【コミカライズ決定!】ルミナの聖剣~タイトル的にこいつが主人公だな!~【書籍化】 作:サニキ リオ
レグルス大公が血眼になって事件の調書に目を通していると、今度はノックなしに勢いよく扉が開かれた。
その大きな音に、レグルスは思わず調書を取り落としそうになる。
驚いたレグルスは弾かれたように顔を上げる。
扉の方へ視線を向けると、そこには思いもよらない来訪者の姿があった。
「おっちゃーん! 久しぶりだな!」
「父上―! ただいま戻ったでござる!」
執務室に飛び込んできたのは、レグルス大公の娘であるロアナとその護衛をしているソルドだった。
ロアナの長い白髪とソルドの銀髪が、夕陽に照らされて輝く。
「ロアナ、ソルド……」
レグルスの声が震える。
二人の姿を見た途端、これまで必死に堪えていた感情が溢れ出しそうになる。
彼らの存在は、この苦しい状況の中で、まるで光明のように感じられた。
「……おっちゃん。何かあったのか?」
ソルドは勢いよく駆け寄ると、レグルスの机の前で立ち止まった。
その表情には、普段のへらへらした様子は見られず、珍しく真剣な色が宿っていた。
まだ子供だというのに、ソルドの纏う空気は年齢にそぐわないものだった。
「ソルド。お前の知恵を借りたい」
「任せろ」
それもそのはず。
ソルドは異世界である〝日本〟という国で死んだ後、この世界で新たな命として生まれ変わった転生者なのだ。
彼の持つ知識は、この世界の人間では持ち得ない特別なものだ。
「おっ、事件でござるか~!」
執務室の張り詰めた空気をこの世界に不釣り合いな口調がぶち壊す。
「……ソルド。先ほどから気になっていたのだが、ロアナの口調はなんだ」
「……俺のせいじゃない。前世の忍者や侍の話をしたらドハマりしただけだ」
海外でも日本の忍者、侍人気はすごかったもんなぁ。と、ソルドは他人事のように呟く。
長い間一緒にいたせいで、ロアナはソルドの日本知識の影響を受けた結果、とんちきな口調で話すようになったしまっていたのだ。
「デュフフ! 事件とあらば拙者も力になるでござるよ!」
「忍者や侍っていうか、もうただのオタク……」
相変わらず日本文化を勘違いした口調に、レグルスは頭痛がするような気分になった。
「そんなことより、おっちゃん。事件の調書を見せてくれ」
それよりも、今は事件の調査が先だ。ソルドは改めて、ソルドへ向き直った。
「ああ。そうだな」
レグルスはソルド達と調書を慎重に読み進める。事件の詳細は余りにも不可解だった。
『事件概要:帝国軍諜報部所属シリウル・ハズナー司令官が城内で刺殺体として発見された。犯人とされるのは、獣人官僚であるガレオス・ソル・レグルス大公の侍女クレアである』
『発見時の状況:ハズナー司令官は容疑者であるクレアが抱きかかえている状態で発見された。
発見者は巡回中の近衛騎士。巡回中に被害者を抱える容疑者を目撃し、即座に返り血に塗れた被害者を発見した』
『遺体の状態:ハズナー司令官の遺体は首を一箇所刺され、即死したものと考えられる。遺体には刺し傷以外の外傷はなく、死因は刺殺による失血死だと推測される』
『周辺の状況:夜も更けており、周囲には被害者と容疑者しかいない状況だった。目撃者も今のところ発見されていない』