R18ソシャゲの世界に転生したのだが、無条件の忠誠心を示す『英傑美少女』たちが恐ろしい件   作:たたたった

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王の血族

 寝て目が覚めたら父親になっていた衝撃は生涯忘れられない。

 

「旦那様、偉大なる王の血を引いた御子が誕生しました」

 

 最初、『家令のセスラ』が何を言っているのか理解できなかった。

 金色の絹で作られた包みを大切そうに両腕で抱き、豊満ではち切れんばかりの胸元に寄せている。昨日までは臨月だったお腹もすっかり引っ込めて、装いも家令としての男装である執事服。そして極まったような表情で喜びを露わにして、俺の目の前で膝を付いたセスラはまるで捧げものをするかのように、その金色の包みをこちらへと差し出す。

 

「えっ……赤ちゃん?」

「はい!旦那様の子種を授かり産まれた女の子でございます!」

 

 なにそれこわい……。

 

 包みの中身は、黒髪に艶のある紫を帯びた赤ちゃんであった。

 性別は言われるまでは分からなかったが、魔に連なる者である証の黒い角が生えていたので悪魔なのだろう。まさか、『家令のセラス』と子作りして次の日には子供が生まれるという、デキちゃった婚にしてはあまりにもスピーディーな展開に、俺は困惑をせざるを得ない。父親になるための覚悟も自覚もなく、階段をすっ飛ばして登り切ってしまったような感覚。とりあえず、抱いてみれば、父性なのか子供を可愛いと思う情を抱けてホッとする。

 

 無責任子作りして、生まれた子に何の感情すら抱けなかったらマジモンの鬼畜になるところだった……。というか、次の日に出産ってなに……?

 

 こうして頭の悪いR18のエロソシャゲの世界が現実になると、シュールを通り越してホラーの領域に踏み込んでいた。女を抱いて寝て起きたら子供が生まれる、あまりの繁殖速度に少子化どころか人口大爆発確定の世界観において、子作りできる男が俺だけでなければ凄まじいことになっていただろう。

 ゲームでは『家令のセスラが出産しました』という無機質な通知で終わりだが、現実となった今ではこうして赤ちゃんという形になってこの世界に存在する。つまり、子育てをするための環境作りを準備しなければならないのだが、この場合は乳母のようなポジションを用意するべきなのか、それとも俺たちで育児をすれば良いのか迷ってしまう。

 判断に困るので、この世界の常識に詳しく母親である『家令のセスラ』に聞いてみた。

 

「さて、この俺の血を継ぐ大切な子を誰が教育したらいいものか……セスラ」

「私が教育をします、旦那様!レアリティでは上位の英傑には劣りますが、それでも私は大悪魔であり、この子の母親です。悪魔の叡智の全てを受け継いだ、王族の血筋に連なるに相応しい娘に育て上げてみせます」

「そうか……なら、セスラに任せるとしよう」

「ありがとうございます!」

 

 跪いて頭を下げるセスラを眺めながら、無難なところに着地して内心ではホッとした。

 悪魔の叡智という物騒なワードは気になるが、それでも母親が子供を育てるのならば安心だ。これで乳母という役職を新たに用意するとなると、また英傑美少女たちのキャットファイトを超えたラフファイトに発展する気がしてならない。国王である俺の傍に近付ける口実ならば、形振りなんて構ってられないのが彼女たちの本能のようなものだから。

 

「お前も将来は母親のような大悪魔か……おっと、名前を付けてあげないとな、シトリンにしよう」

「名を授けて頂きありがとうございます!それでは、この子の役職は何にいたしましょう?」

 

 生まれてすぐに役職を決めるのは早すぎない?いや、そうか……幼少期から教育の指針を決めるには確かに重要だな……。

 

 子供たちは戦場とは縁遠い内政に携わらせると決めている。だから、俺の意を汲んでのセスラの提案だと思うと、眠りから目覚めたように瞼を開いて、その金色の瞳で父親である俺を見つめるシトリンをあやしながら。

 

「財務に関する役職を用意しよう。いずれ本格的に闇の軍勢との戦争が控えると思えば、資源(リソース)の管理ほどに重要なものはない」

「素晴らしいです!私の子が王国の財務大臣の地位に就くなんて……ッ!」

「えっ、あっ……あぁ、そうだな。王の長子たる者、そのくらいのポジションを与えなければ示しが付かない」

 

 国家運営の要となる経済を担う重要な地位が、その場の勢いでなんとなく決まってしまった。

 本当は、財務に関する役職というニュアンスでの発言であったのだが、大悪魔も親バカになってしまうのか、子供が大臣の役職が決定したと喜びを露わにしている。ここで訂正するのは、すごく気まずいので、流されるままに生まれた娘が生後、1日でまさかの財務大臣に採用である。

 完全なる縁故採用であるが、英傑の血を継ぐ子なら問題ないだろう。それに補佐には、内政に特化した英傑美少女たちも揃えるので国家の運営に支障はないはずだ。

 

「良かったな、シトリン。お前は国家の要となるのだ、将来は任せたぞ!」

「任せて、お父様!」

「えっ?」

「えっ?」

 

 えっ?

 

 言葉を話したシトリンを俺は思わず見つめてしまう。生後、1日である。まさか、赤ちゃんが喋るはずがないと、そんな思いを抱いたままに、父親である俺が驚いたことに目を見開いている娘に向けて。

 

「もう……言葉を話せるのか……?」

「う、うんっ……だって、シトリンは大悪魔なんだよ……?話せたら駄目なの……?」

「いや、流石は俺の娘だ。生まれて1日で話すような優れた叡智を持つとは、予想もしてなかったのでな!うん、そうだ!早々にこの俺の想定を超えるとは……ッ!お前は本物の天才だぞ!その血に流れる王である俺と、母親である大悪魔の血を誇るが良い!」

「だよねっ!だって、偉大なる王であるお父様の娘なんだもんっ!やったぁ!お父様に褒められた!」

 

 父親に褒められれば嬉しい。そんな純粋な心を持ち合わせてる娘にほっこりしながらも、大悪魔だから話せるんだよね?これ、生まれる子の全ての標準的な知性だったら本気で怖いんだけど!という、ちょっとどころか、俺の知り得る常識から大きく外れた世界観を前にして、どこか遠い目をしながら諦観を抱くように受け入れるしかなかった。

 もしかしたら、これから生まれる赤ちゃんより、父親である俺の方が頭が悪いという可能性がチラつき、父親の尊厳と人間としての自尊心に罅が入る音を聞きながら、喜ぶ我が子の角を撫でてやり。

 

「シトリンの誕生を祝って催しをやろうと思うが、主役であるお前が望むものはあるか?出来うる限りに、父親である俺が揃えてやるぞ」

「なんでもいいの?」

「あぁ、用意できるものならなんでも良いぞ!」

「じゃあ――――」

 

 よく考えれば、俺はこの瞬間に安請け合いなんてするべきではなかった。だって、シトリンは生まれたばかりとはいえ大悪魔。そんな我が子が、どんな要求をするかなんてちょっとは想像すべきだろう。

 母親であるセスラと娘のシトリンの視線が交差して、そして力強く頷くセスラが視界の端に映ったあと。

 

「――――――――お母様との間に生まれる、シトリンの妹があと5人欲しい!」

 

 国家の要職である大臣の地位の全てを、大悪魔の血族で埋めようという可愛いお願いをされるのだった。

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