転生してもスケルトンだった件   作:perusonazuki

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6話 受け継がれる思い

 イフリートは驚愕していた。Fランク程度の妖気(オーラ)しか持たない魔物が、己の召喚したサラマンダーの自爆を最小限の被害に抑えたことに加え、

 

「お前がイフリートか? いや、そうだろうな」

 

 左眼から蒼炎を放つスケルトンの異様な威圧感(プレッシャー)。見たところの魔素量は己よりも圧倒的に低いはずのスケルトンに恐怖を感じたことに。

 

『ッガゥァアア』

 

 イフリートは無数の火球を投げつける。しかし、すべての火球は呆気なく躱された。

 直後、オレンジ色の骨がイフリートの右手を通過した。自身の知覚能力を超える速度での攻撃。しかし、その攻撃が自身にダメージを与えなかったことに対し、イフリートは疑問を起こし、動きを止めた。その瞬間、透過していたオレンジの骨は己を貫き、右手を飛ばした。

 

『ギャァア!?』

「オレンジ色は動かないとだめだぜ?」

 

 スケルトンはニヒルな笑みを浮かべ、追撃を始める。スケルトンが地面に指を指した瞬間、イフリートは地面に落下する。炎の上位精霊であるイフリートにとって、飛行は苦もないことだった。

 しかし、現在は跳躍することさえできない。炎の噴出で空を飛ぼうにも、強力な重力によって地面にたたきつけられる。

 

「地面にたたきつけられるのは初めてか?」

『ッぐウウ...!!!』

 

 イフリートは、分身体を20体生み出し、四体の分身と己の拳でスケルトンに殴りかかり、残りの分身が無数の火球を放つ。

 だが、スケルトンは瞬間移動し回避した。そして巨大な竜の頭蓋骨を出現させ、蒼白き光線を放った。

 

「ガスターブラスター」

 

 イフリートは範囲結界を発動させ、極大と言えるほどの蒼白き閃光を防御しようとする。だがしかし、範囲結界はあっけなく破られてしまい、分身体の全てが消滅した。イフリート本体は分身体の消滅するさまを目測し即座に回避行動をとる。だが少し遅れ、左腕を失ってしまった。

 

『ガアアアアア!!!!!!』

 

 イフリートは己の力の全てを振り絞り、雄たけびと共に最終奥義である炎化爆獄陣(フレアサークル)をスケルトンに放つ。

 直径100mにも及ぶ超高熱の爆炎。自身をも炎に変え、地獄の業火ともいえる爆炎を発動させる。その爆炎は、天にも届くほどの炎の渦を生み出し、辺り一帯を昼のように照らした。

 

「サンズ!!!!!」

 

 スライムの叫びとともに、イフリートは勝利を確信した。しかし、数秒後、イフリートは全身を無数の青い骨で貫かれた。先ほどのオレンジ色の骨と同様と思考し、即座に動き出そうとするが、スケルトンがそれを忠告する。

 

「動くな」

 

 しかし、イフリートはスケルトンの言葉を無視し、体を動かす。だがその瞬間、自身を貫いていた無数の骨が右腕以外が消えた。直後、イフリートは右腕を失い、痛みによる絶叫を上げる。しかし、その絶叫も、全身を貫いた青い骨によって強制的に止められた。

 

「言っただろ? 動くなって。青色は止まるんだ。

 お前、視たところシズと同化してるんだろ? そこで、俺は考えたんだ」

 

 スケルトンは瞬間移動を利用し、スライムを抱えてイフリートの前に立ちふさがる。

 

「サンズ、ビックリするから瞬間移動するなら事前に言ってくれ...!」

「すまんな。で、お前さんなら俺が何をさせようとしてるかわかるんじゃないか?」

「まあわかるけど」

 

 スライムはスケルトンの手を離れると、イフリートの目の前に歩み寄る。

 

「『捕食者』!」

 

 スライムは全身を膨張させ、イフリートを貫いていた青い骨ごとイフリートという呪いを飲み込んだ。

 辺り一帯を埋め尽くしていた爆炎は、魔法の術者が消滅したため、霧散した。

 

 

 

 仮設テントのほとんどが消し炭にされたため、新たに仮設テントを建設し、衰弱したシズをテント内のベットで寝かせる。

 先ほどリムルが食ったのは、イフリートのみでありシズは食らっていなかったのだ。だが、シズは召喚者であり、精霊の力(イフリート)なしでは生きられない。そのため、シズに残されている時間はもうほとんどないといっていいだろう。

 

「ありがとう。私はまた、大切な人を殺してしまうところだった... この手で。

 ねえ、聞いてくれるかな?」

「あまり喋らないほうが...」

「私って人がいたことを、覚えていてほしい」

 

 シズは意識を朦朧とさせながらも、これまでの人生を語った。

 


 

 空を飛ぶプロペラの音。落ちてくる爆弾。人の悲鳴、街を埋め尽くす炎。

 そんな中、私はお母さんに手を引かれ、防空壕に向かって走る。

 しかし、壁が焼け落ち、お母さんをつぶした。

 

「お母さん!」

 

 お母さんを失って、パニックになった私は炎を渦に飲み込まれた。全身に火傷を負い、この世界にやってきた。

 目が覚めた時には無機質な城の中にいて、目の前に()()がいた。

 その魔王は金髪碧眼で、女性と見間違うほどに美しかった。

 

「また失敗だ」

 

「たっ、たすけて...」

 

 私は藁にも縋る思いで、その魔王に助けを求めた。しかし、無情にも魔王は私を失敗と評し、その場を去ろうとした。しかし、魔王はあることに気づき、足を止めて振り返る。

 

「ゴミかと思ったが、これは炎への適性がありそうだ」

 

 魔王は炎の巨人(イフリート)を召喚し、無造作にイフリートに対する命令を述べた。

 

「イフリート、お前に肉体を授けよう。使いこなせ」

 

 その命令通りに、イフリートは私の体へ憑依した。その影響なのか、全身を支配していた燃え盛る痛みは亡くなり、辺りを静寂が埋め尽くす。

 魔王の瞳を見た。鋭く、冷酷な眼光。それでいてとても美しい。

 そして、魔王の目の前に一枚の緑色の羽が漂う。そして、その羽が地面にたどり着くと、暴風の渦が巻き起こった。

 暴風の渦から現れたのは、全身を緑の羽根で覆い、左肩から左腕と右腕に金属の装甲を纏った、右手に槍を持つ、嘴を生やした怪物だった。

 

「魔人ケーニッヒ様が挨拶に着てやったぜ!

 レオン!貴様を倒して、俺様が魔王になる。安心して死ね!」

 

 魔王はケーニッヒと名乗る怪物の挑発を物ともせず、冷静に判断する。

 

「小物か...誰の差し金やら。だがちょうどいい、出番だぞ。イフリート」

 

 私は怪物の命を狩り取れという命令に対し、困惑した。動物を殺したことすらもないのに加え、人の言葉を喋る者を殺すなんて、到底できなかった。

 

「どうした?」

 

 魔王の冷酷な疑問。私が動かずにいると、呆れたのか魔王は召喚者にかける呪いを使う。

 呪いの影響により、私は体を無理やり動かされる。

 

「なめやがって!俺様を無視するとは!!!」

 

 私は怪物に向かって歩かされる。

 

「先に死にたいのか?いいだろう、死にやがれ!」

 

 怪物は無数の緑の羽を放つが、イフリートの火焔の放射により、羽はすべて燃やし尽くされ、怪物の肉体を焼き始める。

 怪物は悲鳴を出すことすら許されず、即座に燃やし尽くされ、そこには何も残らなかった。

 

「フフ、これは面白い」

 

 魔王は利用価値を見出したのか、私に名前を問いかける。

 

「お前の名前は、何だったかな?」

「...シズ…エ…」

「シズエ…今日よりシズと名乗るがいい」

 

 魔王に名づけられ、その日から私はシズとして生きることになった。

 そして年月が流れて、私はピリノという少女と出会った。彼女は親とはぐれたキツネ型の小さな魔物をなでていた。

 魔物は討伐されるべき存在で、ペットにするのは本来いけないことで、使い魔としてちゃんとした認定を受けなければならなかった。だけど、私は誰にも言わずに、一緒にお世話をした。

 

「ねえ、この子の名前は?」

「魔物に名前はないんだよ」

「名前が無いのはかわいそうだよ」

 

 腕に抱えた狐の魔物も、それに呼応するかのように欠伸をした。

 

「ほら、この子もそういってる! ピズってどうかな?」

「ピズ...いいかも! ね...ピズ!」

 

 ピズと名付けた瞬間、ピズの体は光を放ち、一回り大きくなった。

 そして、数ヶ月の間、私はピリノとともにピズをお世話した。そして、ピリノは使い魔の認定を受けようと、魔王の城に赴く。

 ピズは、圧倒的な強者であるレオンの前で、唸りを上げる。それを必死にピリノは抑えていたけど、レオンが呪いの力を使った。

 最初から不安だったけど、その不安が実ってしまった。

 

「アアァアァァアア!!!」

 

 ピリノとピズは、イフリートの力によって、燃やし尽くされて消えてしまった。

 それまで抱えていた魔王への期待ともいえる感情は、強い憎悪へと変化を遂げて、ほとんどの感情は抱けなくなってしまった。

 それから年月が立ち、戦いが起きて魔王は城を捨てた。魔王は私を殿(しんがり)として城に残した。

 

 そんな時に、勇者が現れた。仮面を身に着け、素顔を隠した勇者が私の元に現れた。

 炎の精霊であるイフリートの意思なのか、それとも私の意思なのか、今でもよくわからないけど、その勇者に向かって私は攻撃した。

 私の攻撃は、全て防がれた。圧倒的な実力差。私は、すぐに殺されると思った。けど、勇者は話しかけてきた。

 どうしてここにいるのか、どうやって生きてきたのか。魔人と言っていい私の話を信じてくれて、もう大丈夫だよと優しく慰めてくれた。私は勇者に保護されて、感情を取り戻した。

 


 

「その仮面は、彼女がくれたんだ。魔法抵抗を高めて、私の中にいるイフリートを抑え込めるって」

 

 シズは仮面に手を伸ばそうとするが、リムルは体を伸ばし、仮面を手に取ってシズの胸元に置いた。

 

「彼女とともに旅をして、この世界のことや魔法を教わって、仮面の力でイフリートの力もある程度なら使えるようになって、誰かを助けて戦って...」

「それで爆炎の支配者になったってことか。たしかに、綺麗な剣捌きで繊細な炎の操作だったぜ」

「彼女と一緒に旅をして、うれしくて、幸せだったな...でも、あの人は姿を消した。私を残して」

「どうして?」

「わからない。どうしてだろう? どうして...「きっと、また会えるから」あの人はそう言っていた。

 私は強くなろうと決心した。苦しんでいる人を助けたいって、結構、頑張ったんだ。何十年もだよ、偉いと思わない?

 

 英雄って呼ばれるようになって、だけど、私ももう若くなくて、イフリートの制御も怪しくなってきて、一歩間違えたらイフリートを解き放つかもしれない。そう考えると怖くなって、このままじゃ、また大切な人を...

 だから、私は引退して指導者になった」

「指導者?」

「学校の先生、イングラシア王国ってところでね。異世界から来た子たちの…」

「たちってことは結構いるんだな、別の世界からこっちの世界に来た人間が」

「スライムさんが言ってたゲームのセリフを教えてくれたのも、そのうちの一人だよ。

 楽しかったな...平和な日々だった。私のもとを去っていった子もいたけど、でもグランドマスターになった子もいて」

「グランドマスター?」

「各国のギルドを統括する最高責任者」

「大したものじゃないか」

「ええ、大したもの。私が教えられることはもうなくなったと思った。そして寿命が残り少ないのか、イフリートの意識を抑え込めなくなってきて...

 思い出したことが一つだけあったから旅に出ようって」

「思い出したこと?」

「私を召喚した男、捜して」

「復讐か?」

「わからないわ。でも、あって確かめたいことがあったの。だから私は」

 

 シズはカバル達のギルドマスターへの愚痴大会、冒険を思い返す。

 

「本当にいい子たち、ちょっと危なっかしいけど」

「「そうだな」」

 

 シズの言葉に、俺とリムルは同意する。

 

「楽しかった。でも、もう…

 ねえ、スライムさんとスケルトンさん。本当の名前はなんていうの?」

 

 シズの問いかけ。それに俺とリムルは答えた。

 

「俺は悟。三上悟」

「オイラはW.D.(ウィングディングス)Sans(サンズ)。名前は変わらないな」

「私は静江。井沢静江」

「静江さん、もう眠った方が良い」

「悟さん、お願いがあるんだけど、聞いてくれる?

 

 リムルはそれに了承し、静江の言葉を聞く。

 

「私を食べて」

 

 リムルは驚愕した。

 

「私にかけられた、呪いを食べてくれたみたいに。

 うれしかった。

 この世界が嫌い。でも、憎めない。まるで、魔王(あの男)のよう。だから、だから、この世界に取り込まれたくない。

 最後の、お願い。私を、君の中で眠らせてくれないかな」

 

 静江はリムルに手を当て、懇願する。その懇願にリムルは答えた。

 

「いいよ」

 

 優しい言葉に、静江は涙を流し、手を仮面の上に置く。

 

「そいつの名前は?」

「レオン・クロムウェル。最強の魔王の一人」

「そいつに何を確かめたかったんだ?」

「私という人間がいたことを、認めさせたいだけかも...しれない。それに、もし、あの子たちが救われ、元の、世界...

 

 静江の声は、どんどんと小さくなっていく。

 リムルは、体を伸ばし、静江の手に乗せる。

 

「約束しよう!三上悟!いや、リムルテンペストの名において、魔王レオン・クロムウェルに貴女の思いをぶつけてやるよ!」

「あ  とぅ」

 

「シズさん...運命の人よ、俺の中で安らかに眠れ」

 

『ユニークスキル『捕食者』を使用しますか?』

 

 リムルから響く、大賢者の声。それにリムルは、

 

「YES」

 

 承諾し、永遠に冷めることのない幸せな夢を見られるよう、シズの体を薄い膜のように包み込んだ。

 


 

 シズは暖かな世界の中で、ピリノと勇者を見つけた。

 

「そこにいたんですね! もう私を置いていかないで!」

 

 シズは走り、ピリノと勇者に近づこうとする。しかし、勇者は右に指を指し、崩れ去って消えてしまった。

 勇者が刺した指の方向に歩く。するとそこには、転生する前の世界の家。

 家の中にはお母さんが座っていた。

 

「お母さん!」

 

 シズは子供になって、お母さんに抱き着き、泣きじゃくった。


 

 復興する村の中で、カバル達は見舞いのために花を集め、シズのいる仮設テントに向かう。

 

「シズさん。大丈夫かな?」

「心配いらねえって、リムルの旦那がついてるんだからよ」

「そうでやすよ、旦那が持つ回復薬、両腕がなくなってたシズさんの体を元通りにしたじゃないですか」

「うん...」

 

 会話をしていると、仮設テントの目の前についた。ランガが心配そうにテントの前に座っている。

 

「おや、これは、皆さんもお見舞いですかな?」

「リグルドさんもっすか?」

「はい。シズ殿の着替えをお持ちしたところです」

 

 リグルドは仮設テントについている扉代わりののれんをくぐり、仮設テントに入った。

 

「リムル様、サンズ様。失礼します... っ!?」

 

 テントの中には、美しい銀髪を持ち、すらりとした華奢な体で、金色の瞳を持つとても美しい5から6歳ほどの少女が、涙を流しながら佇んでいて、サンズが驚愕した表情を浮かべていた。

 

「リ、リムル。お前さん...」

「我が主!」

「そのお姿は...!?」

「「「えっ? ええ~!?」」」

「そっ、その子が、リムルの旦那!?」

 


 

 カバル達に、事の顛末を話した。

 

「そうか、シズさん。逝っちまったのか」

 

 少しの間、沈黙がおきた。そして、ギドは念のため、もう一度確認する

 

「本当に、リムルの旦那なんでやんすか?」

 

 ギドの言葉に、リグルドとランガは怒った、

 

「間違いありません!」

「見くびるな! 姿形が変わったぐらいで分からなくなると思うのか!」

 

 リグルドとランガの怒りに、カバルは訂正を入れる。

 

「あ、いや...そんなわけじゃなくて... どうも、なんかちっこいシズさんぽいっつうか...」

「ホントだよ。ほれ」

 

 衣服を受け取り、ベットの上に座っていたリムルは、腕を上げ、スライムへと変化し人間への擬態を解除する。

 リムルの体は一瞬でスライムへと変化し、丸いいつもの形へと戻った。

 

「シズさんを食べたの? イフリートを食べたみたいに」

「それが、俺にできる最後の葬送だったからね。仲間のお前たちに相談もなく悪かったな、悪かったな」

「いや、それがシズさんの望みだったのなら、仕方ないさ」

「すまんな、エレン。割り切れないかもしれないけど...」

「ううん。ただ、最後に別れの挨拶ぐらい言いたかったな」

「シズはお前さんたちと旅ができて楽しかったって言ってたぜ。危なっかしいって言ってたけどな」

 

 オイラの言葉でカバルに視線が集中する。

 

「あっ、おいこら! 何だその目は!」

「だってねえ?」

「ああ」

「お前だってこの前落とし穴にはまってたじゃねえか!」

「あれは、(あね)さんが急に押すからでやす!」

「ちょっと!私のせいにしないでよ!あの時は蜘蛛が  

 

 しんみりするよりも、バカ騒ぎするほうが、カバル達らしくていいな。

 ていうか、こいつらシズに頼り過ぎじゃないか?

 


 

 翌日。カバル達はもう国に帰るらしい。ギルドマスターにシズや調査結果を話すとのことだ。

 

「旦那。最後に一つだけお願いがあるんだけど...最後に一つだけ、お願いがあるんだけど...もう一度人の姿になってもらえねえかな?」

「別にいいけど」

 

 リムルはいつも擬態するときのように黒い霧を出すことなく、するっと人の姿になった。

 

「「「シズさん! ありがとうございました!!!」」」

「俺、あなたに心配されないようなリーダーになります!」

「あなたと冒険できたこと生涯の宝にしやす!」

「ありがとう! お姉ちゃんみたいって思ってました!」

 

 カバルとギドは深々と頭を下げ、エレンは泣きながらリムルに抱き着いた。

 シズの姿ともいえる擬態したリムルに代わりとしてお礼をするカバル達に、シズの最期の旅仲間が、こいつらでよかったと思えた。

 ただ...

 

「お前さん達、なんでそんなに装備がボロボロなんだ?」

 

 お礼が終わったところでつぶやいたオイラの疑問に、体を手で抱きながらカバル達は告げた。

 

「「「(ひど)!!!」」」

 

「すまんな。で、代わりにうちの職人の力作を選別替わりにプレゼントしてやるよ」

 

 オイラは近道を用いた瞬間移動で、カイジンの工房前にリムルと一緒にカバル達を連れてきた。

 出されていた防具とローブを持ってきてカバル達に渡す。

 

「おお~! 憧れのスケイルメイル...!」

 

 カバルにはアーマーサウルスの鱗を使用した鎧をプレゼントしてやった。動きやすいよう、関節部の装甲は無いが、皮も丈夫なため、問題はない。

 

「ちょっ、このローブ何なんですか!? 軽いうえに頑丈...ていうかめっちゃきれい!」

 

 エレンには魔力を帯びた糸を用いた純白のローブ。

 

「いんですかい!? あっしにはもったいないような作品!」

 

 ギドには亡くなった牙狼族の毛皮を用いた動きやすく、重要な個所を守る装備。

 

「カイジン達の力作だ」

「えっ、カイジン...?」

 

 俺の合図により、カイジン達が俺の横に並び立つ。

 

「力作つってもまだ試作品だがな」

「着心地はどうだい?」

「細工は流々ってなもんだ」

「うんうん」

 

「右からカイジンにガルム、ミルドにドルドだ」

 

「マジで!?」

「腕利きな超有名な鍛冶職人の?」

「ガルム、ミルド、ドルドってあのドワーフ三兄弟?」

 

 カバルは家宝にしますとカイジンの両手を握り、エレンはガルムとミルドに抱き着き、ギドはドルドを抱き上げた。

 

 オイラが思っていた以上にカイジン達は有名人だったらしい。人間国宝と言えるだろう。

 

 

 悲しみを吹き飛ばすように大騒ぎした後、彼らは去っていった。

 

 かつて、炎ですべてを失った少女は世界を渡り、くしくも炎の力を手に入れた。

 少女はその力を人々を守るために使ったが、炎は少しずつ少女を蝕み、やがて炎を制御することができなくなった。

 彼女の名は、シズエ・イザワ。炎の上位精霊を宿し、「爆炎の支配者」と(うた)われた英雄となった。

 

 高台の上で、石を積み上げただけの墓を作り、リムルとともにそれに祈る。

 

「俺は、約束を守る男だ」

「へへ。約束を守るためにも、情報を集めないとな」

 

 暴風竜ヴェルドラ、そして一人の女性の思いを受け継ぎ、目的を得た二人の魔物。

 リムルというスライムと、サンズというスケルトンを中心にして世界は後の歴史学者が困惑するほどに激動の時代を迎える。


 

 

 死の大地。そう呼ばれる水も植物もない大地にて、一匹のオークが倒れた。

 倒れたオークに、ペストマスクのような仮面をつけ、杖を持った魔人が歩み寄る。

 

「お前に名をやろう」

「あなたは...」

「ゲルミュッド。俺のことは父と思うがいい」

「このまま死ぬか?」

 

 ゲルミュッドと名乗った魔人は問いかける。それに、オークは答えた。

 

「名前を...そして、食事を」

 

 ゲルミュッドと名乗った魔人はオークの頭に手を乗せる。

 

「お前はゲルド。やがて、ジュラの大森林を手中に収め、オークディザスタ―となるものだ」

 

 ゲルミュッドと名乗った魔人は生肉を差し出しながら告げると、オークは生肉をもらい、一心不乱に喰い始める。

 ゲルミュッドと名乗った魔人は仮面の下に笑みを浮かべ、その場を去った。

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