未知なる島の歩き方 〜そっと規格外を添えて〜   作:ライムミント

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設定を考えるの楽しい


ハロー!新大陸

 

「んぁ…?」

 

鬱蒼とした木々に囲まれ、木漏れ日が降り注ぐ切り株の上で熟睡していた1人の男が目を覚ます。

 

今日はやたらと風が騒がしい。

それに周辺のポケモンたちも何やら忙しなく動き回っている。

 

こういう時は大抵面倒くさいことが起こる前触れだと経験則で知っている。しかもろくでもない部類の。

 

非常に無視したい事柄ではあらが、男の立場上そうはいかない。もし動かなければ死活問題になることもある。

 

そのため男が目を覚ました時点で今日という日の予定は決まったも同然なのだ。

 

長い時間眠っていたのだろうか、肩や腰を動かせばバキバキっと気持ちのいい音がする。凝り固まった体をほぐし、気休め程度に身だしなみを整え、男は直感の赴くままに悠々と歩みを進める。

 

周囲のポケモンたちは遠く離れる男の背中を見送った。

 

 

 

 

 

 

さて、直感が働く目的地へと歩みを進めて約30分、森を抜けて野を抜けて、島の浜辺へ辿り着く。

 

塵の一つすら落ちていない、白く輝く白銀の砂浜。

10人に聞けば10人とも絶景であると答えるような光景だが、男にとっては日常の一部でしかない。

 

見渡すは水平線。この辺りの海域は特殊な海流が流れているため、物が流れ着くことなど普段ならばまずあり得ない。

 

しかしそんな島の常識を覆すが如く、男の視界には流れ着いたであろう漂着物が映っていた。

 

その時点でまずあり得ない。

 

そしてその流れ着いた物体というのが、物でもなく塵でもなく近海のポケモンでもなく人間の女であるという点がさらにあり得ない。

 

そしてそしてさらに流れ着いたであろう女が涎を垂らしながら爆睡してる事実が男の許容量をぶっ壊した。

 

爆睡する女、宇宙猫の男。

場にはさざ波の音が響き渡った。

 

男は考えた。眠気がまだ残る頭で必死に考えた。考えて考えて考えぬいた結果……、寝ている女性の体の向きを時計回りに回し、波打ち際の顔が浸かるギリギリのラインに寝かせることにした。

 

男も普通じゃなかった。

 

波が流れてくるたびに顔が水に浸かり、波が引けば鼻に水を残しつつ流れていく。男は水に浸かるたびにブクブクと出る空気の泡を満足げに眺めていた。

 

そして波の満ち引きが5往復程度終了したころ…

 

「ガボフォッ!!??」

 

女が飛び起きた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゲッホ…ゴホッゴホッ…!!はっ…鼻が痛いぃぃ!!塩辛いぃ…!!」

「寝起き早々元気な奴だな。気分はどうだ?」

「最悪ぅぅ…」

 

びしょ濡れの体に痛む鼻、口内に広がる磯の香りに見慣れぬ海岸、この現状から女は何故かは分からないが海で溺れてここに流れ着いたのだろうと予想し、奇しくもその予想は半分当たっている。

 

「ここどこぉ…?それに私は何でびしょ濡れでこんな場所にいるの…?」

 

ものすごく面倒くさい予感がする。男は足早にこの場を去ってしまいたかったがそれは出来なかった。

 

何故なら立ち去れない事情(シャツに映る濡れ透けブラ)があるからだ。

 

そしてここで離れてしまうと目覚めが悪い(ブラを見れない)

 

男は残って事情を聞く選択をした。

 

女の容姿は20代前半ってところだろうか?肩口にかかるほどの赤みがかった髪は海水に濡れたせいでボサボサだ。顔立ちは整っており、パンツスーツ姿が良く似合っている。さっきまでアホ顔晒して爆睡していた女には見えない。そして赤色のチチバンド、これ重要。

 

「携帯は…ない。財布も…ない。あっ!カバンも日記も無い!全部ない!!?でもボールはある!良かった私のポケモン達!離れ離れにならなくて!」

 

そしてものすごく賑やかだ。いっそ喧しいくらいに。

さっきまで一瞬死にかけてたのによくここまで1人でペラペラと話せるものだ。美人は全員お淑やかという噂はどうやらガセネタのようだ。

 

男が女の慌てっぷりを側で眺める傍ら、頭の中では別のことを考えていた。

 

「あっ!人がいる!すみません、ここって何処ですか?さっきまで船に乗ってたはずなんですけ………」

 

と、変な行間で言葉を区切ったところで何も話さなくなった。口を半開きのままぼーっと虚空を一転に見詰めたかと思うや否や急に顔を青ざめさせ、小刻みに震え始め、大声で叫んだ。

 

「そうだ!!海から変な触手みたいなのが出て来て…イヤアァァァァァァァァァァァァ!!?こないでぇぇぇぇぇ!?美味しくないですぅぅぅぅぅぅうう!!??」

 

何だこの喧しい生命体は。

さっきまでの静寂が恋しくなるほどに目の前で何かを思い出して泣き喚く女はうるさかった。

 

そして何を思ったのか目の前の男にしがみつき、さらに泣き声が大きくなる。

 

「イヤアァァァァァァ!?やめてぇぇぇぇぇぇ!?びゃあぁぁぁァァァ!!」

 

男は思った。

この女の常識は欠如してしまったのか、と。

 

たまたま目の前にいた何処の馬の骨かも分からない見ず知らずの男にしがみつき、男の衣服を涙と鼻水と唾液でべちゃべちゃにし、襟首を掴んで前後に揺さぶってくる。

 

あまりの泣き声の大きさに鼓膜がやられそうだ。

そして泣き止む気配が微塵もない。時間が経つごとに泣き声が大きくなる始末。

 

男は悩んだ、このうるさい生命体をどうするか。

ものすごく悩んだ。悩むに悩んで悩み抜いた。

 

 

 

その結果、口に砂を詰め込むことにした。

 

「かっ……!ぶふぇあ…!?」

 

女は盛大に吐き出した。

 

「ぺっ…!ぺっ…!おえっ…!なっ…いきなり何をするんですか貴方はっ!?」

「落ち着いたか?情緒不安定女」

 

女に睨まれながら凄まれても、男はどこ吹く風だ。

 

「えぇ落ち着きましたとも!!貴方のおかげでね!いきなり初対面の、しかも女性の口に容赦なく土を詰める男性がどこにいますか!!?」

「まぁ落ち着けよ。あんまり怒ると美人が台無しだぜ?」

「えっ、美人?そっ…そう言ってくれるならまぁ許してあげなくもないですけど…!」

 

この女、予想以上にチョロかった。

男はこの女の将来が不安になった。

 

「それで?ここは一体何処で貴方は誰なんですか?」

「名乗る時はまずは自分からだってことは子供でも知ってる常識だぞ?」

「この男っ…!!」

 

男は煽るのが上手い。

しかしここで怒っては本末転倒、男が誰なのかも分からないことになるため渋々ではあるが自己紹介をすることにした。

 

 

 

 

 

「んんっ!私はアルマ。カントー地方、ヤマブキシティにあるテレビ局でリポーターをしております」

 

「改めて、俺はシンカイ。そしてここはウルリア地方と言って、世界の中心に位置する島だ。俺は一応このウルリア地方のチャンピオンをやってる。よろしくね」

 

 

外部の人が訪れることができない絶界の大陸、ウルリア地方。そんな大陸に何の因果か一人の忙しないリポーターが流れ着いた。

 

一人のリポーターと一人のチャンピオンが初めて相見えたとき、一体何が起きるのか、今はまだ誰も知らない物語。

 

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