そんな大会の決勝はどよめきに満ちていた。
改造ガンプラが多い中、両者のガンプラはほぼ無改造の状態だったからだ。
「ガンプラバトル九州大会決勝!出場ガンプラは驚くべき結果となりました!まさに運命的な一戦、そのガンプラは!」
眼帯をつけたMCがそう叫ぶと暗転していた舞台に上がっている青髪の少年と赤髪の青年の2名にスポットライトが当たる
「
真と拓海は幼馴染である。だが、今の彼らは犬猿の仲だ。
それも観客"全てが何かこの2人にはあったのだろう"そう察する程に。
時は1時間ほど遡る。
(決勝の相手はやっぱり拓海か…)
「ついにここまで来たね!真!」
真と呼ばれる青髪の青年は決勝戦の対戦相手を確認し、声のかけられた方を向くとそこには切磋琢磨した5人の仲間達がいた。
「勝てる自信ないのか?」
「そ、そんなわけないだろ!ここまで来たんだ流石にそんなこと」
(とは言ったものの、最後に拓海と戦った時は秒殺だった。あの時は一撃も与えられていない……今回も勝てるかどうか)
少し声のこもる真を見て仲間達は顔を合わせる。
「なーに神妙な顔してんだ、柄にもない」
「そうですよ!真さんは馬鹿正直だけが取り柄なんですから!」
「凛、それはフォローになってない」
凛と呼ばれる黒髪の女性は仲間からそう指摘されると顔を赤る。
「楽しそうで何よりだな」
仲間達と談笑していると奥から赤髪の青年がこちらへ向かってくる。
「悔しいか?お前が捨てなければ此処に居れたんだぞ?拓海」
拓海と呼ばれた青年は仲間の1人にそう言われるがまるで呆れたかの様に鼻で笑う。
「そんなわけないだろ?俺は捨てることで強くなったんだ、だから此処にいる」
「プロになるためか?お前、最後に真と戦った時に言っていたよなプロになる為に俺は此処を去るって」
「あぁ、人間夢を追いかける為には捨てなきゃいけないこともあるんだ」
「拓海さんの夢、私は否定しません──でもその考えは間違ってると思います」
その場を立ち去ろうとする拓海に凛がそう言い、それを聞くと仲間の1人が続け様に口を開いた。
「だな!なんたって
「かもしれないな、だが、そのセリフは本人に言わせた方がいい。だからお前は弱いんだ──精々お仲間同士で仲良くやってろ」
そう言うと拓海はその場を後にした。
「やっぱりあいつ雰囲気変わったよなー、前からちょっと気には食わなかったけどあんな嫌味言う様なやつじゃなかったのに」
「ごめんみんな!拓海の言葉も一理あるよ、大丈夫だ!決心はついたから、ありがとう!」
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「今日こそ俺はお前に勝つ!」
舞台上で先に啖呵を切ったのは真だった。
「最後に私と戦った時は相手にもならなかった気がしたが?」
拓海は鼻で笑うようにそう口にする。
「あの頃の俺とは違う!あれから俺は修行したんだ!」
「なら見せてもらおう、この2年お前がどう成長したかを」
両者はバトルマシンのある舞台に登りお互いのガンプラをセットする。
「結城 真、Gガンダム」
「如月 拓海、マスターガンダム」
ガンプラがセットされたことを合図にバトルフィールドが形成される。
そのフィールドはこの時のためにと言われても過言ではない場所だった。
バトルフィールド「ランタオ島」:ご存知「起動武闘伝Gガンダム」に登場するネオホンコンの領地である。
フィールドギミック等は存在せず平坦な地面やオブジェクトとしてガンダムヘッドの配線ケーブルで構成されており、フィールド外背景には荒廃したデビルガンダムが設置されている。
「それではこの言葉で参りましょう!ガンプラファイト!レディー!ゴーッ!」
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「Battle Start」の表示と同時に2機は勢いよく飛び出し、勢いそのままに互いに距離を詰める。
先に仕掛けたのは意外にもマスターガンダムだった。
「ダークネスショット!」
掌底状態から放たれる黒い弾丸はGガンダム目掛けて飛び込んでくる。
「牽制にこれほど適した武器はないよな!それならこっちは!バァルカン!」
Gガンダムはダークネスショットを避けつつマスターガンダムへ牽制をする。
「良い判断だ、だが!その弾にそこまでの威力はない!」
バルカンはマスターガンダムに擦りはする物のダメージを与えることなく、それ故にマスターガンダムはこちらへ一直線に向かってくる。
徐々に近づくマスターガンダムは自身の間合いに入りニアクラッシャーと呼ばれる手刀を飛ばす。
「お前ならそう来ると思ったよ!」
対するGガンダムはそれを避けるとさらに間合いを詰め肘打ちを当てると裏拳、正拳突きとコンボを繋げその後怒涛のラッシュを入れる。
「これが修行の成果だ!あの時の雪辱ここで晴らす!」
意気込んだのも束の間その言葉は腹部を狙った一撃を片手で受け止められた事で否定される。
「相変わらず詰めの甘いお前には無理だと思うが?」
マスターガンダムは掴んでいる腕をくるり大きく時計回りに動かすとまるで合気道を掛けられているかのようにGガンダムに大きな隙を作らせた。
「なっ!?」
「ガンプラだろうと人間だろうと重心さえ操れれば!」
マスターガンダムの猛攻が始まる。
舞のように鮮やかな蓮撃、その動きは真にも心当たりのある動きだった。
(この技はマズイ、最後の一撃だけは阻止しないと!)
舞の中で放たれた掌底打ちによりGガンダムが怯むのを確認するとマスターガンダムはこちらへ突撃してくる。
「
その技はすれ違い様に熱量を送り込み内部暴発させ爆破する技だ。
「させるか!爆熱ゴッドスラッシュ!」
Gガンダムはビームサーベルを勢いよく振り抜き、すれ違う刹那にカウンターを試みるが、しかしそれはマスターガンダムが地を強く蹴り直上する事で意図も容易く回避された。
「カウンターを狙うとはな──少しお前を見くびっていたよ、しかしそれも無駄と言うもの!」
その後マスターガンダムは急降下、先ほどよりも勢いよくこちらへ向かってくる。
「こっちは囮だ!お前を上に誘き寄せるためのな!ゴッドスラッシュタイフーン!」
「なっ!?」
Gガンダムはスラスターを使い勢いよく回転し竜巻を起こすとマスターガンダムを弾き飛ばす。
「そこまでの出力、エネルギー残量を考えるにそのサーベルでの大技はもう使えまい!」
Gガンダムの技は高威力かつ広範囲なものが多くどれも強力である。しかしもちろん明確な弱点もある。
それは高威力だからこその燃費の悪さだ。
「お見通しか、でもそんな弱点はとうに克服している!」
Gガンダムはビームサーベルの持ち手を握りつぶすと微細な粒子が包み込む。
「エネルギーの再利用か、よく考えつくものだ──だが!これでタイフーンは使えまい!
マスターガンダムは拳を突き出し大きく円を描くように動かすと
「その技、そっちも高燃費なの使ってくるじゃないか!」
「流石にこの技を使わされるとは思わなかったがな──それで?これはどう乗り越える?」
「そっちが分身を使うならこっちだって!分身殺法・ゴッドシャドウ!!」
Gガンダムは印を組むように手を合わせると10体に分身しマスターガンダム達を受け止める。
原作だと原理の違う分身達だがガンプラバトルの仕様上これらは同属性の扱いとして定義されている、故に受け止める事は可能なのだ。
「そう来たか、だが3対1の状況は作れたぞ?」
「たかが小型の分身2機、戦力としては1にも満たない!
Gガンダムは高く飛び上がり全身を回転させると丸く渦巻くエネルギー弾の様な形となりマスターガンダム目掛けて突進する。
「確かに分身2体ではどうにもならんか、
負けじとマスターガンダムも残った2体の分身を消すとそのままGガンダム同様の形となり迎え撃つ様にGガンダム目掛けて突撃し、それらがぶつかる時周囲のオブジェクトを巻き込むほど大きな竜巻ができた。
「負けない──今度こそ!」
「強くなったな──だがこちらとしても負けるわけにはいかない!」
巻き起こる竜巻の中2機は格闘戦を仕掛けていた。
だがその格闘戦は決着が付くことがなく、お互いに攻撃を仕掛けてはそれを受け止るラッシュの繰り返しだった。
「なぜだ!なぜあの時俺達を置いて去って行った!」
ラッシュによる果てしない攻防の中2人の拳がぶつかり真は口を開く。
「さっきも言ったはずだ!プロになる為に強くなる、それだけだと!」
「全てを捨てなくてもいいだろ!俺は──お前を含めたみんなとガンプラバトルがやりたいだけなんだから!」
「それはお前のエゴだ、第一にプロを目指す私と遊びのコミュニケーショでしかないお前とでは目標が違う──遊んでいるだけのお前と一緒にするな!」
「なら俺はその考えを否定する!お前を倒してあの出来事を侘びさせる!!あいつらの為にも!」
「お前も修行をしたんだろ?であれば強さを──力を求めた私を否定できない筈だ!なぜお前は修行をした?お前も力を求めたからだろう!」
「違う!俺が強くなりたかったのは単に力を求めたわけじゃない!拓海がみんなとまた戦える様になる為、いわば仲間達の想いの力だ!」
重なり合う拳を弾きGガンダムは頭部に1撃を喰らわせる。
「そうだ!俺は1人で強くなったんじゃない、みんなで手を取りここまで来たんだ!」
「そんな仲良しごっこで俺に勝てると思うな!」
負けじとマスターガンダムを1撃をGガンダムに当てるがその後の攻撃もまた受け止められた。
「これじゃ埒が開かないな──見せてやるよ、全てを捨てる事で得た俺の新たな力を!」
「ならば俺も思い知らせてやるさ!仲間達との絆の力を!」
竜巻が晴れるとお互いに距離を取り同時に技の構えに入るとその気迫からか周りの地面は浮き立ち、徐々に
それと同時に両者とも驚愕した、ハイパーモードと呼ばれるシステム、これは以前対戦した時までは互いに会得していなかったからだ。
お互いの修行の成果、それがこの状態を産むのであれば、力を求める為全てを捨てた拓海と仲間の為に力を得た真、この2人は結果として同じ境地に辿り着いている。
だがこれに関して言えばお互いに好都合ではあった。同じ条件、同じ技なのであればどちらが真の勝者か決着をつけることができる。
「「最終奥義!石破!天驚拳!!」」
同時に放ったその技は互いにぶつかり合い先ほどの竜巻で巻き込まら散らばっていたオブジェクト全てを消滅する様な大きな爆発を起こした。
「ゴッドフィールド、ダァァッシュ!」
眩い光、普通なら立つことも至難な爆風の中先に動きを見せたのはGガンダムだった。
「俺のこの手が真っ赤に燃える!勝利を掴めと轟き叫ぶ!」
爆発の中から現れ、捨て身とも見えるそれはこちらまで迫ってきていた。
「俺がそれを読んでいないとでも思っていたか!」
拓海は読んでいた。故にそれに応えるように反撃を取る。
「ばぁぁぁくねつ!!ゴッドフィンガー!」
「ダークネスフィンガー!!」
熱量を帯びた互いの右手はぶつかり合い、そのままお互いの右腕は破壊される。
その反動で仰け反るGガンダムとは対照的にマスターガンダムは次の攻撃を構えていた。
「やはりお前は詰めが甘い!敢えて言わせてもらうのなら、"だからお前はアホなのだ!"」
マスタークロスを左拳に纏わせ一撃を放つ、これが当たれば半壊状態のGガンダムを完全に破壊できる。
──しかしこの算段は"これが当たれば"の話だ。
その拳はGガンダムが仰け反りを利用し、姿勢を低くしたことで当たらず、空を切る。
そして、次に目に入ったのは左手でゴッドフィンガーの構えに入ったGガンダムだった。
「ここで左手のゴッドフィンガーだとっ?!」
大きく振りかぶっていたがためにこちらは姿勢を立て直すことはできずにそのまま受け腹部を貫通する。
「これがあいつらの──想いの力か」
「ヒィィィト!エンドッ!!」
その言葉と共に爆炎が広がり「Battle End」の文字が大きく表示される。
「完敗だよ、強くなったな」
「ありがとう、正直最後のは賭けだったけどな」
対戦前の2人の雰囲気とは打って変わり清々しい空気が辺り一面に広がり、盛り上がる歓声は彼らを優しく包み込む。
「全国に行っても負けるなよ?」
「あぁ!」
2人は固い握手をして舞台から降り、その先に待つ仲間達と喜びを分かち合うのだった──その後この2人が試行を錯誤した結果、「ガンダムゴッドマスター」と呼ばれる機体を合作し全国大会に挑むのはまた別の話である。