【コミカライズ決定!】ルミナの聖剣~タイトル的にこいつが主人公だな!~【書籍化】 作:サニキ リオ
ソルドは手にした調書をめくり、溜息をついた。
彼女、クレアは第一発見者であることから疑われ、他に容疑者がいないという理由だけで容赦なく投獄されてしまったのだ。
その理不尽さに、ソルドは唇を噛み締める。
気持ちは同じなのかその横で、ロアナが低くうなりながら尻尾を逆立てていた。
「まったく乱暴な調書でござるなぁ」
ロアナが憤慨しながら声を漏らす。彼女の耳は尻尾と同様にピンと立っており、その苛立ちは明白だった。
「亡くなったハズナー司令官の周囲にはクレア以外いなかった。それが決め手となってしまったのだろう」
レグルス大公が額に手を当てて嘆くように言った。
彼は、自分のメイドであるクレアが帝国軍諜報部の司令官殺害に関与したというあり得ないな結論に、軍部への不信と怒りを抑えきれずにいる。
その言葉を聞いたソルドは静かに頷いた。
「決め手というには御粗末が過ぎる。状況から察するに、このクレアさんは倒れている人を見つけて駆け寄っただけだった。犯人らしき人が他にいないというだけで投獄だなんて、不合理の極みだなこりゃ」
ロアナも同意見のようで、さらに力強く付け加える。
「妾もそう思うでござる。きっとこれはクレア氏を陥れるための陰謀にござる!」
ロアナの推測に頷くと、ソルドは話を続けた。
「正確にはクレアさんじゃなくて、おっちゃんを陥れるための策だな。獣人官僚レグルス大公のメイドが帝国軍諜報部の司令官を殺害。これだけで世間は大騒ぎになるだろうし、誰かがそのことを利用しようとしていると見ていいだろうよ」
クレアはただのメイドであり、彼女が司令官の殺害するなど突拍子もない話にもほどがあった。
「バカな。クレアはただのメイドだ……罪を着せたところで意味はないというのに」
レグルス大公は頭を抱え、絞り出すように呟く。
「いえ、父上の評判を落とすための布石という可能性もあるでござるな。特に獣人が冷遇されがちな帝国において、皇族の血を引きながら獣人の血を色濃く残した父上の存在は目障りなのかもしれませぬぞい」
ソルドは彼女の言葉に頷きながら、目を細めて思案を巡らせると低い声で呟いた。
「そうだな。これをきっかけに他の悪評も付け加えて、獣人支持派の力を削ごうとしているのかもしれない……クレアさんはそのための犠牲になったってわけか」
その推論に、レグルス大公の表情がさらに険しくなる。
「そんなこと……断じて許せることではない!」
レグルス大公は拳を強く握りしめた。
クレアを守るため、黙っているわけにはいかなかった。
その瞬間、ソルドはニヤリと笑うと声を上げた。
「そんじゃ、おっちゃん。この件は俺達にを任せてくれ」
「そうでござる、父上! 我らがクレア殿を必ず救出してみせるでござる!」
ロアナも勢いよく同意し、にんまりと笑顔を浮かべた。
その言葉にレグルス大公は、静かに頷く。
「頼んだぞ、ソルド、ロアナ」
ソルドとロアナはそれぞれ力強く頷き、レグルス大公に背を向けて部屋を出て行く。
そして、ロアナが勢いよく腕を振り上げ、ソルドに向かって楽しげに声を上げた。
「ささ、ソルド氏! いくでござるよ~!」
ロアナは尻尾をピンと立て、目を爛々と輝かせている。
まるで新しい玩具を与えられた子供のような様子に、ソルドは思わず苦笑する。
この姫様は、事件と聞くとすぐに首を突っ込みたがる。
しかし、その行動力と判断力、そして勘の良さは大人顔負けで頼りになる存在だ。
ソルドは彼女のそんな一面に、密かに感心していた。