R18ソシャゲの世界に転生したのだが、無条件の忠誠心を示す『英傑美少女』たちが恐ろしい件 作:たたたった
「ここ何処だ?」
目が覚めると俺は豪奢な椅子の上に座っていた。視界の先には僅かな段差の先に広がる巨大な空間、まるで映画やゲームの世界に出てくる王と謁見する場所のように天井には宝石が散りばめられた巨大なシャンデリア、赤い絨毯が床の隅から隅まで広げられている。どこか見覚えのある光景であり、こんな状況でも寝惚けている俺の脳裏にあるゲームのことを思い出させる。
これってソシャゲの『英傑戦記』のホーム画面そっくりじゃね?
それはガチャから召喚される異世界の英傑を従えて、万を超える軍勢を率いて領土を拡大しながら闇の軍勢から世界を解放していく人気のソシャゲの画面から見える光景と似ていた。本来ならここに従えている『英傑美少女』たちが広間に描かれているのだが、最初期のチュートリアルはこんな殺風景な場面であることを思い出す。
俺はあまりにもゲームに酷似した光景、そして現実としか思えない感覚に眩暈がしそうになりながらも――
「あぁ、これって明晰夢ってやつなのね。うわぁ……初めて経験したけどこんなリアルなんだな」
――人生初の夢の中で夢と自覚した瞬間であるが、俺は感動よりも困惑が勝っていた。これが俺のゲームデータを引き継いで数多の『英傑美少女』たちが居るのであればやる気は出てくるが、まさかの初期状態の何もないとなれば、せっかく明晰夢を見ているのにもったいない気分に襲われる。
「俺の夢にしても中々にリアルだな。これってゲームで描かれてない細部とかどうなってるんだろ?」
好奇心に誘われるままに玉座から立ち上がり俺は大広間を出ていく。ゲームで描写される城内はごく一部であり、これが夢であるのならば画面外の部分は俺の脳内でどう補完されているのか気になって仕方がない。
そして部屋を出れば石造りの廊下に魔力で光るランプが連なっている光景が目に入り、俺は物見遊山で城内を散策していく。ゲームでは描かれなかった寝室、食糧庫、食堂の裏方である厨房とこれが俺の夢が作り出した産物なのかと疑いたくなるほどに、緻密に作りこまれた備品やタスペトリ―などの模様に感動していた。
「人間の脳ってすげぇな……夢なのに匂いや音の反響まで再現されてるし――おっ、ここは召喚部屋か」
気が付けば見慣れた部屋を見つける。それは『英傑戦記』の一番の売りである美少女キャラクターを召喚する部屋、『英傑召喚』のコマンドで表示されるガチャ場面にそっくりであった。部屋に描かれる青白い燐光を放つ魔法陣、小さな光の粒子が部屋を舞い、隅の宝箱には初回特典である『英傑美少女』10連ガチャの虹色に輝く魔石が置いてあった。
確定でSSRキャラが一枚以上の10連ガチャ。一見すると初回にしては運営がケチに思えるかも知れないが、これはチュートリアルを終了させれば最終的には500回は回せるので、この10連ガチャはプレイヤーにシステムを説明するための仕様のようなものだ。
「せっかくだし、何が出るか回してみるか……」
目の前にガチャを回す魔石があるのならば、試しに回したくなるのが人の業というもの。宝箱にある10個の虹色の石を次々と掴んでは魔法陣の中に放り込み、そして一つ一つが青白く輝く魔法陣に吸い込まれるように消えるのを見届けると僅かな間のあとに、燃え上がる炎のように輝きが天井まで迸る。
ゲームでは見慣れた演出ではあるが、こうして現実のような明晰夢で見ると炎の迫力に気圧されて一歩下がり――
「今回のガチャはヒーローカード一枚の最低保証で終わったが……それでもレアリティはURで当たりだな」
――燃え盛る業火のような光のあとに魔法陣に落ちているカードが10枚。ハズレカードを意味する灰色のユニットカードが9枚、そしてヒーローカードを意味する金色のカードが1枚と落ちているカードを拾い上げて俺は呟く。『万能属性(マルチエレメンタル)の魔導図書館:ローナリア』は単体での火力はそこそこだが、強力な支援系ユニットのキャラクターである。
ゲームなら一旦はカードとして保存して、使う時は召喚するんだよな……そして使えば再度のカード化は不可能だから、召喚維持コストに見合うだけの国力を常に維持する必要があると。
序盤であるため、カードの維持コストは気にしなくて良い。だが数百を超えた辺りからユニットカードを無計画に召喚を続ければ召喚コストを維持できずに自軍全体に大幅なデバフが掛かってしまう。その場合は使えないカードを砕くか、死地に突っ込ませて派手に散ってもらうかが定石だ。特に廃課金プレイヤーの高レアリティのユニットカードを湯水のように使った特攻戦略は、その費用に見合うだけの破壊力を秘めていた。
俺は手のひらのサイズの大きなカードを天井に透かせるように眺める。
【レアリティ:UR 万能属性(マルチエレメンタル)の魔導図書館:ローナリア 種族:魔女 属性:中立】
あらゆる魔術の真髄を極めた稀代の魔女。全ての魔術属性に適性があるという稀有な体質に、古今東西の数万冊の魔導書の全てを記憶し、それを十全に操る頭脳を持つ。その強大な力を恐れた祖国から暗殺をされかけて『滅国』を果たし、それ以降は魔術に対する知見を更に広めるために世界を放浪している。
「召喚した直後の忠誠心とかMAXのハーレム仕様だけど、そこら辺も忠実に再現してるのかな?」
カードに描かれている『英傑美少女』を解放(リリース)してみることにした。ゲームのPVではカードの中央をタッチして放り投げれば魔法陣が青く輝き、その中心にカードに描かれている『英傑美少女』が召喚される訳であるが、英傑を相手に果たして召喚者である凡夫の俺の言うことを聞いてくれるのか気になるところだ。
「おぉ、PVの演出そのまんまだな……」
気になったのならば実践あるのみ、と召喚のトリガーとなるタッチを終えてカードを放り投げる。すると召喚陣が燐光を放ちながら輝きを増していき、気が付けば閃光とともに目の前には『英傑美少女』の【万能属性(マルチエレメンタル)の魔導図書館:ローナリア】が立っていた。
「召喚者の望みに応え顕現せし妾の名はローナリア!そなたが妾の主様でございますか!」
とんがり帽子とローブを羽織った銀髪の美少女は、魔女という容姿をイメージしたら真っ先に浮かぶ格好をしていた。腰まで届く長い髪の毛、蒼い瞳に不機嫌な表情、胸も大きく持ち上げるかのように腕を組むその姿は煽情的で白い肌は紫色のローブにはよく映えていて次の瞬間には、こちらに全力で媚びるような視線を向けてくる。
「ぜひ、その貴きお名前を下奴である妾にお聞かせ願いませぬか……ッ!」
「あー……俺は種虎(たねこ)だ。そのよろしく」
「なんと……ッ!?主様の名を体現するが如き素晴らしき名……ッ!」
これって俺、馬鹿にされてる……?
最恐のファーストコンタクトであった。
こういう召喚系で仲間を増やすような小説やゲームは色々と知っているが、実際にその主人公の立場に置かれると、相手から寄せられる裏のない絶対的な信頼と忠誠が恐ろしく感じる。この【万能属性(マルチエレメンタル)の魔導図書館:ローナリア】は俺の人となりを知ってから好意を寄せているのではなく、
「どうしましたか、主様?」
「いや、なんでもない……ちょっと考えさせて」
俺たちには何の積み重ねもないので信用が出来なかった。例えるならば、幼い頃より共に過ごしてきた子犬が大きくなっても、信頼と愛情があるから土佐犬のような獰猛な品種であろうとも安心して接することができる。だが、いきなり家に成体となった見知らぬ土佐犬を連れてこられて、良い子だから一緒に住めと言われたら大半の人は拒絶するだろう。
なぜならば、その土佐犬がどれだけ良い子で甘えてこようとも、こちらはその犬のことを何も知らないのだから信用なんて出来ないからだ。
そして今回は犬ではなく人。それも相手は異世界では伝説の魔術師であり、そういう契約とはいえ英傑が凡人の奴隷になる立場というの歪さ。ゲーム内で俺は国王であるが、初期のステータスでは一般兵より強い程度、一騎当千の『英傑美少女』と比べればその差は歴然だ。そして俺たちの関係性の担保となるモノが、召喚者と召喚された者ということだけである。
怖いって……ッ!こんなのちょっと機嫌を損ねて小突かれただけで死にかねないよ!蟻が象のことをペットにする並に無理がある!
夢と思っていても、今この瞬間になんか気に食わないからという感情論でローナリアに襲われたら俺は抵抗もできずに死ぬ。あまりにも生物としての格が違い過ぎて、ちょっと腰が引き気味になりながらも、それでもそれを悟られて精神的なマウントを取られない為に平静を装い――――
「さてと……それじゃあ、小間使いとなる者たちを召喚しようか。俺の後ろに控えていてくれないか、ローナリア」
「主様の仰せのまま」
――――支配者としてのそれっぽい立ち振る舞いをしながら、背後にローナリアを控えさせて召喚作業に戻る。
残りの九枚は雑魚カード。つまり実力的には俺と変わらない程度のユニットしかいない!正直、ローナリアと二人きりとか胃に穴が開きそうなストレスを感じるから……ちょうどいい対等な実力の存在を配下に欲しい!
灰色のカードに描かれるのはメイドや料理人、吟遊詩人や道化師などの一般的な王城に居そうな面子ばかり。ゲームでは本当に使い処のない雑魚であるが、それでも夢の中で現実に近い環境では是非とも傍に置いておきたい人材ばかりだ。
さっさと手持ちのカードを召喚陣に投げ込み続けて、雑魚カードには演出などいらないとばかりに雑に召喚していく。
【レアリティ:C メイド×5 料理人×1 吟遊詩人×1 道化師×1 衛兵×2】
『英傑美少女』には主人公以外の男はいない。つまり完全ハーレム仕様であり、召喚される最低ランクであろうとももれなく全員が美少女か美女である。冷静に考えると、この世界には俺の国に侵略を仕掛ける闇の軍勢のモンスター娘たちと、召喚する美少女たちしかいない相当に頭の悪い世界であるような気がしてきた。
設定的には不老不死である俺だけを除いて全員女。敵である魔物もモンスター娘しか居ない。なんか闇の軍勢が地上で唯一残った国を攻めなくても勝手に滅びる気がするんだけど……そういや、闇の軍勢が俺の国を攻める理由って世界でたった一人の男である国王の主人公を狙うって話だったけ……?
このゲームはタワーディフェンス型の戦略シュミレーション。
世界で唯一の国王の男を巡り、地上に召喚された英傑美少女たちに率いられる美少女兵士と、闇の軍勢であるモンスター娘たちとの終わらない戦争が勃発する。両陣営の種族としての繁栄を賭けた命懸けの戦い、R18のソシャゲなので負ければモンスター娘たちの種馬として逆レイプされ、勝てば英傑美少女たちと子作りをするという男のロマンというより、当事者になった今では地獄と言ってもいい世界設定だ。
ちなみに逆レイプされてしばらく経つとヒーローエネミーとしてその時に出来た子供が戦場に現れるし、逆に英傑美少女たちとの間に出来た子供を戦場に立たせることが出来る。
「主様。次の闇の軍勢が侵攻するまでは一年です。それまでに兵力を準備しましょう!」
ゲーム内時間で一年後、地上に男を求めて闇の軍勢が俺の国に攻め入ってくるわけであるが、それまでにこちらも迎え撃つ準備をしなければ敗北して逆レイプされた後も救出をされることもなく、種馬としてモンスター娘たちに飼われるバッドエンディングがあるのでそれを回避するために、このいつ醒めるか分からない夢の中で目覚めるまでの戦争をすることとなる。