

 ヴェルドラの言葉で先ほど手に入れた鉱石のことを思い出した。先ほど手に入れた魔鉱石は魔素濃度が高いところにしか見られない光る鉱石で、貴重なものらしいのだがヴェルドラが出している魔素によってこの洞窟には至る所に生成されていた。つまり、この洞窟はそれだけ魔素濃度が高いのだ。

 

*魔物は魔素から生まれる。そして、魔素から生まれる魔物の強さは生まれた場所の魔素濃度に依存する。そのため、ヴェルドラから漏れ出た魔素によって空気中の魔素が高濃度になっているこの洞窟は、常識で見たら化け物の巣窟といっていいほどの魔境だ*

 

 そ、そうか...

 決意者の急な説明に戸惑いながら、決意者からの情報を記憶する。そして、無限牢獄をどうするかを考え始めた。

 

〔魔力が底をつくとどうなる?〕

『朽ち果てるな』

 

 スライムはその言葉を聞いた時、悲しげな表情を浮かべた後、体の一部を伸ばして無限牢獄に触れる。その瞬間、スライムは体の一部を薄くして無限牢獄の一部にまとわりつく。

 しかし、スライムの体は光とともにはじかれた。

 

 スライムはその様子を見ると やっぱりだめかとつぶやき、(うつむ)いた。

 その直後、どうにかできないか?と誰かに話しかけるように独り言をつぶやく。そして数分がたった後、スライムが口を開いた。

 

〔無限牢獄の内側と外側から解析できれば、解除できるかもだってさ〕

『しかし、内側からといっても、我のスキルは我とともに封印されて使えぬぞ』

〔情報だけよこしてくれれば、解析はこっちでやるから〕

『だが、それには時間がかかろう。我は別に構わぬが...お前達はここにいていいのか?』

〔そうだな、俺もせっかくだから同郷のものを探したりしたい。

 それで提案だ〕

 

 スライムは提案といい、自身の思いついた策を話そうとする。ヴェルドラはその提案に興味を沸かし、提案の内容をちゃんと聞こうと、スライムに近寄った。

 

〔俺の胃袋に入らないか?〕

 

 あたりに沈黙が走った。

 

〔俺のスキル『大賢者(エイチアルモノ)』と『捕食者(クラウモノ)』で無限牢獄の解析を行い、内部からはヴェルドラが破壊を試みる。胃袋の中では隔離されるので、消滅する恐れもない。

 どうだ?〕

 

 その提案を聞いたヴェルドラは大きな高笑いを上げ、提案を飲み込んだ。

 

『クアハハハハ!!!それは面白い、ぜひやってくれ!お前達にわれの全てを委ねる!』

〔そんな簡単に信じていいのか?〕

『無論だ。ここでお前達が帰ってくるのを待つよりも三人で無限牢獄を破る方が面白そうだ!』

 

 ヴェルドラの了承を得たスライムは、即座に『捕食者』を使用しようとするが、ヴェルドラがやり残したことがあるといい、スライムを止めた。

 

『その前に、お前たちに名前を付けてやろう。同格ということを魂に刻むのだ、人間でいうところのファミリーネームみたいなものだが、我がお前に名づけるのは加護になる。お前達はまだ名無しだから、名持ちの魔物の仲間入りができるぞ』

「名持ちか...ヴェルドラ、オイラの名前はサンズにしてくれ」

『別にいいが、サンズだな?では、お前はスライムの名前を、スライムは我らの名字を考えてくれ』

 

 ヴェルドラの指示に従い、俺はスライムの名前を考える。スライムの方はもう決まったようで、オイラが決めるのを待っているみたいだ。

 

(スライムか...プルル...これじゃ締まらないな。プリム...これもなんか嫌だ。リムル...リムルか。

いいな)

 

「決まったぜ」

〔オッケー、じゃあ俺からな。

 ”テンペスト”なんてどうかな?〕

 

 その言葉に、ヴェルドラは雄たけびを上げた。

 

『何~!?テンペストだと?素晴らしい響きではないか!今日から我は「ヴェルドラ=テンペスト」だ~!

 そして、スケルトン。お前には『サンズ=テンペスト』という名を与える!』

 

 その瞬間、オイラの魂は奥底で何かが変化した。オイラの魂に「サンズ=テンペスト」の名が刻まれたからだ。その変化を感じながらもリムルに対して考えた名前を授ける。

 

「じゃあ、次はスライムの番だな。お前さんには「リムル=テンペスト」の名前を付けてやる」

 

 その言葉を告げた瞬間、リムルの体は全身が光り輝き数秒の間膨張と収縮を繰り返し、元の形状へと戻った。

 

〔じゃあ、今から食うけど、さっさと無限牢獄から出て来いよ!〕

『フフフ、任せておけ。そんなに待たせずにお前達と相まみえようぞ』

 

 その言葉を確認したスライムは『捕食者』を起動させ、無限牢獄に全身を伸ばして纏わりつきヴェルドラごと無限牢獄を食いつくしたのだった。

 さきほどまで圧倒的な存在感を放っていたヴェルドラは、あっけなく消えた。だが、本当に消えたわけではなくリムルの胃袋に入っているだけだ。

 しかし、天災級(カタストロフ)である竜種・ヴェルドラの消失。これは世界に多大な影響を与えた。ヴェルドラが消失した場所、封印の洞窟はジュラの大森林と呼ばれる森の中にあり、森の中はヴェルドラがいるからこそ、不可侵領域として数多の魔物たちが暮らしていた。だが、ヴェルドラが消えた今、不可侵はなくなり、魔物たちのバランスは崩れるのだ。

 しかし、オイラ達はすぐ先に知ることになるが、まだ知らなかった。

 

*魂の回廊を結んだ、リムル=テンペストから、胃袋の共有確認が来たようだ*

(共有は別にいいが、魂の回廊?)

*名づけなどによってつながった魂の道だ。名付け親が進化した際などに、名付けられた者に贈与(ギフト)が贈られたり、魂の回廊を通じて魔素を送ったりなど、繋がっていれば得なものだ*

 

 へえー、っと『決意者』の解説を聞いた後、リムルに了承を送った。

 

「いいぜ、胃袋を共有するか」

〔え?〕

「ん?」

 

 謎の間ができた後、リムルは天井を見てひとりごとをつぶやいた。

 そして、その直後。謎のツッコミを繰り出し、オイラに話しかけた。

 

〔そうだな、イエスだ!〕

 


 

 オイラ達は、洞窟を脱出しようと洞窟を歩き続けた。

 歩いている途中、魔物たちがオイラに襲い掛かってきたが、リムルが捕食してくれた。

 リムルは捕食という行為に何とも思っていないようだったが、オイラは自我がない殺すべき存在ということをわかっていても少しだけ心が痛む。この心の痛みも、あのニンゲン(アイツ)は最初は持っていたのだろうか。一度殺してしまったから、もう過ちを正すのではなく過ちを突き通す形で殺戮をしたのだろうか。しかし、アイツは途中で狂ってしまった。途中で楽しんでしまった。だが、俺はそうはいかない。絶対にアイツみたいにはならない。

 

 ところでなのだが、リムルはスキルを明かした。リムル曰く、スキルを知ってた方が共闘だったり、頼りやすいとのことだった。

 


 固有スキル:吸収 溶解 自己再生

 ユニークスキル:捕食者 大賢者

 エクストラスキル:魔力操作 水操作

 会得スキル:毒霧吐息 熱源感知 麻痺吐息 鋼糸 粘糸 超音波 身体装甲 

 耐性:痛覚無効 物理攻撃耐性 熱変動耐性 電流耐性 麻痺耐性


 

 リムルは俺の『偏食者』の実質的な上位互換である『捕食者』を持ち、解析能力の高い『大賢者』というスキルを持つ。そして、俺の代わりに魔物を倒してもらったおかげでどんどんとスキルを会得していった。

 それで、リムルは俺にスキルを教えてといわれ『決意者』のいったスキルを全て教えた。

 リムルの反応は微妙なもので、

 

「強い...けど、最後ので評価がひっくり返ったな...」

 

 という微妙な反応だった。そういえばなのだが、リムルは蝙蝠を食したことにより超音波のスキルを会得して普通にしゃべれるようになった。

 

 歩き続けて出口を探す。

 一か月ほどが過ぎたころ、大きな扉を発見した。

 

「これ...出口だよな?」

「ああ、だが...人間がいるからちょっと隠れようぜ。オイラ達は人間からしたら討伐対象だ」

「そうだな」

 

 扉が開かれ、3人の人間が洞窟に入ってきた。岩かげに隠れ、人間たちの様子を伺う。

 

「はあ、やっと開きやしたぜ。錆びついてしまって鍵穴もボロボロでやす」

「仕方ないさ。300年誰も中に入ったことがないんだろ?」

「いきなり襲われたりしないですよね...まあいざというときはエスケープ使いますけど...」

 

 金髪で杖を持った女、センター分けで剣を背中に携えた男、額にバンダナを巻いた男。Alphysが見ていたものに出てくる冒険者といったやつらだろうか。

 

「じゃあ、あっしの隠密技術(アーツ)を発動させやすよ」

 

 頭にバンダナを巻いた男性がそういい、手のひらをたたいた瞬間。透明となった。

 足跡が残るのみで姿は一切見えない。他の人間たちも透明となっている。

 足跡のつき方を確認し、こちらの姿が見えなくなったところで洞窟を脱出した。

 


 

 洞窟を出た。光、優しい光だ。

 いつ振りかもわからない、地上の光。

 

「久しぶりのシャバだ、空気がうまい」

「お前さん味覚あったか?」

 

 そんな会話をしながら道を歩いていると、10体以上のゴブリンの群れが盾や槍、金棒を持って俺たちの前に立ちふさがった。

 ゴブリン達の額には汗がにじんでおり、手は震えボロボロな武器を持って怯えている。

 

「強きもの達よ、この先に何か用事がおありですか?」

「強きもの...リムルのことか?」

 

 オイラの確認にゴブリンたちはうなずいた。

 その直後、リムルが突然大声で話し始める。

 

「え~っと!初めまして!俺はスライムの!リムルで!こっちはスケルトンの!サンズという...!」

「リムル、うるさいぞ」

「あなた様の力は十分に分かりました!どうか声を静めてください」

 

 ゴブリンたちはリムルに平伏し、両手を地面につけて頭を下げた。リムルは声に思念を載せて喋るようで、思念が強すぎたようだ。リムルは反省し、小声でゴブリンに問いかける。

 

「で、俺達になんか用?」

 

 ゴブリンたちは顔を上げて、頭に赤い布を巻いた一番前に立っているゴブリンが答える。

 

「強力な魔物の気配がしたので警戒に来た次第です」

「そんなもの...俺には感じられないけど?」

「そのようなお姿をされていても、我々は騙されませんぞ!」

 

 その言葉にリムルは少しうつむいたが、赤い布を頭に巻いたゴブリンが話し始めた。

 

「強きものよ、あなたを見込んでお願いがあるのですが...」

 

 その言葉を聞き入れたオイラ達はゴブリン達に案内されてゴブリンの村にたどり着いた。

 粗末な村で、屋根は俵であることに加え、中央にある家以外ほとんどテントといっていい。そして門はあるが周りに柵はない。

 そして、オイラ達は中央にある一回り大きな家の中に案内された。

 

 家の中で地面に座り老いぼれたゴブリンの話を聞く。家の中では、布が敷かれているだけで床と言えるものはなく、椅子はなかった。

 

「ようこそお客人...私はこの村の村長をさせていただいております」

「よろしくな、でリムルへのお願いはなんだ?」

 

 オイラの言葉に、隣に立っていた赤い布を頭に巻いたゴブリンと顔を見合わせうなずく。

 

「あなた様にも一緒にしていただきたいのです。実は最近魔物の動きが活発になっているのはご存じでしょうか?」

 

 その言葉に俺とリムルは首を横に振った。洞窟を出てからというもの、数分とはいえゴブリンを除くと魔物に出会っていないのだ。

 

「我らの神がひと月前にお姿をお隠しになられたのです。そのため、近隣の魔物がこの地にちょっかいをかけ始めまして…」

 

(確か竜種は神に等しいだなんだだいっていたな、神ってヴェルドラか?時期的にも合うな)

 

「我々も応戦したのですが、戦力的に厳しく...」

「それであなた様に!」

「力を貸してほしいと...しかし、自分スライムで、相方はスケルトンですので期待されているような働きはできないと思うのですが」

「ハハハ、ご謙遜を」

 

 リムルはゴブリンたちの言葉に疑問符を浮かべた。しかし、そんな様子を無視してゴブリンたちは話しかける。

 

「ただのスライムにそこまでの妖気(オーラ)は出せませぬよ、それに一切の妖気を出していないにしてもこれほどの妖気を受けて問題ないスケルトンはあり得ませぬよ。相当に名をはせる魔物なのでしょう」

 

 リムルは少しうつむき、正面を向きなおしたと思ったら汗のような粒を出し始めた。

 

〔サンズ、教えてよ!オーラだしたままだってさ、社会の窓を開いた状態で外出してた気分だよ!〕

 

 リムルは小声で話しかけてきた。

 

〔いやぁ、一切気にしてないし、大丈夫だと思ったんだが...ごめん〕

 

小声で話しているとリムルは吹っ切れたのか、ゴブリン達に話しかける。

 

「フフフ、さすがは村長。わかるか?」

「もちろんでございますとも。漂う風格までは隠せておりませぬ」

「そうおか、わかってしまったか。お前たちはなかなか見どころがあるようだな」

 

 リムルはそういうと、全身に力を入れ妖気を引っ込めた。

 

「おお、我々を試されていたのですね。そのオーラにおびえるものも多かったので助かります」

「そ、そうだな。怯えずに話しかけてくるとは、見どころがあるぞ」

 

〔何の見どころなんだ?〕

〔俺にもわかんねーよ!〕

 

「ありがとうございます。あっそれでお願いといますのは...」

 

 リムルの変な言動をイジっていると、村長さんにお願いを言われた。

 なんでも森の東の地から狼の魔物である牙狼(ガロウ)族が押し寄せてきて戦いとなり、数多ものゴブリンの戦士が討ち死にしたのだという。ゴブリンと牙狼族には大きな差があり、1匹の牙狼族に対して10体のゴブリンでかかっても勝てるかどうかほどの差だそうだ。

 討ち死にしたものの中には名持ちの守護者の立ち位置にいる戦士がいたのだという。そのため、村は危機に瀕しているらしい。

 そして、村で戦えるものの数は60体ほど。しかし、牙狼族は100匹程度いるらしい。

 つまり単純計算1000体のゴブリンでトントン。

 絶望的な状況だ。

 

「その名持ちのゴブリンの戦士は勝てないとわかっていて戦ったのか?」

「いえ、牙狼族の情報はその戦士が命がけで入手したものなのです。戦士は私の息子で、これの兄でした」

「すまない、悪いことを聞いてしまった」

 

 俺がそう言うと、リムルはこちらを覗いている小さなゴブリン達を見ていった。

 

「村長、一つ確認したい。俺達がこの村を助けるなら、見返りはなんだ。お前たちは俺達に何を差し出せる」

 

 リムルはその言葉をゴブリンたちに言い聞かせる。リムルの性格的に見返りなど求めていないだろう。

 

「わ、我々の忠誠をささげます!われらに守護をお与えください!さすれば我々はリムル様、サンズ様に忠誠を誓いましょう!」

「誓いましょう!」

 

 ゴブリンたちは座っている状態から地面に手を付け、頭を下げた。

 ゴブリンの行動を確認すると、狼の声があたりに響いた。

 村長たちが急いで外に出ると、遠くの岩の上で遠吠えをしている牙狼族がいた。その遠吠えにゴブリンたちはパニックに陥り、どうやって逃げ出そうとする。

 そんな中、オイラは声を上げた。

 

「怖がるな、これから倒すんだ」

 

 オイラの声でゴブリンたちは冷静さを取り戻し、リムルとオイラを見つめる。

 

「お前たちの願い、暴風竜ヴェルドラに変わりこのリムル=テンペストと」

「サンズ=テンペストが聞き届けるぜ」

 

 その言葉にゴブリンたちは目頭に涙を浮かべ、平伏する。

 

「ありがとうございます、我々はリムル様、サンズ様の忠実なるしもべでございます」

 

 こうしてリムルとオイラはゴブリンたちの守護者となり、牙狼族の襲撃へと備えることになった。

 オイラはリムルを抱え、ゴブリン達の装備を確認して小声で相談する。

 

〔戦力としてはオイラ達だけでいいな〕

〔ああ、武器はボロボロだし装備も来てない〕

 

 ちょっとした重圧を感じながらもゴブリンたちに問いかける。

 

「お前ら、状況はわかってるな」

 

「生きるか死ぬかの戦いになると覚悟はできております!」

 

「なら、気楽にな。最善を考えろ」

 

 オイラの言葉にゴブリン達が声をおおと挙げた。

 ゴブリン達の意気込み確認を終えた後、負傷者の元へと案内してもらう。

 

 リムルを抱えてテントの中に案内され、のれんをくぐる。

 負傷者は藁のベッドで寝かされ、包帯を巻かれていた。

 負傷者たちは胴体や顔、足に切り裂かれた跡があり、その傷跡は深い。

 

 リムルはそれを確認すると、一匹のゴブリンを胃袋に取り込んだ。

 そして次の瞬間、ペッと吐き出した。

 

「あれ、傷が...治ってる!」

 

 リムルによると、洞窟で取り込んでいた薬草の効果を抽出した液体を胃袋でぶっかけ、治療したらしい。

 次々とゴブリンを取り込み、治療して吐き出す。

 リムルにより怪我人は全員治療された。

 

「けが人はこれで全部だな。じゃあ、柵を作る!村の防備を固めるぞ!」

 


 

 美しい黄金の満月が姿をのぞかせる夜。数多もの牙狼族が集結し、右目に傷を持つリーダーと思わしき牙狼族が岩の上に立ち、宣言する。

 

「いい夜だ。この森からヴェルドラの加護は失われた。恐れるものはもういない。今夜あのゴブリンの村を滅ぼし、このジュラの森への足掛かりを作ろうぞ!

 我らはこの森の支配者となるのだ!」

 

 その宣言とともに、牙狼族は遠吠えを上げる。

 

「我らの爪はいかなる魔物も引きさし、牙はいかなる魔物も食い破る!」

 

 その言葉とともに牙狼族は行進を始めた。そして気づく、ゴブリンたちの村の周りに骨の柵ができていることに。

 

「フン!あのようなただの骨の柵...何の役に立つ」

 

 リーダー格と思わしき牙狼族がつぶやくと、首元の体毛が白く、額に紺色で星形の毛を持つ牙狼族があることに気づき、情報を伝達する。

 ゴブリンの村の門の前に、スケルトンが立っていた。

 

「お前達、最悪な目にあいたいか?そこから一歩でもこちらに近寄るなら後悔することになるぜ」

 

 オイラの警告を無視しリーダー格の牙狼族は命令した。

 

「こざかしい!スケルトン如きが我ら牙狼に指図するな。あの柵をなぎ倒せ!ゴブリンどもを血祭りにあげろ!」

 

 複数の牙狼族たちが突撃する。しかし、途中で血を吹き出し倒れた。

 ゴブリンたちが弓を放っているが、弓程度で牙狼族は止まらない。原因を探していると牙狼族のリーダーは気づいた。

 

「糸...!」

 

 その呟きにリムルが答える。

 

「スキル『鋼糸(こうし)』だ」

「貴様の仕業か、スライム!」

「そうだ!」

「矮小なる魔物の分際で...まずは貴様からひねりつぶしてやる!」

 

 牙狼族のリーダーはそう叫び、糸を噛みちぎってリムルにとびかかった。

 

 瞬間、牙狼族のリーダーの真下に骨が生える。そして、そのことに困惑するのもつかの間、とびかかっていたはずの牙狼族のリーダーは地面にたたきつけられ骨に貫かれて死亡した。

 

「...俺の力だ」

 

 その様子に牙狼族は驚愕を現す。そして牙狼族のリーダーを貫いた骨を消した。そして、牙狼族のリーダーの遺体をリムルが取り込む。

 

「聞け、牙狼族。お前たちのリーダーは死んだ。

 選べ、服従か死か。死を選んだ場合は痛みを感じないようにしてやる」

 

—確認しました、条件の達成・・・エクストラスキル『威圧』『思念伝達』を会得しました—

 

 オイラがそう告げた。オイラの威圧感(プレッシャー)により、ゴブリンたちはしりもちをついている。

 しかし、牙狼族はこちらにじりじりと迫りくる。

 

 そして、距離が2メートルほどとなった時。

 クウンと鳴き声を上げた跪いた。

 

「「「我ら一同、あなた様に従います!」」」

 

 逃げると思っていたため少し想定外だった。

 

「勝ったのですか?」

「そうみたいだな、争う必要がなくなったのはいいことだ。

 うんうん、平和が一番」

 

 これにて、牙狼族とゴブリン達の争いは終わった。

 


 

 翌日。

 牙狼族とゴブリンを村の広間に集結させた。

 先の戦いでゴブリンと牙狼族の数は同じぐらいになったようだ。そのことをリムルに教えると、リムルが話し始める。

 

「はい、聞いて下さ~い」

 

 リムルのその言葉で牙狼族とゴブリン達の視線が集まる。

 

「これから君たちにはペアになって一緒に過ごしてもらうことになりま~す!」

 

 その言葉を確認した皆は二人一組を作り、次の言葉を待つ。

 

「よし、昨日の敵は今日の友。これからはお互いに力を合わせて仲良くするんだぞ。いいな?」

「「「はい!」」」

「互いに互いを助けてうまくやるように、それでこれから大切なのは衣・食・住です。食べ物を探し、家を作ったり村の守りを固めたりするためのチームを作ろうと思う。え~まずは…」

 

〔サンズ、この赤い布を頭に巻いたゴブリンの名前って何だっけ?〕

〔あ~知らないな、聞いてない〕

 

「お前さん達、名前はあるのか?」

「普通の魔物は名前を持ちません。名前がなくとも意思の疎通はできますからな。」

「へえ~。じゃあ、あった方が良いしお前さんたちに名前を付けようと思うがいいか?」

 

 オイラの言葉にどよめきが走り、村長が確認した。

 

「な、名前ッ...よろしいのですか!?」

「あ...ああ」

 

 オイラの言葉にゴブリンたちと牙狼族は歓喜を現し大興奮して全身でその感情を表現した。

 

(なんで名前を付けるぐらいでそんなに興奮してるんだ?)

 

「じゃあ、オイラとリムルで二列に分かれてくれ。順々に名前を付けていく」

 

 その言葉に大歓喜し全員がニコニコとし、牙狼族は尻尾を振る。

 

「赤い布を頭に巻いたお前さんからだな。

 お前さんは兄の名であるリグルを継げ」

 

 リグルはオイラの言葉に歓喜し、平伏して感謝の言葉を叫ぶ。

 

「ありがとうございます!」

 

(なんだ?このリアクション...)

 

「お前はゴブタ」

「お前さんは...ゴブチだ」

「お前はゴブチ」

「ゴブテ」

「お前さんはゴブゾウ」

「お前さん」

 

(名前が思いつかない...ネーミングセンスがないからリムルがうらやましいぜ)

 

 そんなことを考えていると、リムルによってリグルドの名を与えられた村長とリグルが聞きに来た。

 

「あの~、名前を付けていただくのは大変ありがたいのですが。リムル様、そしてサンズ様の魔力が強大なのは存じておりますが...そのように一度に名を与えられると大丈夫なのですか?」

「「まあ、問題ないだろう」」

「それならばよいのですが」

 

 ゴブリン達の反応が気になり、疑問を『決意者』に投げかける。

*なんだ?*

(名づけによってどういった現象が生じる?)

*名づけとは力ある魔物が格下の魔物に名前を付ける行為。名持ちの魔物はネームドと呼ばれ、名づけをできるほど強い存在と縁があると解釈され魔物として一目置かれるようになり『進化』を果たすことも多い。

 名を与えられた魔物と名付け親の間には『魂の回廊』という繋がりが結ばれる。魂がつながったものの体験と記憶は時空間を無視して親である存在に蓄積される。魂の回廊によって形成された関係を総じて『魂の系譜』と呼ぶ。

 メリットとして、名付けられた魔物は進化する場合が多く戦力として使えるようになる。そして『魂の回廊』がつながれ『魂の系譜』に連なれるようになる。

 デメリットとしては名付け親が名付ける魔物の強さにも比例するが大量に魔素を消費する。

 サンズの場合は『堕落者』と『勤勉者』の魔素増加効果・リムルの場合はヴェルドラという魔素の塊がいるから特にデメリットはないが、ここで消費した魔素は回復しないことがある。

 魔素は世界の理・法則に干渉できるエネルギー物質で魔物にとっては生命力の元、つまり名付けは自身の弱体化を招く*

 

 『決意者』の説明を受け、整理する。

 なるほどな。じゃあオイラ達は心配することは無いか

*その通りだ。まあ、リムルはヴェルドラの魔素を奪う必要があるからヴェルドラは激痛を感じるだろう*

…ヴェルドラ、ごめん

 

 魔素を搾取されるだけされ、その搾取には痛みが伴うヴェルドラに謝罪した。しかし、今更名づけを止めたところで差別になるだけだ。

 

 『決意者』の解説を聞き、気を取り直して名づけを始めた。

 ゴブリンの名づけは終了し、次は牙狼族への名づけとなった。

 

 オイラが名前を考えているとリムルは考え終わったみたいだ。

 

「よし、お前は嵐牙(ランガ)!」

「ランガ…」

 

 リムルが名前を付けると、急にリムルの体が溶け、液体になり始めた。

 

「リムル!」「リムル様!」

 

 リムルのすぐ横に近道で瞬間移動し、リムルの状態を解析する。

 

*低位活動状態(スリープモード)だ。

 魔素を消費しすぎた。人間でいう眠った状態だ。魔素残量から推測して三日後に目覚めるだろう*

 

「大丈夫だ。リムルは問題ない、三日後に目覚める」

 

 オイラの言葉で安心したのか、冷静になりすぐにリムルを村長の家に運んだ。

 


 

 その日の夜。

 牙狼族はランガが名付けられたのだが、種族共有の名前となったらしい。本人たち曰く嵐牙狼(テンペストウルフ)になったという。

 暇だと感じつつ、リムルを眺めてぼーっとしていると...リグルドの体が突然光り始めた。

 

「これが...進化の瞬間ってやつか」

 

 Alphysがやっていたポケモンというゲームでモンスターが進化するときのように白く光っている。

 そして5秒ほどが経過した時、リグルドはよぼよぼの老人の姿から筋肉が多く、体格のよいマッチョになった。

 

「だいぶ変わるな...」

「名持ちになること、それは進化を呼ぶのです!」

 

 家の外に出て周囲を見ると、ゴブリンたちみんなも進化して身長が高くなっていた。

 一部変わらない姿のものも居るが、テンペストウルフ達も種族名だけでなくちゃんと新たな種族として進化したみたいだ。

 

「へへ、こりゃリムルは驚くな」

 

*オスのゴブリンは ホブゴブリン 雌のゴブリンは ゴブリナ に進化した。

 牙狼族は 嵐牙狼族(テンペストウルフ) へと進化した*




 名前:サンズ=テンペスト
 EP:205690

 種族:骨性生物   スケルトン   

 加護:暴風の紋章

 称号:無し
 魔法:無し

 固有スキル:属性付与 魔力感知 空間感知 分子操作 重力操作 時空間認識
 ユニークスキル:審判者 決意者 近道 堕落者 勤勉者 偏食者 最弱
 エクストラスキル:思念伝達 威圧

 耐性:状態異常無効 改変無効 精神攻撃耐性
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