【コミカライズ決定!】ルミナの聖剣~タイトル的にこいつが主人公だな!~【書籍化】 作:サニキ リオ
クレアが驚きのあまり目を見開いたまましばし言葉を失っていると、ルミナはまっすぐに彼女を見つめ、小声ながらも鋭い口調で言葉を放った。
「クレア、何を呆けているのです。ここから出ましょう」
ルミナの真剣な瞳は揺らがない。彼女が何としてでも救い出す気でいることは明白だった。
クレアは一瞬だけ救われたような気持ちになったが、すぐに我に返って表情を曇らせた。
「ありがとうございます。でも、状況から私が犯人と思うのは当然のことです。誰もが私を疑うのも無理はないでしょう……」
クレアは目を逸らし、力なく笑った。
「何を言っているのですか。あなたがそんな人じゃないこと、わたくしは誰よりも知っています」
幼いルミナの物言いは、何の根拠もないものだ。
しかし、その言葉は不思議とクレアの胸に残った。
「そのまま処刑されていいというのですか? いいえ。そんなこと、わたくしが絶対に許しません。無実のまま処刑されるくらいなら逃げましょう」
ルミナの強い意志に動かされそうになる自分を感じつつ、クレアは震える息を吐き、頭を振った。
「私がこのまま死ぬことになれば、それで大勢の人が助かるのです。それが、私にできる最後の奉仕なのです」
「どうして、そんなに自分を犠牲にするのですか?」
ルミナの声には怒りと悲しみが混ざっていた。
「私の代わりなどごまんとおります。牙は抜けても生え変わる。それだけのことです」
「あなたの代わりなんて一人としていません」
間髪入れずにルミナはクレアの言葉を否定する。
「わたくしにとって、クレアはかけがえのない存在なのです」
その言葉に、彼女の中で何かが解けていくような感慨を覚える。
そして、初めて心の底から救われた気持ちになった。
皇女の純粋な心を利用し、自分の都合のために動かした。かつて自分がされたように。
だというのに、目の前のルミナはクレアが一番欲しい言葉をくれた。
叛逆の牙を構成する牙の一つではなく、クレア自身を一人の〝ヒト〟として見てくれていたのだ。
「ルミナ様。一つだけお願いがございます」
瞳に滲む涙を見て、ルミナは表情を曇らせた。
クレアの決意は固い。それが幼いながらに理解できてしまったからだ。
「どうか、これ以上私に関わらないでください」
苦しても、甘えたくても、これ以上は巻き込めない。
クレアにはルミナを突き放すことしかできなかった。
「そんな……」
「私の代わりはいない。そのお言葉だけで十分でございます」
これまで言われるがまま組織のためだけに生きてきた自分にとって、ルミナの純粋な言葉は真っすぐで心地の良いものだった。
それを感じられただけでも、生まれてきた意味があったのだ。
ルミナを追い返すと、クレアは満足げに一人微笑むのであった。