【コミカライズ決定!】ルミナの聖剣~タイトル的にこいつが主人公だな!~【書籍化】 作:サニキ リオ
クレアは十歳になり、叛逆の牙の戦士となった。
反帝国組織である叛逆の牙は、皇族の血を引く獣人達で構成されている。
かつてのモルド家の当主は元々獣人に対して戦争を仕掛けるのではなく、和平の道を歩もうと奔走していた人物だった。
稀代の変人。獣人趣味。そんな風に揶揄されても、彼は人と獣人が手を取り合う未来を望んでいたのだ。
彼の奔走虚しく戦争は起こり、獣人は魔女の作る魔導具を利用した兵器を前に敗北した。
敗戦国の末路は悲惨だ。
獣人の王国アルギエは吸収され、獣人達は人間の奴隷に成り下がった。
今でこそ、表向きは平等と和平を謳っているいるが、そんなものはまやかしだ。
獣人とは下等な生物。それが人間達の総意だった。
それに異を唱えていたのは、モルド家くらいだった。
しかし、そのモルド家の人間も爵位を剥奪されて追放されてしまった。
きっかけはモルド家の三男レッド・ルナ・モルドがメイドとして働いていた狼の獣人に手を出し、子を成したことだ。
皇族の血を引く獣人。それは見せしめを目的としたアルギエ王家の血筋以外では、存在してはならない者だった。
モルド家もそのことは理解していたため、誕生した半獣の存在は隠蔽されたはずだった。
ただモルド家の人間には、定期的に使用人として雇った獣人へお手つきをするものが現れ、生まれた半獣達を隠すことが困難になってきた。
そんなとき事件は起きた。
モルド家の領地に存在する遺跡の中から宝珠が見つかったのだ。
宝珠の名前は蝕みの宝珠。皇族の先祖に当たる日蝕の魔女エクリプスが作り出した魔導具である。
それに触れた半獣が魔法を操り、強靱な肉体を持つ知能あるバケモノーー魔族となってしまったのだ。
この件は帝国の歴史から抹消され、蝕みの宝珠は一部の皇族が口伝でのみその存在を知ることになり、再び各地の遺跡に封印された。
その結果、蝕みの宝珠が持つ力の情報はほとんど失伝してしまったのだ。
皇族の人間でさえ、皇族にしか扱うことができない至宝程度の認識になってしまった。
そんな中、モルド家の末裔である叛逆の牙だけが蝕みの宝珠の効果を正確に把握していたのは皮肉だろう。
それから時が流れ、構成員が人間のフリをできるほどに獣人の血が薄まった頃。
じわじわと潜入工作員が帝国上層部に入り混み、帝国は内部に巨大な敵を抱え込むこととなった。
帝国全土を獣人による憎悪が蝕んでいるというのに、その事実に気がついていない人間は今日も獣人を虐げる。
首に突きつけられた牙が喉笛を食いちぎる日は遠くない。