休みだってのに、生徒会の手伝いに呼び出されて瀕死になりながらもこなし終えた。
暖かな春の陽気が眠気を誘う昼下がり、自分こと御影玲は校内の中庭にて日向ぼっこしていた。インドアな自分が外に出ておること自体珍しいと思われた方、全くもってその通りです。あまりにもお天気がいいので天日干ししてました。自分を。あー、このまま干物にでもなれないかな……。
「やっほ〜玲君」
「近江さん? どうかされました?」
干物への変化願望を持っていると突然近江さんが現れました。この人自分がどこにいても現れるな。見張られてんのか? まさかね……。
「ちょっと玲君に聞きたいことがね〜」
「聞きたいこと?」
首を傾げていると、近江さんが自分の隣に腰を下ろしてくる。隣座るのはもはやデフォなんで何も言わんけど、今回は何だろう。
「あやとりってできる?」
「……2人用のなら」
あまりにも意外な問いだったため、変な間ができてしまった。あやとりか……昔腐れ縁や従姉妹とやったな。いつも誰かとやってたから1人用のはできないけど。
「ちょっとやらない?」
「いいですよ?」
自分でも訳がわからない状態で頷くと、近江さんが懐から赤い輪になった紐を取り出す。赤いあやとりか。
「なんか2人でやるのに良い技知ってる?」
「『もちつき』とかどうですかね?」
「もちつき?」
「ええ。こういう風に——」
首を傾げる近江さんに実践しながら説明していく。このもちつきという技、まずは互いに向き合い、小指と親指に1つのあやとりを引っ掛けた後に右手、左手の順に対角線上の手のひらの紐を中指で下から取り合い、最後にお互いの親指と小指を外して完成。
それで何するかというと、お互いの右手同士、左手同士を「ぺったん ぺったん」言いながら合わせて遊んでいくものだ。
「ぺったん、ぺったん、おおー、すごいすごい」
「ぺったん、ぺったん……久しぶりだな」
説明しながら形を作り上げた自分は、近江さんと右手、左手、右手と合わせていく。そんな事を暫く繰り返していると、不意に近江さんが手をとめた。
「どうかされました?」
不思議に思った自分は率直に彼女へと尋ねる。対する近江さんはゆっくりと顔を上げると軽く笑って答えた。
「彼方ちゃん達、赤い糸で結ばれちゃったね」
そう言って向かい合っていた手を合わせ、そのまま握るようにして指を絡ませてくる近江さん。そうして出来上がったのは、いわゆる恋人繋ぎと呼ばれるものだ。
「近江さん……?」
「玲君……」
彼女の口から漏れ出た自分の名前が耳に届いた数瞬後、鼻腔をおひさまの様な柔らかな香りがくすぐり、口元に柔らかな感触と暖かさを感じた。
それが、彼女にキスをされたと理解するのにそう時間は掛からなかった。
「……プハッ」
互いが離れ大きく息を吸う自分。何を問いただせば良いのか分からず、ごちゃごちゃとした頭のまま近江さんの方を見据えると、頬を真っ赤に染め視線を僅かに下へと向けた彼女の姿を捉える。
「彼方ちゃん……初めてなんだ」
「え、え?」
近江さんの発言に余計混乱してしまい、ただただ驚愕することしかできない自分に近江さんは続けて言葉を発してくる。
「玲君に……あげちゃった。玲君は、その……初めて?」
恥じらいながら上目遣いで問うてくる近江さん。何でやっといてそんなに恥ずかしそうなの。見てるこっちも恥ずかしいんだけど。やめて、お願い。
「初めて……ですよ。自分も近江さんに、持って行かれてしまいました」
場の雰囲気に呑まれてか、らしくない答え方をしてしまう。キッショ。自分キッショ。と言うかどうすんだよ。近江さんの初めて貰っちゃったって、ヤバない?
「玲君、大好きだよ」
「え、ちょ——」
内心あたふたしている自分に笑顔で発した彼女は、両手をあやとりから外すと、こちらへと抱きついて再び唇を重ねてくるのであった。
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